なぜ吹浦という町にやってきたのかというと、ここには「東北泉」というお酒を造っている高橋酒造があるからだった。
そもそも、鳥海山に登ろう!という話になったのは、居酒屋で初めて「東北泉」を飲んだ時に二人そろってえらく感動し、「どこのお酒なんですか?」と店の親父に聞いたのがきっかけだった。「山形のお酒ですね、鳥海山の麓に酒蔵があります」なんて回答が返ってきたもんだから、「よし、ならば鳥海山に遠征だ。下山後は東北泉で一献。くぁー、たまらんねえ」なんてその場の盛り上がりで即決してしまったのであった。
吹浦駅到着後、探索に入る。
おかでん 「・・・といっても、吹浦にあるって事しかわからなかった。細かい住所は不明」
コダマ 「大丈夫かな?ここまできて、鳥海山登れずはともかくとして東北泉まで発見できなかったら何しにここに来たのかさっぱりわからなくなってしまうからな」
おかでん 「大丈夫だってば、狭い町なんだから。酒蔵なんてすぐに見つかるはずだけど・・・おっと」
コダマ 「おい、もう町の外れだぞ」
おかでん 「いや待て、あった。ここだここだ」
町はずれに、目指す東北泉の酒蔵があった。
おかでん 「ええと・・・酒蔵見学だとか、お酒の直売所とかは無いのか?」
コダマ 「見あたらないな、そんな施設は」
おかでん 「とりあえず中に入ってみよう」
ずんずんと敷地内に入ってみるが、やっぱりそれらしき施設はない。単に事務所棟と酒蔵があるだけだ。
おかでん 「やっぱり都会の酒造メーカーじゃないから、観光客向けな対応ってやっていないのかなあ・・・」
そのとき、警戒心いっぱいの顔つきをしたおばさんがこっちに慌ててやってきた。
おばさん 「何やってるんですか?」
おかでん 「(うわ、しまった、不法侵入と勘違いされちまったよ)ええと・・・ここ、東北泉さん、でいいんですよね?」
おばさん 「そうですけど、何かご用ですか?」
おかでん 「(まずいまずい、ますます警戒されてら)ああー、ええとですね、実は僕たち東北泉のお酒が好きで、東京からやってきたんですけど(どうだ、これでちょっとは喜んでもらえるか?)、こちらには直売所とかそういうのは無いんですか?」
おばさん 「いや、ないです」
おかでん 「(ありゃー、効果無し!)じゃ、じゃ、じゃ、ええっと、こちらのお酒を買いたければ、そこら辺の酒屋さんにあたってみるしかないんですかね?」
おばさん 「そうです」
おかでん 「(ひえーっ!)わ、分かりましたぁ。すいません、勝手に入り込んじゃって。失礼しましたー」
おかでん 「うわー、失敗失敗。大失敗だよぉ。不法侵入者と勘違いされちまったじゃないか!」
コダマ 「やっぱり、何も無いんだねぇここは。まあ、しゃーないか。でも、『東京からやってきた』ってところで反応するかなと思ったんだけど」
おかでん 「ちょっとあの一言で状況が好転するかと期待したんだけどね、全然変化なしだった!失敗!・・・『どーだ、東京からはるばるきたんだゾ』ってところでちっとは感動してくれるかと思ったのに!単なる東京から来た不法侵入者になっちまった!」
結局、慌てて高橋酒造の敷地から撤退した僕らは、近くにあった酒屋でそれぞれ「純米大吟醸『芳』」「純米吟醸『瑠璃色の海』」を買い求め、おみやげとしたのであった。
おかでん 「しかし驚いたな」
コダマ 「何が?」
おかでん 「さっきの酒屋だよ。ごくごく普通の田舎にある酒屋で、置いてあるお酒はサントリーレッドのデカいボトルや、安い焼酎とかばっかりなのに。東北泉だけは、きっちり保冷された形でフルラインナップだった」
コダマ 「さすがに地元、ってところか。まあこれでとりあえずの目的は達成できたから良しとするかぁ?」
吹浦から酒田にJRで移動するつもりだったが、あまりに便が少なかったのでシビレをきらし、またもやタクシーを使って酒田駅まで移動。今日はタクシー三昧なんである。
酒田駅前で昼飯食べる場所を探していたら、近くに「山形麦酒」なる地ビールレストランがあることを発見。
おかでん 「ここでこんなものがわれわれによって発見されるということは、行けと。行くしかないという神のお告げに違ぇねぇだ」
コダマ 「そゆこと?やっぱり、そゆこと?行くしかないのか・・・やっぱり?」
問答無用で、徒歩30分かけて山形麦酒にGO!GO!GO!GO!
