山小屋で抱いた殺意【悪沢岳~赤石岳縦走】

登場人物(2名)
おかでん:分刻みのプランを立て、いつも焦っている人。
おかでん兄:企画立案は全部おかでん任せのナイスガイ。

2001年07月19日(木) 1日目

商業用バンに乗って静岡の山奥までやってきた

今回は南アルプス南部への遠征。海の日をからめた連休は、一年で山がもっとも混む日となっている。梅雨明けで気候が安定している上に連休が確保できるとなれば、老若男女誰もが山まっしぐら、なのは仕方があるまい。ということで、今回の山行は「せっかくの連休でないと行けない山を目指す」と同時に「登山者激混みで山小屋就寝スペースお一人様1/3畳」とかいう悲惨な状態にならない山域を探すという命題があった。で、いろいろ紛糾しながら検討した結果、セレクトしたのが悪沢岳(荒川東岳)、赤石岳というわけだ。

両方とも「日本百名山」と呼ばれる山。百名山ブームといわれている中で、なぜこの山域は人の数が少ないのか・・・それはおいおい紹介していこう。

畑薙第一ダム

全てのスタートは、ここ「畑薙第一ダム」からとなる。大井川鉄道の終点からさらに上流に行った場所と説明すれば、何となくイメージできるだろうか。ここまでくるのに、静岡駅からバスで3時間。当然、便数は殆ど無い(ハイシーズンでも1日3便)ので時刻表とにらめっこしなければならない。

えっ、「南アルプス」って静岡県にあるの?だって?あるんです、これが。アルプス=長野県ではない。南アルプスの場合、北はJR中央本線小淵沢の近くにある甲斐駒ヶ岳から端を発し、南は静岡県までずずずいと伸びているワケですな。

東京方面から参戦の僕らは、あまりに公共交通機関の時間が悪かったので、レンタカーを借りて畑薙第一ダムまで転がしてきた。登山中はレンタカーを丸二日も放置することになってレンタル代がもったいないのだが、それすら気にならないくらいここは交通の便が悪い。

ダム湖畔のバス乗り場

朝7時半、畑薙第一ダム到着。荷物をまとめて、まったりとする。東京を出てから、早5時間が経過。この時点ですでにお疲れ気味。

で、ここから登山開始・・・ではないのが、南アルプスの奥の深さなんである。ここからは、「東海パルプ」の私有地に入るため、東海パルプ社の森林を管理運用している「東海フォレスト」の送迎バスに乗らなければならないのだった。

東海フォレストは、赤石岳界隈の山小屋を静岡県から委託され、一手に管理している。で、ここの送迎バスに乗るためには、東海フォレストが管理している山小屋に二食付きで最低一泊、宿泊する事が条件となる。ではテント持参で自炊という人はどうなるか。ここから先は自分の足で歩きましょう、というわけ。徒歩で約6時間、これは事実上バスに乗るしかない。

この送迎バス、別にお客様サービス精神旺盛でやっている代物ではない。だから、夏山シーズン到来!登山客殺到!となっても「随時運行」なんて気の利いたことはやってくれない。1日6便、男なら黙ってバスを待て。

「なんだ、1日6便もあれば十分じゃないか」という声があるかもしれない。「山に行くのにぜいたく言ってはイカン」とオコラれるかもしれない。確かにそうだ。でも、われわれはこのバスの終着点に行くのが目的なんじゃない。終着点のさわら島からさらに奥にある山小屋まで前進しようとすれば、6便のうち役に立つ便というのは限られてしまう。たとえば、われわれが今日目指す千枚小屋に行こうとすれば、朝8時10分の始発便に乗るしか手がない。

バスが来るまでベンチで待機

東海フォレストのバスがやってくるまでの間、待合いベンチで朝食。

しばらくしたら、バスがやってきた。乗車する時に、今日の宿泊場所を聞かれた上で4000円の「クーポン券」を購入させられた。バス乗車券の代わりとなるものだが、この券を山小屋に見せると4000円分の割引になるという。つまりバス代は実質無料。山小屋に泊まらないなら、バス代4,000円ということになる。

運転手は頻繁にどこかと無線交信している。登山客の数と、それぞれの山小屋での宿泊者の数を報告していた。遭難防止のための情報収集と同時に、山小屋の宿泊準備にも使うのだろう。

ここから約1時間のバス旅。ダートロードで、バスの最後尾に座っていたわれわれはあまりの激震に右へごろごろ左へごろごろ。こりゃ、確かに一般車は立ち入りできんわ。バスのサスペンションがみしみし悲鳴をあげている。おい、大丈夫か?

