羊肉の会#7 「羊湯」といういい湯加減

スマホを使って料理を頼んでいく。

この手のオフ会は、最初のオーダーが一番の山場だ。「どういう作戦でこの会に臨むか?」というお互いの腹のさぐりあいだからだ。

せっかくだからお腹いっぱい食べたい、と思っている人がいるかもしれないし、適量でよい、と思っている人もいるだろう。金銭感覚も違う。そして、全メニュー制覇なんて到底無理なので、人によって食べたい料理の優先順位が違う。

今回は勝手知ったる人たちが集ったけど、それでも日頃飲食を共にしているわけではない。阿吽の呼吸、というわけにはいかない。

「この料理、面白いですね」

なんてメニューを見ながら、軽くジャブを入れあう。

でもそれではらちがあかないので、

「ほしい料理があったら、片っ端から注文しましょう。遠慮なしで!」

と声をかける。それでもやっぱり、遠慮はしてしまうのだけれど。

特に中国料理の場合、料理の分量の想定が難しい。とんでもない大皿で出てくることもあるし、少ないこともある。

「ひとまずちょっとずつ頼んで、様子をうかがって随時追加注文」というのが正しいやり方だ。でも、そういうやり方だと、追加注文をするときにまた「お互いの顔色伺い」が始まってしまう。できるだけ最初に、ガツンと頼んだ方が楽しい。

特に後半になってくると、徐々に訪れる満腹感とのバランス感覚が必要になってくる。満腹感は人それぞれ。自分がまだ空腹だから!注文するよ!と言っても賛同が得られにくいかもしれない。

そんなことを考えつつ、一発目のオーダー。

ここから先は、ひたすら料理の写真が出てくる。料理名が怪しいものもあるし、料理ひとつひとつに特にコメントはない。

そもそもこの料理がなんだか、もう覚えていない。「羊肉長ネギの強火炒め」だったっけ。

「強火」って言葉があると、なんかワクワクするよな。それだけで美味しそうな気になる。

羊腰のクミン炒め。

「羊腰、という概念があるのか!」

と感心する。いやそりゃまあ、動物なんだから腰があるに決まってる。でもこれまで羊肉を食べる際、牛豚鶏ほど細かく部位をわけて食べていなかった。いや逆だ、流通している部位が限定的なんだ。「羊の腰」なんて滅多に食べられない。

うまいか?と言われると、まあそこまでではないけれど、こういう機会だからこそ食べておきたい。

大人5名の参加だけど、大定番の料理である「ラム肉の串焼き」は2本しか頼まなかった。最低注文単位が2本だったから、その最低数に揃えたわけだ。

美味いに決まってる安定の料理だけど、今回はこれがザコキャラに見えてしまうくらい、他の料理がいろいろある。ここで胃袋のキャパを使ってしまいたくない。

羊肉の水餃子。

このお店の羊は、羊独特の臭みがほとんどなくあっさりとした味わいだ。そのせいで、この水餃子もあっさりと食べられた。僕の感想としては、「豚肉を使ったほうがコクが出てうまいような気がする」だた。

ゆで骨付き肉。これは初めて見た。豚肉でこういう料理はあるけれど、羊で食べるのは記憶忘れでなければ初めての体験だ。

肉は殆ど肉から剥がれてしまっているので、関節のげんこつ部分にごく一部だけコラーゲンが残っている。それをかじることになる。

なので、デカさと迫力の割には、たいした量はない。

日本人なら、こういう「手間がかかるけど量が少ない」ものはあまり好まないはずだ(カニを除く)。でも、骨付き肉の隅々までしっかり食す、というのは中国ならではの文化。

羊湯

これがお店の名前にもなっている「羊湯」。

全羊湯、羊肉湯の二種類があって、大中小3サイズ選べる。これだけのラインナップを揃えているのは、それだけ愛されている証拠なのだろう。へー。

ちなみに羊肉湯が「羊肉入りのスープ」なのに対し、全羊湯は「羊肉、ホルモン、タン、ハツ」が入っている。

頼んだのは、全羊湯の・・・ええと、小、だったっけ?

