第02夜:タイ料理/プリック@東京都豊島区
[2007年08月05日]
第二回目のスパイシーナイツは、開催が決定してからもお店の場所が二転三転するドタバタぶりだった。「お店のメニュー、全品これスパイシー也」というお店って案外少なく、一品二品が激辛です、というお店が多かったからだ。
渋谷にある、韓国の直火焼き肉店「ぶるだっく」にしようという話もあったが、肉の種類が違うだけでスパイシーなメニューは類似して多様性に欠けている。それでは新橋のメキシコ料理店にしようとしたら、日曜日は定休日だった。がっかり。
渋谷の「小肥羊」のように火鍋で辛い、というのも大変に結構なのだが、今は猛暑日に近い真夏。ちょっと鍋はご勘弁願いたい。また、汁物系で辛くするのは比較的簡単であり、そういうのはちょっと安直じゃーん、という気がしたのだった。別に安直でも何でもいいんだけど、なぜか却下。
そんな中で発見したのが池袋の奥まったところにある、「プリック」というお店だった。何でも田中康夫が自著で紹介して有名になったというお店らしく、相当年期が入っているようだ。
扱っているのは「イサーン(イーサーン)料理」といわれているもので、タイの東北地方の郷土料理だ。この地域はタイの中でも貧しい地域であり、タガメなどの昆虫を食べることで(バラエティ番組などでは)有名だ。
基本的に味付けは辛く、タイ人でもイサーン料理の辛さはキツすぎると思っている人がいるくらいだという。
うってつけではないか。
このお店に激しく興味が湧いた。しかも、webで検索してみると、こんな紹介記事が発見された。
さて、ここに来たらぜひ味わいたいのが、「お客さんに合わせるつもりはない」という、強気の味付けのイサーン料理だろう。
うおおお。即決。ここに決めた。
その強気の味付けでぜひ、ムエタイの打撃技のごとくわれわれをノックアウトしてください。「お客さんに合わせるつもりはない」?上等だ、それで構わない。逆に、「もっと辛くしてください」ってお客であるわれわれがお店に要求してやる。
・・・あ、駄目か。辛くしろ、というのも「お客さんに合わせるつもりはない」の一言で終わりかもしれん。
なぜか「現地・お店の前で集合」が常識となっているアワレみ隊OnTheWebのオフ会だが、今回もそのまんま踏襲。
池袋西口の繁華街をすぎ、住宅地が広がってきたな・・・とやや不安になりはじめたところにお店は存在していた。
マンションの1階部分だ。マンション入り口が建物中央にあり、入口を挟んだ隣は赤提灯が下がっている焼き鳥系居酒屋が営業していた。ものすごいギャップだ。
「飾りっ気無いお店ですね」
先に到着していたやっさんがつぶやく。
「逆にその方が期待できるんじゃないですか?来る途中、タイの宮殿か寺院を連想させるようなデザインのタイ料理屋がありましたけど、ああいうのって『ほら日本人はこういうのが好きでしょ?』って見透かされているような気がして、ぼったくられそうですよ」
「しかし、あの入口の上にある中途半端な電飾は・・・」
見ると、中途半端にうずを巻いた、電飾というか電球がちかちか光っている。あまりにもの悲しくて、全然店に彩りを与えていない。
「しかも、左側の電球は点灯しっぱなしでちかちかしないんですよ。そもそも、webで調べたときに見た写真だとここには店名が書かれた電飾看板があったはずなのに」
どうでも良いことだけど、なんだかこういうのが「味わい深」くて結構好きだ。逆に期待が持てそうだ。
もう一人の参加者・akeさんは完璧に道に迷い、「道に迷った!助けてー」というメールを送ってきた。いや、助けたくてもアンタ今どこよ、という状況だったわけだが、しばらくして汗だくで到着。
スパイシーなものを食べて汗をかこう、という趣旨が、既に「自ら汗だくになる」という予習をしてきたことになる。さあ、さっそく店内に入って注文しようではないか。
メニューを開くと、最初に書かれているメニューが「レモンガラス、エビ本炒め」というものだった。