さて、いくら「送迎バス」だからといって、今晩お泊まりの宿の前までご案内~というわけでは当然ない。

さわら島

到着したのは、畑薙第一ダムからさらに1時間山奥に入った「さわら島」という場所。ここが本当の登山基地だ。

もともと、東海パルプの伐採基地だったところを登山用にも解放しているらしく、山の中とは思えない開放的な雰囲気の中、施設があちこちに点在している。

ザックを確認してみたら、背中に刺していた飲料水用のペットボトルが行方不明になっていた。どうやら、送迎バスの激震に驚いて、どこかに雲隠れしてしまったらしい。

さわら島で急きょ水分購入

水がないと登山にならないので弱り果てていたら、そこはさすがにさわら島。ジュースの自動販売機があった。ペットボトル3本購入。

兄 「待て、4本あるぞ?この左端の色の濃いのは何だ?」
おかでん 「・・・ウィスキー」
兄 「けっ、そんなのだけは絶対に落とさないんだな!」

さわら島ロッジは別世界の避暑地

さわら島はもの凄く居心地の良い空間だった。

テントを張るスペースもあるし、食堂もあるし(写真奥の建物)、避暑をかねてキャンプをするのもいいなあ・・・と思わせる、そんな場所。

っとっとっと、山小屋で一泊二食しないと、送迎バスに乗れないんだっけ。

結局、このあたりの山に登る場合

山が深いので最低1泊(通常2泊以上)しないといけない

天幕で寝泊まりするのも良いのだが、そうすると送迎バスに乗る資格が与えられない。これは致命的

結局、登山者のほぼ全員が山小屋泊という事態になってしまう

要所要所の山小屋、激混み

うわぁぁぁぁ

となってしまうのであった。東海フォレスト、丸もうけじゃん!などと妬みで悪口も言いたくなるが、山小屋の維持管理は非常に大変であること、また東海フォレストの山小屋は総じて評判が高いということで文句はいいっこ無しということで。

生ビールを売っている売店

めざとく、生ビールを売っている売店を発見。

下山時には、ここで生ビールをきゅきゅきゅーっとキメる事にしよう。うひひ。

兄弟で作戦会議中

登山を前に、作戦の再確認。そう、今回はちゃんと「作戦」があるんですよ。これ考えるのに苦労したです。

今回の登山のポイントは、

①登山客の多くが、悪沢岳→赤石岳の順で縦走し、さわら島に戻ってくる円型のルートを辿る。

②さわら島から悪沢岳方面に向かった場合、徒歩約7時間先にある「千枚小屋」にほぼ全員の登山者が宿泊する事になる。その結果、千枚小屋は南アルプスの中でもっとも混む山小屋とさえ言われている。

③標準コースタイムが7時間であることを考えると、千枚小屋泊にするためには前日さわら島ロッジにて一泊するか、当日早朝にさわら島に到着しなければならない。

④今日は連休初日。前日からさわら島ロッジに泊まり込んでいる人はそれほど多くないはずで、なおかつ「早朝にさわら島到着」するためには、公共交通機関である静岡駅からのバスに乗ってくる方法では無理。

⑤しかしわれわれは、敢えてレンタカーを借りて「早朝にさわら島到着」することができた。今日中に千枚小屋に到着することができる。ということは、いつも混雑する千枚小屋であっても、比較的宿泊者数が少なく快適に過ごせる可能性が高い。

⑥で、翌日は連休二日目ということでこの山にもたくさん登山客が跋扈しているはずだが、われわれは比較的混雑が少ない「赤石小屋」に宿泊し、2日ともども快適な夜を過ごす。つまり、多くの登山客が歩む行程を1日前倒しで闊歩し、人の少ない山、人の少ない山小屋を楽しむ。がははは。

・・・というシナリオだ。さあて、吉と出るか凶と出るか。

さわら島を出発

標高1100m、さわら島を午前9時半に出発。

暑いので二人とも短パン。これから3000mの山を目指すとは思えない格好だ。

標準コースタイム通りに歩いた場合、本日のお宿千枚小屋への到着は16時半。山小屋泊であることを考えると、ちょっと遅すぎる時間だ。(山小屋の場合、どんなに遅くとも16時までには到着するべき。プランを立てる段階では15時着を目処にした方がいいくらいだ)

