絶景、されど孤独【白馬岳】

登場人物(1名)
おかでん:今月、日本百名山に登るのこれで4回目なんですけど・・・

2000年09月29日(金) 1日目

[行程]
06:12東京(あさま501号)→08:04長野08:20(川中島バス)→09:20白馬駅09:35→(松本電鉄バス)→10:02猿倉→10:45白馬尻→12:20大雪渓上端→12:50昼食13:17→13:39お花畑避難小屋→14:45村営頂上宿舎→15:00白馬山荘(泊)
[総歩行時間:4時間55分]

おかでんの住む家は、長野方面に行くのであれば大宮から長野新幹線に乗った方が近いところにある。しかし、この日は東京駅で始発電車の出発を待つ姿がそこにあった。

「なぜかって?そりゃ、旅情ですよ、旅情!」

始発電車の出発を、座席に座って今や遅しと待つこの時間。そわそわしながら荷物をあげたり下ろしたり。こういう無駄とも言える時間を費やしながら、「さあこれから旅だぞ」という意識に酔いしれるわけだ。もちろん忘れちゃいけない、ビールとお弁当。

本当であれば、高崎以降の車内で販売される「峠の釜飯」を待とうと思っていたのだが、どうにも我慢ができずに東京駅でチキン弁当なるものを購入。

出発前の体重測定では、過去最低の値を叩き出してしまった。二週間前の北海道遠征で体調を崩して以来、体重が通常時のものに戻らなくなってしまっていた。それはそれでダイエットとして望ましい事だけど、登山中にスタミナ切れとなる事だけは避けたい。だから、「まあ東京駅で弁当を買って、また峠の釜飯を買って食べても許されるだろう」という腹づもりもあった。

乗車して席を確保して身繕いして、さて弁当だ!というのはおかでん的旅情から大いに反するものだ。やっぱり、流れる景色を窓から眺めながらプシュと缶ビールを開けなければ。あれ、いつの間にか「ビール」が手元にあるぞ。不思議だ。

チキン弁当

電車が無事定刻通り発車し、そこそこ速度を上げて「そんじょそこらの通勤電車とは趣旨も行き先も違うんだからナ」と新幹線が本気を出して来た頃、ようやく自分自身に許可をだし、ビール及び先ほどの「チキン弁当」を開封。

・・・これがチキン弁当ですか。ああっ、やっぱり釜飯を待てば良かった!日和見主義で「とりあえず買っておこう」とした僕はチキン野郎だったというのか!?開封するやいなや、激しく後悔してしまった。

いや、弁当屋の名誉のために言っておくと、このチキン弁当がダメダメだったのでは無い。単純に、僕が期待していたものと違っていただけ。こんなケチャップライスみたいなのがつくより、白米の方が良かったなあ、というのと、ご飯と唐揚げだけじゃなくて、もう一品くらいついていても良さそうなもんだろう、というくらいの不満。でもこれで800円(だったかな、正確な金額は失念)は高いと思う。

新幹線ホームの弁当屋は侮ってはイカンという典型例ですな、これは。中身が見えない紙パッケージである上に、値段はコンビニ弁当と比較にならないくらい高いときたもんだ。紙の容器なのは、不燃物を減らすためなのかと思いきや内容器はプラスチックだからそういうワケでもなさそうだ。中身を隠す為・・・ではないと思うが、さてどうだろう。

まあ、どちらにせよ缶ビールをいっぱい。まだ朝6時過ぎだというのにビールを飲んでいるというのは、いかにおかでんとはいえ初体験であり、背徳感満点でなかなかオツなものだった。

「いやあ、お父さんお母さんごめんなさい」

とかなんとか言いながらぐいっとビールをあおるというのは、屈辱的なコトバを浴びせられて、逆に性的興奮を覚えるヒトとあんまり変わらないような気がする。

白馬駅からの眺め

長野駅で白馬行きバスに乗り換え、白馬駅到着。長野駅はバス乗り場が東西両方にあり、その案内板がJR改札近辺には存在しないので焦った。乗り継ぎ時間の余裕があまり無かったからなんだけど、JRももう少し考えて欲しいよなあ。ちなみに、白馬や信濃大町に行くバスは西口3番乗り場。上高地に行くバスは東口にあるので覚えておくと良いかと。

バスに同乗した人は10名程度。みんなザックを背負っているが、殆ど軽装だった。転じておかでんのザックはといえば、相当大きい。自分のパッキングが下手なのか、それとも他の人々が山をナメているのか?

今回のおかでんは、やや緊張感をもって登山に挑もうとしている。山小屋の予約を入れたとき、「山頂付近は夜間早朝に氷点下になり、凍結して危ないので冬山装備で来てください」と言われたのが一番目の理由。冬山など行ったことが無いんですけどー。しかし、弱みを見せては男が廃る、と「ああ、もちろんです」なんて電話口ではさらりと答えた自分は馬鹿だ。

二番目の理由として、先日の羅臼岳登山でへろへろになってしまったこと。自分の体力に不安を抱かずにはいられないでき事だった。今回、単独行で3,000m近い山に登るのだから、どうしても不安になってしまう。

三番目として、登山開始が午前10時過ぎになってしまうという事。これが一番不安にさせられた。登山ガイドでは行程として6時間くらいかかると書かれていたが、順当に行って16時着、ちんたらやっていると17時近くなってしまう。大丈夫か、おい。

