日帰りで行くアメリカ旅行1【ヨコスカフレンドシップデー2013】

米海軍横須賀基地。第七艦隊の司令部がある、極東の重要拠点だ。通常時2万人、有事の際は6万人を指揮監督する権限がここにはあり、アメリカさんが激おこするとここから多数の原子力潜水艦や空母が出撃していくことになる、戦いの最前線でもある。

そんな物々しい場所ではあるが、地元のみなさまとの融和には力を入れている。そのひとつが、毎年夏に行われている「ネイビーフレンドシップデー」だ。横須賀の花火大会がある日にあわせて、この日は基地が一般開放される。基地の中はもちろんアメリカ領土。日本の法律なんて通じない地。そんなところに足を踏み入れることができる貴重な機会だ。

以前からこのネイビーフレンドシップデーには行ってみたかった。噂によると、アメリカンな屋台が立ち並び、そこではアホみたいにデカい、アメリカンサイズなステーキが焼かれていたり、巨大なピザが売られているのだという。そんなパラダイス、行きたいと思わないほうがどうかしてる。

実際、横須賀に行くというオフ会は過去敢行したことがある。しかしこのときは完全になめてかかっていた。「前座」という位置づけだった、海上自衛隊の基地見学だけで大興奮しちゃって、すっかり時間をとられてしまったからだ。いざ米軍基地に取り付こうとしたら、あまりの行列の長さにギブアップ、そしてタイムアップになってしまったのだった。

そう、この米軍基地は、入場するまでが大変なのだった。

入場する際には金属探知機の通過と、手荷物検査が必須となっている。本籍地が明記されている本人確認用公的資料の持参も求められている。つまりは、そう簡単には中にはいれねぇぞ、というわけだ。そりゃそうだ、爆弾テロとかやられたらしゃれにならんからだ。

そんなわけで、基地のゲート前には長蛇の列ができ、その長さは1時間待ちどころか2時間、3時間待ちになるのだという。瞬間最大風速でいったら、ディズニーランドの人気アトラクション並の勢いだ。

結局、そのときのオフ会は、基地に入るのは諦めてタイ料理屋でシンハービールを痛飲するという方針転換となった。米国入国ならず、タイになったというのはアテが外れすぎだ。

そんなわけで2013年夏、今度こそ自衛隊には浮気せずに米国一直線、という形で横須賀入りすることにした。今回はよこさんが趣旨に賛同してくれたので、二名での密入国と相成った。さすがに一人ではこの横須賀訪問は無理だ。酷暑の中、厳しすぎる。

2013年08月03日(土)

ネイビーフレンドシップデーについてwebで調べたら、入場までの列についての記述を多く見つけることになる。誰しもが、この列に恐れおののくことになるからだ。今回、われわれもいかにこの列をそつなくこなすか、ということに主眼が置かれた。

いくら場所が横須賀とはいえ、昼近くになって現地入りするのは自殺行為に等しい。一体何時間待ちになるというのか。やはり、人様より先に現地入りするのがジャスティスな気がする。そこで、8時半には横須賀中央駅に到着すべく、スケジュールを組み立てた。これだったら9時には行列に取り付くことができるだろう。基地のゲートオープンは10時。1時間前に並べば、さほど苦労せずに済むのではないか。

・・・つまり、「1時間ちょっとの待ち時間くらいで済んだらラッキー」という覚悟がこの時点である、ということだ。そんな規模感なのが、このネイビーフレンドシップデー。

行列最後尾のプラカード

いざ横須賀中央駅に到着してみたら、道路の要所要所に案内看板を掲げている人が立っていた。しかし、その人たちが指し示す方向は、どうも基地とは方向が違う。大丈夫かおい、と思ったが、実際その案内で間違いはなかった。つまり、アホみたいに長い行列が町中をうねることを前提に、わざわざ最初っから遠回りさせていたのだった。

基地からはるか離れたところを歩きながら、「一体ここはどこ~?」状態のわれわれ。そんなわれわれの前に、いよいよ行列が現れた。最後尾のプラカードがお出迎え。もちろんここからは基地なんて断片的にさえ見えない。一体この先どれだけの人が並んでいるのか、想像すらできない。