まあ、二人とも体力はある方なので、中高年を想定した標準コースタイムよりかは短縮できるでしょう。マターリ登るべ。

ここから山道、わかりやすい矢印あり

歩き始めて15分のところで、林道から登山道への分岐点を発見。ここから山道に入る。

でっかい矢印が、有無をいわさず登山者を吸い寄せる。

吊り橋を渡って本格的な登山開始

登山道のスタートはこの吊り橋から。

基本的に高所恐怖症の人は山には登れない。って、当たり前か。

さすが南アルプス。岩肌ごつごつの北アルプスとは全然違う。まるでこれから裏山にトレッキングに行くような感じの深い緑だ。

一本入れているところ

1時間ほど歩いたところで、とりあえず休憩。

地図を見ながら、現在地点を特定させる。なかなか良いペースのようだ。

自動販売機で買った水を飲む。「カネを払って買った水」ということで、ちびちびと飲む貧乏人。

白樺の中を歩く

基本的に道は尾根の上を進んでいく。だらだらと登っていき、特にバテるということはない。展望も特にないことから、おもしろみの無い道とも言えるわけだが・・・。でも、この「足慣らし」的なだらだら登り道は、これからの2泊3日の行程を考えると都合がいい。足腰が徐々に登山モードに切り替わっていくのが分かる。

展望が無いとはいえ、明るい尾根道なので気持ちは良い。しかし、時々思い出したかのように林道を横切りやがるので、一気に興ざめしてしまうのは惜しい。

でも、考えてみれば当然だよな。ここら辺はパルプ材切り出しのための山林なんだから、伐採用の林道があちこちにあって当然。私有林の中を「遊ばせてもらってる」のに文句を言ってはいかん、ということか。

しばらくすると、林道を横切るだけでなく、林道沿いに歩く事にもなったりした。うーん、やっぱり興ざめだ。

林道=麓に近いところにある=あんまり登っていない というイメージがどうしてもあるので、歩き始めて2時間以上経つのにまだすぐ側に林道があると、悔しいやらやる気が出ないやら。

こんな顔して登山中

黙々と登る。

「清水平」という、水場にて昼飯休憩をしようとしたのだが近辺には登山客がわらわらと居たため、休憩を断念。先に進むことにした。

この登山客、恐らく前日はさわら島ロッジに泊なのだろう。朝早く出た連中に追いついた事になる。

己の健脚を喜んでもいられない。ここに居る人は、全員100%、この先の千枚小屋に宿泊する事になるからだ。他に泊まる事ができる山小屋はない。

・・・早く行かないと。あんまり遅くに到着したら、寝る場所が無くて難儀するかもしれぬ。

悪沢岳

歩き始めて2時間半くらいが経った頃だろうか、見晴台と呼ばれる場所に着いた。ここで、ようやく目標地点の一つである悪沢岳が見えてきた。

今日はあそこまでは行かない。もう少し手前の千枚小屋だ。ここからはその姿を伺う事ができない。

このはるか左側に赤石岳が見えるはずなのだけど、雲行きが怪しくて山頂を拝むことはできなかった。

見晴らしがいいことだし、ここでお昼ご飯にする。

おむすび3個のお昼ご飯

僕はコンビニのおむすび3個。うむ、炭水化物摂取なんである。山屋なら、バーナーでお湯を沸かしてラーメンとかコーヒーとか作れぇ、と言われそうだが・・・すまん、そこまで気が回らなかった。

助六寿司を食べる兄貴

一方、兄貴の昼ご飯。

この男は、決まって巻きずしとかいなり寿司を食べる。酢でしめてあるので、暑い時でも痛まないという生活の知恵だ。確かに正解。

ひぃひぃ言って山登って、腹減ったーと弁当を開いてみたら腐って食べられず、だったらそのあまりのがっかり感に精神的遭難してしまいそうだ。それに、登山は肉体が資本。栄養補充できずにふらふらになって崖から落ちて人生あばよ、っていうのも激しくあり得る話であり、その滑落理由が腐った昼飯を食べられずにシャリバテ、っていうんだったら恥ずかしくてお葬式だってあげられやしねぇ。

