未知の存在、「カエル鍋」を食べる会

久々にこのサイト「アワレみ隊OnTheWeb」のオフ会を開催するにあたって、行くべきお店はもう決まっていた。

カエル鍋だ。

これまで、オフ会ではシリーズ企画として辛いものを食べ歩く「スパイシーナイツ」、羊肉を食べる「ラム肉の会」をやってきた。もちろんこのシリーズは今後も続けていきたいが、「僕も!私も!参加したい!」という訴求力と集客力が落ちてきた印象がある。

激辛料理に関しては、単純に僕の周囲に「辛いものを食べたい!」という人が減った。激辛というのは若気の至り・その場の勢いでワイワイ食べる要素が強い。僕自身が年齢が上がると同時に、このサイトの読者層も年齢が一緒に上がってきており、「若気の至り」をしたい人が少なくなった印象だ。

でも、だからこそ「激辛のきっかけがあれば、また若気の至りを体感したい」というニーズはあると思う。単に激痛を伴う辛いものは除外するとして、「美味くて辛い料理」を発見したら、またオフ会の企画を立てたい。

一方、「ラム肉の会」は、ニーズはあるけれど開催しづらい企画になってきた。このオフ会シリーズが立ち上がったころは、まだ羊の肉を気軽に・手軽に食べられるお店はそんなに多くなかった。だからこそ、「おい、あのお店は羊をガツンと食べられそうだぞ」とわかると、みんなで押しかけていって食べる楽しみがあった。

しかし2024年の今じゃ、ラム肉は大衆化し、珍しくなくなってしまった。僕らが願った世界が実現したけれど、羊肉目当てのオフ会というのはやりづらくなった。

でも、まだまだ羊肉を面白く提供するお店は東京界隈にはいっぱいあるはずだ。そういうお店を見つけたら、オフ会を企画したい。

話を戻すと、今回のオフ会は「カエル鍋」だ。

上野から御徒町にかけて、中国人による・中国人のための中国料理店がものすごく増えた。コロナによる飲食店の閉店に乗じて、実に見事に中国資本がこの界隈に入ってきた。コロナが明けてもその傾向は続いており、いずれ池袋北口のリトルチャイナのような様相を呈してくると思う。

街が広いので、今後も西川口駅前のような異国情緒を煮詰めた感じにはならないと思うが、もはや右を見ても左を見ても、日本人が読めない漢字の看板だらけになってきている。

そんな中を歩いていて、「えっ」とびっくりしたのが、上野駅東口を出てすぐの雑居ビルの看板を見た時だ。「炭火蛙鍋」と書いてあって、ご丁寧にかわいいカエルの絵が書いてある。

漢字で「蛙」と書いてあっても、中国語では「カエル」を意味しないのかもしれない、と一瞬思ったが、このカエルの絵がある以上、間違いなくカエルを煮て食べる料理を提供するお店らしい。

これまでもガチ中華のお店はたくさん訪れてきた。カイコとかアヒルの首とかを提供するお店はいくつも見かけたが、カエルを出すお店というのは見たことがない。これは珍しい。

香港を旅したとき、市場で食用カエルが売られているのを見たし、お店でカエル肉を食べた。でも、日本では一度も食べたことがない。ぜひ食べてみたい!

しかもこのお店の推しポイントは、鍋が独特の形状をしていることだ。

まるでアフタヌーンティーを盛り付けているかのように、鍋が積み上がっている。真ん中の煙突に、ドーナツ状の鍋が輪投げのように刺さっている、独特のビジュアルだ。

お値段が安いと、このドーナツ型の鍋は1つだ。しかし、お値段高めになってくると、鍋がダブルになり、トリプルになり、果ては4階建ての鍋もある。この鍋を食べている最中に地震が起きないことを願うばかりだ。

ちなみに4階建ての鍋は13,800円と15,800円の2種類あって、13,800円のものは「蛙鍋とエビ鍋と鶏肉鍋とザリガニ鍋」なんだそうだ。15,800円は「海鮮人気四階」と書いてあった。

