2018年03月24日
【店舗数419】【そば食:695】
千葉県我孫子市本町
唐揚げ(2ケ)そば
JR常磐線の我孫子駅構内に、巨大な唐揚げが搭載されたごつい蕎麦がある、というのは好事家の間ではとても有名な話だ。お店の名前を「弥生軒」という。
過積載とも言えるほど大きな唐揚げは、「大衆食の典型的な存在」とも言える立ち食い蕎麦屋にしては不思議な存在だ。ホーム上の狭い店舗だし、取り扱えるメニュー数は限られる。なので、奇抜なメニューを用意するというのは難しく、必然的に「当たり障りのないメニュー」に収れんされていく。
にもかかわらず、このお店は唐揚げそばで一躍名を馳せ、今や関東近郊からわざわざそれ目当てで人がやってくるくらいになったのだからすごい。画家の山下清が以前働いていた、という逸話もあって、マスコミの取材も頻繁にある。
JR東日本は国鉄からの民営化以降、エグいまでに古くから駅構内に店を構える地場の「立ち食い蕎麦屋」を駆逐していき、自分の系列企業に営業をバトンタッチさせている。首都圏エリアではもう大半がが「日本レストランエンタプライズ」「ジェイアール東日本都市開発」「ジェイアール東日本フードビジネス」といったグループ会社の運営になっている予感がする。具体的に調べたわけではないので、間違っているかもしれないけど。
そもそも「ただでさえ狭い駅ホーム上に、そば・うどん専門店がある」というのが21世紀において時代遅れになってきているのも事実だ。これからは減る一方で、今更増えるということはないと思う。あるとしても、橋上駅舎のコンコース内に作るといった形で、ホーム上には置かないのではないか。
そんな中、未だ気を吐いているのが我孫子駅の「弥生軒」だ。島式ホーム4つの我孫子駅において、そのうち3つに立ち食い蕎麦店を出店している。品川駅の立ち食い蕎麦一大勢力、「常磐軒」を彷彿とさせる。
常磐軒は、「トッピング盛り放題」という異質なメニュー、「お好みそば」を提供していたお店(東海道線ホーム店)はなくなってしまったけど、現在も品川駅構内にて健在。100年近い歴史があるので、盤石の体制なのだろう。
立ち食い蕎麦屋に限らず、駅構内や駅ビルのテナントが駅ごとに違う、というのは楽しいものだ。それが駅の個性であり、訪れる動機付けになる。どんどん多様化して欲しい。でも現実的には、結構画一的だ。
先ほど挙げたJR東日本系列の会社の事業内容を見てみると、かなり手広くお店を展開していることがわかる。イオンモールみたいに「場所を貸して、賃料収入をチャリンチャリンと得る」ビジネスモデルじゃ飽き足らないらしく、自らがお店を作り、またはフランチャイズとして他店の名を借りて営業をしている。ものすごく貪欲で積極的だ。少なくとも、「駅の立地にあぐらをかいた殿様商売」ではない。
そんな話はさておき、今回は我孫子駅で常磐線快速上りが停車するホームにあるお店に入った。
入る前、しばらくお店の外で待機。というのも、狭い店内にお客さんがいっぱいだったからだ。中に入れる状況ではなかった。時刻は15時近くで、明らかにランチタイムを逃している時間帯なのにこの繁盛っぷり。すごいとしか言いようがない。
自動券売機はSuica非対応。今時、交通系ICカード対応は当たり前だと思っていたので、ちょっとびっくりした。さすが独立系のお店。
でも、別ホームの弥生軒では交通系ICカードに対応した自販機がある、ということなので、これが老朽化してリプレースする暁にはSuica決裁も可能になるのだろう。
立ち食い蕎麦屋の自販機は、ボタン数が多い上に配置がお店ごとにバラバラで、初見でメニューを理解するのはかなり難しい。実際今回の僕がそうだった。
お店によっては、「全てのメニューの基本となる、かけそば・かけうどん」のボタンが左上に配置されていて、そこからじわじわと右側、下側に向けてトッピングがアドオンされたメニューが配列されている。