結局、白馬駅で下車した乗客は自分を含めて3名。残りは栂池方面にそのまま向かっていった。どうやら、栂池自然園を散策する人たちだったらしい。ちょっと安心。

長野から白馬への道は、長野オリンピックの時に整理された道路であり非常に快適。1時間程度で到着するのでひそかに重宝すると思う。途中、五竜岳~唐松岳がどどぉーんと眼前に広がってくるので、山好きの人なら「おおおおお」とついつい声に出してしまう絶景路線でもあったよ。

猿倉

白馬駅で猿倉行きのバスに乗り換えて、午前10時に猿倉到着。始発のバスが午前5時45分発車で、僕が乗車したのは第二便。シーズンオフの平日ということもあって、この路線は一日四便しかない。

バスは、明らかに登山客仕様となっていた。びっくりしたのは、車掌が居たということ。ごく普通の乗り合いバスで車掌を見たのは、不肖おかでん人生26年間の中で初めてだ。「なんじゃこいつは」と胡散臭い目でその車掌氏を見ていたら、乗車の際にリュックを預かり、一番後部の座席に詰め込んでいた。荷物整理役という事らしい。ちなみに後部のロングシート部分は、シートがかぶせられていて小汚い山男のザックが積み上げられても汚れないようになっていた。

この車掌氏、荷物積み込みを完了させたらなにやら大福帳のようなものを取り出し、「猿倉でよろしいですか?」なんて聞いてきた。アンケートでもやるつもりなのか、とこのシチュエーションにやや動揺しつつも、「え、ええ」と回答したら。「そうだ、そうだろうと思ったよ」という深い肯きとともに、パチンパチンと大福帳の一部に鋏を入れて、こちらに渡してくれた。昔の電車で、車掌さんが乗り越し乗車した時に切符を切ってくれたようなものか。

しかし、お金と引き替えにこの手間暇かけたチケットを手渡すのはいいんだけど、そんな面倒なことしてどうするの、大体このバス会社売上の管理はどうすんのよといらんお世話な事を考えていたら、到着直前になって先ほどもらったばかりのチケットを「回収しまーす」といって取り上げてしまった。何のこっちゃ。やっていることにあんまり意味無いぞ。

ちなみに、白馬駅~猿倉まで27分の道のり。バス料金は980円。いくら登山者相手にほぼ限定されるローカル路線とはいええらく高いなあ、と思っていたがこりゃ人件費が大半を占めているに違いない。ちぇっ、なんか悔しいな悔しいなと思いつつも、代替交通機関が無いんだから言いなりになるしかない。

猿倉から稜線を眺める

猿倉には、山小屋があるくらいで他には何もない場所。温泉があるわけでもなく、電力会社の変電所や発電所があるわけでもない。本当に登山基地としてのバス終着駅という感じだ。

猿倉でバスを降りたのは僕を含めて4名。山道で抜きつ抜かれつというデッドヒートを繰り広げるのは嫌いなので、彼らが準備を整えている間にさっさと出発することにした。なにしろ、もう昼が近い。急がないと。

猿倉から大雪渓の最下部にある白馬尻までの間は林道歩きだった。砂利道をぽっくりぽっくりと歩きながら、じょじょに高度を上げていく。楽な道だ、この調子で山頂まで着けばいいのにねぇなんて気楽な気分で前進だ。山のてっぺんが見えない場所を歩いていると、どうしても考えが甘くなってしまう。

砂防ダム

しかし、ふと横を見るとさりげない砂防ダムがとんでもなく高度差のある滝を作っていたりして、地味に、どさくさに紛れてこの山の険しさをチラリズムで教えてくれた。

白馬尻

快足。標準コースタイム1時間のところを45分で白馬尻に到着。この奥が噂に聞く大雪渓のはずだけど・・・おお、ほんの少しだけ残雪が谷間に見える。

ここには「村営白馬尻荘」「白馬尻小屋」の二つの小屋があるはずなのだが、既に一つの小屋は土台だけ残して跡形も無くなっていた。どうやら、9月上旬にはさっさと撤去してしまったらしい。「建築物」というものをかくもあっさりと撤去できてしまう事実に対しての驚きと、「やっぱり今はシーズンオフだったのか。大丈夫かオイ」という己への不安で、ついつい足が重くなってしまう。

ようこそ大雪渓へ

登山者を暖かく迎えてくれた岩。なんだけど、ちょっと人を小馬鹿にしているように感じてしまったのは僕の感性が腐っているからでしょうか?

まあ、とにかくいい記念になるので、三脚を立ててセルフタイマーで記念撮影。

山小屋横にはビアガーデン風に椅子と机が並べられていて、ここで雪渓を眺めつつ「ああいいですなあ」「自然に囲まれてたまりませんなあ」「では帰りますか」「そうしますか」という雪渓ウォッチャーの為に場所を提供していた。山登りの趣味が無い人、体力が無い人はここまで来て引き返すらしい。確かに、ビールを飲みながらぼんやりと一日、雪渓を眺めるというのは優雅だ。

優雅・・・かもしれないけど、ここの標高は1560m、気温は6.8度。雪渓から吹き下ろす冷気のせいだろうか、めっぽう気温が低い。この季節、ここに下界の服装で長居していたら確実に風邪をひくだろう。

