2001年07月13日(金) 2日目
[行程]
05:20象潟駅(タクシー)→06:00鉾立登山口(停滞)06:30→08:00御浜小屋(停滞)08:30→09:45鉾立登山口10:40(タクシー)→11:00吹浦12:00(タクシー)→13:00酒田(徒歩)→13:30山形麦酒→14:52酒田(特急いなほ14号)→15:13鶴岡(タクシー)→15:40湯の浜温泉(泊)
象潟駅到着。山形県からほんの僅かに秋田県に入ったところにある。
おかでん 「・・・とりあえず、誰を糾弾すればいい?」
コダマ 「何の話だ?」
おかでん 「雨だよ、雨。大雨降ってるやん。誰だ?雨男は」
コダマ 「ここには二人しかいないぞ。あ、おいちょっと待て、『誰だ?』って聞いている時点で、自分ではないって言いたいわけ?」
おかでん 「うむ。これはもう仕方のない事実」
コダマ 「メチャメチャ言うなよ。まあ、でもとりあえず・・・行くだけ行ってみますか、登山口に」
おかでん 「さすがにここまで来て、しかも朝5時で撤退って訳にはいかんだろうね。行くしか!」
駅前に停車していたタクシーを捕まえる。
タクシーの運転手 「えっ、この雨の中鳥海山登るの!?いやー、大変だよ、やめといたほうが・・・」
おかでん 「いやだって、しょうがないですもんここまで来てしまったものは。帰れって言われたって、行き先が無いんですこんな時間だと」
コダマ 「とりあえず、行くだけ行ってください・・・。どうするかは、現地についてから考えますんで」
運転手 「(ガガガ・・・)えー、こちら○○号、これから鉾立に向かいますどうぞ」
無線の声 「(ガガガ・・・)えっ、今から登るのぉ?」
運転手 「いやね、お客さんがとりあえず行くだけ行ってみるって行ってるから。やめといた方がいいって言ったんだけどさ、どうしても行くっていうもんで」
おいおい・・・大丈夫か?
鉾立登山口到着。距離はそんなに遠くないのだが、気がついたら9000円以上かかっていた。降り際、タクシーの運ちゃんに「気を付けてね」と声をかけられる。
おかでん 「いやぁ~ますます雨が激しくなってまいりました」
コダマ 「どしゃ振り、って表現がぴったりじゃないかこれだと」
おかでん 「とりあえず朝飯でも食べてますか、腹ごしらえしないと何も始まらない」
鉾立登山口の駐車場。誰もいないのは当然として、もの凄い霧なんである。
おかでん 「おいおいおい、200mほど先にある建物すら、輪郭がぼんやりしか見えない程ガスってるぞ」
コダマ 「登山口でこんな状態って事は・・・上に登るとどんなことになるのやら」
おかでん 「時間が時間だけになあ、即撤退って言える状況じゃないんだよな。まだ朝の6時だし」
雨が小降りになった間隙をついて、とりあえず行けるところまで行く事にした。
おかでん 「悲壮なる覚悟」
コダマ 「まあ、登れるところまで登りましょうや」
おかでん 「チキンレースだな。どこまで我慢できるかという」
登りはじめて10分たらずで、目の前に絶景が広がる。
おかでん 「うわーっ!何だこの絶景は!」
コダマ 「わ、凄いな、北海道みたいだ」
おかでん 「ひぃひぃ登ったはるか先にこういう光景があるならともかくだよ、登りはじめてすぐのところでこんな絶景に出会えるんだから驚いた!」
コダマ 「ということは、もっと上にはもっと絶景があるって言うことか」
おかでん 「見てみたいですなぁ、ぜひとも」
振り返ると、鉾立登山口が見える。
自然の中に、ぽっかりと駐車場ができている状態。
コダマ 「お?相当ガスが晴れてきたんでは・・・?」
おかでん 「何となくそんな気がするけど・・・?」
おかでん 「誰だ、ガスが晴れてきたって言ってた奴は!」
コダマ 「ますますガスがきつくなってきたな」
おかでん 「考えてみりゃ、山の上見ないで下見て『ガスが晴れてきた』って言っても始まらないんだよな。これから向かう方向じゃないんだから」
コダマ 「雨もまた降ってきだしたし・・・」
御浜小屋到着。
おかでん 「参った。レインウェア、手入れしていなかったからせっかくのゴアテックスなのに雨浸水しまくり~」
コダマ 「これだけの雨だったら、どっちにせよびしょぬれだよ」
おかでん 「水も滴るいい男ならいいんだけど、滴るなんてレベルじゃないからな。うう、寒い!」
御浜小屋からは稜線歩きになるのだが、そこはもの凄い突風が吹き荒れている場所だった。
おかでん 「どぅわ!危ない!危ない!」
コダマ 「ザックが持っていかれる!」
結局、これ以上の進軍は危険と見なし、御浜小屋の先にある岩場でリタイアすることとした。
コダマ 「せめて、この下にある鳥ノ海っていう池くらいは見ておきたいじゃない」
おかでん 「なるほど。でも、ガスで全然何も見えないんですけど」
コダマ 「・・・見えませんな」
おかでん 「じゃ、ここでリタイア記念ということで記念撮影して引き上げよう」
コダマ 「いや、リタイアじゃないから。ここが、鳥海山の山頂だから」
おかでん 「おー、ゴメンゴメン、そうだった。ここは鳥海山の山頂、だ!今日からここは鳥海山山頂とする、ってことでOK?」
コダマ 「OK」