最後尾プラカードの写真を撮ろうとしたら、どんどんプラカードは後退していったので慌てて追いかけることになった。何しろ、猛烈に人が押し寄せている状態で、人がゆっくり歩くくらいのスピードでどんどん列は後ろに伸びていっていた。やはり早い時間に現地入りして正解だった。

屋台はまだ準備中


まだ開場していないので、列が前に進むことはない。しばらくその場で待機。

道路には、屋台がたくさん並んでいた。

「これ、基地に入る列のためにあるのかな?」

行列のための屋台。だとしたらすごいことだ。でも、それにしてはのんびり準備をしていて、目の前の行列相手に商売をしようとしている気配はあまりない。どうやら、夜開かれる花火大会目当ての屋台だったらしい。でも実際のところ、基地入場待ちの人たち相手に一もうけしたのは間違いないだろう。

道路を挟んで反対側に、逆向きに列が伸びている。つまり、このまま道をまっすぐ並び、どこかでUターンしてくるようになっているらしい。どこでUターンするのか、折り返し地点が全く見えない。恐ろしいことだ、一体何人ここに並んでいるんだ?

戦艦三笠


この日の基地の入り口は一箇所に限定されており、三笠公園とされていた。公園には戦艦三笠が展示されていて、米軍基地なんて興味ないぜーという人たちがうれしそうに乗船していた。あと、この公園には猿島にいく船着場があり、「今日は猿島でバーベキューやるぜー」という人たちも結構いた。

猿島でバーベキューもいいけどさ、僕らはこれからアメリカ領土の中で、本場仕込のバーベキュー食うんだぜ。アメリカ人がじきじきに調理したやつをな!・・・と心の中で思う。

本人確認やるぜ、の警告

じりじりと列は前へと進んでいく。

「日本国籍保有者以外は基地入場に際し身分証明書の提示が求められます」

という警告が掲示されていた。

「あれっ?日本人だったら身分証明書、いらなかったの?」

あっけにとられる。「本籍地記載」で「写真付き」の身分証明書が必要、と聞いていたからだ。これは少しハードルが高いルールであり、おかでんはパスポート、よこさんは住民基本台帳カードを持参していた。パスポートの有効期限が切れていたら当然ダメだし、最近の自動車運転免許証は本籍地記載がないからそもそもダメだし、身分証明書というハードルが乗り越えられない人だって結構いるはず。

でも、だからといって身分証明書を持参しなくて良いというわけではない。一応もってこいとは指示されているのだから、万が一入場時に提示を求められ、提示できなけりゃアウトだ。何時間も炎天下列に並んだ末それじゃ情けない。やっぱり忘れずに持参するようにしたい。

遥かなり入場門

三笠公園の広大な敷地には、カラーコーンとパイプがびっしりと敷き詰められ、つづら折れで隙間なく整列させるようになっていた。幸いこの時間はまだ客足が短いと踏んだのか、この緻密なつづら折れは活用されずスルーされていたが、これを見たわれわれはぞっとした。

「昼時に訪れてりゃ、この列に並ばされていたのか・・・」
「暑い中、これはイヤだ」

三笠門

ゲート手前には、迷彩服を着た日本人が警備に当たっていた。どこの人だろう。

ゲートが見えたところでカメラを構えたよこさんに対し、

「ゲートの撮影はしないでください」

と静止してきた。ゲートは機密事項になるらしい。どのような警備状況か公になると、その警備の手薄なところを見つけられて突破されるかもしれない、ということだろうか?なので、上記の写真が「撮影可能なギリギリの場所」ということになる。

ゲートにはテントが並び、それぞれのところで金属探知機通過ののち手荷物検査が行われていた。さすがに麻薬犬がうろうろしているようなことはないが、それなりに緊張感がある空間だった。

「お前ダメ。帰れ」

と言われたらどうしよう、と少し心配だったが、特に何もなく通過となった。ちなみに手荷物検査は、迷彩服の日本人が行い、アメちゃんではなかった。

三笠公園ゲート

無事ゲート通過したので、カメラ復活。

三笠公園ゲート

三笠公園ゲートを通過する。

ゲート、といっても裏門のようなところだ。日常使いするところではなさそうだ。門番が詰める場所も特にはない。手荷物検査場を広く確保するために、便宜上三笠公園側を入り口にしたのだろう。さすがに、基地にいったん入れてからそこで手荷物検査というわけにはいかないから。基地の門をくぐる前に、問題ある人は排除しなければいけない。