カエル鍋という未知なる食べ物、そしてこの鍋の外観。「一人だとなかなか食べようとは思わないけれど、みんなと一緒なら食べたい」という内容で、まさにオフ会向けだった。

というわけで、今回はメンバーを募集し、大人5名+弊息子タケの合計6名でお店を訪れた。

ぱっと見た目、値段は安くない。3,000円台、4,000円台のものが店頭メニューに掲示されている。「高いな!」と思うが、中国料理の場合は数名で食べることを前提としたボリュームなので全く油断がならない。

むしろ、こういう価格帯の料理がある、ということはガチの中華料理店である証なのかもしれない。

鍋に入れる追加の具は単品からオーダーできるようだが、「蛙鍋伴侶」と書かれているのがちょっとかわいい。

今日の鍋を共にする仲間たちとお店に入る。

おもわず全員が「ほほう」と声を上げてしまったのが、お店のテーブルの作りだ。

テーブルの真ん中に、ステンレスのくぼみがある。ガスコンロの口があるわけでもなく、換気口が空いているわけでもなく、単にくぼみだ。まるでボウルのようだ。どうやら、ここに鍋が収納されるらしい。

「そうか、炭火鍋って書いてあったもんな」

だからガスのホースなどは必要がない。

とはいえ、まずこの段階から異国感があって、楽しい。

以前、「東北農家鍋」を食べた時とはまた違ったテーブルの作りだ。

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東北農家鍋も、ディープ極まりない料理ではあるが、最近は西川口にいかなくてもあちこちでこのスタイルの料理を出すお店が出てきている。それだけガチ中華が増えた、ということだ。

上を見上げると、天井から店名の看板がぶら下がっている。これもまた日本では見慣れない光景で面白い。

店内にいるお客さんにお店のPRをすることに意味はないが、鍋と一緒に記念撮影をすると背景に店名が写り込むかもしれない。

最近のガチ中華の多くがそうであるように、このお店も注文はネット経由になる。

卓上にタブレットが置いてあって、それで注文するスタイルではなく、自分のスマホから注文するスタイルをとっている。テーブルごとに、メニューのURLが微妙に違うのだろう。特にログイン認証などなく、そのままスマホのブラウザから注文が通る。

こうやってさっさとIT化を進める中国系の人はすごいと思う。店舗運営の効率が良くなるだけでなく、「店員が日本語を流暢に喋れない」問題を解決してくれるからだ。

メニューを見てみると、概ね日本語の内容を理解できるものの、ときどき変なものもある。「美味しい前菜」という項目があったり、「食欲上げて大根等かき混ぜ」というメニューがあったりするからだ。おもわず微笑んでしまう。

我々が頼んだのは、蛙鍋と牛肉鍋の二階建て。お値段6,980円。

どん!とテーブル真ん中のくぼみに鍋が置かれた。全員、思わず唸る。これはすごいビジュアルだ。

下段にカエル肉、上段に牛肉。

「鍋」というものの、その鍋のフチからずいぶんと積み上がった状態で具が見える。お肉マシマシだ。

鍋の真ん中に太い煙突が刺さっているので、実物を目の前にしてもこの鍋のボリュームがぜんぜんわからない。大人5人では多すぎたのか、それとも大したことはないのか。見たところ、相当多そうだが・・・。

「なるほどねぇ」とみんなが感心したのは、真ん中の煙突部分には排気量を調節できるフタがついていたことだ。

この鍋の火力は炭なので、この煙突を大きく開口すると火力が増し、フタをほぼ閉じると火力が落ちるという仕組みだ。

そして、鍋は熱伝導率の良い銅が使われている。だから、こんな変なドーナツ型でもちゃんと料理が温かい。

あー、カエルですね。確かにカエルだ。

下段の具をつぶさに見ていると、言われてみるとカエルっすねこれ、という物体があった。

そんなものが鍋の中にびっしり。「ちょっと入ってます。よく探してみてくださいね」というレベルではない。カエルだらけ。むしろそれ以外の具を探すほうが大変なレベル。

日本人が鍋と聞くと、スープの中に具が沈んでいるような主従関係をイメージする。でもこの中国的な鍋の場合、具がメインであり、スープはおまけだ。スープというより、タレに近い印象だ。