ランチ風景

ランチ風景。

オートキャンプ派な方、この姿を見てどう思いますか。「せっかく大自然を満喫しにきたんだから、ちゃんとテーブルしつらえて、料理もバーベキューなんてして、ゆっくりと過ごせばいいのに」とか言いそうだけど。

ふざけろーっ。

そんな事、山の中でできるかぁ。山の中だと、1gでも荷物を軽量化せにゃならんのよ。車で移動するキャンパーにはこの苦労がわかるまい。

ということで、今回はテント泊を諦めて山小屋泊にしたんで、非常に荷が軽いんですけどね。・・・と最後の最後になって軟弱な事を言ってしまったりする。うぐぅ。

東海フォレストの看板

さすが東海フォレストの管理する林だけあって、きっちりと管理されとります。管理されるついでに、登山客に「東海フォレスト」をPRする看板を立ててみたりなんかして。

古い伐根と樹木
この附近一体の苔に包まれた古い伐根は明治40年から43年に伐採された伐根で附近にある現在の樹木は伐採当時生えていた稚樹およびその後時勢し大きくなったものです

・・・だそうで。わざわざ看板作るほどの内容では無い気がするのだが、植林マニアとかからみれば貴重な情報なのだろうか?

小雨の中、登山は続く

遂に雨が降ってきた。レインウェアを身にまとう。

小雨の中、行軍は続くよどこまでも。延々と続く尾根道を歩く。おや、先にも登山者がいるようで・・・また、ここで人数をカウント。

千枚小屋のキャパシティは80名。今日は既に40名近くの団体予約が入っている事は、東海フォレストのwebで判明していた(10名以上の団体は要予約、それ以下は予約不要)。ええと・・・

ううむ、さっき追い抜いた人たちをカウントすると、どうも80名は越えてしまいそうな予感が・・・

ここでぎゅうぎゅう詰めにされたら、そもそも今回の「綿密」な旅のプランが無意味になってしまうような。やばい。兄貴には「今回のプランは我ながら完璧」とか言ってたのに。

山深いのに、ワイヤーが。

なおも歩いていくと、いきなり道の脇に「頭上注意」という看板があった。登山道といえば「足下注意」が定番なのに、頭上とはこれいかに・・・

あら?

ワイヤーロープが張ってあった。どうやら荷物輸送のゴンドラらしい。近くの林道から伸びている。目指すは・・・あったあった、谷一つ越えた向こうに忽然と見える、千枚小屋。今日の目的地だ。

ワイヤーロープと同じように、真っ直ぐ進むことができればすぐ近くなのだが、その間を深い谷があるために大回りしなければならない。まだ到着はお預け。

千枚小屋

やー。ついた、着いたぁ。千枚小屋ですよ、旦那。お花畑に囲まれた立地に、山小屋としてはえらく小きれいな出で立ち。ここは極楽か、それとも夢の中か。

歩き始めて5時間半弱。「標準コースタイム7時間」に最初はびびっていたけど、案外短縮できるもんだ。

噂で聞いた話だが、皇太子浩宮さまが昔南アルプスに登山したとき、当時の静岡県知事が「汚い山小屋にお泊めして申し訳ない、恥ずかしい」と恐縮して、それ以降急速に静岡県内の山小屋がきれいになったという。本当かどうかは知らないが、このきれいさを見るとなるほどと納得してしまう。

でも、実際は1993年に失火で全焼してしまったため、やむなく建て直した・・・という事らしい。

さ、うんちくはどうでもいい。さっさと中に入ろう。

山小屋の受付

山小屋の受付。ご主人の後ろには、細かく部屋割り・・・ならぬ寝場所割を記したホワイトボードが置いてある。早い者勝ちで好きな場所を広く占領するという事があると喧嘩になるので、きっちりと「アンタはこのブロックで寝ろ」と指示を出すらしい。

寝場所を指示されながら、われわれにポケモンふりかけを渡した。一体なんだろう、これは。謎だ。

千枚小屋の料金表

写真がブレてしまったが、千枚小屋の料金表。

1泊2食:¥7,500 素泊:¥4,500 テント(1名に付):¥600 夕食:¥2,000 朝食:¥1,000 弁当:¥1,000

ビール(350ml):¥600 缶ジュース(ポカリ、茶):¥300 日本酒(ワンカップ):¥500 焼酎(コップ):¥500 牛乳:¥300 コーヒー(ドリップ):¥400 紅茶:¥300 カルピス(ホット・アイス):¥300