ちなみに、入場専門。退場は別のゲートを利用することになる。

びっしり書かれた警告文

ゲートの中はアメリカ領土。日本からでも、日帰りできるアメリカが横須賀基地。

当然ここはアメリカの法律が適用されるわけで、またこの基地内にいる軍人さんは軍法によって裁かれるわけであり、日本の常識が通用する場所ではない。

ほら、ゲートの正面になにやら注意書きが書いてあるぞ。

熟読しないけどずずーっとスクロールして、「了承」ボタンを押しちゃうような、そんな感じのことが書いてある。

でも、その内容は結構シビア。端的に言うと、「怪我したり死んでも文句言わないです。基地の職員は完全に免責です」ということだ。すげー。

基地のスケジュール

基地の案内図およびイベントスケジュールが張り出されていた。

地図に関しては結構アバウトで、これだけ見ても基地初訪問の人ならよくからないことがある。アメリカ流の大雑把さなのか、それとも機密保持の観点からわざとざっくりとした地図にしたのか。おそらく後者なんだと思う。

なお、基地の中に入れるといっても、どこでもうろつけるわけではない。広大な基地のごく限られた場所だけ、立ち入りができる。今回の公開範囲についていえば、海軍らしい工廠や船着場はちらりとも見ることができなかった。陸軍基地の公開です、と言われても違和感を感じないくらいだ。

スタンプが押せる場所
米軍スタンプGET

記念スタンプに群がる人たち。

「こんなん、押してもどうせすぐに紙は捨てちゃうんだけどなあ」

とかいいながら、やっぱりわれわれもスタンプを押す。なんかね、「せっかくだから」という気持ちになっちゃうんだよ。ましてやここはアメリカ領だし。

マクドナルドの基地限定メニュー
横須賀基地店開放日メニュー

三笠公園ゲートから基地内に入ってほどなく、マクドナルドの建物が見えてくる。

これも一般公開されており、一般来場者も入場してハンバーガー類を買い求めることができる。

「わざわざ基地にやってきてまで、マックを食べなくても・・・」

と思うが、何しろ「横須賀基地だけの限定メニュー」という言葉がわれわれを挑発しているのだからたまらない。気になるじゃねぇかこの野郎。

「やっぱり本場アメリカって、肉とか料理のサイズが全部違うんだよな。日本のは小さすぎなんだよ」

とよく言うし、実際僕もアメリカに行った際、スケールの違いにびびったものだ。では、米軍基地内のマックではどうか。

横須賀基地限定メニューは4種類あるらしい。いわく、

・Big’n Tasty
・Ranch BLT Crispy
・Club Crispy
・AClassic Crispy

だという。ご丁寧に日本語の解説まで書かれていて、わかりやすい。「Big’n Tasty」は、

NAVY版BIG AMERICA!基地ではこのバーガーが大人気。ボリュームのあるビーフにレタス、トマトをはさみフレッシュに仕上げたバーガーです。基地にきたら一度は食べてみてください

・・・だ、そうだ。

値段はどうかというと、案外普通。Big’n Tastyは単品$3.20、セットで$7.65。アメリカだから激安、というわけではなかった。でも、ちゃんと単品価格を含めて提示しているあたりがとても好印象。メニューすら、値段すらまともに見せようとしない日本マクドナルドはこれを見習え。

このメニューボードの前で記念撮影をする人多し。こういうのひとつとっても、珍しいし楽しい。

うおお、肉が焼かれているぜ!

マクドナルドの対面には、普段駐車場にでも使われているのか広いスペースがある。

見ろ!そこで肉がガンガンに焼かれているぞ!

これこそが僕らが見たかった光景。いかにもアメリカン!肉食うぞ肉、焼きまくってるダディクール、って感じがいい。

肉がびっしり並んでる!USA!USA!

この光景を見るためにこの地を訪れたといって過言ではない。

肉が網いっぱいに敷き詰められ、野蛮に焼かれていた。すげー。日本の屋台では多分見られない光景!