カエル肉。

なるほど、これは・・・後ろ足か。ちゃんと手の骨が見えるし、関節もわかる。

加熱してこのサイズなのだから、生きているときはどれほど大きかったんだ?食用ガエルはウシガエルの仲間だと思うけれど。

日本でも、マイナーではあるもののヘビとかカエルを食べる文化はあると聞く。でも食用としてカエルが大規模に飼育されて流通ルートに乗っているという話は聞いたことがないので、食べる機会は殆どないのだろう。それだけ、日本においては「(合理的に考えても)食べたいと思わない」食材なのだろう。

将来の食糧危機に備えてコオロギ食を普及させよう!という話があったのに、「カエル食」という話が出てこなかったのは、それだけカエルにトータル的な魅力(飼育の容易さ、美味しさなど)が足りなかったからだろう。

鍋を大人5人で食べるのは、さほど問題がない量だった。とはいえ、たぶん3人なら鍋だけを食べてお腹いっぱいだし、2人ならば鍋を持て余すボリュームだ。やはりガチ中華は大人数向けとなる。つまり、オフ会向けだ。

鍋の上段下段とも、味付けは一緒だったと思う。麻辣味で、四川料理の定番料理「水煮牛肉」の味だったと記憶している。なので、食べているうちにだんだん味に飽きがくる。そして辛くて痺れるので、「もうそろそろ味覚をチェンジさせたい」という気持ちになる。

そんなわけで、他の料理もあれこれ頼んでみる。

酢くらげ、980円。

どれを頼んでも赤黒く、辛い。

干し豆腐の和えのも、580円。

「和え物」ではなく、「和えのも」なのだ。

きゅうりの和えものも辛いぞ。

弊息子タケ2歳、まったく食べられるものがない状態。2歳だから、辛いものは食べられない。

辛牛すじの和え物、880円。

青菜炒めは辛くないのだが、にんにくがガッチリきいているので違った辛さがある。

ピーナッツとほうれん草等かき混ぜ、680円。

水餃子。これならみんな大丈夫。

みんな、マラソンの途中に水分補給所にたどり着いたときのように、ほっとして水餃子を食べた。追加で頼もうか、という話が出たくらいだ。

白菜と挽肉等水餃子、880円。

美しい飴色のパン。練乳を浸して食べる。この練乳でみんな辛さと料理の熱さを中和。

揚げ饅頭、780円。

串焼きも赤黒い。

長葱とハムが乾燥豆腐巻き焼、200円、饅頭焼き、150円。

タケはとうもろこしが大好きなので、あまり食が進んでいないタケのためにとうもろこしを頼んだ。

出てきたのは、見た目からしてつぶつぶ感のない、もっちりしたとうもろこし。ああそうだ、中国のとうもろこしって、「糯玉米」といってモチモチした食感の食べ物なのだった。日本でよく食べられる、シャキッとした歯ごたえのものではなく、歯ぬかりする食感だ。

これを食べたタケは思っていたものと違ったため、悲しそうな声を上げた。

この手の串焼きメニューの中に、パンがあった。「パン焼き 150円」と書いてあるので、何が出てくるのだろう?と思って頼んでみたら、そのまんま食パンのトーストが出てきて笑った。

ただ、よく見るとこのトーストの上に砂糖が少々まぶされており、甘い味付けだった。タケはこれをもぐもぐと食べた。

いやあ、驚きの体験だった。こうやって見たことがない料理がみたことがない調理法で出てくるのは、やっぱり楽しい。一人じゃ尻込みするけれど、みんなで「どうなるんだろう?」とワクワクしながら料理の到着を待つ、というのはオフ会ならではの楽しみだ。

今回、お会計はドリンク込みで一人4,000円~5,000円程度だった。珍しいものを食べた割には思ったより安くついた。またこういうお店に訪れたいものだ。

今回のオフ会に参加してくれた、ゆうどんさん、よこさん、もぐさんに感謝。

(2024.03.04)

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