記念撮影をやろうとするが、カメラの三脚が強風で倒れそうになったりとさんざん苦労させられた。
撮影終了後、慌てて強風が吹く岩場から待避。
コダマ 「とりあえず御浜小屋に逃げ込もう、今後の展開はそれからだ!」
おかでん 「へーい」
御浜小屋にて停滞。休憩料お一人様300円也。
おかでん 「うう、7月なのに寒い寒い」
コダマ 「まさかこういう展開になるとは思わなかったなあ」
おかでん 「諦めがつかないってレベルじゃないもんな、あの突風は・・・」
コダマ 「あ、もうこりゃダメだ・・・って感じ。俺少々の雨だったら登るんだけど、これじゃあちょっと」
体を乾かしつつ、かといって外は相変わらずの荒天で外に出るわけもいかず、とどんよりとした時間を過ごす。
途中、団体の登山客が小屋にやってきたが、彼らもあまりの強風と雨のために途中で引き返してきたらしい。
おかでん 「やっぱりまだ梅雨時だもんなあ。登山シーズンを外せば人混みから避けられると思ったんだけど」
コダマ 「なぜ登山シーズンってのがあるか、って事だよな。登るのに都合の良い季節があるから登山シーズンと言われるわけだ」
おかでん 「また、よせばいいのに、梅雨前線に従って東北の山を目指してしまったもんな」
コダマ 「南の山なら、もう梅雨明けしてたかもしれないのにね。何やってんだろ、俺ら」
下山再開。
おかでん 「とりあえず下山記念撮影やるから、そこでポーズとってくれ」
コダマ 「こんな感じで?」
おかでん 「ファイトポーズか。まだ登る気満々だな?」
コダマ 「下るのだって、これくらい気合いを入れておかないと・・・」
この天気、全くである。
先ほど登ってきた道を下る。
道は明瞭なのでガスっていても迷うことは無いが、たった1時間ほど前に歩いたばかりのルートをまた歩くというのは非常に悔しいものだ。
ここは、賽の河原と呼ばれている場所。
おかでん 「生き地獄だ・・・」
コダマ 「おいおいおい、さっきまで単なる登山道だったところが、川になってしまってるぞ!」
おかでん 「ありゃりゃ。まともに歩けない・・・」
行きと同じ風景のところを歩いているつもりだったが、山の様子は刻一刻と変わっていっていた。みるみる登山道が水びたしになっていく。
コダマ 「いかん、これはさっさと下山しないと」
歩くペースが上がる。
さすがに鳥海山は東北の山だけあって、標高1,500m程度 の山腹にもかかわらず大きな雪渓がまだ残っていた。
谷間でも何でもないところに、7月をすぎても大きな雪渓が残っている事から、普段がどれだけ寒いかがうかがい知れる。
思わず雪渓下の雪解け水に手を突っ込んで、その冷たさを楽しむ。
何で人間は「冷たい水」が好きなんだろう。川の水やわき水が冷たいと、「ひゃー冷たい!」と子供のように大喜びする癖がある。
登山開始から3時間程度で下山。
おかでん 「いや、ひどい目に遭いましたな」
コダマ 「ここまで凄いことになるとは思わなかった」
おかでん 「見ろよ、もうびしょ濡れ・・・」
コダマ 「俺もだよ。でもこんな中登っていこうという人もいるもんだねえ」
おかでん 「ああ、さっき登っていった集団の事?やめとけ、って忠告しておいたから、賽の河原あたりで引き返してくると思うけど」
コダマ 「お花畑が見えるところはどこか、なんて聞いてたけど、こんな天気じゃお花どころじゃないと思うんだけどな」
おかでん 「昇天すれば、いくらでもお花畑見ることができるのに。何を死に急いでるんだか」
コダマ 「ははは」
おかでん 「僕らと一緒なんよ、遠くはるばるここまでやってきたもんだから、引くに引けない状態なんだろ?遭難しないことを切に願う」
鉾立からタクシーで麓まで降りることにしたのだが、タクシーがくるまで45分ほどかかるという。その間、船倉山荘の食堂でおでん盛り合わせ(400円)とビール(450円)でまったりとした時間を過ごす・・・はずだったが、雨の中デジカメを使っていたのが災いして、デジカメ故障が発覚。泣きっ面にハチ状態となってしまった。
おかでん 「うぬぬ、許すまじ鳥海山!いつか必ず仕返ししてやる!・・・といってもなあ、東京から遠いんだよなあ。気軽に仕返しできる場所じゃないんだよなあ」
コダマ 「そうなんだよな、また今度来ようと思っても、なかなかこれる場所じゃあない」
おかでん 「せめて山頂くらいは拝みたかった!」
コダマ 「え、見えなかったの?俺は見たよ。鳥海山の山頂」
おかでん 「ええ?あの霧の中で、か?御浜小屋ででっちあげた鳥海山の山頂ではなくて?」
コダマ 「見た見た。俺の心の中で、鳥海山を」
おかでん 「何じゃ、そりゃ」
タクシーに乗って、海沿いの町吹浦まで行く。車中、
運転手 「え?この天気の中で登ろうとしたの?そりゃ無理でしょう・・・ははは」
笑われてしまった。
おかでん 「どうするよ、めっちゃ笑われたぞ?」
コダマ 「行きの時の運転手も笑ってたな、やっぱり無謀だったのか?」
後部座席でひそひそと、自分たちの行動が馬鹿げていたのかどうかの検証。
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