白馬尻から山頂までは5時間近くかかる

一休みをいれてから、再度白馬岳を攻略にかかる。白馬尻小屋から登山道に復帰するところに、方向指示板が設置されていた。

「白馬岳:4時間50分」

うーん、まだまだ先は長そうだ。

とりあえず、本日のメインイベントである大雪渓さんのお世話にならないことには白馬岳攻略ははじまらない。ここから10分先、という方向指示板に従って山道を登った。

白馬大雪渓

ここからが白馬大雪渓。取り付き口にはケルンが立っていた。

ただ、事前情報によるとこの時期の雪渓は雪解けがひどく、ところどころクレバスになっているので登山道としては使わないらしい。雪渓脇に秋道なる迂回ルートがあるので、そちらを使う。

ということで、このケルンから上方を見上げ、秋道を探したのだけどそんなものどこにも見つからない。どこかに道標やペンキがあるだろう、と目を凝らしたのだが、やっぱり見つからない。10分近く逡巡した結果、軽アイゼンを登山靴に装着して雪渓歩きを決行することにした。

初めての雪上歩行。つま先で着地するとてきめんに滑るので、氷面に垂直に足を踏みおろさないといけない。慣れないものだから、ぎくしゃくした歩きになってあまり快適ではない。ついつい、足場を固めたくてつま先を氷にキックしながら歩きたくなってしまうが、そんなことをやったら運の尽き、雪渓が崩壊しないとも限らない。地味に危険だ。

秋のため随分細った大雪渓

下山してくる人が雪渓脇のザレたところを歩いているのを発見し、ようやく探し求めていた秋道を歩くことができた。苦労して装着したアイゼンをまた外して、えっちらおっちら秋道を登る。

しかし、この写真。人が全然いない。白馬大雪渓といえば、人が行列を作って登っているイメージしかない場所だけど、それがうそのように誰もいないんである。大雪渓、独り占め状態。これは相当自己満足を刺激する風景であった。

白馬大雪渓を知らない人は、試しにサーチエンジンで「白馬」「大雪渓」とかのキーワードで調べてみればいい。きっと、デモ行進のように人が隊列を作ってこの雪渓を登っている写真がお目にかかるだろう。それを考えると、この光景はうそのようだ。

雪渓はひび割れている

うそのように人がいないのは「シーズンオフ」というれっきとした理由があるわけで。やはり大雪渓のあちらこちらが崩壊してしまっている。アホな顔をして呑気に雪渓をよじ登っていたら、間違えて写真のようなクレバスに落っこちかねないので注意が必要だ。当然、このクレバス近辺も氷がもろくなっているに違いなく、いつどこで氷がばりっと割れるかわかったものではない。

かといって、頼みの綱の秋道はひどいところだった。山の形にそって頻繁にアップダウンさせられる上に、くるぶしまで潜るくらいのザレたところに無理矢理道を造っている状況。落石させてはまずいので慎重に足を進めなくてはならず、相当疲れてしまった。道理で、秋にしか使われないワケだ。この道が便利だったら、夏でもここを使っているに決まってる。

大きなクレバスを迂回できたので、さっさと雪渓上に戻ることにした。

雪渓上部

雪渓上部になると、傾斜がどんどんきつくなってきた。夏であれば、紅ガラの赤い筋が雪渓上に敷かれ、これを目印に登っていけば問題はない。しかし、秋にもなると紅ガラの痕跡はどこにもなくなってしまい、一体どこを歩けば良いのか判断に困る。

できるだけ楽な方楽な方と右へ左へとジグザグに登っていくのだけど、足下だけ見ていては危険なのがこの雪渓。雪渓の写真で、見にくいとは思うがところどころ黒いゴミみたいなのが見えるのに気づくだろうか。これは、全部落石なのだ。当然この石、こんなところに鎮座すること数十年、なワケないのであり、すなわちこれはつい最近になって上から転がり落ちてきたものであるわけだ。たちが悪い事に、雪渓上の落石は音もなく転がるので、足下を確認しつつ、かといって上の方も気にしつつと鳩みたいに首を上下に振りながら歩かなくてはならない。

大雪渓さんを怒らせると、足下からは急傾斜とクレバスで登山者を悩ませ、上からは落石で悩ませる事になる。できるだけ彼とはうまくやっていかないとイカンということで、子守歌を口ずさんであげることにした。

「眠れぇ~ッ、眠れぇ~ッ、母の胸にぃぃぃぃぃッ」

こんな大声で歌っても恥ずかしくないのは、見渡す限り誰もいないから。いやあ、こんなに絶景のところで、360度全てを独り占めできるのはなんと幸せな事か。

その成果があったのか無かったのか、彼は目を覚まして暴れることもなく何事も起きなかった。

注意:大雪渓は落石が多く大変に危険です。死者が毎年出ている場所ですので、安易に観光ツアーなどで立ち入らないように。また、立ち入るとしても、視界が悪いガスがかかった時は絶対に避けること。雪渓上の落石は音もなく落ちてくるので、視界が悪いと絶対に死にます。

険しい山の隙間に雪渓はある

大雪渓さんの恐怖はもう一つある。霧の中の登山では、間違えて枝の雪渓に紛れ込んでしまうことがあるらしいのだ。写真の雪渓は二号雪渓と言われる場所で、大雪渓から脇にそれたところにある。