カレー:¥800 ラーメン:¥700 うどん:¥600 みそ汁:¥300 すいもの:¥200 ぜんざい:¥600 おしるこ:¥300 お湯:¥200

4000円クーポン券

ここで効力を発揮したのが、畑薙ダムでバスに乗るときに買った「4000円クーポン券」。ちゃんと宿代から4000円差し引いてもらいました。

「明日泊まるときもこれを出せば4000円安くなるかな・・・」と馬鹿な事を考えていたのだが、うち砕くようにすぱーんと「千枚小屋」のハンコを押されてしまった。嗚呼!(当たり前だ)

外階段で2階に上がる

普通の宿とは違う。受付を済ませたらそのまま靴を脱いで中に入る・・・のではなく、いったん外に出てから二階に上がり、そこから寝ぐらとなっている部屋に入る仕組みになっている。

「だったら、受付しないで勝手に泊まる事ができるじゃん!」

こらこら、悪い考えをおこなさいように。さっき、受付で寝場所をきっちり指定されていたでしょ。ぎちぎちに場所は決められているので、ふらりとちん入した人が寝れる場所なんて無いってば。

ゴンドラやぐら

これが、先ほどのワイヤーロープの終着点。なるほど、荷物を載せるためのゴンドラがありますな。普通、山小屋に荷物を運ぶときはボッカと呼ばれる人力による荷揚げか、ヘリコプターを使った空輸大作戦をとることになる。しかし、ここは林道が相当山奥まで延びているというメリットをいかし、ゴンドラで運び込むという荒技を使っている。

物流は山小屋の生命線。ボッカだと一度にたくさんの荷物は運べないし、人材もあまりいない。ヘリコプターだと一回の輸送で100万円近くかかったりして、コストがかかりすぎる。それらと比べると、ゴンドラが使えるこの千枚小屋は非常に好立地条件と言える。

・・・で、何が言いたいかといいますと、ひょっとすると食事なんか、山小屋にあるまじきあれやこれやが出てくるんじゃなかろうかとか、そういう期待をしてしまうわけなんですよ。山に来てるのにそんな事を期待するのは馬鹿げているのは百も承知。でも、美味いものが食べられるんだったら、それに越したことはないでしょ旦那。

千枚小屋お手洗い

山小屋の裏手にお手洗いがある。

山小屋のトイレは当然水洗ではないため、大抵小屋とは離れたところに設置されている。でないと、小屋中に臭いが充満する。

ここのトイレは、いやな臭いが殆どしなかった。すぐ隣で発電機がぶるぶる音を立てていた事から、何らかの処理が行われていたのだろうか?

身体を拭く

見たくないでしょうが、とりあえずセクシーショット(by兄)いやね、山小屋ついたらとりあえず体中を濡れタオルで拭きましょうキャンペーンって事で。

これをやらないと、しばらくたつと臭くなるのね。自分の臭さはあまり気にならないかもしれないけど、他人からすると耐えられないのね。「山の中だからそれくらい我慢しろ」って意見があるかもしれないけど、ちょっとくらいは周りのことも考えましょうよ、オッサン登山屋のみなさん。

寝床が十分に確保されている山小屋ならともかく、肩を寄せ合うような場所だったら、なおのこと。

あと、激混みの時はそれぞれが頭と足を交互に向けて雑魚寝する事になるのだが、この場合自分の顔のすぐ横に隣の人の足があるわけだ。足臭いのは安眠を大いに妨げるので、この際ぜひ足も洗っておいて頂きたい!いや、これ切なるお願い。

難民船状態の小屋内部

では、今日の宿はどんな混み具合なの、というと、こんな感じでござーい。

おい、難民船とか言うなよ。

この写真を見て「うわー、山小屋って狭そうー。臭そうー。行くのやだー」とか言う人がいたら、アッチ行ってなさい。これ見て、「凄いきれいじゃん!」と言う人、もっと近くに寄りなさい。山小屋でこれだったら、最上級の「よく頑張りました」賞をあげても良いぞ。

ちなみに、「部屋」という概念は無い。大部屋の真ん中に通路があって、その両脇が寝るためのスペース。かいこの寝床みたいにロフトがあって、その上下二段で人々は疲れた体を癒す・・・はずなんだけどねえ、ますます疲れてしまうんよ、これが。本日の寝床、一人1/2畳。足と頭交互に向けて寝るのは当然。あとは、寝相の悪い奴の隣にならないことを祈るのみ、という状況。

