
15:15
さあ、ここからは山歩きとは全然関係ない時間帯だ。
国府津駅を通り過ぎてそのまま延々国道1号線を歩き続け、「遠いなあ」と少し思うような距離感に目指すお店はあった。
ピスタチオ専門店、「PISTACCHIERIA」。ええと、なんて読むんだろう。ピスタッチェリア?
あらかじめ雑誌やweb記事でこのお店のことを知っていたわけではない。単に、Googleマップをぐりぐり動かしていて気がついたお店だ。なので、美味しいのかどうかもわからないし、口コミもほとんど見ていない。
僕は、口コミは最初の1つ2つは見たとしても、それ以上は見ないようにしている。現地に行ったときの楽しみが減るからだ。せっかくGoogleマップで偶然の出会いがあったお店なのに、そこからあれこれ事前情報を調べちゃ、偶然さが失われてしまう。
たどり着いたお店は、ピスタチオ色の外観で、徹底していた。

テイクアウトのカウンターと、イートインスペースがある。
僕はイートインのほうで軽く食べることにする。
このお店の面白いのは、ピスタチオのプリンがたくさん存在することだ。卓上に置いてあるメニューを見ると、プリンだけで7種類もある。
しかも、「生クリームがトッピングされています」といった差異ではなく、それぞれが原材料となるピスタチオの種類が違う、ということだ。こんなにいろんな種類があるのか!
プレミアム、イタリア産、焙煎ロースト、スーパーグリーンイラン産、イタリア産(硬め)、シチリア産、アメリカ産
と種類があって、それぞれのプリンに「深み」「豆の香り」「上質」「栄養価」の4つの指標が5段階で評価されている。「栄養価」はどのプリンも5段階評価で5点満点なので差はないのだが、それ以外のパラメータはそれぞれちょっとずつ違う。
それにしても「上質」ってなんだよ。意味がわからない。
こういうのって、家族や友人で訪れて、あれこれ買って食べ比べると素敵だろう。

フィナンシェも、パウンドケーキも、マドレーヌも、フロランタンも・・・なんでもピスタチオだ。徹底している。さすがだ。

ショーケースの中は、各種プリンをはじめ、パフェやマカロン、ショコラなどが陳列されている。どれも試してみたい。

プリンが7種類用意できるんだから、ということでジェラートもピスタチオだらけだ。こちらは10種類も用意されていた。もちろん、そのすべてが緑色だ。
濃さが異なる抹茶アイスを提供するお店、というのはときどきある。静岡の「ななや」とか。
でも、ピスタチオでこんなに種類がある、というのは初めて見たし、初めて知った。これは珍しい。

エキサイティングは止らない。
こっちのショーケースは、ピスタチオ縛りという中でシュークリームをはじめとし、モンブランやショートケーキ、チーズケーキと思いつく限りのケーキ類がピスタチオまみれになっていた。圧巻だ。
ジェラートもプリンも気になるが、今僕が食べるべきはこれだろう。家まで遠いので、手土産にするには厳しいし。

というわけで、ピスタチオのシュークリームを食べた。650円、とお値段は高い。
(お皿に「550円」の文字が透けて見えるが、これはテーブルに置いてあるプリンのメニューが見えているだけであり、シュークリームとは関係がない)
旅先、しかも山歩きをしたあとでないとなかなか頼もうとは思えない値段だが、つい手を出してしまった。「自分へのご褒美」という言葉は、なんか墮落している感じがしてあまり使いたくないのだが、下山後って安堵感から懐が緩むのは事実だ。

15:44
国府津駅に向けて戻る。早く家に帰ろう。
子どもの保育園お迎えはパートナーのいしに任せているが、それでも早く家族の顔を見たいので、自然と足が早くなる。
妻子がいても関係なく、自分の趣味を優先させる男性がいる一方で、僕は家族の引力にいつも引き寄せられていて、登山にでかけることに遠慮してしまう。
正面に、今日歩いてきた曽我丘陵が見える。
感心するほど、低くて、なだらかで、心温まる丘だ。あそこを自分が歩いてきた、と思えば余計に愛着が湧く。楽しい山歩きだった。

国府津駅ロータリー。
国府津駅は海が迫る場所にある駅だ。そのせいもあってか、最近新設されたであろう駅前ロータリーは、やたらと細長く苦労して作った跡がある。もう少し丸みを帯びさせたかっただろうに、カバンの中で潰れたパンみたいな形になっている。

駅前ロータリーができたことにより、国道1号線方面から歩いてきた人はロータリーを大きく回り込まないと駅に行けなくなってしまった。ロータリーを突っ切る横断歩道はスペースの都合上、作ってもらえなかったらしい。

国府津駅前。
頻繁に東海道本線が行き交う国府津駅だが、駅前はローカル駅の風情だ。
しかし、不動産情報サイトで賃貸物件を探してみると、このあたりでも1LDK40平米、駅徒歩10分管理費込で月7万円を越えてくる。高いなぁ。やっぱり、湘南ということでちょっと値段が高くなるのだろう。

15:56
改札をくぐって、東京へ。
16時ちょうどの、宇都宮行きで東京に戻る。
11時過ぎに国府津にやってきたばかりなのに、早い。でも、これくらい短時間で終わらせる山歩きは今の僕にはちょうど良かった。万が一に備えた装備がどうたら、などと荷造りに苦労しなくていいし、気が楽だ。
こういう気楽さを積み重ねていき、山歩きをどんどん自分の中で習慣化していきたい。
中高年の中には、毎週のように登山をしている人がザラにいる。面倒ではないのか?計画を立てるだけでもしんどいだろう?と思うが、たぶんそういう人は習慣化していて、山に行くことに肩の力が入っていないのだろう。僕もそうなりたい。毎週行くかどうかはともかく。

家で待つパートナーのために買って帰った、ピスタチオプリン。
いしは大喜びだった。喜んでもらえてなにより。やっぱりピスタチオって美味いよな。値段が高いのが玉にキズだけど。
今度は、幼子も連れて、家族全員で曽我丘陵を歩いてみたいものだ。疲れるような場面はほとんどないし、あれこれ変化がある道だし、最後は相模湾に向かってぐーっと下っていく道がクライマックスだ。きっとみんな、喜んでくれるはずだ。
ただ、このピスタチオの店に行くまでの道のりが徒歩だと長いので、そこだけは嫌がられるとは思うが。
(この項おわり)
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