2003年12月22日
【店舗数:—】【そば食:266】
長野県北佐久郡軽井沢町
そばがき、玉子焼き、野菜天ぷら、じゃがいも天ぷら、石臼挽きそば、ビール
アワレみ隊隊員・しぶちょお&ひびの結婚記念ということで、挙式の翌日に二人と軽井沢で落ち合った。
親戚や家族に対するアレコレやら面倒な儀式に疲れ果てたしぶちょおは、「硫黄臭の温泉にゆっくりつかりたい」とぽつりと一言。ならば、ということでとりあえず軽井沢に集合となった。草津か万座あたりにでも行こうや、というわけだ。
しかし、そのまますんなりと温泉に行くわけもなく・・・合流するやいなや、「蕎麦でも食いにいくかね」という話になってしまった。
もちろん、軽井沢といえば志な乃に行かなければ始まらない。軽井沢駅前にあった「かぎもとや」を完全に無視しつつ、志な乃に向かう。志な乃については、今年の夏に訪問してしぶちょお・おかでん共に大感激したお店だ。夏であれだけの美味なる蕎麦だったのだ、新蕎麦収穫後の今の季節だったらもっと美味いに違いない。
道中、志な乃初体験のひびに対して、二人がかりで「志な乃はいいぞぉ」と解説する。
「外見は『え?こんなお店がおいしい蕎麦屋?』って感じだけどこれがもぅ」
「『グルメロード』なんていうところに店があるけど、動揺してはいかんぞ?肝心なのは蕎麦の味だからな?」
なんて言っているうちに車は志な乃に到着。軽井沢駅から案外近い。しかし、外観をあらためてみると・・・
「うわ、そうは言っても、この街道筋の店が美味いなんてとてもじゃないけど思えんなあ」
と思わず口走ってしまう。
前回訪問時には「大大ジョッキ」なる生ビールがメニューにあったのだが、おかでんは車の運転があったために断念した経緯があった。しぶちょおがしっかりそのことを覚えていて、
「おかでん、今日は大大ジョッキ、心いくまで飲めるな。今日運転ないもんな」
と、まるで自分が飲むかのようにうれしそうな顔をして言う。
「いや、さすがにこの季節だと大大ジョッキはメニューから外れてるんじゃないか?外はこの雪景色だし」
とか言いながら店内に入ってみたら、案の定大大ジョッキはメニューから外されていた。それ以前に、生ビールサーバーが清掃された状態で店の片隅で沈黙していた。生ビールは夏期限定とのこと。
「ありゃー」
嘆息してしまったが、気を取り直して店の人に大大ジョッキの正体について聞いてみることにした。
「あの、すいません。このお店って夏にお邪魔したとき、大大ジョッキっていうメニューがあったと思うんですけど・・・ああ、今日飲めないのは分かってるんですけどね、一体どれくらいのサイズがあるのかなぁ、ってふと気になったもので」
すると、注文を取りに来たおねーさんは厨房に確認を取ってくれて、「ええと、800cc入るらしいですー」と回答してくれた。なるほど、でかい。でも、単なる普通の大ジョッキのような気がする。ま、それは兎も角、蕎麦屋でそれだけのサイズの生ビールが飲めるというのは驚きだし、羨望のまなざしだ。今度夏に来たときは、ぜひ開口一番「大大ビール、キンキンに冷えた奴を!」と注文することにしよう。
悔しいので、瓶ビールを頂くことにする。大大ジョッキとはほど遠いグラスに注いで、まずは乾杯。
そうこうしているうちに、なにやらえらくデカい桶がやってきた。おおそうか、しぶちょおとひびの結婚祝いということで鏡割りをしようということか。
・・・んな馬鹿な。店員が二人の結婚を知ってたらそれは逆に怖いわ。
フタをよいしょと開けると、中から湯気が出て、気がついたらフタをあけたしぶちょおはおじいさんに・・・結婚したばかりだというのに!嗚呼!
