手打蕎麦 ぐらの(18)

2009年02月08日
【店舗数:—】【そば食:409】
埼玉県ふじみ野市大井町

田舎せいろ

西天神外観

百日紅に行った後、満腹ではあったが「せっかく高速料金払って日高市まで来たのだから」ともう一軒行くことにした。

朝一番で訪れた醤油蔵「醤遊王国」の裏手に手打ち蕎麦屋がある、ということは醤遊王国の地図に掲載されていた。そこに行ってみた。店名を「西天神」という。

入口には「土日限定十割そば」なんて黒板が出ている。こういう「限定」ものに弱いのは人間の性だ。

ただ、車の中でしばらく逡巡したのは事実だ。おなかがいっぱいだからだ。

しばらく悩んだ末、「駐車場まで車突っ込んでおいて帰るという選択肢はあるまい」と意を決してのれんをくぐった。そうしたら「満席なんですよー」との店員さんからのがっかりなお知らせ。見ると、空席ながらも「予約席」という札が立てられている席がいくつもある。どうやら、近隣住人さんの寄り合い場所にも使われているようだ。

がっかりした、というより「まあ、いいか。おなかいっぱいだから」と納得しつつ、退却。

ぐらの外観

そのまま都心に向けて帰っていたのだが、カーナビ上に飲食店の登録地点を示すアイコンが出てきた。ああそうだ、ぐらのだ。昔はこの蕎麦屋に散々通っていたなあ。片道40分かけて、毎週のように。なつかしい。

せっかくだから、立ち寄ってみることにした。数年間のご無沙汰なので、どうなったのか様子を見たかったからだ。ちょうど、関越道三芳PAがスマートETCになっていて、そこから外に出ることができる。三芳PAからぐらのまでは、すぐだ。

ただ、強引に高速道出口を作っちゃったものだから、ゲートを出てからが大変。車がすれ違えないような狭い道を右へ左へうろうろしつつ、ようやく川越街道へ。

そして、「ああ、ここを毎週のように歩いたなあ」という道を通り過ぎ、目指すぐらのへ。

うはあ、なつかしい。相変わらずだなあ。

駐車場はほぼ満車。自分の車一台がようやく入る事ができたくらいだ。店を後にした時には、駐車場から車が溢れて、歩道まで車が停まっているありさまだった。相当繁盛しているようだ。昔愛してやまなかったお店が今でも繁盛しているのは、とてもうれしいことだ。

お品書き

あいかわらずのお品書きでうれしくなる。

「モツ煮始めました」とか、「夏季限定でかき氷があります」なんてなっていたら大衆迎合的で悲しいが、このお店は相変わらずだ。かといって、お高くとまっている蕎麦屋ではなく、カツ重などのご飯ものもあるところがほんわかしている。

今回は田舎せいろを頼んでみる。せっかく久々に訪れたのだから、メインメニューである「石臼挽きせいろ」を頼むべきではないかとも思った。でも、つるつつっと手繰るのではなく、五感でこのお店の蕎麦を食らいたかったので、田舎せいろ。このお店の田舎は太いのが特徴。

忙しく動き回っている店員さんを捕まえて、注文する。お客さんが多いので大変そうだ。ええと、でも顔を覚えていないなあ・・・。数年来訪れていなかったので、あれだけ馴染みになっていたお店だというのにあまり店員さんの顔を覚えていない。というか、人が入れ替わったな、きっと。若女将さんはいないようだし、おかでん来訪時にはニコニコしながら清酒を勧めてくれていた背の高いお姉さんもいない。いや、背が高いお姉さんは店員さんでいる。しかし・・・この人じゃなかったよな、確か。ええと。

薄情な人間で申し訳ない。顔を覚えていないとは不覚だ。

そば膳メニュー

そば膳。ぐらのを語る上でこれは外せない料理。というか、こいつを食べてしまえば、ぐらのの酒肴+蕎麦の大半を楽しめてしまうという逸品。リピーター獲得を狙うために、こんなに「一挙大放出」しなきゃいいのに、とこっちが心配になるようなコース料理だ。

そんなそば膳は相変わらず健在だが、やはりご時世なので値上がりしていた。2004年訪問時には2,100円だったのだが、2009年2月時点では2,580円になっていた。結構な値上がりだ。しかし、その内容を考えれば非常に妥当な値段だと思う。今までが安すぎだったんだ。

料理の内容は昔と変わらず。ただ、最初に出てくる「そばがき(椀がき)」が別メニューに変更可能となってた。酒飲みで蕎麦好きな僕としては、最初に自分で蕎麦粉を練り上げ、myそばがきを作るのが大好きだ。しかし、お子様であったり、蕎麦はそんなに食べたいわけじゃない人からすると、一発目でそばがきがでてきても困るのだろう。「最後に蕎麦、食べるじゃん。重複するじゃん」というわけだ。

そばがきにしなければ、「そばがきしるこ」または飲み物(ノンアルコールビール、オレンジジュース、りんごジュース、ウーロン茶)を選択できる。最初に甘味はどうよ、と思うが、そばがきの良さを分からない人はこっちの方が正解だろう。「あんなもっさりしたもの、美味いとは思わん」という人がいても不思議じゃないし、その考えは否定しない。

