越後本手打ちそば しんばし(02)

2003年04月17日
【店舗数:—】【そば食:243】
新潟県南魚沼郡湯沢町

天へぎそば、冷酒

しんばし2回目。まさか、もう一度ここにくることになるとは思わなかった。とりたてておいしいとも思わなかったし、値段が高めだなあ、という印象があったからだ。そもそも、越後湯沢といえばスキーに行くか温泉につかるかのどっちかの用事で赴くわけだが、スキーのついでに蕎麦っていう気はしないし、温泉ついでに・・・っていったって、湯沢の温泉に つかったら、その勢いでそのまま日本三大薬湯の一つである松之山温泉まで高飛びしてしまいそうだ。・・・まあ、要するに蕎麦屋そのものにも、立地条件としてでも魅力薄 、というのがこれまでのおかでんの認識だった。

それが、よりによって越後湯沢に「出張」という案件が入ったもんだから事情は変わった。しかも、一人で行くならともかく、合計4名による出張だ。一人だったら、悪いけどしんばしに行こうとは思わなかったかもしれない。 一人で湯沢で食事をしよう、という事になれば、駅の立ち食い蕎麦屋に向かっていた可能性が高い。この立ち食い蕎麦屋は、おかでんは非常に好印象を持っているからだった。

しかし、その4名のうち最年長の方が「そばがたべたい」と提案をしたので、しんばしと相成ったわけだ。その方はそれほど蕎麦通というわけではないのだが、「しんばし 」という名称は知っていた(もしくは誰かに教えてもらった)。やるじゃん「しんばし」、相当な知名度じゃないか。
3年ぶりのしんばし。さすがにスキーシーズン外の平日昼間だということで、お客さんの数はすく・・・あれ、案外いるぞ。もちろん、すし詰め状態ではないのだが、地元民っぽくないところをみると観光客だろう。

「越後に来たからにはへぎそばでしょう」という、最年長の方の意向を踏まえて「 天へぎそば4人前」を注文した。正確な値段は覚えていないが、6,200円程度だったと思う。

3年ぶりに訪れてみると、不思議なことにメニューが増えていた。っていうか、めっぽう増えていた。以前は、酒を飲もうにもつまみがなく、しゃーないので甘い蕎麦団子を肴に した記憶がある。あと、値段が高くてびびってしまい、結局「かけ」と「もり」をそれぞれ食べるにとどまったような。

にもかかわらず、今こうしてメニューをみるとどれもそこそこ手頃な値段に見えた。いや、値段はほとんど変わっていないのだろうが、蕎麦が千円以上していても驚かないようになった、ということか。 生活がぜいたくになったのかねえ・・・感慨深い。その割には、財布にいつもカネがないのはなぜだろう。

・・・ああ、3年前と比べて散財癖がついてしまった、ということなのだな。 がっくり。
それはともかく、このメニューの差は何だ。おそらく、この3年で急激に品数が増えたのではなく、スキーシーズン用の「繁忙期メニュー」と、それ以外の「通常メニュー」で違うのだろう。
一品料理も充実していたようだ。今回、なぜかデジカメを店内に持ち込んでいなかったし、メニューを詳しく吟味していなかったのだが(ここらあたりで、今回この蕎麦屋に対するやる気のなさが伺える)、酒肴が別メニューとして用意されていた ようだ。何がメニューにあったかは、覚えていない。いつぞやのように、甘い団子で酒を飲む、という事は無さそうだ。

周囲からの「 お酒飲んだら?」という悪魔のお誘いをうけて、「上善如水大吟醸」をいただくことにした。1合、1000円。越後湯沢で有名な酒蔵といえば「白瀧酒造」ということで、やはりこのお酒を飲っておかないといけないでしょう。でも、よくスーパーの酒販コーナーでみかける タイプじゃおもしろくないので、飲んだことがない「大吟醸」でGO。

昆布の付きだしをつまみつつ、まさしく「水のごとく」飲んでみる。あー。なるほど、確かに大吟醸だわ。しかし、久しぶりに大吟醸酒を飲んだのだが、このわざとらしい香りってのはどうも苦手だ。あと、醸造アルコールの味っていうのも苦手。そもそも、蕎麦をいただく前にこんなに香る酒を飲むのはどうなのかと。純米酒あたりが一番いいかなあ。

とかいいつつ、普段は菊正宗を愉しんでいるような気がするのだが。あれは、たぶん本醸造だよな。醸造アルコールばりばりやん。ううむ。

あと、香りがたつのはだめだ、といっているわりには、樽酒で木の香りがするやつは「わはは!これぞ樽酒!」とかいって喜んでいるんだから、やっぱり論理矛盾してる。
さて、酒を舐めている間にへぎそばがやってきた。天蕎麦ということなので、陶器の蕎麦猪口が夫婦茶碗の婦人用くらいのものだった。
天ぷらは、茄子、たらの芽、海老、南瓜といったところ。もう一品、何かあったかな? 忘れてしまった。何しろ、真ん中にでーんとおわす海老に目を奪われてしまったからだ。

この海老、恐るべき長さを誇っていた。ざっと20センチ以上ある。その長さたるや、穴子の天ぷらかと思ったくらいだ。殻を剥いて、油で揚げてこのサイズなのだから、元の長さは一体どれだけあったんだアンタは、という長さだ。しかも、コンビニ弁当の天丼みたいに、 「海老1:衣3」という怪しい創作料理になっているのとは訳が違う。先頭から末尾までしっかり身が詰まっていた。何か、へんな増粘材をお注射してかさを増したのではないか、という事を疑ってしま ったくらいだ。いや、ご立派。

へぎそばは、特に布海苔つなぎの蕎麦ではなかったと思う。単にへぎに入っているだけのそば。こちょぼにまとめてあるわけでもなく、何となく出羽香庵の「大板そば」を思い出す。歯ごたえ、のどごし良しのそばだが、味 と香りはごく普通だった。もう少し香りと味がしっかりしていれば、非常に旨いそばなのだが惜しい。

お酒1合しか飲めずに、ちょっと不完全燃焼。これから加速するぞー、という状態だっただけに悔しい。でも、これから仕事(っていうか、仕事前に酒を飲むな)なのだから我慢しないと。

帰り道、みんなで議論。「ちょっと天ぷら高いな」という意見がでて、

「あの立派な海老は余計だろう、あれが無ければもっといろいろ天ぷらが出せたはずだ」
「山の中で海老はいらんのではないか、山菜とか出すべきでは」
「マイタケ、食べたかった」

などと議論が行われた。結論として、

「やっぱ、天ぷらといえば海老が無くちゃいかん人ってのが必ず世の中には一定数いるんだよ、だからはずせないんだろう」

という分析でしめくくられ、一同皆うんうんと頷いた。そう、「旅館料理に刺身がないと物足りないと感じるオッチャン」と同じ発想。なるほど、天ぷらにもそういう価値観ってのがあるのかもしれない。