仲仙寺 正心庵

2002年02月09日
【店舗数:118】【そば食:212】
長野県伊那市西箕輪

分福そば

仲仙寺正心庵

名人亭のあるみはらしファームからもうちょっと山に分け入ったところに、「仲仙寺」というお寺がある。そこでは、お寺の奥座敷で蕎麦を供しているらしいという情報をキャッチした。お寺で蕎麦!なかなか楽しそうなシチュエーションではないか。お寺の門前町で蕎麦、というのは全然珍しくないが、お寺そのものが蕎麦屋を営んでいるというのは非常に興味をそそられる。これはぜひ行ってみないと。

名人亭と番地以外は同じ住所、ということもあってすぐ近くにそのお寺はあった。到着してみたら、しーんと静まりかえった境内がそこにはあった。お寺ならではの、引き締まった空気。てっきり、「蕎麦屋が主体で、お寺は片手間のなんちゃってお寺」なのかと思っていたのだがそれはとんでもない勘違いだ。天台宗仲仙寺は慈覚大師による創建で、約1,000年の歴史があるという。由緒正しい古刹ではないですかこれは。後で調べてみたら、なるほど地元に密着した、親しまれているお寺だと言うことが分かる。えええ、そんなところでお蕎麦?こりゃますます面白い。

・・・とはいっても、人気が全然無いんですけど。雪をかきわけて訪問したせいもあるし、時刻は既に16時近い。まあ、普通は「ちょっと蕎麦でも食べていくか」っていう時間じゃあない。大丈夫か、営業やってるのか?・・・そもそも、入り口がよくわからないんですけど・・・ああ、ここか。白い障子で仕切られているここが入り口だな?下駄箱が軒先に用意されている。そして、おお、「手打そば」ののぼりが。よかった、ここが蕎麦を提供してくれる場所であるというのは間違いなさそうだ。

と、は、言ってもだ・・・玄関から建物内に進入しても、さて一体お店はどこかいな、と。「す、すいませーん」不慣れな場所故に、ちょっと声も不安気味で声を発したら、店員さんが出てきた。一同ほっとする。やっぱり大丈夫だった。良かった。

お寺の中で蕎麦が食べられるなんて

きーんと冷え切った廊下を歩き、食事ができるお座敷に通してもらった。和風建築の場合、ものすごく冷える。外に居るときよりも寒く感じてしまうことがある。これは、狭い家で、なおかつ断熱材に囲まれて生活するのに慣れてしまったからだろうか。「建物の中が寒い」ことに対して、驚きを感じてしまう。

そんな先にある、ストーブが効いているお座敷。ああ、ありがたい。これだけでも十分なごちそうですよ。

目の前にご本尊が鎮座していて、お香のにおいが立ちこめているようなところで蕎麦を供されるのかと思ったが、さすがにそういう事はなかった。普通のお座敷だ。あと、一人一人旅館の宴会料理みたいな、お膳が据えられて、その前で正座して食事をするのかも・・・と勝手な妄想をしていたが、それも違った。重ねて言うが、普通のお座敷だった。

とはいっても、窓の障子の上にはなにやら難しい漢字が彫り込まれたりしている。えーと、これは一体何て読むんだろう?理解できなかった。どうやら仏教用語だというのは分かったが。

大きな文字のお品書き
「般若湯」がお品書きにある!

お品書きを見る。おお、何だかすごく潔い。ででーんと、大きな字で記載されているぞ。

さすがお寺だけあって、殺生を伴うようなものは一切無かった。鴨料理無し。当然、馬刺みたいな四つ足動物料理なんてもってのほかだ。

とはいっても、おやうれしいじゃないか、般若湯があるぞ。昔、お酒が御法度だったお寺では、お酒の事を「般若湯」と呼びこれはお酒ではないとして飲んでいたらしい。このあたりのネーミングセンスが非常にお寺っぽくて良い。ぜひ頼んでみたい・・・と思ったが、もういい加減今日はお酒を飲み過ぎた。体が粕漬けみたいになってきたので、もうやめておく。ちなみに、ビールはビールなんだな。これも手頃な名前をつけてあげればいいのに。例えば、「般若水」とか。「薬師水」とか。

分福そば

さてお酒は辞退したものの、食欲だけは相変わらず旺盛ってことで、注文したのは分福そば(1,200円)。

どんな蕎麦かと思ったら、まるで仏壇の仏様に差し上げる料理を盛りつける食器のような、小降りのお皿5つにそれぞれ蕎麦がもりつけられていた。5種類の味をお楽しみくださーい、というわけだな。ええと、猪口がないので、ぶっかけで食べるのね。

その5種類とは、大根おろし、芋の天ぷら、とろろ、山菜、ししとうの天ぷら。日本中が涙に暮れたというお話「いっぱいのかけそば」では、貧しい親子がいっぱいのかけそばを分け合って食べた、という話だった。大丈夫ご安心を、この分福そばだったら5人で分け合うことができるよママ!

・・・馬鹿いえ。値段が1,200円という時点で、貧乏な家族は食べないって。

もりそば

こちらはもりそば(700円)。

二段重ねで供されている。

抹茶とお菓子

寒いのに冷たい蕎麦を食べ続けて、体調を悪くしたメンバーが一人いた。彼女は「抹茶とお菓子(500円)」で糖分と暖を摂取していた。こういうのがお品書きにあるのも、風情があってよろしいです。

お寺で蕎麦を食べる、というシチュエーションだけでもう、おなかいっぱいになっちゃうようなところだ。これはなかなか穴場なお店(?)だ、と思った。隠れたお薦め。

・・・とはいっても、現在は蕎麦屋としての営業をやめてしまったという未確認情報を入手した。もし興味がある方は、事前にお寺に確認した方が良いと思う。

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