ふたつの「百名山」を登ろう【根子岳・四阿山】

夏山のシーズンは、通常7月から9月くらいだ。ただ、7月は梅雨が明けていないので、実質的には海の日以降から8月のお盆明けくらいが「どピーク」になる。9月になると台風が日本に次々襲来するので、天候任せの登山にとっては難しい季節となる。そんなわけで、用意周到な人は6月くらいから登山計画を入念に立てていたりする。

しかし、おかでんは毎年8月くらいになって「そろそろ山登らなくちゃ・・・」と考え始め、9月に入って「やばい、もうシーズンが終わりそうだ」と焦って慌てて計画立案することが多い。ためしにこの「へべれけ紀行」で取り上げた登山記録を確認してみるといい。9月以降の登山が多いことに気付くはずだ。これは「ピーク時期をあえて外した、スマートな登山」なのではなく、「追い込まれ登山」なのが実情だ。

でも今年のおかでんは例年とちょっと違う。GWに高尾山に行き、今シーズンへの橋頭堡をこしらえた。さて、そのあとどうする?今現在は8月上旬。「登山どピーク」ウィークの真っただ中。家でダラダラしていないで、山いくぞ、山。

この時期、山小屋泊の山なんぞに登ったら、大変に寝苦しい山小屋の夜になりそうだ。とにかく人が多すぎる。全国各地の山小屋で、毎晩のごとく「たたみ一畳に2人以上が寝る」という荒行が繰り広げられているに違いない。それを考えたらぞっとしてしまう。だから、行くなら日帰りの山にしたいところ。日帰りの山、どこがいいかな?

そこで思いついたのが、四阿山(あずまやさん)だ。群馬県と長野県の県境にある山で、標高2,354メートル。長野県側の菅平から登るのが一般的。登山途中の眺めがとても良い、と聞いたことがある。やっぱり、せっかく山に登るんだったら風光明媚でなくちゃ楽しくない。それを踏まえると、四阿山はうってつけだった。

ただ、交通手段はちょっと思案のしどころ。長野新幹線で上田まで行って、そこからバスで菅平高原まで行って、登山口まで余計に歩いて、となると結構大変だし、お金がかかる。それだったらレンタカーを手配して、車で登山口に乗り入れた方が楽だし、早そうだ。「わざわざ登山のためにレンタカーを借りる」というのはいまいち盛り上がりに欠けるが、コスト面を踏まえてもレンタカーの方がよさそうだ。うん、決めた。レンタカーで四阿山に行くぞ。

2012年08月05日(日)

レンタカーで菅平牧場へ

朝5時、レンタカーを借りて出発。最近のレンタカーはカーナビが標準装備なのがありがたい。初めて行く場所でも、間違いなく指示してくれる。おかげで地図に気を取られて事故、という悲劇が未然に防げている。カーナビの普及により、事故件数は少し減ったのではあるまいか?

今回借りた車はスズキのSPLASH。キーレスエントリーの車には初めて乗ったので、最初はちょっと戸惑った。

菅平牧場のチケット

08:01
朝8時、菅平に到着。ちょうどこの時期、菅平ではラグビーをはじめとする陸上競技の合宿が盛んで、ホテルから運動場に向かう学生さんたちがたくさん道路を歩いていた。

四阿山の登山口は菅平牧場の中にある。そのため、牧場の入口に料金所があり、入場料200円を請求された。今まで、山頂でお金を取られたことがあるが(立山、月山)、あれは山頂に神社があるからでありなんとなく納得がいく。しかし、この「牧場入場料200円」というのはいまいち腑に落ちない。徴収したお金は登山道の保全に使われます、というなら納得なのだが。

ちなみに「車一台につき200円」というわけではなく、一人あたり200円なので注意。車に4人が道場していたらきっちり800円取られるし、歩いて菅平牧場にやってきた人も徴収の対象だ。

菅平牧場の駐車場

08:05
菅平牧場の駐車場。第一駐車場から第三駐車場まで棚田状態で並んでおり、この時刻にして既に第一駐車場はいっぱいになっていた。おとなしく第二駐車場に駐車。周りは「ふれあい牧場目当て」の人なんて一人もいない。みんなそれぞれ山登りの装備をしている。

根子岳登山口

08:11
標高1,600m、登山道入り口。

まずは根子岳に登ることから開始する。今回は根子岳(2,207m)を経由して四阿山(2,354m)に向かい、そこから中四阿を通り駐車場に戻ってくるコースを取っている。自動車で山にやってきた場合、山頂ピストンで行きと帰りが同じ登山道を歩むことが多々あるが、この山の場合はぐるっと円形に山を巡ることができる。こういう山はとてもありがたい。常に山の変化を楽しむことができるからだ。

明るい登山道

眺めの良い牧場

登りはじめから眺めが良い。登山道は牧場の脇を通っているので、進行方向向かって左側が解放感がある。「良い眺めとは、山をのぼりつめた後のご褒美。」というものだと思っていたが、この山の場合それは違う。最初からご褒美三昧なのだった。ああ、もう登山はここで打ち止めにして、ビールでも飲みたいところだ。まだ早いか?

