総本家 小松庵 駒込本店

2020年12月05日
【店舗数:439】【そば食:733】
東京都豊島区駒込

生粉打ちせいろ、かけ

雨の日だったけど、駒込にある「六義園」でもみじがりをしてきた。

紅葉は一斉に真っ赤に染まることはなく、見頃のもの、まだ緑のもの、どす黒くなってしまったものとまだらだった。でも、それもまた飽きがこなくて楽しかった。「あっ、あっちの方がよく色づいている!」という探す楽しみ。

それにしても、新型コロナウイルスの影響で、大庭園である六義園でさえ事前予約制の入場制限をかけているというのは驚きだ。美術館・博物館ならまだわかるが、公園でも「密」になることを避けよう、となるとは。

ちなみにここはあくまでも「庭園」。レジャーシートを広げてお弁当を食べる、なんてことはできない。それでも、入場制限。世の中、あらゆるものに手間暇がかかるご時世になってしまった。

寒い。この日は今年の秋一番の冷え込みで、東京でも5度くらいの気温まで下がった。体を温めたいものだ。

一緒にいた僕のパートナー、いしが「小松庵という蕎麦屋が近くにあるのでぜひ紹介したいんだ」という。いしは結婚前、駒込界隈をシマとして暮らしていたので、このあたりのことはある程度詳しい。そんないしが言うには、地元で有名なお蕎麦屋さんなのだという。ほー。

いしに連れられて行ってみると、お店は六義園の北側すぐお向かいだった。栃木県の大谷石を使っているかのような、独特な柄の石を使った洋風建築が建っている。「小松庵」という渋い名前の蕎麦屋にしては、モダンな建物なのでちょっと驚く。

って、あれれ?

「総本家小松庵」なのか。僕、このお店を知ってるぞ。

今から20年前、この「蕎麦喰い人種行動観察」を始めた直後に2度ほど訪れたことがある。池袋駅直結の、「東武メトロポリタン(=現在はルミネ池袋)」のレストラン街にあったからだ。

あわせて読みたい
総本家小松庵 池袋メトロポリタン店(01) 【東京都豊島区西池袋】 そばみそ、厚焼玉子、地鶏山椒焼、せいろ、生ビール、燗酒(月不見) この日は無性に酒が飲みたく、飯を食べたい気分だった。育ち盛りのお子さま...

このお店をよく覚えているのは、わけがある。

このコーナーで書いたお店の記事が、小松庵のオフィシャルサイトの「リンク集」ページに掲載されていたからだ。

エゴサーチをやっていてそれに気がついた僕は、慌てて記事を穏便な文章に書き直したものだ。なにしろ、「高い」とか「普通」とか書いてたから。悪口は書いていなかったはずだけど、微妙に表現をマイルドにした。お店の人に読まれたあとなので、今更遅いけれど。

2000年前半は、まだブログという概念すら存在しなかった。インターネットは今のように「密」ではなく、コンテンツが「疎」だった。だから、僕ごときが書いた文章でも目立ったものだ。今はもう、インターネットで存在感を発揮するなんて無理だ。コンテンツが多すぎる。

お店は2階にある。不思議な作りだ。

じゃあ1階はなにがあるの?というと、どうやら洞窟のような窓のない空間になっていて、そこで密やかに宴会やコンサートができるらしい。会員制クラブみたいなものか。

窓が六義園側に大きく取られ、明るく開放的な空間に客席がある。

その客席には、こんな注意書きが置いてあった。

新型コロナウイルス感染症予防に関するお客様へのお願い
・お食事中以外はマスクを着用ください。
・会話は控えめにお願いいたします。
・長時間のご飲食はお控えください。
・箸等食器の共有はお避けください。

時代だなぁ。

実際、食後ぺちゃくちゃ喋っているお客さんに対して(実際、ぺちゃくちゃという形容がぴったりだった)、ひとテーブルずつ、店員さんが「会話はお控えください」と注意を促して回っていた。

こういう時に喋っているグループはもう少し状況を考えて欲しいものだ。蕎麦の感想を述べ合うならともかく、単なる雑談をしているのだから。

なんだか、「マスクをしていればセーフ」「お店の入り口で手を消毒すればオッケー」「遠出は気まずいので、近場(といっても、公共交通機関を使ったりする)なら繁華街や混雜店でも許されるだろう」という認識が出回っている気がする。外出するなとは言わないけれど、もう少し自覚を持って行動してほしい。

お品書きを見て、「おっと・・・」と思った。予想以上にお値段が高い。

かけ、もりが1,100円。

辛味おろしにすると1,400円、とろろのもりだと1,500円。

最近、東京界隈での上品な蕎麦を食べさせてくれるお店から足が遠ざかっているが、現在の蕎麦の相場観というのはこれくらいのものなのだろうか?

ラーメンの場合、「1,000円の壁」という言葉が業界には存在する。手間暇かけて製麺したりスープを仕込むのだけれど、1,000円以上の値付けというのが難しい。それ以上の値段になると、お客さんは心理的に敬遠するからだ。

しかし、蕎麦の場合はあっさりと1,000円の壁を突破するのだな。シンプルなかけやもりでも。

辛汁、甘汁ともにキリッとした引き締まった辛さと出汁の味わいではなく、ほわんと甘みのある、優しさのあるつゆだ。

こういう本格的な蕎麦屋の場合、かけを頼むとつゆがおいしくて、ついつい何口もすすって飲んでしまう。うまいつゆというのは、「あともう一口」という気持ちにさせる。

一方、立ち食い蕎麦のつゆというのは、濃くてガツンとカツオの香りがして、一口飲んだときのパンチが素晴らしい。しかし、何口か頂いていると「もういいや」という気分になってくる。

どちらがいいとか悪いということはない。ガツンとくるのも好きだし、まったりとしたのも好きだ。

かけそばについてきた七味は、ちょっと独特な配合だった。

普通の七味よりもカラフルだ。赤い色味が少なく、緑や黒の比率が多い。食べてみると、山椒の華やかさと、陳皮の香りが心地よいブレンドだった。でも侮るなかれ、しっかりと辛くもできている。いいな、この七味。これでかけそばの甘汁をいただくと、ますますおいしくなった。

寒い中雨は降り続いている。駒込まで自転車を漕いで来たんだよな。また雨の中、家に帰ろう。でも、かけそばで温まれたからだいじょうぶ。

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください