手打ち蕎麦 あらい

2015年05月28日
【店舗数:395】【そば食:655】
東京都江戸川区北小岩

釜揚げそば

あらい外観

京成小岩駅といえば、東京都の東の端近くにある場所だ。JR総武線(各駅停車)の小岩駅と隣接しているような印象を受ける駅名だが、実際はバス移動でもしなくちゃ無理なくらい、遠く離れている。

小岩といえば、JRの総武線快速が停車する「新小岩」という駅が一駅東京寄りにあるが、こちらは葛飾区。小岩駅および京成小岩駅は江戸川区となっている。ややこしい。このあたりの区界の複雑さがもたらすグダグダは一つ記事にしてもいいけど、趣旨が違うので今回はやめておく。

さて、そんな京成小岩だが、さすがに京成本線の各駅停車しか停まらない駅で、マイナー感はぬぐえない。JRの小岩駅が都心へのアクセス至便で結構よろしい不動産物価なのとは対照的だ。正直、便利な駅ではない。しかし、JR小岩駅からJR金町駅(常磐線各駅停車)を結ぶバス路線が10分に1本程度の多頻度で運行されており、バスに乗ることを前提にすれば実は便利だったりする。この路線が必要以上に多頻度なのは、路線の途中に寅さんでおなじみの柴又帝釈天があるからだ。

それはともかく、京成小岩駅入口バス停を下りてすぐのところにあるのが、今回訪れた「あらい」という蕎麦屋だ。どこかこのあたりで食事ができる場所はないだろうか、となんとなく調べていたら偶然見つけたお店で、営業時間が昼限定というのに惹かれた。うまいかどうかはよくわからないけど、短い時間しか営業していないんなら行けるときに行っておかないと。

飢餓商法、だな。お店はそんなつもりは全くないだろうけど。営業時間は11:30~15:00まで。日曜休みだというので、サラリーマンをやっているとなかなか食べに行きづらい。そういえば、この近くに「日曜庵」という蕎麦屋があって、そっちは週末昼だけの営業だったな。

お店はすぐに見つかった。バス通り沿いでもあり、京成小岩駅からもほど近い好立地・・・なんだけど、地味だなおい。自宅兼店舗なのだろう。いや、蕎麦屋というのはえてして地味なものだが、これはなかなかなもんだ。

潔くシンプルなメニュー

お品書きも地味だ。小さな店で小さくやっていく、という方針なのだろう。ご主人一人で切り盛りしていたし、シンプルだ。

冷たい蕎麦が4種、暖かい蕎麦が4種。これにお酒などの飲み物が数種類。やっていけるか不安で、あれもこれもと手広くやらないということは、蕎麦に自信があるのだろうか。・・・というか、あるんだろうなきっと。面白い。

ところで酒が置いてあるけど、単品の酒肴が全くないというのはどうしたものかな。酒を頼んだら、かんたんなお通しが出るのだろうか。そうでなければ、鴨せいろか天せいろで、先に具とかつゆだけ持ってきてもらい、それを肴にして飲むしかない。

いや、そもそも昼間の短時間しか営業していないので、居酒屋利用されても困る、というのはあるだろう。じゃあなんで酒を置いているんだろう?「置くだけならコストかからないから。売れなかったら、自分で飲んじゃえばいいし」くらいの感覚だろうか。

店内は9席しかない

外観、お品書きときて、店内も狭い。4人がけのテーブルが2つ、そしてなんと一人がけの席が1つで合計9名で満席。このお店が相席制度をとっているのかどうかはわからないが、もしそうでないのなら、バラバラに3人がやってきたらそれだけでお店はいっぱいだ。後からきたお客さんは外で待つことになる。

これくらいの規模の客席なら、カウンター席作ろうとは思わなかったのだろうか?

この店主の作戦、というのを聞いてみたくなった。

釜揚げそば

釜揚げそばがある、というのが意欲的で面白かったので頼んでみた。700円。単に普通のせいろを頼むより、遙かに面白い。

釜揚げを出すお店で、これまでマズかった例はなかったような気がする。単なるお湯の中に泳ぐ蕎麦。温められていることにより、蕎麦の風味が強く引き立つ。わざわざこの提供をするということは、蕎麦に自信がある証拠だ。

釜揚げそばアップ

ええと。

釜揚げそばなんだけどな。

厨房を眺めていたら、ご主人は蕎麦を一度茹で釜からシンクに移し、氷水でしめていた。そして引き締まった麺を再度茹で釜で軽く温め、椀に盛った。

それは「釜揚げ」ではなく「湯だめ」だと思う。少なくとも、うどん業界においては。

いったん氷水でしめることで、麺のコシが強くなるメリットはある。しかし、ふわっと、時には崩れてしまうんじゃないかくらいの麺の柔らかさの中に見いだす蕎麦の味わいを楽しみたくて釜揚げを頼んだのだから、コレジャナイ感はある。でもまあ、うまけりゃいいか。

実際、たべた蕎麦はうまかった。たぷたぷのお湯に浸かっているため、超短期決戦で食べないといけない。うかうかしていると、麺がボロボロになってしまい箸で掴もうにも掴めなくなってしまう。そんなわけでひたすら無言で食べたわけだが、野性味ある蕎麦の香りはしっかと受け止めた。

どうやらこのお店のご主人は、「江戸東京そばの会」出身の方らしい。最近、いろいろな形で「弟子として下積み○年」というのをすっ飛ばした技術伝承ができるようになってきている。寿司なんかその最たる例だ。そういう世代の人たちが、既成観念にとらわれない新しい飲食を作っていって欲しい。

ときれいにまとめたところで、お店退却。700円でこれなら素敵だけど、さすがに京成小岩にはそうそう足を運ばんぞ。つまみに幅があるとか、店内インテリアに色気があってくつろげるとか、そういうのが無いのがやっぱり惜しい。

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