こういう景色を見ていると、北海道の美瑛を思い出す。

花1

花2

花3

花4

08:17
さすが「花の百名山」という前がつくだけある。登山道沿いには可憐な花が多種多様に咲き誇っていた。えっと、あちらはヒマワリで、こっちがアジサイで。ああ、これはパンジーですね。

・・・という状況だったら相当残念だが、もちろんそんなことはない。

名前を知らない高山植物たちが短い夏を密やかに生きている。あー、「植物図鑑」を買って山で持ち歩こう、という事をここ10年くらいずっと考えているのだけど、いまだに実現していないな。このままずっと植物図鑑無しで一生を終えそうな予感が。

あずまやからの眺め

08:29
あずまやがあったので、ちょっと立ち寄る。あずまやからの眺めはとても心地よい。標高1,757メートル。今日は日差しが特に強いが、日影にいると結構涼しい。そりゃそうだ、海抜ゼロメートル地点と比べて、気温が10度も低いわけだから。

あずまやには先客として山ガールが2名いた。「ガール」の呼称は数十年前に返上、という人ではない、ほんまんもんのガール。なんでも、普段は上田市のホテルで働いているが、今日はお休みとって根子岳にやってきた、とのこと。山ガールって、高尾山とかの「楽して登れる低い山」にしか出現しないものだと思っていたが、時代はもうここまで来ていたのか。久々の2,000m越えの登山であるおかでんはすっかり時代遅れだ。

この後根子岳を経由して四阿山に行ったわけだが、途中、山ガールは結構見かけた。本当に山登りやっている女性って増えたんだな。おかでん、チャンスだ!(何がだ?)

ただ、山ガールの大半は男性連れだった。いや、男性連れというか、山好きの男が彼女さんを我が趣味の世界に引きずり込んだといった方が正しいか。おかでん、がっかり!(だから何が?)

白樺の中を歩く

08:32
あずまやを過ぎたら、雰囲気が変わった。

ところどころ白樺が生えている森の間を登山道は進む。

凍り付いたペットボトル

08:41
今回持ち込んだ水は2リットル。日帰り一人登山なので明らかに多すぎだが、水が少ないと不安になるので多めに持参。まあ、余ったら「足腰を鍛えるために、わざわざ重しになるものを持ってきてやったぜぇ」と強がるつもりだ。

夏場でとても暑いので、2リットルの水はペットボトルごと凍らせておいた。まさか登山中に全部が溶けることはないだろうから、毎回水を飲むときは冷たさを楽しめるだろう。

と、思ったら、なんてこったい、殆ど溶けていないではないか。全部溶けないことは想定済みだったが、まさか「わずかしか溶けていない」というのは驚きだった。しまった、作戦失敗だ。

水(実際は氷)が2リットルあるのに、早くも節水令発令。

「あー、そういえば南極基地も水は貴重品って話だったなー。周りに雪(氷)があるからといって、水が潤沢にあるというわけではないんだなー」

と思い出す。

あと、当たり前のことだが、ペットボトルには大粒の露がびっしりとついており、そのせいでザックの中に入れている地図がびしょ濡れになってしまった。うへえ。

やっているレベルが小学生並。小学生の自由研究課題にぜひどうぞ。「ザックの中に凍ったペットボトルをそのまま入れたら、どうなるか?」というタイトルでぜひ。

だらだらとした登り

09:00
根子岳への登りは、それほどきつくはないものの、だらだらと登り続ける。途中で登山道周囲の白樺が消え、ダケカンバの林になってくるので標高が上がっていることに気付く。ひたすら登りが続くし、登山道は殆どまっすぐだし、どこで一息つけば良いのか踏ん切りがつかない。その結果、予想以上にくたびれることになった。

休憩中、ひたすらカタカタとペットボトルを振り、できるだけ早く中の氷を解かそうと必死。今はまだ既に溶けた水があるけど、これは遠からぬ将来、飲み干される運命にある。次世代、次次世代のための水を確保しないと。

