2003年12月23日
【店舗数:150】【そば食:268】
長野県北佐久郡望月町
十割そば、地酒「職人館」

別所温泉で一泊後、では本日どないして過ごしましょ、ということになった。
昨晩、昔のアワレみ隊の写真をみんなで眺めていた関係もあり、「やっぱり昔みたいに蕎麦喰い歩きしなくちゃ、ね」という話の展開となった。単なる「温泉につかってゆっくりしましょう企画」が、いつの間にか「蕎麦食べ歩き企画」にすり替わってしまった。まあ、毎度の事だが。
しかし、手元には過去の蕎麦食べ歩きで使い古された「長野味本」ガイドブックがあったので、それを見ながら、未開拓のお店に行ってみることにした。
ひびは、「うー、蓼科の『みつ蔵』で蕎麦プリンを食べたいー」と後部座席から地味に主張してきたが、おかでんの「ばかもぬ!それでは新規開拓にならぬ」との一言であっけなく却下されてしまった。昨日訪問のお店は、2軒とも訪問歴のあるお店だったので、たまには「新しい店を開拓するドキドキ感」を味わおう、というわけだ。
で、結局別所温泉からそれほど遠くないところ・・・として、職人館が選ばれたというわけだ。
「おい、こんな田舎の田んぼの中に本当に蕎麦屋があるのか?」と不安になりながら、車は進む。なにしろ、カーナビでもピンポイントでこのお店の表示ができない。車に乗っている三人とも、何か標識が無いかどうか目つきを悪くしながら前方を凝視。
・・・あった!
ホント、田んぼの中にその蕎麦屋はあった。地元民相手にするにしちゃ、周辺住民少なすぎ。よくもまあ、こんなロケーションにお店を開こうと思ったモンだ。今でこそガイドブックに載るようになったから良かっただろうが、お店を立ち上げた当初は誰も客が来ない日だってあったんじゃないか?
それにしても、「職人館」という名前はどうだ。以前、駒ヶ根の方にあるお店で「名人亭」というのがあったが、それと系統は一緒だ。なんかちょっと恥ずかしい名前だが、「職人」を自ら名乗るからにはそれなりの自信があるのだろう。へんぴなロケーションであることも踏まえて、ちょっと期待していいかもしれぬ。

古い民家だからだろうか、入口は身をかがめてくぐるようになっていた。すると、客席でなにやらだべっていたオッチャンが「はい、いらっしゃい」とあいさつをしてきた。
「わ。あれが店主・・・職人さんか?めっさフレンドリーやで」
ドキドキしながらわれわれはひそひそ声でしゃべる。
「アメリカンな職人なのかもしれぬ」
もっと頑固っぽい人がやってるのかと思っていただけに、焦った。

前日夜、アワレみ隊の昔の写真をみんなで眺めていたところ、あることに気がついた。
「そういえば・・・僕って、昔はホント相当酒飲んでいたんだなあ。一日5軒蕎麦屋に行ったら、5軒とも酒を呑んでいるじゃないか」
「そうだよ、おかでん昔はよく飲んでいたんだけど、最近は大人しくなったよな」
「げげぇ。自分ではそんなつもりじゃなかったんだけど、いつの間に俺はこんなに地味で面白くない人間になってしまったんだろう?」
思い返せば、「へべれけ紀行」というこのサイトの1コーナー名も、実際にへべれけになりながら旅行をしていたから名付けたものであったっけ。今や、へべれけな旅行なんて滅多にない。
「いかんな、明日訪問する蕎麦屋では、呑まないと。最近、何となくこじんまりとまとまりすぎだったかもしれん」
そんなやりとりがあったので、本日一軒目の職人館では、問答無用で清酒を注文することにした。お酒の名前は「地酒 職人館」。お店の名前を冠した、オリジナル清酒だ。お品書きには、「地元の手植・清流米(職人館裏手の田んぼの米も)使用した純米酒」と書かれていた。
・・・密造酒・・・?
おいおい、失敬な事を言うな。ぐい呑み500円也を注文。

外を見ると、本当に田んぼしかない、ど田舎だ。
「ここに植わっていた稲が、これから呑むお酒になった、ということか?」
「恐らく、な」
などとのんきな会話をしながら、お酒がくるのを待つ。

