
12:55
相模湾が前方にはっきりと見えてきた。
山歩き、と呼ぶにはあまり実感のない今日のトレイルだけど、楽しい。景色がくるくると変わるから。

なにせ、こんな景色を眺めながらのウォーキングだ。
これは奥武蔵、奥多摩方面の山々じゃあ体験できない。深い森、しかも植樹された杉だらけの風景を眺め続けることになる。
ここは日当たりの良い斜面が果樹園になっている分、特に景色が開けている。

12:58
海に向かって歩いている、というのがこんなに楽しいとは。
ゴールである国府津駅が、海にほど近いところにある。なので、あそこまで下っていくんだ、という目標がわかるし、それが太陽の光を浴びて輝く海ならばワクワクが止らない。
これが夏だったら、暑くてたまらないだろうし、湿気も気持ち悪いだろう。冬のハイキングだからこその、お楽しみだ。
全然寒くない。そして暑くもない。道のアップダウンは全然大したことがなく、これならば今度家族を連れてきたいくらいだ。

「曽我山耕作放棄地再生活動」と書かれた看板が立っていた。
「素晴らしい景観をゆっくりお楽しみください!」と書いてあって、あれ?どういうことだ?と頭が混乱する。
よく読むと、後継者不足による農地の荒廃が進んでいること、このままでは害獣が増えて農作物被害が増えてしまうことから、地元有志によってオリーブ畑を作った、と書いてある。
なるほど。たしかに、耕作放棄地のままだと、たぶんこれだけ日当たりがよくて温かい場所だと、すぐに草木がボーボーになるだろう。景色が良い、というのは手入れをしている証だ。
「ゆっくりお楽しみ下さい!」というご厚意に応え、今まさにゆっくり楽しませてもらっている。ありがとうございます。
「海が見えるし、見晴らしがいいし、車道もある。便利な場所じゃないか」と思うが、それでも起伏のある丘だ。こういうところで高齢になっても農作業を続けるのは、平地の畑とは比べ物にならない大変さだろう。
もともとミカンなどが植えてあったのだろうが、オリーブ畑に転作したのは、ミカンの収穫が重たくて大変だからだろう。

記念撮影をしたいというわけじゃないんだが、自分が写っている写真を1枚。
メガネをかけていないのは、前がよく見えないからだ。
昨年買い換えたメガネは、調光レンズになっている。屋内では透明なレンズだけど、外出すると紫外線を察知してレンズが黒くなる。万年テレワーカーの僕にとっては、お昼ご飯の買い出しで外出するときにこのメガネは大変ありがたい。
一方で、登山のときは使いづらい。カメラで写真を撮るとき、ファインダーを覗いても露出が妥当なのか全然わからないからだ。しかも、今日みたいに南向きに歩いていると、周囲の景色さえも黒ずんでしまって見づらい。
そんなわけで、今日は「視力0.1未満だけど、まだ裸眼のほうがマシ」ということでメガネを外しながら歩いている。

13:04
なにやら複雑に立体交差した道にやってきた。
写真だとわかりにくいが、ガードレールがある道の下がトンネルになっていて、ぐるっと渦巻き状に道が螺旋して、ガードレールの下をくぐり抜けていく。そうではなく、ガードレールの道からまっすぐ進んでいく道もある。
ここは「六本松」と呼ばれている。
地図を見ると、「六本松跡」とも書かれているので、昔はここに六本の松があったのだろう。今は・・・ないかな?

「六本松址」と彫られた記念碑と、その横に謎のモニュメントがあった。

ここから曽我丘陵を下っていくと、「小田原牧場アイス工房」というジェラート屋さんがある。美味しいのかどうか知らないのだが、たまたま地図で発見したので、気になっている。
一旦丘を下り、ジェラートを食べ、またここまで戻ってきてもいいな・・・と思う。どうせ大した標高差ではないし、所要時間だって知れてるだろう。
大いに心が動いて、ここにくるまで悩んでいた。でも、結局その選択肢は廃案にした。
せっかく丘の上の、下界から離れた場所で楽しく過ごしているんだ。わざわざ一旦、下界の俗世間に戻るのはもったいない気がしたからだ。

六本松のループ道路を別角度から。
ここだけ、かなり急な坂だ。
道幅が狭いので、「頭文字D」ばりに峠アタックなんてできないけれど、もしこういう道で公道最速を競うと(フィクションとして)面白い。

13:11
標高200メートル弱の道をてくてく歩く。
ちなみにこの曽我丘陵、僕が今回歩いている「上大井駅→曽我丘陵→国府津駅」ルートでも、その逆ルートでも、アップダウンに差はほぼない。上大井駅は国府津駅より内陸にあるが、ほとんど標高を上げていないからだ。

ただ、上大井から国府津を目指したほうが、多分楽しいと思う。道中、海を眺めながら、「あの海めがけて歩いていくんだ!」と気持ちが高揚するからだ。
前方に標識が見える。あのあたりが「一本松」と呼ばれる場所だ。
(つづく)
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