こんな急な傾斜を必死によじ登って、後になって「あっ、間違えてた!」と気づいた日にゃ・・・もうあまりの絶望で、黒髪が一気に白髪になってしまいそうだ。ありがたいことに今回は晴れていたので、「こんな道に紛れ込むわけにゃいかねぇ」と薄ら笑いを浮かべながら通過する事ができた。

ゴムで装着できる軽アイゼン

雪渓歩きをする上で用意した、マイ軽アイゼン。1680円だったかな?JR白馬駅前でアイゼンは無料にて借りる事ができるが、せっかくだからと自前のものを調達したのだった。

しかし、このアイゼン、短い四本爪という事もあって実際効果があったのかどうか非常に疑問。もう少しざっくざっくと雪面を捉え、やめんかコラとたしなめるまでは食い付いて離れやしねぇ、というじゃじゃ馬ぶりを期待したのだが。いや、そんなに食い込んでいては一歩一歩が疲れてしまい、実用的ではないというのはよく分かっちゃいるんだけど。でも、カネ払って今回のために軽アイゼンを買ったわけで、そのカネ分の「おおお」という感動というか驚きというか効能ってのをだ、見せて欲しかった。こんな発想をついついしてしまうのは貧乏性だからだろうか?

と言ってるが、実際は十分に効果を発揮していたからこそ雪渓歩きが容易だったのかもしれない。上記文章はおかでんの無知がなせる発言かもしれないので、その節はご容赦。

大雪渓の一番上

さて、12時20分に雪渓上端に到着。1時間10分の雪渓歩き、なかなか楽しゅうございました。雪渓上では休む場所がなかったため、ここでようやく休止。

ふと今まで登ってきたところを振り返って見ると、相当急な傾斜だった事が分かる。雪渓だからこそ、ぐいぐいと直登に近い形で登ってこれたが、普通の山道だったら相当蛇行しなければ登れない急傾斜だ。

まだまだ先が長いことは承知しているものの、ここまでの急斜面を登ったという実績が、一歩一歩山頂に近づいている事を暗黙のうちに教えてくれている。

ここから雪渓を外れるのだが、道とはとても思えないような急斜面をよじ登る羽目になった。大雪渓は季節とともにどんどん縮小していき、夏のシーズン時にはまだここから上部まで雪渓歩きができるらしいのだが、この季節ではもう雪渓が溶けているために砂利道歩きになってしまうらしい。

急傾斜にあえぎながら、休憩予定地の葱平(ねぶかっぴら、と呼ぶ)へ。

ランチ準備

結局葱平がどこにあるかわからなかった。登山地図上では記載されている地名だが、道標等は一切なし。大雪渓上端に位置するらしいのだが・・・。

きりがないので、手元の高度計で2300mの地点を葱平と勝手に決めつけ、昼食にすることにした。

本日の昼食メニュー。カップヌードル(カレー味)、コッペパン、そしてビール。ガスストーブでお湯を沸かし、カップラーメンを作った。

雪渓を見下ろしつつビール

「さあて、行きますかな」

いや、出発しようというのではない。ビールを開封しましょう、という自分に対してのお誘いである。カップラーメンのでき具合を横目で確認しつつ、ビールをぷしゅ。

いやあ、ビールがうまいのだよ、これが。汗をかいた直後だし、大雪渓さんと遊ばせてもらったという達成感もあるし、何より絶景だし。もうこれでビールがまずいわけがない。もし今日ビールを持ってくるのを忘れていたら、きっと絶望のあまり雪渓を滑落していたかもしれない。

冷たいビールに、暖かいカップヌードルがよく合う。なんという黄金的な組み合わせか。今までは、「山にカップ麺を持参するのは軟弱だ、やはり鍋釜持参で棒ラーメン作ってこそ山男の正しい姿だ」なんて思っていたけど、そんなこたぁございませんでした。おかでん大変勘違いをしておりましたです、はい。

万歳!白馬万歳!

日清食品万歳!キリンビール万歳!と、本日の食事を下界に向けて大絶賛。たった一本のビールなんだけど、ちょっと回りが早いようだ。軽く酔ってしまったかもしれない。

万歳をしながら、巷にある万物に対して感謝の意を表明することしきりだったが、遠くから一人が登ってきているのを発見し、急に馬鹿馬鹿しくなってやめた。こんな姿を見られるのは決してダンディではない。

結局、大幅に短縮した行程も、ここでお湯を沸かしたりビールを飲んだり森羅万象に感激してたりしていたために全てがチャラに。27分休憩の13:17分、ようやく重い腰を上げて登山を再開させた。

迫り来る氷の塊

足下の石ころの間を、水が流れていく。ここは登山道なのかそれとも川なのか。後になって地図を確認して分かったが、どうやら初夏までは小雪渓と呼ばれている場所らしい。雪渓が完全に溶けてしまったため、今では水がちょろちょろ流れるだけの岩場になってしまっていたわけだ。

隣には、大崩壊してしまった雪渓の残骸が見える。見るも無惨だが、いずれこの下にある大雪渓さんもこのように崩壊してしまうのだろうか?それとも、崩壊する前にまた冬が来て延命するのだろうか。自然というのはつくづく不思議であり、神秘的なものだ。

いつもなら、「往生際が悪いヤツめ、ならばこの俺様が最後の介錯してくれるわコノコノ」と悪態をついたりするのだが、白馬の山は僕を全く面白くない「普通の人」にさせてしまっている。うむ、不調だ。

