出雲そば いいづか(02)

2017年11月03日
【店舗数:414】【そば食:684】
広島県広島市西区天満町

割り子そば

いいづか外観

この日、母校の文化祭で恩師が久々に教壇に立つということなのでわざわざ広島に戻ってきていた。実家が広島から岡山に移転してしまったため、僕が愛した土地・広島に足を踏み入れるのは本当に久しぶりだ。

毎度、この街はいいなあと思う。閉鎖的でよそ者には冷たいとは思うけれど、変化に飛んだ土地と風景、食文化、そして100万人都市という規模感。長年住んでいる人にとっては、広島から出たいとは思わないだろう。

文化祭のあと、同窓会があったのだけど、僕はひっそりと不参加にしていた。20年ぶり以上の仲間とも大勢再会したのだけど、そういう人たちと接するにはかなり心がザワザワして、負担感が強かったからだ。人間誰しも、メンタルの調子で「そっとしていたい」という時ってあるでしょ。まさにこの日がそんな感じだった。

アワレみ隊のばばろあはそんな僕に付き合ってくれて、同窓会には参加せずに一緒に広島の町を歩き回った。かれこれ1時間以上は歩き、「こんな場所だったっけ?」「ああ、変わっちゃったなあ」などと語り合った。

福島町で、ホルモン天ぷらを食べる。2010年に訪れた事があるお店だ。

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そのあと、広島の中心地を目指して歩いていたら、闇夜に光る「いいづか」の文字が。ああそうだ、ここに出雲そばのお店があったな。以前、一度食べたことがある。うまかった。

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「ここはね、広島でも数少ない出雲そばのお店だよ」

とばばろあに語りかける。するとばばろあは、

「だったら食ってこうぜ。せっかくなんじゃけえ、気になったら食わんと」

と言う。えっ、いや、別にお店の紹介をしただけなんだけど、まるで僕が食べたいみたいじゃないか。

でも、いざそうやって言われてみると、出雲そばって最近食べてないなあ、という事に気がついた。そもそも蕎麦を食べる機会が激減しているし、メガロポリス東京とはいえ、出雲そばを出すお店というのはびっくりするくらいに少ない。

ふむ、これを機に食べてみるのもいいな。よし。

いいづかお品書き

「よし。」じゃねぇよ、さっきホルモン天ぷらを食べたばっかりだろう。

僕一人なら、こういう「飲食店ハシゴ」という若気の至りをやってもおかしくはないのだけど、同行者がいて、しかも同行者からそそのかされる形でハシゴになるというのはあまり体験がない。嬉しいね、むしろ。

大抵は「やめとけ」とたしなめられるから。

あ、でもさすがにここで「割子天ぷらそば」なんてのは頼まないぞ?ここはシンプルに、スタンダードな「割り子そば(3枚)」を注文する。値段は750円。

いいづかお品書き

10年前に訪れた時の「蕎麦食い人種」の記事に、当時のメニュー写真が残っている。それと見比べると、さすがに値上がりしている。しかし、メニューは変わらない。

ばばろあが「三昧そば」に惹かれてちょっと悩んでいたけど、結局僕と同じシンプルな割り子蕎麦を頼んでいた。何しろ、今晩はこれで終わりではない。このあと、さらに食べ歩く予定があるのだから。

割り子そば

割り子そば、到着。

つゆをぶっかけて食べるスタイルに対して、ばばろあは「もったいないのう、そのまま食べたいで美味い蕎麦なら」と言う。確かにそうで、つゆをじゃぶじゃぶに浸してしまうと、つゆの味ばっかりになってしまう。

「まずはなにも付けずに食べよう」

最上段の蕎麦は、そのままで食べた。・・・うん、うまい。殻ごと挽いているからか、風味が強く、麺の硬さが程よいので噛んでいるうちに蕎麦に満たされていく感じが強い。

「もったいないで、つゆはいらんじゃろ」

ばばろあがまた言う。つまり、蕎麦に対してかなり高評価、ということだ。

とはいってもせっかくの割り子スタイルだ、つゆをちょっとだけ垂らしていただく。

うーん、これはこれで美味いんだよなあ。

「蕎麦原理主義」とでも言うべき、麺としての蕎麦そのものを楽しむのもいいけれど、具があれこれ乗っていて、料理トータルとしてうまい蕎麦だったりも愛しいものだ。財布と胃袋が許すなら、「蕎麦だけ」と「具やつゆと渾然一体となった美味い蕎麦」の両方を楽しみたいものだ。

気がつくと、店内にはカープのポスターがたくさん貼ってあった。中には、2017年シーズンのセ・リーグ優勝記念のものもある。

おかみさんが苦笑しながら、「この頃は良かったですね」と言う。リーグ優勝の興奮冷めやらぬうちに、クライマックスシリーズで横浜ベイスターズに負け、日本シリーズ進出を逃したからだ。

「剥がさないんですか?」
「せっかくだからそのままにしておこうと思って」

広島の人は、本当に、心底カープが好きだ。なにせ、生まれたときからカープだから。僕なんか、小学校1年のときに広島に転校してきた際、担任のババアから「アンタ東京からきたんじゃけえ、ジャイアンツファンじゃろ。広島じゃカープファンじゃなきゃ、いけんのよ」と木の杖を手に凄まれたのを未だに強く覚えている。3歳まで広島に住んでいたこともあって、もともとカープファンだと自認していたけど、勝手に「ジャイアンツファン=敵」とレッテルを貼られ、大いに萎縮したものだ。カープ好きです、といっても信じてもらえなかった。

ちなみにこのババアは、まだ学校で教えていない漢字を国語のテストで僕が使った、ということで答えはあっているのにバツにしやがった。これも未だに強く覚えている。小学1年の1学期、僕が通っていた東京の学校では習っていた漢字だ。広島ではまだ習っていないなんて僕は知ったこっちゃないし、そもそも「習っていない漢字を使うと不正解」ってどういう論理だよ。

小学1年の小僧にさえ、「この人ちょっとあり得ないわ」と思わせる。こんな理不尽な人が教師としてふんぞり返っていたのが、昭和末期の時代。

そんなことを思い出しながら、蕎麦を手繰った。

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