「せめて男女別にはなってるんでしょ?」・・・いやー、そんな事やってませんぜ。紳士淑女が集う場所、じゃないんだから男女関係なし。夫婦で来た場合は、狭い部屋を少しでも有効に使うために奥さんは旦那の上で寝ること、なんで下ネタギャグがあるくらいで。ま、山小屋に泊まる女性の95%以上は40歳を越えているので、あまり神経質にならんでよかったりするのかもしれない。でも、そのせいかどうかは知らぬが、若い女性が全然山にはいないんよねえ。たまに居たとしたら、全員山好きそうな彼氏連れ。ちっ(苦笑)。

ちなみにわれわれは一番壁際の場所だったので、まだ助かった。兄貴は僕の横なので、やっぱり両隣から攻められる事になった。

・・・あれー、思い出した。「綿密な作戦」だったはずなのに、この混雑ぶりは何だ。全然作戦の意味が無かったような気がする。

いや待て、でも明日は今日よりもっと混む事は確実なワケで・・・あふれかえった人達は一体どこに寝るんだろう?

千枚小屋横顔

お手洗い方面から千枚小屋を振り返るとこんな感じ。2階に上がる階段が見えます。それにしても、こじんまりとした小屋だ。ここに80人を収容するというのは、ある意味凄い事だ。一家が過ごすためのちょっとした別荘だって、これくらいのサイズは珍しくないのに。

空が晴れてきた

空が晴れてきた。山の天気はこれだからわからん。あまりに気まぐれだ。

ジュースが売られているぞ

山小屋でよく見かける光景といえば、入り口横にあるジュースやビールが浸けられた水槽。宿泊者のみならず、通りすがりの人さえもがその清涼感に惹かれてついつい買い求めてしまう。

千枚小屋の場合、さらにリンゴまで突っ込んであった。これはこれでうまそう。

さて、気になる「山小屋物価」ですが。

ハイリキ(缶チューハイ) \500
ビール(350ml) \600
淡麗(500ml) \600
ジュース類 \300
牛乳 \300
その他いろいろ受付までどうぞ!

うーむ。いくらゴンドラで輸送できるとはいえ、やっぱり高いものは高いのねん。この価格設定、「輸送コスト」の結果この値段に落ち着いたのか、それとも「需要と供給」のバランスでこの価格に落ち着いたのか、どっちなんだろう。

すまん。需要と供給のバランスでしょう、きっと。高い!と思いつつもうれしそうにビールを買ってしまう大馬鹿野郎がいる限り、山でのビール価格は下がりそうにもありませぬ。

発泡酒を買っちゃう

山小屋のビール価格を下げようと、ヒソカに不買運動を展開しているやもしれぬ諸先輩方、ごめんなさい。僕は大枚はたいてビール飲みます。

しかし、やっぱりカネが惜しくて、コストパフォーマンスの良い発泡酒を選択。

発泡酒を飲むおかでん

兄貴

ぐいーっ。

見よ、この幸せそうな顔を!これをやりたくて山に登っているつもりは毛頭ないのだが、どうして山頂に立った時よりも顔が輝いているのだろう?

缶の横っ腹を持つのではなく、底を支えるようにして持っているところを見て分かるように、ぐいぐいと飲んでやろうという意志がありあり。

とにかく暇なんである。14時半頃に山小屋に到着してしまったので、夕食までやることはない。夕食食べたら寝るしかない。山小屋って、そんなところだ。ビール飲んでうだうだする。

おかでん 「それにしても、さっきのじいさん見たかい?」
兄 「ああ、入り口にいた人か。見た見た!何だい、ありゃ」
おかでん 「いやびっくりしたよ、いきなりジュース冷やしている水槽でじゃぶじゃぶ手を洗い出すんだもんな」
兄 「飲み物が入っているってこと分かってないのかね、迷惑だよな」
おかでん 「70歳越えてるぜ、あの人。半分耄碌してたし。でも、だからって水槽で手を洗うなと。さらに、リンゴを来訪者サービスと勘違いしてガメようとするのはやめれと」
兄 「さわら島から登ってくるのに12時間かかった、って同行の兄ちゃんが言ってたな」
おかでん 「おい、ホントかよ?山登るのやめた方がいいと思うぞ、遭難したら周りに迷惑だし」
兄 「あの歳で山に登る元気があるのは凄いけどねえ・・・ちょっとね」
おかでん 「いや、背中にゼンマイ付いてたよ?あの爺さん。元気もくそもない」
兄 「何、それは本当か?」

食事時間を告げる張り紙

ありゃ、またぼけた写真。受付の横に、食事時間を伝える張り紙があったのでとりあえずスクープしてみました。

食事時間のお知らせ。

※夕食はPM5:00より(混雑時は4:30より)1回26名で受付順になります。時間別の食券を渡しますので、なくさないようにお持ちください!