秋なので雪渓はあちこちが崩壊している

と、ここまで書き進んでいたのだが、読んでいる人は異変に気づいただろうか。今までこのコーナーは会話形式が主体だったのに、今回は単なる紀行文スタイルになってしまっている。なぜだ、と。

遅まきながらの回答だが、実はここから先写真が存在しないのだ。デジカメ、故障!お花畑避難小屋に到着して、ますます絶景に磨きをかけている風景を撮影しようとしたところ、デジカメが言うことを聞かなくなってしまった次第。

前兆として、北海道遠征時から「液晶画面が乱れてハングアップする事がある」といった事象は出ていたのだが、さすがにこの過酷な気象条件に耐えられなかったのか、それとも大雪渓さんの呪いにやられてしまったのか。バッテリが冷えて性能が低下したのかと思い、真心込めて自分の胸で暖めてあげたが、回復せず。愛情が空回りしてしまった。ああ、現実は理想を越えられないのか。くわっ。

ということで、写真による状況報告が今回はできなくなってしまったので、文章でそれを補おうというワケだ。くどい?申し訳ない。登山の紀行なのに、何で山頂の写真が無いんだ、という意見は全くもって正しい。しかし、一番悔しかったのは当然このおかでん自身であり、その時の落胆は本当に筆舌に尽くしがたい。

この屈辱、忘れずにはおれまいとカメラの代わりにメモとペンを手にし、この状況を克明に記録することにした。このページに書かれている文章は、そのときの酒気・・・もとい、手記を元にしている。

左手には、見るも恐ろしい杓子岳の絶景がこちらを見下ろしている。「なぜこの絶景を撮影せんのか、お前はそれでいいのか」と不満そうだ。がらがらと落石する音をたててこちらの注意を惹こうとする。しかし、そんなこと言われたって、無い袖は振れぬってヤツで・・・。

登れば登った分だけ、絶景になる。秩父あたりの山における絶景度合いとは全然違うので、うれしくなってしまう。が、うれしくなればなるほどカメラ故障が恨めしくなってしまい、このギャップに直立不動で悶絶してしまった。「ええい、どうせならこれ以上絶景にならなければいいのに」。・・・ちょっと待った、何のために山に登ってるのですか、あんたは。

さすがに稜線に出る手前になると数歩歩いては休んで、の繰り返しになってきた。己の体力の無さが露呈してしまった感じで、ちくしょうちくしょうと特に対象を定めたわけではない悪口を連発しながら一歩一歩登る。

村営頂上宿舎直下は、既に雪が積もっていた。まさか、9月で雪を見ることができるとは思わなかった。よくニュースで「富士山に初冠雪がありました」なんて風物詩の報道がされているが、ありゃ富士山という日本一のお山だからこそ早く雪が降るんであって、それ以外の山や里じゃはるか先に違いない、という意識があった。だから、この雪はちょっと感動。先ほどの雪渓とは違い、積もった雪は半分ぬかるんでいたので足下をやや滑らせながら登る。

「頂上宿舎」という名前の山小屋からさらに20分ほど登ったところにあるのが、本日のお宿「白馬山荘」。なんだよ頂上ではないではないか、しかもより頂上に近いところにもう一軒山小屋あるじゃないか、という突っ込みを大いにしたくもなるが、それは言ってはいけないお約束だ。

徒歩20分の距離にありながら、頂上宿舎から仰ぎ見る白馬山荘は異様にデカい。物流倉庫でも作ったのかと疑いたくなるくらい、デカい。この地で見てそれだけデカいのだから、実際間近で見るとどうしようもなくデカいのだろう。

普通、山小屋というのはそんなに大きいものではない。山の中という限られた立地条件のもとに作っているから、大きくしようにもできないというのが一つだし、無理してデカくしたところで一年を通じてお客さんがわいわいくるわけでもなく、無駄でもあるし。でも、サイズは大きくない割には「収容人数150人」とかキャパはえらく大きめに設定されていて、馬鹿正直にこの人数を押し込むと室内が地獄絵図になってしまう。

山小屋で言う収容人数とは、人間を限界ぎりぎりまで押し込んでみてどこまで入ったか、という数字を指すものであり、早い話電話ボックスに人をどれだけ詰め込めるか、というギネスブックみたいなものなのである。山小屋を設計するときは、床の強度を最高に高めておかないと底が抜けてしまうので注意だ。

山について詳しくない人のために説明をさらに補足しておこう。山小屋というのは基本的に予約無しでも宿泊はできる(中には要予約の場所もあるし、そうでなくても事前予約が望ましい)。「定員オーバーです、お泊めできません」なんて登山者を追い返すなんて事はできないからだ。そんな事をやっていたら路頭に迷った登山者が遭難してしまう。だから、「定員」なんてのはあってないようなモノで、小屋の玄関をくぐった人の数だけが宿泊者数となってしまうのが現実。床面積からくる物理的限界?いや、そんなものは根性と譲り合いの精神でなんとか乗り切る。それが山。

さて、本日のお宿白馬山荘の収容人数はというと・・・これが、1500人なのだ。信じられますか?デカいサイズに見合うだけの尋常ならざる収容人数。桁が一つ、違う。当然、日本一の山小屋だ。人里にあるホテルや旅館と比較したって、こんなにデカい施設はそれほど多くはない。そんなものが、忽然と白馬岳山頂直下に現れているのだ。異様としかいいようがない。