山形麦酒は、でっかい体育館を改造したかのような、無駄にだだっ広い建物だった。
コダマ 「おい、何だこの値段は?」
おかでん 「何だって?あ、日替わりランチ450円。あはは!すっげぇ安い!」
何か物価の概念がこの地だけ変わってしまったのではないかというくらい、安い。東京で定食を食べようと思ったら、どんなに安いところでも600円以上はする。松屋で牛焼き肉定食を食べたって580円するくらいだ。普通は700円、800円して当たり前。なのに、いくらサービスランチだからといって、定食が450円ってのには相当びっくりした。
コダマ 「酒田という地が物価が安いのか、それともこの店だけ安いのか?」
おかでん 「そもそも、地ビールレストランってちょっと割高な価格設定になってるじゃん、全体的に。それなのにこの値段設定は笑っちゃうな 。学食じゃん、これだと。」
コダマ 「いや待て、ビールの値段を見て見ろ」
おかでん 「ん?・・・あっ、や、安い!」
山形麦酒(ピルスナー、アルト、ヴァイツェン) 各380円。
おかでん 「どういうことだ、一番搾りが450円だぞ?普通、メジャーなビールよりも地ビールの方が高いはずなのに、ここでは逆転現象が起きてるじゃないか」
コダマ 「ふえー、初めてみたよ、こんなの!」
結局、二人で日替わりランチ450円、ロースとポーク定食650円、チキン竜田480円、地ビール各2杯ずつを飲み食いした。それでも、安い。なんかスゴクとくした気分ではある。
おかでん 「でも、地ビールは味が薄かったような。絶品!というほどではなかったゾ」
この後、湯の浜温泉に移動。湯の浜温泉は、日本海に面した温泉街。水平線にそのままずどんと沈んでいく太陽を愛でることができる温泉として名高い。
おかでん 「え、もう日没になっちゃったの?」
コダマ 「しまった、カニほぐすのに夢中になっている間に、日が沈んでしまった!」
部屋食の夕食に夢中になっている間に、日が暮れてしまっていたというお粗末。
翌日は、羽黒山、月山と登山が続くのだが、写真が全くないために解説のしようがない状態。ざっくりと流れだけ説明して、この回は終了とさせてもらいます。(白馬登山のときみたいに、綿密なメモを残していなかったので記憶が曖昧)
出羽三山の一つ・羽黒山山頂までは、鶴岡からバスで行く事ができる。しかし、敢えて羽黒センターで下車、昔からの石畳を登ることにした。天然記念物の杉並木を眺めながら、雨の中長い長い石畳を登る。標準コースタイム50分。途中、遠足で引率していた学校の先生が何人も生ける屍となって棒立ちになっていた。
石畳の終点には、神社がある。この神社は、出羽三山(羽黒山、月山、湯殿山)全ての神様が合祀されているありがたい神社だそうな。冬の間は月山、湯殿山に入れないので、この神社で代用 するらしい。そなに簡単に済むもんなんですね、参拝ってのは。
バスで羽黒山山頂まで来れば、すぐそこに出羽三山神社がありありがたみが薄い。ぜひ石畳を歩くべき。
そこから、バスに乗って今度は月山八合目に向かう。ワンマンバスではなく、運転席の横に助手が1名ついている。何事かと思ったら、見通しの悪いカーブで対向車の有無を確認する役だった。それくらい、道路が狭い。頻繁に、八合目駐車場と無線で連絡を取り合い、「○台車が今降りたので、○○付近でやり過ごしてください」といった指示が飛び交っていた。
月山八合目はすでにお花畑。開放的な空間の中を登山開始。約2時間、ガスっていて風光明媚とは言い難かったけど眺めのよさげな(あくまで想像)場所を歩く。山頂には月山神社があって、この神社に参拝しないと山頂に立つことができない。参拝料500円。高い!と思ったが、お祓いをしてくれて、お屠蘇をくれたのでまあこんなもんでしょう。ただし、500円払うのが惜しくて、結局山頂を踏まないでいる人が神社近辺にたくさんいたのは事実。
ちなみにこの月山神社、オープンしているのは7月、8月の2カ月だけなので注意。それ以外の時は、解放されているので山頂が踏めないということはないらしいが。
さてここから今度は姥沢方面に下山。姥沢には夏スキー場があることで有名だが、それだけ雪が残っているということ。アイゼンを持参していなかったので、山一面の雪にびびる。上から見ていると、下山している人が次々とこけていくので愉快だが、いざ自分の番になるとこれが大変。尻セードで下る。
途中からリフトに乗って、姥沢に下山。ここからタクシーを呼ぼうとしたが、到着まで1時間近くかかるという事で断念。西川バスストップ(山形自動車道)行きのバスを2時間近く待つことになった。ビールとトーストで下山の労をお互いねぎらう。姥沢はもの凄く交通の便が悪いので要注意。
さんざん待ったあげくに乗ったバスで、西川BSへ。そこから、酒田発山形行きの高速バスに乗り換え、山形へ。山形から山形新幹線「つばさ」で東京に戻った次第。
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