お酒より先に、注文していた酒の肴の「みまき豆腐(350円)」がやってきた。北御牧村産大豆100%使用、とのことだ。
結構ごつい。上にしょうががのっているが、醤油は下だ。恐らく、醤油びたしにして豆腐の味をわからなくされないように、という配慮なのだろう。
一口食べてみる。うん、おいしい。
でも、豆腐のおいしさもさることながら、どうも醤油が特においしいようだ。若干の甘みがあって、醤油だけ舐めても結構イケる。

そうこうしているうちに、お酒と突きだしがやってきた。
お酒は「ぐい呑み」と書かれていたが、出てきたのは蕎麦猪口だった。そこに、お酒がなみなみと注がれている。むむう、これは武骨だが呑み心をそそるわい。
それにしても、昨日訪問の志な乃もそうだがなぜ突き出しが他の料理よりも後からくるのだろう。不思議でならん。
突き出しは、野沢菜、豆、キャベツを渾然一体として浅漬けにしちゃいましたというもの。いろいろな食感が楽しめて、おいしい。とくに豆の堅さはちょうど良く、「ふじおか」の漬け物を思い出させた。
向かいの席で、ひびが「うー」と唸りだした。何だ?と問いただしてみると、「お酒・・・呑もうかどうしようか」と一言。どうやら、呑むべきか・やめるべきかで葛藤中らしい。「構うものか、飲め飲め。ひびさんが呑むなら僕ももういっぱい飲む。この豆腐の醤油だけで何杯でも飲める」といい、こっちの手元にあったお酒をぐいっとひとあおり。カラにしてしまった。
しかし、追加注文しようとしたのだが、厨房が慌ただしくて、声をかけても反応が返ってこなかったため
「これはお酒はこれ以上飲んではイカン、という神のお告げに違いない」
と勝手に判断して追加注文断念。この辺りが、以前と比べて弱腰になってしまった典型的な症状なのかもしれない。

さてお待たせしました、お蕎麦の到着です。
っていうか、本当に結構待たされました。どうやら一度に2から3名分程度しかゆで上げられないようで、注文が立て込むとなかなか蕎麦が出てこなくなる模様だ。頑張れ、職人さん。
おかでんが注文したのは、十割蕎麦。1300円也。やや高い・・・というか、めっさ高い気がするが、まあおいしければ良しとしよう。
ずるずる。
うん、香り立つ蕎麦。これは良いぞ。高いお金を払った価値、あったかもしれない。
ずるずる。うんうん。
ずるずる。・・・嗅覚と味覚が蕎麦になじんでしまい、分からなくなってしまった。早っ!

ひびは、職人そば850円也を注文していた。見栄えは十割そばと大差ない。恐らく、こちらは繋ぎを2割程度混ぜているのだろう。
十割そばと職人そばを食べ比べたしぶちょおが、ちょっとだけ考え込み、そして「ひびさんの勝ち。おかでんルーザー(負け犬)」と一言。
「ええっ?そりゃあんまりだぜ、値段が全然違うんだから」
とあわてて職人そばをつまませてもらう。

うーん。
なるほど、ちょっとそれぞれの蕎麦は性格が違うようだ。
職人そばは、十割そばのような香りがあまり無い。しかし、食べている間口に広がる蕎麦の味がしっかりする。逆に、十割そばの方は香りはするのだけど、味がほとんどしないような印象がある。
しぶちょおによる総括:
「最初の一口二口は十割そばを食べて、あとは職人そばを食べるのがウィナー」
なんともはや。
繊細な香りの蕎麦ってぇのは、いくら香りが素晴らしくっても食べすすむうちに香りが分からなくなってきてしまうからなぁ・・・。
結局、一度わからなくなった香りはお茶を飲んだりつゆを飲んだりしても回復することなく、ぼんやりとしたまま食べ終わってしまった。も、もったいない・・・。

一方、こちらは山菜そば1,300円を頼んでいたしぶちょおのそば。
苦手なゆずを取り除きながら、
「山菜っていうならもっとキノコやら何やら入れてくれればいいのによりによってユズなんて」
とかぶつぶつ言いつつそばをすすり上げていた。
このお店は、他のメニューとして「どんぐりそば」とか「山ぶどうドレッシングのそばサラダ」といった変わりものが結構ある。きっと、研究熱心な職人なのだろう。
もう少し安ければ、面白いお店なんだけど。ちょっと高いかな・・・。立地条件が結構すごいので、「何かのついでに」立ち寄るって事は無いだろうし、このお店目的でもう一度訪問するということもなさそうだ。メニューで気になっていた「そばの実と放し飼い鶏卵のリゾット風」は食べられる事は無さそうだ。それが残念。
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