随分と開けてきた

09:08
だいぶん開けてきた。空が明るい。周囲の木がずいぶん細くか弱くなってきた。森林限界が近いらしい。僕の体力もそろそろ限界。いや、それは困る。今登っている山はあくまでも根子岳。四阿山はそのあとに控えているラスボスだ。今ここで限界だなんて、冗談はよせ。

下界はガスが上がってきている

09:15
振り向いてみると、下界からガス(雲)が立ち上ってきた。これなんだよな、山って。山登りするのに早朝発が原則なのは、お昼頃になるとガス立ち込め、景色が悪くなるからだ。せっかく山に登っておいて、景色が悪いというのはなんともおいしくない話だ。しかも午後になると、夕立があったり、時には雷がごろごろなったりする。午後は早い時間に下山しちゃうか、山小屋に到着するのが吉。

広がる青空

09:15
一方山頂方面は真っ青な空。木が殆ど姿を消し、景色がさらによろしい。足元には高山植物が咲いていて、見上げれば青い空と雄大な根子岳。良い景色だ。

「あの丘の上からチーズ転がし祭りを開催したら面白いんだが・・・」

と考えてしまう。実際にこんなところで転がし祭りをやったら、標高差300mの斜面を転がり落ちて、参加者全員大けが間違いなしだ。御柱祭の比じゃない犠牲者が出そうだ。

倒れそうな標識

09:26
山頂目指して歩いていくと、森林さんたちが「もう、限界!」と言って姿を消してしまった。

濃霧の際に道に迷わないよう、ケルンがいくつか立っていた。ケルンに突き刺さっている木の柱が倒れそうになっているので、一生懸命ささえてみた。全然びくともしなかったけど。

根子岳の山頂付近は比較的なだらかになっている。そのため、ケルンがないと道に迷ってしまうのだろう。

山頂近くの道

09:30
さあ、山頂が見えてきた。

比較的快調に歩くことができたので、登山ガイド本に記載されている標準コースタイムより若干短いタイムで到着できそうだ。

09:34
根子岳(標高2,207m)山頂到着。目印になっているほこらの前で記念撮影。

登山口から標高差600m程度。それを1時間半で登ったわけだから、まあまあきつい坂だったのだと思う。でも、まだ疲労でぐったりするほどではない。

ここでコーヒーでも沸かして飲むべえ、という余裕は十分にあるのだが、今回は水がとにかく貴重。コーヒーなんぞに水を使うわけいはいかない。ここは冷水を一回だけあおって飲んでおしまいにしておこう。

水を飲んだついでに、カラカラとペットボトルをゆすって、少しでも早く溶けるようお祈りをしておく。

四阿山

09:37
根子岳から眺める四阿山(標高2,354m)。

地図で見たら、根子岳のすぐ隣にある山、という感じがするが、思ったより距離はあるようだ。

根子岳から四阿山に向かうには、いったん標高を下げて(2,039m)、また登り直しをしなければならない。めんどうくせー。ガイド本によると、四阿山に取りついてからの登りは相当キツいらしいので、腹をくくっていかなければ。

笹の中を歩く

09:44
根子岳山頂で一息つくまでもなく、先へと進む。ここで休むと、あとがぐだぐだになりそうな予感がしたからだ。今日は気温が高いし日差しも強い。とっとと登って、びゅーんと下山しちゃった方がよさそうだ。下山したらご褒美に温泉浸かって蕎麦でも食べに行こうぜ。

しばらくは視界を遮る木がない稜線歩きを楽しむ。うん、やっぱり山歩きの醍醐味(だいごみ)は稜線にあり。それにしても照りつけるったらないな。遮るものがない稜線歩きをやっていると、お天道様が眩しくっていけねぇや。帽子を持参して正解だったな。でも、その帽子は陸上自衛隊の二式迷彩が施されたブーニーハット。どこかでうっかり滑落して遭難した際、見つけてもらいにくくなるというリスクが。

標高を下げる

下り道

09:53

ちょっとした岩場を抜け、がっかりするほど標高を下げる。

標高2,059mの十ヶ原まで下りてきた。この辺りは笹が一面に覆い茂っていて、歩いていて気持ち良い。

根子岳方面を振り返る

10:08
根子岳方面を振り返る。もう既に山頂は見えなくなっており、その代りに一面の笹林になっていた。

青空と笹の緑のコントラストが眩しい。