レモンガラス。痛そう。しかも、ご丁寧に「あっ、濁点付け忘れた!」と気づいたのか、「レモンカラス」だったところをセロファンテープで継ぎ足し、「レモンガラス」にしている。惜しい、せっかくだったら「カ」を「グ」に変えるべきだったな。
それはともかく、こういうミスがあるということは本場の人が店を仕切っていて、まさに「お客さんに合わせるつもりはない」味の期待が高まる。既に気分はとってもスパイシー。
ぱらぱらとメニューをめくっていて気づいたのだが、どの料理もほとんど1,000円以上する。おや?「タイの食材店を姉妹店に持つ」ということだったので、廉価で本格的な料理が出てくると思ったのだが。
「このお店、値段はそれなりにするけどボリュームは結構あるらしいよ」
akeさんは言う。それなら良しとしよう。
しかし、麦酒がちと高いのが気になる。麦酒が全て600円。アサヒの生、瓶が600円だし、タイのシンハーやチャーンも600円。多分タイビールは小瓶で出てくるだろうから、ちょっとこれは気になる。
「今日はタイづくしでタイビールばっかり飲もうと思ったけど、駄目かも・・・」と既に弱気になる。小瓶で600円のものに大枚を払う気にはなれない。
ビールが高い、ということで料理全般にも疑惑の目が向けられてしまったわけだが、まあいろいろメニュー豊富で目移りしますわ、ほんと。
でも、写真撮影が素人によるものらしく、なんだかどれもどす黒い。イカスミでも入っているのか?というくらい真っ黒に写っている料理多数。「タイ料理とは真っ黒な料理なんだな」と勘違いしそうだ。
「写真写りが悪いんじゃなくて、この黒いのが昆虫だったらいやだな」
と一瞬思ったが、さすがにそれは口に出さなかった。
料理、どれを選んで良いのかちんぷんかんぷんなので、とりあえずakeさんの汗だくも気になることだし飲み物を。
上の写真がタイでおなじみ、シンハービールにチャーンビール。やっぱり小瓶で600円。下はマンゴージュース200円。やっさんはお酒が飲めないので、ソフトドリンクだ。
ビールグラスは非常に小さいものがでてきた。akeさんは乾杯後、一口で飲み干していた。女性でもできちゃう、それくらいのサイズ。その点マンゴージュースのグラスは大きくて量が多そうに見える。
「いいなあ」「羨ましいなあ」「量が多そうだなあ」
なぜかビール党の2名がうらやむありさま。量は瓶ビールと変わらないのだけど。
「あ、グラスにシンハーって描かれている!」「ホントだ」
自分で頼んだシンハーは一息で飲める小グラスで、全然関係ないマンゴージュースに大ぶりなグラスが回されている事に対してやや不満げなakeさんであった。
まず一品目、「ソム タム タイ」1,200円。タイ風青パパイヤのサラダだ。
青パパイヤは以前検疫のため日本には持ち込みできなっかった。そのため、日本のタイ料理店では刺身のつま(大根)をパパイヤのかわりに使っていたらしい。
なるほど食べてみると食感が刺身のつまに似ている。
赤いので、よっぽど辛いかと思ったが、そこまで辛いわけではなかった。ちょっとピリ辛、程度。
「いやぁ、お皿半分くらいをキャベツとキュウリが占拠してるから、辛さは半端じゃないのかと思ったんだが」
やや拍子抜けだ。まあ、サラダから激辛ってことはさすがにないだろう、次いこう、次。
「パッ カ パォ」 1,500円
具入りハーブ炒め(豚)
これもお皿の半分を生野菜が占めているのは一緒だが、肝心の料理はパクチーを中心とした各種香草がちりばめられ、なかなかに良い味わい。満足度高い一品だった。
・・・でも1,500円はあんまりな気がする。「量が多い」と言ったヤツだれだ、出てこい。
「パッ ペッ プラー ドゥク」1,800円
なまずの辛子味噌炒め
メニューの配置が「前菜」→「主菜」→「ご飯モノ」となっておらず、比較的ぐちゃぐちゃなので選択に多いに困った。
その結果、「なまず?なまずおもしろそうじゃん」と選んだのがこの料理。
辛子味噌炒め、という言葉だったが、まあ一言で言えばなまずグリーンカレーだった。なまずを食べるのははじめてだったが、淡泊な白身魚で癖が無く、こういう濃い味付けには向いていた。