ええと、冗談はいい加減にして。 もちろん、中から出てきたのはそばがきだ。それにしても、毎度毎度感心するのだが、なぜそばがきはこのようにでかい塗り物に入って出てくるのだろう。大げさすぎる。こっちも、思わずそばがきだと分かっていても、たたずまいをただしてしまう。
このそばがきの面白いところは、まず表面がモコモコしているということ。あばたができているかのようだ。それが、桶いっぱいにどよーんと鎮座。結構なボリュームだ。
その上にわさびがちょん、と乗せられている。おや、わさび君ちょっと気が早いんじゃありませんか、アンタ普通は後から小皿で供される立場じゃないの、と思ったが、これが志な乃流なのだろう。
で、薬味の小皿には刻み海苔、ねぎ、大根おろしが並べられていた。どうやらわさび君だけ別格の扱いだったらしい。すごいぞ、お前。
さっそく、食べてみる。まず、お玉で三等分に分けてから、それぞれがすくい上げて食べた。そばがきという食べ物は、比較的餅に近い食べ物だと思っていたのだが、ここはおぼろ豆腐から豆腐になりかかった状態、といった感じでほろほろとした印象。食べていて楽しい。ざらつく蕎麦の食感を楽しみつつ、いただく。やや香りが弱い印象を受けたが、きっとお湯につかっていたから水を吸ったんだろう。醤油なしで食べても十分おいしい、注文して大正解な料理。
遅れることしばし、ビールの突きだしとおぼしき小皿が出てきた。おや、壷漬けだな、これは。その割にはえらくどす黒い。鰹節がまぶされているのかな・・・いや、違う。
辺りに漂うスパイシーなかほり
これはカレーですぞ?
食べてみて、確信。まさに、壷漬けカレー。これには、三人とも「ううん?」と首を捻ってしまった。
「ビールのつまみとしてはいいのか、な、これは・・・?」
「いやー、どうだろう?何か浮きまくってないか、この料理だけ」
味としては悪くないのだが、良くもない、渾身の創作料理だ。とおりゃーぁ。・・・いや、全然違う方向にシャドウボクシングをやっている感じっすよ、これじゃあ。
玉子焼きがやってきた。
あんかけになっていたとは予想外なり。ここのご主人、相当意欲的なお方とみた。
「いや待て、これはあんかけではない!」
おかでん、急に叫んだ。
「よく見ろ、これはあんをかけていない。あんの上に玉子焼きが乗っている。すなわちこれは『あん沈み』だっ!」
なんのこっちゃ。
見栄えとして、何か青みのあるものが添えられていると良かったかも知れないが、味はおいしかったですよ。やっぱり、冬の寒さが厳しいこの土地だと、こういう暖まる料理が良いですな。
あまりに志な乃への期待感が高かったため、ついつい食い地獄モードに突入してしまっていた。
玉子焼きを食べ終わる前に、どん、どん、と野菜天ぷらとじゃがいも天ぷらがやってきた。
右側のじゃがいも天ぷらは、じゃがいもを皮ごとスライスして揚げたものだ。これで300円。まあ、原材料はじゃがいも1個なので値段を高くしようがない料理だが、安くおなかいっぱいになるならこの料理が最有力だろう。
入口に、「本日のおすすめ」と書かれた黒板が置いてあったのだが、そこに「じゃがいもの天ぷら」と書かれていたので珍しくて注文した品だ。しかし、思い返せば8月末にこのお店を訪問したときも、「新じゃがの天ぷら」ってメニューにあったな。
3カ月を経て、「新じゃが」が単なる「じゃがいも」に格下げになった模様。
さて、同じく黒板に書かれていた「本日のおすすめ」、石臼挽きそば。950円なり。われわれがビールを飲み終わる頃あいになってどどーんと出てきた。
前回は、出てきた瞬間に「あっ、この蕎麦は!」とハッとさせられたものだが、今回は「ん?あれれ?」という感じ。見た目でのインパクトがない。
「ええと」
やや不安になりながら、食べてみる。
ずずずっ。
・・・
えーと。
しぶちょおの顔色を伺いながら、食べる。しぶちょおもなにやら難しい顔をしている。
おいしいのだ、確かにおいしいのだが、前回のインパクトが強すぎた。「この程度の訳がない」という、こちらが思い描いている蕎麦のレベルとのズレを感じてしまい、満足感の薄い状態に陥ってしまっていた。
「いやー、ぜいたくだなあ、あの程度でも普通だって思っちゃうんだからなあ」
店を引き上げながら、しぶちょおと語る。
「どうする?上田にある師匠の店『おお西』で責任とってもらおうか、弟子の蕎麦のカタキは師匠の店でとる、って事で」
「そうすっか」
気を取り直して、上田に向かうことにした。道中、ひびに向かって
「勘違いするなよー?あんなもんじゃないんだからな、志な乃って店は。すっげぇ蕎麦が出てきたんだから、ホントだってば」
と一生懸命アフターフォローしておいたのは言うまでもない。
蕎麦屋巡りの恐ろしいところは、こうやって一度美味なる蕎麦を食べさせてもらったお店に対しては、次からはお客の要求水準がメチャンコ高くなってしまうという事だ。だから、今回の志な乃訪問なんて一品料理含めて大満足のひとときを過ごさせてもらったんだけど、「いや、もっと美味い蕎麦が出せるはずだ!」というお客側の勝手な思いこみによって、マイナス要素が加算されてしまう。もったいない話だ。
でも、それだけの期待感があったということで・・・。
なんだかもやもやしながら、上田へと向かう。師匠、頼んまっせ!
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