もうわちゃわちゃで、何を頼んだかさえ覚えていない。

味は、非常にあっさりとしている。「湯(スープ)」という名の通り、これそのものはおかずではない。あくまでもスープだ。

この羊湯をファースト・オーダーに入れた参加者に、僕は思わず「えっ、初回から頼んじゃいます?」と聞いてしまった。酒のつまみにはならないだろう、と思ったからだ。するとその人は「ええ、どれくらいの量かわからないですし」と答えた。確かに。

「羊湯は今回のイベントのメイン!最後に頼もう!」なんて腹積もりだと、羊湯に辿り着く前に満腹になる恐れがある。ほしいものがあったら、最初っから頼むのが正解だ。

ラム肉のモンゴル風。

「モンゴル風ってなんだろう?」
「塩味なんじゃないですか?モンゴルって複雑な味付けはしないだろうから。岩塩?」

と思ったら、予想と違うのが出てきた。こういうギャップを楽しむのも、初めてのお店の楽しさだ。

空芯菜のにんにく炒め。

羊肉ばっかり食べているわけじゃない。やっぱり、「野菜をもう少し頼みたいな」という人もいるので、こういう羊が一切含まれていない料理も頼む。

ちなみに、「ほうれん草と羊肉の和え物」というメニューもあるので、そこで野菜を摂取する方法もある。本当に羊料理が豊富だ。当たり前のように羊肉がメニューにコンニチハする。

ラムタンの和え物・・・だったと思う。記憶が怪しい。

これはなんだっけ、泡菜(白菜の漬物)と春雨の和え物みたいなやつ。

羊肉となすの味噌炒め。

「なすと羊が合体するのか!」と驚く一品。羊料理の店でこの組み合わせを見たのは初めてだ。

庶民的な料理っぽく見えるので、お値段も庶民的かと思いきや、1,518円。かなりお高い。このお店は、料理のコスト感覚がよくわからなくなる。高いようで安い、安いようで高いというのが混在している。

心管の串焼き。

心管ということは、動脈だろうか。さすがにかなり分厚い。消しゴムみたいだ。

これにクミンシードと白ごまをふりかけて、甘辛いたれをかけて焼いてある。

「ラム肉のモンゴル風」とよく似た別の料理。名前は忘れた。

にんにくがたっぷり入ったたれがうまいのだけど、食べ過ぎ注意だ。生にんにくを刻んでいるものなので、大量に口にするとヒリヒリする。

ゆで羊ハチノス。

料理が出てくる順番の関係もあるけれど、今回のオフ会の「シメ」となった料理は、ハチノスだった。最後の最後で食べるものではないと思うけれど、みんな黙々とこの弾力ある食材を噛み締めていた。

料理を囲んで、羊の話、それ以外の話、あっちゃこっちゃ飛び火しながら会話がはずんでとても楽しかった。特に、どんな料理が出てくるのか!?というワクワク感と、出てきたときの答え合わせが面白さを強めていた。

それにしても、こういう宴会の会話に僕はすっかり弱くなったな、と苦笑いしてしまった。みんながどちゃっと話をする場、というのにコロナ以降すっかり縁遠くなって、目に見えるもの・耳に聞こえるもを同時にいくつも並行処理するのが苦手になった。オンラインミーティングは、同時多発的な会話をするのではなく、所詮は「1対1の糸電話的な会話」の集合体だ。みんなが一斉に喋るということはない。

みんなで力を合わせて羊料理をあれこれ食べた、という楽しさもさることながら、あーだこーだと話をしながら料理と向かい合えた、というのが良かったし、料理に向けて全員が心を一つにした空間、というのも良かった。

コロナ次第だけど、また次も開催したい。

(2021.12.04)

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