「うまそう!」という気はあんまりしないんだが、とにかくすごい。これぞワイルド、これぞアメリカって感じが、とてつもなくいい。

ステーキを売る屋台

まだ時刻は早い。本日のメインイベントと捉えていた、肉がっつりは時期尚早感がある。とはいえ、既にこのステーキを求める長い列がお店の前に並んでいた。これは、昼時のピーク時にタイミングを合わせるのは無理っぽいな。ちょっとまだ気分はアイドリング中だけど、さっさと肉厚ステーキをかぶりつくことに決めた。

テントが立ち並ぶところがお店。こういう仮設ものをこしらえるのは朝飯前だと思う。何せ、軍隊なんだから。

8月で天候はひたすら暑い暑い。そんな中肉をガンガンに焼いていたら熱中症で倒れてしまう。肉を焼くのはオレの生きざま、というアメリカ人が多いとは思うが、さすがに適度に日陰で休憩してもらわないと。

システマチックな屋台の中

テントの中の様子。

テーブルをたくさん並べ、広々、整然とした作りになっている。日本のいわゆる「屋台」とは大違いだ。

こういうところでも軍隊だなあ、と思う。整理整頓は入隊直後に徹底的にしつけられることだろうから、そういうのがこういうところにも反映される。

ここも屋台
あっ!生ビール売ってる!

肉の行列にしばらく時間がかかるので、先にドリンクを確保することにした。ちょうど列の近くにドリンク屋台があった。

あれっ?

ビール・・・?

ビールが売られているぞ。

さっきから、道行く人が泡立ったドリンクを手にしてるな、と思ってはいたのだが、本当にビールだった。

驚いた。基地の中で、一般公開日にお酒を売ってるんだ!酔っ払いが出たら余計なトラブルのもとだから、お酒は一切売っていないものだと勝手に思い込んでいた。これは意外意外。

「ビールっぽいのがあるね」
「まさかー」

と会話していたのだが、その「まさか」だったとは。

売られているビールは、「米海軍横須賀基地ジャーキーズバーオリジナル生地ビール」というらしい。475mlで350円。安いなオイ。そうか、ここはアメリカ領土だから、酒税も当然米国基準が適用になるのだった。売価の50%近くが酒税となっている日本のビールとはわけが違う。いいなぁ。

見たことがないゲータレードが山積み

お酒を飲まないおかでんはジュース、ということになるのだが、これがまた強烈にアメリカンでとても良い。

ゲータレードが売られているのだが、そのサイズは950ml。これをゴクゴク飲め、ということらしい。やっぱりスケールが違うぜビッグアメリカ。でも、お値段は300円だからあんまりお得ではないような気がする。

日本じゃまず売れそうにない、ブルーハワイ色をしたドリンク

それでもこのゲータレードを買わずにはおれんのですよ。

何しろ、売られている何種類かのすべてが色がおかしい。日本人の感性では、普通この色には食欲がわかないよね、という色ばっかりだ。これはアメリカならでは。ぜひ今日この良き日に買っておかねば。

というわけで、よこさんは地ビール、おかでんは水色のゲータレードで乾杯。二人とも、早くもアメリカを満喫。

食品サンプルは肉だらけ!

肉屋台の行列は少しずつ前へと進んでいく。

メニューが見えてきたので、あらかじめ確認しておく。

ジャンボターキーレッグ(ミネラルウォーター付き) \1,100
ハーフポンドリブアイステーキディナーセット(コーン、マカロニサラダ、ミネラルウォーター付き) \1,250
ニューヨークステーキサンドウィッチ(ミネラルウォーター付き) \1,150
オフィサーズクラブハーフポンドバーガー(元祖ネービーバーガー ミネラルウォーター付き) \700
オフィサーズクラブハーフポンドチーズバーガー(ミネラルウォーター付き) \750
オフィサーズクラブハーフポンドチリバーガー(ミネラルウォーター付き) \900
ハーフポンドホットドッグ(ミネラルウォーター付き) \700
ハーフポンドチリドッグ(ミネラルウォーター付き) \800
チリカップ \300
ポテトチップス \100

うわー。どれもいい!目移りするなあ。

ほぼすべてのメニューにミネラルウォーターがついてくる、というのがアメリカ的発想だ。何でこんな余計なことをするのか、さっぱりわからない。ミネラルウォーター、欲しい人には単品で買わせればいいのに。

1 2 3 4 5

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください