元祖手打そば いづるや

2011年05月15日
【店舗数:273】【そば食:474】
栃木県栃木市出流町

たらの芽とこしあぶらの天ぷら、三合盛り

出石山への道は採石場銀座

栃木県の山あいにお寺があり、その門前町には蕎麦屋が軒を連ねている・・・

そんな話を聞いたことがある。東京にも深大寺というお寺があり、その周辺には蕎麦屋がたくさん並び、名物となっている。「参拝にやってきた人に蕎麦を振るまったのがきっかけ」ということで、お寺と蕎麦というのは案外親和性が高い。

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でも、神社と蕎麦というのはあまり聞いたことがない。おかでんが知っているのは戸隠神社くらいだ。きっと、精進料理として蕎麦が愛され、そのためお寺と蕎麦が密接に関係しているのだろう。

さて、その「栃木県の山あいに忽然と現れる蕎麦集落」だが、出石山満願寺の門前町だという。聞いたことが無いお寺の名前だが、蕎麦屋が並ぶくらいだから参拝客は結構いるのだろう。

名物の蕎麦ともなれば、食べてみないわけにはいくまい。でも、ここで注意が必要なのは、「観光客なども訪れる場所だから、蕎麦の味はいまいち」という恐れがあることだ。「常に近隣のライバル店との競争にさらされているので味は鍛えられている」とは限らない。現に、長野市にある某お寺の門前町の蕎麦屋は・・・。げふんげふん。いや、なんでもないです。

カーナビがないので、GoogleMapをデジカメで撮影したものを頼りに現地へと向かう。時々道が分岐するので、その都度デジカメを起動して写真を確認するという涙ぐましい努力。アナログな事やってるのか、デジタルなことをやってるのかよくわからん。

そうこうするうちに、道は両側に石灰工場があるような場所へと入っていった。相当大きな規模で、進んでも進んでも発破された山と、工場が並ぶ。本当にこんなところにお寺があって、蕎麦屋があるのだろうか?・・・心配になる。

出流山の入り口

出流山到着。

ちょっと予想していたものと違ってびっくり。

想像していたのは、浅草浅草寺の商店街とまではいかないものの、山門の手前にみっちりお店が並んでいる構図だった。しかし、なんだかこれは全然風景が違う。山奥の集落にふさわしい、何の非日常感もない雰囲気。

観光案内図

観光案内図を見てみる。

出流山の門前には14ほどのお店があるらしい。その多くで蕎麦が食べられるというのだから、確かに蕎麦で村おこし・・・というか集落おこしを頑張っている。

集落の手前にこの案内図と「←駐車場」の看板があったので、いったんこの看板に従って車を駐めて歩いてみた。しかし、結構それぞれのお店の距離が離れていたので、途中で折り返して車でお寺まで行ってみることにした。

それぞれのお店には駐車場が完備されていた。それくらい店同士は離れているということだ。

出流山満願寺山門

信徒会館

出流山満願寺。真言宗智山派のお寺。

せっかくお寺まできたのだから、蕎麦だけ食べて帰るというのはもったいない。本堂を参拝しておこう、と思ったのだが、本堂は山門から結構奥にあるようで、その姿が見えなかったので参拝はやめにしておいた。かわりに山門にご挨拶。「いやね、蕎麦をね、食べに来たんですよ」と。

時刻は18時過ぎ。これから行こうとしている「いづるや」という蕎麦屋は19時閉店なので、あまりゆっくりしていられない。蕎麦屋に限らず飲食店はみなそうだが、「閉店時間」を真に受けて訪れてみると、「ごめんなさいねー、ラストオーダーは閉店30分前なんですよー」と言われたりする。それが怖いので、遅くとも18時半にはお店に着いておかないと。

写真右は山門入ってすぐのところにある建物。こんな立派な建物が建つということは、この満願寺は相当たくさんの檀家さんがいて、信者が集まるのだろう。調べてみると、この建物は信徒会館と呼ばれ、最大200名くらいまで宿泊ができる施設なのだという。

お昼はここで精進料理を食べる事ができ、それには蕎麦もついてくるという。そうかー、せっかく出流山まで来たのだから、こういうところで食べるというのは面白かったな。

今はさすがにひっそりと静まりかえっており、人一人いない状態。すごすごと引き下がる。

いづるや

18時過ぎると、門前集落を歩く人すらいない。場違いなところに来てしまった感を感じながら、集落を進む。

昼どきだと蕎麦を振る舞うお店には車が停まり賑わっているのだろうが、この時間に営業しているお店は一軒もない。・・・あ、違った。これから向かう「いづるや」だけが開いている。

いづるやは、蕎麦集落の入口部分にあるお店。結構大きな建物を誇る。入口をふさぐようにテントが張ってありよしずが立てかけられてあるので、何事かと思ったらどうやらこれは待合スペースらしい。椅子が並べられている。昼時になると、お店の外で待つお客さんが大勢いるのだろう。

いづるや店内

いづるや店内。

椅子席とお座敷席があるが、いずれも大きなテーブルに椅子やざぶとんがびっしり。昼時になるとこれがいっぱいになるのであれば、壮観だ。何せ、この周囲は石灰工場しかないような山奥ですぜ?