呆れるのは、これだけのキャパを持っていながら、ハイシーズンになると「六畳一間の部屋に24人が寝た(=一畳あたり4人)」なんて話がばんばん聞かれるという事。苦役を強いられていた網走監獄の受刑者だって、もう少しまともな状況で寝泊まりできたはずだぞ。また、こういう山小屋残酷物語を語る人というのは「いやぁまいっちゃったよ」とか言いながら「格好のネタが手に入った」とばかりに嬉々として語る。登山愛好者というのは変態の気があるのかもしれない。

慣れた場所以外で寝るのは苦手、というおかでんとしてはこういう人間すし詰め梱包出荷待ち状態での一夜は精神を著しく疲弊させそうだった。だから宿泊予約を入れた時に「混雑状況はどうですか?」と電話で聞いてみたのだが、即座に「ああ、大丈夫です空いています」と回答してくれた。すし詰め体験という怖いモノ見たさという気持ちが心のどこかにあるのは事実だったが、危機を回避できてホッとした方が強かった。

午後3時ちょうど、白馬山荘到着。6時間の行程予定が4時間55分で到着できたのだから、悪くない値だ。歩いては休み、休んでは歩きを繰り返した時に己の体力の無さを呪ったが、どうやらそんなに悲観するレベルではなかったらしい。

受付を済ませ、指定された部屋に向かう。さて、これだけ登山者が少ないんだから、ひょっとしたら個室独占状態だったりしてムフフフと一人妄想たくましくしながら入室。

とまあ、こういう前振りをすることから結論は読めると思うが、部屋には既に5名の先客が。8畳一間で5名。自分を入れて6名。受付から部屋に向かう廊下での数十秒間の願望はあっけなく崩壊であった。単に僕の到着が遅かっただけで、本当は今日の登山客は早い時間帯に腐るほど居た、という事だったのか?不覚!

あぜんとしているうちに、さらに二人追加。ついに一人一畳になってしまった。いや待て、部屋の片隅は布団が山積みになっていて一畳分くらい居住空間が狭くなっている。と言うことは、一人一畳以下か。そんな馬鹿な。いくらなんでもこれは人が多すぎる。どうやら、使用する部屋数を少なくするために端からどんどん部屋に押し込んでいっているようだ。

暗鬱としながら枕の数を数えてみると、この部屋には24個配備されていた。一畳あたり3人までは許容範囲、という事なのだろう。

【その時のおかでん手記】

15:20もう一人追加、なんと8人部屋いっぱいだ。一人一畳か。これ以上増えませんように・・・。
ちなみにこの部屋、全員50歳前後。うばすて山かここは。若い人はおらんのかなあ。目の前でシャツを着替えてブラ丸出しにして恥を思わないようなヤツはもうババアと読んで差し支えあるまい。この部屋のまくらは24個、一畳3人か・・・はあ・・・。

これは、脚色全くなしで原文そのままのリアルタイム手記だ。あてがわれた部屋の中で、今の心境をつらつらとメモに書き留めていたのだが、狭い部屋に対する不安とイラダチから同室の人に対していわれのない毒舌を吐きだす始末。慣れない山小屋泊なので、ついつい至近距離にいる人に対して刺々しい視線を送ってしまった。申し訳ない、まだまだ未熟者だ。

部屋にいてもすることがないので、外に出ることにした。白馬岳山頂までここから徒歩20分だが、どうせ明朝に登る事だし大事に取っておこう。サンダルを履いて山荘近辺をうろついてみる。

それにしても、やはり山荘はデカかった。端から端までの距離が優に200mはあるだろう。いや、300mくらいはあるかもしれない。それくらい、細長い。さすが1500人収容・・・なのだが、1号館と呼ばれる建物は閉鎖されていて、宿泊ができないようになっていた。秋風が吹き抜けるやいなや、シーズンオフということでさっさと店じまいしてしまったのだろう。道理で、今自分が泊まっているところに人がぎゅうぎゅう詰めにされているわけだ。

あと、「スカイレストラン」も閉鎖されていた。この山小屋、レストランを併設していてコーヒーや軽食は当然のこと、生ビールやらワインやら熱燗やらおでんやら、といった居酒屋メニューまで提供しているから呆れる。シーズン中は夕食後、ここで熱燗をきゅっとひっかけて・・・なんて話を聞く。絶景を肴に熱燗!こりゃたまらん、絶対にチャレンジせねばとひそかに・・・ではなく露骨にやる気満々だった。だが、残念極まりない事に5日前に今シーズンの営業を終了し、翌初夏まで営業中止になっていた。無念。逃げたなァ!卑怯者ォ!

