2000年11月04日
【店舗数:063】【そば食:133】
長野県上水内郡戸隠村
ビール、ざるそば
戸隠中社の駐車場に車を停め、戸隠の町を歩く。もちろん、散策ではなく本日三軒目の蕎麦屋探しだ。しっかしまあ、一体どこからこの人は発生したというのか、と呆れるくらい人が多い。どのお店も行列、行列、行列だらけだ。昔、生物学がまだ確立されていなかった頃、「かぶと虫は腐った木から産まれる」「ハエは動物の糞尿から産まれる」といった誤解がまかり通っていたらしいが、この戸隠の混雑っぷりを見ていると、「人は蕎麦から産まれる」のではないかと疑ってしまう。
こういう場所にわざわざやってきて蕎麦を食おうってぇんだから、ほぼ全部のお客さんは複数名で訪れていた。そんなわけで、一度店に入ったら結構長っ尻で、客の回転があまりよろしくない。「ずるるるっと手繰って、ぱっと引き上げる」なんていう江戸前な粋の世界をこの地で求めるのはどだい無理だ。
時刻は昼下がり。もう少し待って、おやつの時間くらいにまでなれば客足が減るかもしれない。行列ができている繁盛店はそのころに訪れればよかろう。そんな判断で、われわれは主要道から一本入った裏道を歩いてみた。すると、おや、こんなところにも蕎麦屋があった。名前は「戸隠食堂」と言うらしい。幸い、行列はできていないようなので、ちょっくらお世話になることに決めた。
そういえば先ほど入ったお店が「奥社前食堂」で、今回入ろうとしているのが「戸隠食堂」。どうも、今日は食堂づいてるな。もっと言えば、本日一発目のお店が「大久保の茶屋」なわけで、「茶屋」→「食堂」→「食堂」という行脚をしていることになる。店名だけ見れば、一体何を食べ歩いているのかさっぱりわからない。甘味食べ歩きをしているんである、とうそをついても、蕎麦好きでない限りはバレないだろう。
店に入ってお品書きを見る。やはりこのお店も「食堂」と名乗ってはいるが、基本的にも応用的にも蕎麦屋だった。この地で、カレーライスや焼き魚を食べようと思っても、ひょっとしたらそのような店は一軒も無いのかも知れない。まあ、戸隠に来てカレー食べる奴など滅多に居ないだろうが。
でも、お品書きの中に「おでん」という唯一蕎麦屋っぽくないメニューが入っているのは、「蕎麦はもう食べたくない」という人のための配慮だろうか。そういえば、奥社前食堂もおでんがメニューにあったな。冬はこの辺り、猛烈に寒いので暖かい料理を、という配慮なのかもしれない。でも、単純に温かければ良いのであれば、豚汁を出しても良いはずだ。謎。
そういえば、香川県のうどん屋には当たり前のようにおでんが置いてあったが、あれと同じなのかもしれない。うどん屋におでんが置いてあるんだから、蕎麦屋にあったっておかしくはない。
食券を買い求めて、蕎麦が出てくるのを待つ。とりあえず、ビールをぐびり。白菜の浅漬けがついてきた。ぽりぽり囓る。うん、うまい。
ここのお茶はセルフサービスになっていて、テーブルに置いてあるポットから自分で湯飲みに注ぐスタイルだった。ポットには、「そば茶」と記されていた。そういえば蕎麦屋にはよくお邪魔していたが、蕎麦茶を頂くのは随分と久しぶりのような気がする。有り難く頂戴した。
奥社前食堂で天ぷらを食べていた同行者が、今回も「まだ蕎麦を食べたいという気になれん」と呟きつつそばがきを注文していた。出てきたそばがきは、木の葉型をしたものでお茶碗の湯船につかって良い湯だな状態になっていた。今までおかでんが見てきて、食べてきたそばがきは「馬鹿みたいにデカい升の中に、完全溺死体としてそば湯に沈んでいる」状態のものだったわけだが、こうやって首から上を出してコンニチハしているそばがきもあるのだな。薬味として大根おろしだけ用意されているのも初めて見る光景。わさびは添えないんだな。
ざるそばを頂く。そういえば、ここ戸隠では「もり」と「ざる」の違いというのは存在しないようだ。山奥という位置関係から、海のものである海苔を載せるという文化が無かったのかもしれない。・・・強引な推理だが、さてどうかな。
蕎麦は、ここでも「あれっ、見かけによらずおいしいんじゃないですか」という感じだった。さすがは戸隠だ。観光客わらわら、の地で一球入魂な蕎麦打ちは難しいと思うが、よく頑張ってるなあ、という印象を受ける。絶品の蕎麦か?と言われると、決してそうではないのだが、蕎麦テーマパークの地としてはまずまずなんではなかろうか。
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