ただ、辛さが足りない!最初オーダーしたとき、「できるだけ辛くお願いします」と注文しておいたのだが、話が通じていなかったようだ。タイ人の店員だから日本語カタコトだったしなあ。あ、いや、違うぞ。これぞまさに「お客さんにあわせる気はない」というやつか
でもせめて辛さくらいは・・・もう少し欲しいなあ。
さすがにあまり辛くないとはいえ、ビールが進む料理だ。600円で延々タイビールの小瓶を飲むのはばかばかしいので、主義主張を曲げてここは国産ビールにシフト。
akeさんが生ビールを頼んだので、おかでんは瓶を。大瓶が出たらラッキーだなーと思っていたのだが、案の定中瓶だった。ちぇっ。
akeさんのビールはよく冷えていて大変に結構でした。ただ、おかでんの瓶ビールは、それまでのシンハーなどと同様「ややぬるい」状態。この差は何なんだ。
不満に思っていたら、akeさんのジョッキがプラスチック製であることがわかった。よくスーパーなんぞで売られている、二重壁になっていて中に保冷剤が入っているタイプだ。冷凍庫に入れて中空部分の保冷剤を凍らせれば、ビールを注いでもぬるくなりにくいデース、というからくり。
そんなのはどうでも良くって、問題はサイズの違いだ。麦酒飲み人種でもある二人は、早速瓶とジョッキの量の差を測り始めた。同じ値段なのだ、量が多い方が勝ちだ。
見た目はほぼ同等と思われたが、二重壁になっているジョッキ故に思ったより量が入らず、結局小さいグラスいっぱい分もの大差を付けて(これ、重要。大差ですよ、大差)瓶ビールの勝ち。
「カゥ パッ」1,000円
具入り炒飯(海老、豚、鶏)
麦酒飲み人種の実験と格闘を尻目に、お酒を飲まないやっさんは炒飯を幸せそうに食べていた。
方や麦酒飲み人種たちは、「それだったら瓶ビールにジョッキをセットで頼めばいい」「いやそれはおかでんさん小心者のワタシにはできない」「頼んでみりゃいいんですよ。あのー、すいませーん」
相変わらず騒がしい。
「パッ ペッ タレー」1,800円
シーフードの辛子味噌炒め
先ほどのナマズも「辛子味噌炒め」だったが、こちらも同じ。しかしカレー味ではない。日本語で適当な訳が無かったのか、それとも訳者が下手なのか。
海老がぷりぷりしているし、きのこも美味。
いやあ、いいもんですなあタイ料理。
・・・いや、そうじゃなくて、「うはぁタイ料理きっついなあ」「辛い!もっと水を!」となることを期待したのに、全然駄目じゃん。
「若干は辛いんだよなぁ。辛さにわれわれ慣れきってしまったから辛く感じないのか、それとも本当に辛く無いのか?」
だんだん自分の味覚に自身がなくなってきた。
「ラープ」1,500円
ひき肉の辛子味噌炒め(牛)
物足りないので、炒飯に添えられていたナンプラーの唐辛子漬けを追加でオーダーし、その唐辛子をかじりながら料理を頂いた。それくらいしないと、なんとも物足りない。
「うまいんだけどね、過度に辛さに期待しすぎちゃったね」
「タイ料理って辛いと思ったんだけどなあ。違ったっけ?」
「??」
全員首をひねりながら、お店を後にした。
それにしても、ちょっと料金が高すぎだ。一人前、これにご飯とスープつけて・・・というには多すぎる量で数人で取り分けて丁度良いサイズだ。とはいっても、2,000円近くする料理もざらにあって、池袋の外れの住宅地という立地条件にしては強気な価格設定といえる。
最初の期待感が強すぎたせいもあるのだろう。
「お客に合わせるつもりはない=こりゃ辛いに違いないぞ」
「姉妹店でタイ食材店がある=安く料理が提供されるに違いない」
そういう思いこみが、今回やや失望してお店を後にした結果に繋がった。
味は悪くないと思うし、これからも頑張って欲しいお店だ。でも、われわれの基準では「スパイシー不足」。より先鋭化されたお店を求めて、第三回目はお店を選びたいものだ。
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