山に人がいないタイミングを見計らって登ると、快適な山行を楽しめる。しかし、交通の便がすこぶる悪くなったり、このスカイレストランのような「お楽しみ」が空振りになってしまったり、とよろしくない事も多い。どっちを取るべきか?本当に悩ましい限りだ。

スカイレストランの裏手で、使用済みの生ビール樽をサーバーから取り外している店員がいた。あと一週間早ければ、あの中に入っていた生ビールは根こそぎ自分の胃袋に収まっていたのに、と未練たらたらでその作業風景を眺め続けてしまった。

なに、生でなくても缶があるさ、と自動販売機で缶ビールを購入することにした。500ml缶で800円。下界の2.6倍の値段。「ビールはその値段の約半分が酒税です」と言うが、この高地における酒税は、売値の6分の1に過ぎない。異常な値段だが、こういうのは需要と供給によって成り立っているから仕方がない。このおかでんのように、値段に不満だったら不買運動すればいいじゃないかと思いつつもついつい買ってしまう、軟弱者がいる限りは安くはならないだろう。同士よ、すまん。僕はまた弱い意志に負けてしまった。

室内でビールを飲むのは陰気くさいので、外に出て絶景を見ながらぐいーっとやることにした。これぞ、一日の登山を成し遂げたもののみに与えられた特権。高いところに登れば登るほど、絶景になってビールが旨い。はず、だったのだけどそういえば登れば登るほど気温が下がるんだっけ。体が冷え切ってしまい、とてもじゃないがビールなんて飲める状態ではなくなってしまった。「また今度にしてやらぁ!」とわけのわからない捨てぜりふを残し、あわてて山小屋に戻ってしまった。気温は9度。9度ってこんなに寒かったか?

山小屋の中に退却したものの、この絶景を見過ごすのは大罪を犯すと同等、と思ったので売店で使い捨てカメラを物色。山の上にある売店の割には品そろえが多そうだったので、ひょっとしたらカメラくらい売っていると踏んでの事。

・・・数分後・・・

いやー、気がついたら雷鳥ぬいぐるみキーホルダーと、絵はがき買ってしまってましたァ!カメラ?いや、カメラのカの字も見あたらなかった。売られているのは、ノベルティグッズだらけ。何が悲しくて、2800m近い山の上で雷鳥ぬいぐるみなんて買わなくてはならんのか自分自身不思議でしょうがない。しかし、カメラが売られていなかったという絶望感と虚脱感から、ついつい目の前にあった愛らしい物体に手が行ってしまったんです、本当です信じてください刑事さん!

山登っているのに荷物を増やしてどうするんだ、こんなもの下界に降りたら半額くらいで買えるのではないか、という自戒の念から、己を折檻するためにまたもやビールを持って外に飛び出した。寒い?罰だ、弱い自己に対する罰と思え!

無理矢理、ビールを飲んでみる。一口飲むたびに体温が下がる、そんな感じ。寒い、寒すぎる。寒すぎるということは、即ちビールがおいしくないという事だ。おいしくないということはまずいというわけであり、こんな状況では空しいげっぷが出るだけで全然酔わない。これでは何のためにビールを飲んでいるのだかさっぱりわかりゃしない。

しかし、眺めは本当に最高だった。真っ正面には立山と剣岳が「どうだコラ」と頼みもしないのに威張っている。そして、はるか南には槍ヶ岳の尖った頂上が。見事としか言いようがない。寒い中ビールを飲むのは拷問だが、これだけの絶景を写真に収められないというのもかなりの拷問だ。がたがた震えながら、「絶景だ!絶景だ!」とつぶやきつつ右を見たり左を見たり。端から見ると、ちょっと頭おかしい人に見えたかもしれない。

15分、たっぷりと北アルプスの風景を満喫(=寒さに耐える拷問)した後、もう十分だろうという神の啓示を受けた(=ガマン大会はもう限界)ため、小走りで山小屋に逆戻り。ストーブがある部屋でがたがた震えながら暖を採った。

この部屋、テレビが置いてあって、ちょうどシドニー五輪を放送していた。女子陸上とシンクロナイズドスイミングが行われていたが、ぼんやりとテレビを見ていたら一体ここがどこなのか、わからなくなった。山の上とはとても思えない。

が、体のふるえが取れるまで10分を要したということは内緒だ。そんなに体が冷え切っていたのか!体調を崩さなくて良かった・・・。

夕食の時間は、18:00~18:45の間と決められている。さすがは山小屋だ、たったの45分しか食堂が開いていない。まあ、確かに「まずはおビールでよろしいですか?」と仲居さんが水を向けてきたり、「この後でき立ての天ぷらをお持ちしますので」と次から次へと料理が出てくるわけじゃないから、この程度で十分なのだろう。ただ、食堂の席数は100程度しかないため、ハイシーズンになると総入れ替え式で何回転かするようだ。だから、早く山小屋に着いた人は必然的に夕食の時間も前倒しになってしまい、食事が17時過ぎ、なんてこともあるらしい。幸い、今日はオフシーズンなので、1回転で完結となる。

さて、お楽しみ夕食の献立。

メインディッシュ:トンカツ(付け合わせに皮むき茄子、ナポリタン、なます、柴漬け) 小鉢:きんぴら牛蒡。
デザート:すりおろしりんごとヨーグルトのゼリー(既製品)
ご飯、みそ汁(長ネギと油揚げ)

ご飯とみそ汁は各テーブルにおひつと寸胴が用意されていて、好きなだけ自分の茶碗に盛りつけるようになっている。それにしても、山の中でトンカツという油ものに出会えるとは思っていなかった。大満足。満足ついでに、ついついご飯とおみそ汁をお代わりしてしまった。食べ過ぎて激しく後悔。

(満足+後悔)÷2=凡庸。

あれれっ?

食堂では見知らぬ人たちとテーブルを囲むため、またもや僕の人間不信が爆発。この時の手記は、さすがにしゃれにならない毒舌だったので、そのまんま転載するのはやめて一部削除の上お届けする。

それにしても、本当に[削除] だ。20、30代の若手は1割もいない。女性は相当多く3~4割いるのだが、全員40代以上。若い女性というのが本当に居ない。まあ、しょうがないといえばしょうがないのだが・・・。中には半分[削除] がいた。こういう奴が遭難するのかねえ?男は結構単独行が多い。しかし、いい年こいて一人で山に登るような奴だから[削除] な感じの人が多いような気がする。なんかオレ的に[削除] というか、[削除] というか。

これだけ削除しなくてはならんくらい、陰険な文章を書き倒している。一人称が「僕」から「オレ」に切り替わっているくらいだ。きっと、一人で静かに山に登って「ああ自然って素敵だなあ、人間ってちっぽけな存在だなあ」と大自然を満喫していたのに、山小屋でわいわいがやがや、団体登山客が盛り上がっているのを目の当たりにして苛立ってしまったのだろう。

これから先の手記は、談話室の片隅で目の前のでき事をリアルタイム記述するようになっている。引き続いて手記からの転載だ。

1階に、通路を挟んで二部屋にまたがる8人の団体がやってきた。全員オッちゃん。到着が17時過ぎと遅かったのだが、わーわーとやかましいったらありゃしない。何事かと思って覗いてみると、あーあ、早速部屋でビールを開け、つまみを食っている。なんか見苦しい。

この8人、メシ時になっても食堂に現れず、ほぼ閉店時間になって登場。相変わらずビールを手放さないのはまあいいとして、部屋からタラ珍味やらバーナーであぶったとみられるめざしやらを食堂に持ち込んでいるではないか。よくやるよ、まったく。

で、案の定メシ時間が終わっているというのに、宴会が続いている。やっぱり見苦しい。・・・と思っていたら、メシ時間終了と共に食堂を追い出されたようだ。(ひょっとして自主的?だとするとまあ許せるが)
いや、前言撤回。やっぱりこの人達追い出されたようだ、知性が欠けたような顔をした奴らが大声でわあわあいいながら談話室にやってきたぞ。

TVをずっと見ていると、一体ここはどこだという気になる。TVは北陸地方のニュースをやっている。そうか、この山小屋は富山県側に建っているのだなと初めて気づいた。

メシ食べてすぐ寝ると、夜目が冴えて困るのでしばらく起きていることにした。また、さっき散々お茶を飲んだので、トイレを済ませてから寝たい。なにしろ、寝る場所は部屋の一番奥。ぎゅうぎゅう詰めになっているので、夜中トイレに行くと絶対に人を踏むに決まってる。それは避けたい。

だけど、相部屋の7人はもう既に寝ているかも知れない。そろそろ部屋に戻らないと。あー、それにしてもスカイレストランが開いてないのは残念!熱燗でもくいっと飲んでスカッと寝る事ができればいいのに。多分、今晩は周りの人が気になって寝られないのと、腰痛で夜中目が覚めるのと、の両方をお見舞いされるに決まってる。さあ、覚悟決めなくちゃ。

19:07 談話室を去る。

トイレを済ませて部屋に戻ってみると人が居ない。3人分しか布団が敷かれていない。「なんだ、まだ足下十分」ときびすを返し、外を見に行く。

外は、風がおさまって暖かく感じる。昼よりも楽だ。

星が、星がすごい!天の川が100%さらけ出しているし、飛行機や人工衛星の明かりもよく見える。あー、こんなすごい星を見るのは初めてだ。さすが2800mの高地。

遠くには、白馬の街の明かりが見える。蛍光灯の白色ではなく、橙の明かりなのでとても暖かそうだ。

隣にいたおばちゃんと、星の話をいくつかするが、間違えて金星を「北極星だ」と教えてしまっていた。おばちゃん、ごめん。道理で北斗七星がどこにもないと思ったよ。60度もずれたところに、後で北極星を発見したよ。ぐへっ。

部屋に戻ってみると、やっぱり3枚しか布団がない。いや?荷物もないぞ。同じ部屋の人に聞いてみたら、別の部屋に移ることができたらしい<5人組

まあそうだよなあ、いくらキャパを絞ったとはいえ、100人足らずの宿泊で8人をタコ詰めすることはないよなあ。安心。

安心するやいなや、「よし夜中のトイレは気にせずともよい」と思い立ち、談話室に戻りいつの間にか買い求めていたビール500mlをぐいっ。

ああ、至福・・・じゃなくって。もういいよ、ビールは。飲み過ぎだってば。あと、せっかく体重が減ったんだからもう少し食生活考えろよなあ。明日朝は体重大増量の予感。まあ、計測器が無いから測りようがないのだが。 でも今時点で、腹がぱんぱんなのだ、嗚呼!

明日朝は05:30の朝食。これだと07:00以前に出発できそうだ。標準コースタイムが5時間50分で下山となっているので、まあ途中メシ時間で40分くらいかかることを見込んで、コースタイム通り15時下山といったところか。

手記の割にはえらく長文だ。これ、web掲載用に相当加筆しているんじゃないかと思われるかもしれないが、そんなことはしていない。メモ帳に書かれている内容をそのまま転記しただけだ。今振り返ってみると、よくもまあこんな事をつらつらと書けたもんだ。

頃合いを見計らって、20時半就寝。