●4:30~ ●5:00~ ●5:30~ ●6:00~

※朝食はAM5:00からです。早く出発したい方は弁当に変えられます。(弁当は夕食時に渡します。)受付の時にお伝えください。

夕食を早々に食べる登山客

夕食の風景。26人が座る事になるので、殆ど身動きができない。

さてわれわれの番ですぞ。山の楽しみの一つが、山小屋の食事。大当たり!美味美食!というのは無理だって事は分かっていても、心ときめくもんだ。どんな料理が出てくるのか?ご飯はちゃんと炊けているのか?と。

千枚小屋の夕食

さて、千枚小屋のスペシャリテはこちら。メインディッシュは鳥唐揚げの甘辛煮とでも呼ぶべき料理。付け合わせにマカロニサラダ、キャベツ、オレンジ。あと、冷や奴と漬け物、ご飯にみそ汁。

味は・・・うん、山小屋でこういう料理だったらOKでしょう。まず、「仕出し弁当箱」形式ではないきっちりしたお皿ってところで好感度高し。山小屋では皿洗いの手間を減らす為に、仕出し弁当箱みたいに仕切りがたくさんある四角い器を食器にすることがよくある。

ご飯は・・・うわぁ。おじやにしたかったのか、ご飯をたきたかったのか考えてしまうようなでき。えらくべちゃべちゃしているが、おじやと呼ぶにはやや力量不足って感じ。やっぱりご飯を炊きたかったのだろう、きっと。恐らく。限りなく推測をすると。

これは山小屋飯の宿命でもある。高地故に水の沸点が低く、芯のあるご飯が炊けてしまうのだ。それを防ぐためには、水を多めに入れ、時間をかけて炊くしか方法がない。これだと、ご飯の芯は無くなるが、どうしてもべちゃべちゃしたできあがりになってしまう。一部の進んだ山小屋では、圧力釜を使っておいしいご飯を炊くところもあるらしいが、それはごく僅か。

さて、日本人の悲しいところで、ご飯がまずいと全ての食事がまずくなってしまうのよね。これは日本の食文化上仕方がない。おかずを一口食べ、それを口で咀嚼しながらご飯を食べるという「口の中でいろいろな料理を混ぜ合わせる」という食べ方をする文化を持っているため、おかずがどんなにおいしくても、おいしくないご飯が後から口の中に入ってくると全てが台無しになってしまうのであった。うわぁ。

でもこれが山小屋飯。別に千枚小屋の調理人出てこい!という話ではない。しかし、久々にこの系統の飯を食べると、結構強烈だなと。なまじっか、おかずがおいしいだけにご飯が際だってしまっている感じ。

最初、疲れ果てて食が進まない中高年の方向けに、ご飯を意識的に柔らかく炊いたのかとも思ったが、それだと逆効果。ご飯がねっちゃりとすると重くなって、逆に食べられなくなってしまう。

ガスが出たり引っ込んだり

食後・・・といっても、まだ17時30分なのだが・・・暇をもてあまして外をぶらぶらする。

またガスがかかってきたようだ。

またもやガスが出てきた千枚小屋周辺

10分もすれば、さーっとあたりがガスに包まれてしまった。晴れた山も開放的で気持ちいいが、霧けぶる山というのもこれはこれで味があって良い。

さあて、そろそろ戻りましょうか。いくら寝床が指定されているとはいえ、ちゃんと自分のスペースを周囲に主張しておかないと、寝る場所がなくなってしまうおそれがある。

眠たくなくても、寝床には居座る。これも、雑魚寝山小屋での常識の一つ。

結局、夜はいびき野郎の猛攻で安眠を妨げられ、場所が無くて寝返りひとつ打つのにも、隣に気を遣わなくてはならず頻繁に目を覚まし、場所が狭いために壁に張り付くような形で浅い眠りをだらだらと。ああ、寝ているのにどんどん疲れていくのはなぜ?