それにしても、りんごジュースを置いてある蕎麦屋ってすごいな。大衆食堂的な蕎麦屋ならまだしも、「自家製粉で、相当に美味い蕎麦を出す蕎麦店」なんだから。

このお店の懐の広さをまざまざと知らされた思いだ。

いままで、蕎麦店の凜とした雰囲気こそ素晴らしいと自分自身思っていた節があったが、改めてこのお店で考えが変わった。こういう「美味くて、大衆的な店。でも、下世話な雰囲気ではないお店」というのは本当にバランスが取れていて素敵だ。

田舎せいろ

料理が出てくるまでの間、ぼーっと天井を眺める。太い梁がある、木造建築。高い天井が開放感があり、くつろげる。そういえば昼間訪れたのは多分初めてだが、昼でもくつろげるなあ。

もの凄い開放感があって、郷愁感があって、ちょっと感動した。昔は毎週のように、ここで天井を眺めながら酒を飲んでたっけ。この高い天井が、strong relaxだったんだよな。

「あー」とか「おー」などと一人唸っていたところで、田舎せいろが届いた。そうそう、この太さだ。ニーハオ。お久しぶりです。

ただ、以前と微妙に違うのが、蕎麦徳利と蕎麦猪口。リニューアルされていた。それから、わさびのおろし金が変わった。こういう細かいところで時代の流れを感じる。

わさびが丸ごと添えられているのは相変わらずのサービス。ぜいたくだし、楽しい。しかし、使い切らなかった分はどう再利用されているのかとても気になる。一人で使うわさびの量なんて限られているわけで、さすがに残った分を全部廃棄というわけにはいくまい。わさびは一本数百円する代物だ、再利用が当然。とはいえ、その他のメニューでわさびの出番はあまりない。以前から不思議なままだ。

本日の蕎麦

店頭には、「本日の蕎麦」というボードがあった。以前にはなかったので、おかでんが訪問を止めている間に新調したものだ。それによると、今日は「福井県産丸岡在来種ソバ」「北海道産キタワセソバ」「茨城県産常陸秋ソバ」の3種類が使われているらしい。ブレンドしているのだろうか。
昔は一種類の蕎麦粉で蕎麦を打っていたと記憶しているので、より高度に進化を遂げているのだろう。最近の蕎麦のトレンドは各地にある「在来種」の復興とその活用と聞くが、まさにこのお店は在来種を使っている。素晴らしい。

田舎せいろアップ

早速田舎せいろをいただく。

太いので、いつもの癖でずずずっと手繰ろうとしても失敗。これはわしわしと食べるしかない。

ああ、美味いなあ。どう美味いかなんて説明不要だわ。これ、明らかに美味いです。蕎麦は空気と一緒に啜り混み、香りを楽しむ食べ物である、なんて言わせないぞ。もう、噛んで噛んで噛みまくって、香りと味を満喫だ。噛むたびに、味と香りが広がる。これは太い田舎だからこその楽しみだ。

太くてマズかったら非常に悲しく、食べるだけ無駄と言い切っても良い。風味が足りないなら、細くてつるつるっと手繰ってのどごしを楽しんだ方が正解。しかし、このお店の田舎は選択して大正解だ。この風味が持続する「蕎麦ガム」があったら購入したい、と思ったくらいだ。噛んで美味い蕎麦。

やはりぐらのはただものではない。ここまでベタ褒めするのは太鼓持ちのように見えるかもしれないが、それくら好きだ。もちろん、以前常連客だったというひいき目もあるとは思う。でも、それをさしおいても、確実に「人様にお勧めできるお店」と言える。くそー、家の近所にあれば良いのだが。

蕎麦湯

食後、絶妙なタイミングで蕎麦湯到着。忙しくても、ちゃんと店員さんが店内に目が行き届いているのがまた良し。

蕎麦湯飲んで、「おおう」と嘆息。そうだ、忘れていた。ここの蕎麦湯も非常に美味いんだった。最近「美味い蕎麦湯」にあまり出逢っていなかったのだが、今ここで蕎麦湯を飲んで、改めて蕎麦湯の美味さを思い出した。そういや、昔は数人用の湯桶いっぱいに入った湯桶を飲み干し、なおかつお代わりを貰っていたっけな。濃厚かつ蕎麦の風味が残っていて、美味いんだこれが。

当店の主な材料の生産地

最後に蕎麦茶をすすり、蕎麦蕎麦蕎麦とミニ蕎麦づくしでお店を後にした。美味かったなあ。

帰りに気がついたが、店の入口には「当店の主な材料の生産地」が掲載されていた。葱や山葵や大根といった産地がずらり各地。国内産に拘っている様子だ。面白いもので、お品書きが蕎麦店の割に比較的豊富なため、「ブロッコリー」とか「レタス」といったおおよそ蕎麦店っぽくないものまで記載があった。

それにしてもこのボード、親切ではあるが殆ど誰も読まないと思う。仕入れ先はころころ変わるだろうから、ボードを書き換える手間を考えるとちょっとご主人の事が心配。そこまでしなくても大丈夫ですよ、もう少し楽しても構わないと思いますよ、と思った。

ぐらの、いいなあ。

さすがに蕎麦だけ手繰りに往復1時間半の車旅は今のおかでんには難しいが、機会を見つけてまた訪れたい。