生鮮員直売所になっている

トマトやきゅうりなど野菜が店内で売られております。お土産にぜひどうぞ。

その野菜たちの奥がガラス張りになっていて、蕎麦打ち場になっているのだからちょっとシュールな光景。

19時近くなって、ご主人が蕎麦を打ち始めた。閉店時間直前なのに何をやっているのだろう、と思ったが、多分宅配用のものなのだろう。このお店は通販もやっている精力的なお店。

精力的といえば、「いづるやの黒ビール」だって。なんとこの山奥のお店、自分とこの店名を冠したビールまで作っちゃった。なんというやる気。

よし、ここはおかでん、貴様もやる気を出せ。すいません、大ジョッキ(850円)ください・・・いやうそです冗談です。今この時間にビール飲んだら、帰りは一体何時になるんだ。酒が抜けるのは深夜になるぞ。それはあまりに男前すぎるのでよせ。

それにしても、どうだァとばかりに大ジョッキを用意しているのだから、このお店はすごいな。公共交通機関はバスでさえ存在しないこの地。誰が大ジョッキ飲むんだろ。

ああ、きっとこれは「ビール」ではなく、「般若湯」なんだろう。お酒では、ない。きっとそうだ。

春の山菜盛り合わせ

天ぷらは各種あるのだが、ちょうど季節柄、こしあぶらとたらの芽があった。単品650円だったが、店員さんに「盛り合わせってできます?」と聞いてみたら、「800円で承っております」との回答。聞いてみるもんだ。では、春の山菜盛り合わせスペシャルで。

ちなみにこのお店、12月末から4月末まではふきのとう、7月から9月末だと天然みょうがが天ぷらメニューとして出てくるらしい。季節の移り変わりが楽しめるのは良いね。

4月末にこのお店を訪れれば、たらの芽、こしあぶら、ふきのとうと一挙に3種類楽しめるから素敵。さらに通年ある舞茸も加えれば、それだけで生ビール+清酒がいける。

・・・あ、そうか、車の運転は別の人がする、という前提がつくけど。うーん。

で、出てきました天ぷらちゃん。手前がこしあぶら、奥がたらの芽。風貌が似ているので紛らわしい。

食べてみると、山菜独特の苦味があってたまらんです。一体山菜が好きになったのはいつだろう?子供には絶対わからないであろう美味さ。もし「山菜が大好きです」という子供がいたら、将来どんな大物に育つのか期待してやまない。

今年は山菜食べる機会を逸したなあ、と思っていたが、ここで食べる事ができて本当によかった。

3合盛

蕎麦は、「もりそば」550円というのがお一人様用として存在するのだが、メニューの中では小さくかかれている。ザコキャラ扱い。その代わりに目立っているのが、五合盛(2~3人前)1,500円」や「1升盛(4~5人前)3,000円」といったもの。写真付きで紹介されているのだが、その量がさすがに素晴らしい。菅笠のような大きなざるに、もっさりと蕎麦が入っている。どうやらこれがお店の名物らしい。

後になって判ったが、この出流山地域の蕎麦店はすべての店におおいて「五合盛」「一升盛」をメニューにしていた。地域全体として、そういう売り方をしていこうという雰囲気があるようだ。

さあ、こうなると「もりそば、ください」とは注文できないぞ。しょぼい、普通のせいろの上に蕎麦が載ってきたって全然うれしくない。僕もあの菅笠みたいなざるを抱きかかえながら蕎麦を食べたい。

「五合盛、ください」

店員さんにそうお願いしてみる。2~3人前、と注釈されているので、正直言ってオーバースペックだ。でも、食べますとも。ええ。

すると店員さん、「一合単位で注文できますけど」と助け船を出してくれた。あ、そうなんですか。ちなみに「もりそば」だと何合?「・・・1合半くらいですね」「あ、じゃあ3合盛でお願いします」

結局、3合盛にした。1合300円となるので、3合だと900円。

で、天ぷら食べて待っていたら、やってきました3合盛。やあ、相当あるぞこれ。

これで3合ってことは、一升になるとどれだけのボリュームになるんだろう。ちょっと実物を想像できない。

3合盛アップ

蕎麦は二八蕎麦に玉子を割り入れたものが入っているのだという。玉子が入っている事に対しては全然判らなかった。一体どういう効果があるのだろうか?生地が繋がりやすくなるとか?

蕎麦は若干ぼそぼそしたもので、食べた瞬間の印象は「立ち食い蕎麦でありがちな感じだな」というものだった。いや、でもこういう蕎麦はおかでん、好きです。立ち食い蕎麦的味わいをもっともっと突き詰めた蕎麦ってあっても良いと思っていたところだったので、ここの蕎麦に出会えてちょうど良かった。なんでも、一番粉から五番粉までを混ぜて使っているということなので、その際に繊維質が多く含まれたからぼそぼそ感が出たのだろう。

蕎麦は短め。ちゅるんと手繰るというより、わさわさと噛みしめて食べる感じ。でもそれがとてもよく似合っている。噛んでいると、若干土臭さを感じる蕎麦の風味が口の中に広がる。ぶちぶちと根気不足でちぎれる麺を想像してはいけない、結構コシがあり、それゆえに噛む楽しさがある。

三合盛にして良かったと思う。これ、一人前だとあっという間に食べ終わってしまい、「まあまあ・・・かな?」程度で終わっていたはずだ。三合盛にしたおかげで、おなかいっぱい蕎麦を手繰ることの喜び、というのをじっくりと楽しませてくれた。

上品なおそばではないけど、むしろそれが良い蕎麦。何人かでやってきて、一升盛りをわっさーと食べてみて欲しい。

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