一方で、別のお店では「一番売れ筋の商品が左上」というコンセプトのお店もある。
この弥生軒の場合、メインコンテンツである「唐揚げそば・うどん」が中央上部に配置されていた。「堂々とボタン配列の真ん中にあるのです」とも言えるけど、ややわかりにくい。
唐揚げそば・うどんは「唐揚げ2個」と「1個」から選べる。1個で400円、2個で540円。つまり上に乗っかっている唐揚げは1個140円ですよ、というわけだ。唐揚げは単品メニューとしても存在していて、これもやっぱり1個140円の設定になっている。
唐揚げは、厨房背後にある黒いコンテナボックスの中にどっさり入っていた。コンテナボックスは山積みになっていて、一体どれだけの唐揚げがこの中に入っているんだ・・・と考えただけで恐ろしい。ニワトリ大量虐殺だ。それだけ愛されているメニュー、というわけだ。
「唐揚げ(2ヶ)そば」を頼むと、店員さんは「にこそばお待たせしましたー」と丼を出してくれた。どうやら、略称が「にこそば」らしい。寿司屋でしょうがのことをガリと呼ぶような、俗称だな。
丼からはみ出すサイズの唐揚げ(胸肉)が2個、載っている。
唐揚げにピントがあってしまい、蕎麦が若干ピンボケしている。それくらい、唐揚げのインパクトが大きい。この唐揚げにはカメラもびっくりしただろう。
蕎麦は、白にかなり近いグレーで、エッジは立っていない。
あまり美味いものだとは思わなかったけど、なにせ唐揚げのインパクトがでかすぎる。後でこの食事を振り返ってみると、唐揚げの記憶ばっかりで、蕎麦もつゆもほとんど記憶に残っていない。つゆなんて、どれくらい甘辛かったのか、何一つ覚えちゃいねぇ。
とにかく、唐揚げをガシガシ食べ続ける、そんな一杯だ。唐揚げはカリッと揚がっていて、美味しい。胸肉なので、くどさがない分2個でも十分食べられる。ただし、小食な人は1個でも持て余すと思う。それくらいのボリューム感がある。
そもそも、蕎麦を食べようにも、重たい唐揚げがフタをしてしまっている。唐揚げを1個食べきるまで、下の蕎麦にありつけなかった。なんていう幸せな不自由!こういう「本末転倒」な食べもの、好きです。トッピングの方がメインを上回っちゃってるいびつさ。
ただでさえ女性にとって敷居の高い「立ち食い蕎麦屋」だけど、ここで唐揚げそばを食べるのはさらに大変なことだと思う。量が多いだけでなく、「唐揚げにかぶりつく」という食べ方に抵抗感を覚える女性はいるだろう。・・・と思っていたら、隣で若いカップルが二人仲良く、唐揚げそばを食べていた。スマホで写真を撮っていたので、どうやらわざわざ遠方から食べにきたらしい。あ、今の若い人はこういうのも抵抗感なく食べるんだな。
お店のあちこちに、「つゆをかけられるのは単品の唐揚げだけです、他の単品メニューにはつゆはかけられません」という注意書きが張り出してある。口頭注意では事足りず、何カ所にも張り紙を出すくらいだから、よっぽど「単品につゆをかけてくれ」リクエストが多いのだろう。
じゃあ単品って何があるの?と思って券売機を見てみたら、「ちくわ天」「かき揚げ」「玉子」「わかめ」だった。いやー、ちくわ天単品を頼んで、「これにつゆをかけてくれ」って頼むお客さんがいるのか、渋いな。通だな。渋すぎて、お店からは嫌がられているけど。でも、「唐揚げ単品につゆをかける」のだけは例外的に認めている、というのがちょっと面白い。
酒のつまみにでもするのかな?と思ったけど、このお店には種類の販売はない。完全に「メシ」として注文しているのだろう。不思議な光景だ。
次このお店を訪れることがあれば、「唐揚げ(2ヶ)そば」に「ちくわ天(2本)」をトッピングして、蕎麦が一切見えないくらい揚げ物で覆い尽くすことをやってみたい。
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