はしば食堂

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2011年06月18日
【店舗数:288】【そば食:489】
長野県飯山市富倉滝ノ脇

ざるそば

アワレみ隊は2011年度天幕合宿第二弾として上高地・小梨平での一泊を検討していた。しかし、さすがは古来から「6月は梅雨時」と定まっているだけある。アワレみ隊ごときが「合宿やる!晴れろ!」とわめいても、テコでも動こうとはしなかった。結果、雨。

そんなわけで、代替案として北信の蕎麦を食べ歩きしてみることにした。普通にうまそげな蕎麦屋を行脚するのはつまらないので、「ディープなところにある蕎麦屋」限定での探訪とした。東京から北信は相当遠い。それくらいのモチベーションがないと、なかなか行きづらいしね。

ではディープとはなんぞや、というと、北信には興味深い「蕎麦集落」があるのでそれが該当する。何でこんな場所に蕎麦屋が、というのはこの「蕎麦喰い人種行動観察」を読んでいれば枚挙にいとまがないが、「○軒しかない集落なのに●軒も蕎麦屋がある」なんて言われるとちょっと意味合いが違ってくる。

一軒だけぽつんと蕎麦屋があるんだったら、そこのご主人が変人なんだろうということで済むが、何軒もあります、となればそれは不思議な現象だ。善光寺の門前のように蕎麦屋が密集しているのは人通りの数からいっても当然の帰着だが、ドがつく田舎でなんでそんなことが成り立つの、っと。

最初、戸隠のような場所を想像した。でも、あんなものは都会ですよ、偉い人にはわからんのですと言われそうな田舎集落(集落といっても民家が密集しているわけではない)が今回の目的地らしい。恐ろしや信州。蕎麦が浸透してるなあ。

はしば食堂看板

最初の訪問地は「富倉地区」と呼ばれる場所。飯山市の市街地から北へぐぐぐうぃと進んでいき、ズンドコ山の中に入っていき、巨大堆肥置き場の臭いにへろへろになりつつ進んでいった先にその場所はある。

今回はアワレみ隊メンバーが同行していたので、iPhoneナビがあって助かった。なかったら、するりーっとこの集落を通り過ぎていたかもしれない。

とはいえ、今回は訪問しない「かじか食堂」は頻繁に看板を出していたので、かじか食堂だったら迷わなかったかもしれない。われわれが目指す「はしば食堂」は国道から脇道に逸れたところにあるので、ややマニアック。

脇道に逸れて、車一台しか通れない道を走る。途中対向車が来たので、すれ違いにちょっと手間取る。そんな、場所。

いやいや、こんなところに蕎麦屋やってどうするの。周辺の人口考えたら、飲食店はおろかよろず屋をやるのさえ無理だろ、という場所だ。「富倉」という名前が有名になったから今では蕎麦屋としてやっていけるのかもしれないが、それにしてもものすごい田舎だ。カーナビが当然のごとく車に装着されている時代ならではの、蕎麦屋といえるかもしれない。ナビ無かったら遠方からのお客さんは到着できんぞ。多分、「こんな山奥に蕎麦屋なんてあり得ないでしょう。道間違えたんじゃなかろうかしら」とUターンしていたんじゃないかな。

はしば食堂店内

10時から営業しているのが富倉地区の蕎麦屋の特徴。蕎麦屋食べ歩きをする際はその日1軒目の蕎麦屋としてぜひどうぞ。

奥の部屋でどすん、どすんという音が時々聞こえてくる。

覗いてみると、畳一枚はあろうかという蕎麦を伸ばしている最中だった。ああそうだ、オヤマボクチをつなぎにした蕎麦ってよく伸びるんだよな。

この富倉地区の蕎麦は「幻の富倉そば」を自称しており、オヤマボクチ(山ごぼう)の繊維を蕎麦のつなぎにつかうことで知られている。

オヤマボクチは上杉謙信が川中島に出陣する際、オヤマボクチを火縄銃の火種として使ったという代物。小麦粉が採れないこのあたりでは、蕎麦のつなぎに小麦粉が使えないため、そのかわりにオヤマボクチを使ったというわけ。苦労しているなぁ。

「面倒くせぇから、そばがきにして食おうぜ」というのがもっぱらの意見だったとは思うが、おそらくそばがきだと味に飽きるのだろう。その結果、今の蕎麦切りのスタイルになるために実験しまくり、結果オヤマボクチに落ち着いたのだろう。

オヤマボクチを蕎麦のつなぎとして使うには手間が非常にかかる。そのため、このご時世であってもオヤマボクチつなぎの蕎麦を出す店はあまり多くない。その結果、「幻」というほどではないものの、「幻の!」という言葉が使われているのだった。正しくはないが、明らかに間違っているわけではない。

昔食べた信州中野の「郷土食堂」は、この富倉地区の蕎麦を出すお店だったはずだ。確か。

お品書き

お品書きはシンプル。

シンプルだけどサプライズが随所にある。

まず、「並」というこのお店デフォルトの一品だが、これが800円ということ。高いな。田舎というシチュエーションということで、油断していた。600円くらいかな、なんて思っていたが、とんでもない。こういうお客さんが来にくい場所だからこそ、客単価を上げないと食っていけませんよモウ。うっかり大盛りなんて頼んだら1,200円だからなかなかなもんです。

ただ、蕎麦の場合量が読めないので、値段が妥当なのかどうかさっぱりだ。ラーメンの場合、大体「一人前これくらい」といった麺量の相場観があるが、蕎麦だと「なめとんのか、コラ」から「一人前でこれはありえん」まで様々。特に北信~東信界隈の蕎麦は量が多いので油断がならん。

あと、面白いのは「おかず代200円」というのがテーブルごとにかかるということ。いわゆるテーブルチャージだ。北信の蕎麦屋は、蕎麦が出てくるまでの暇つぶしに、お茶請けとして野沢菜が供されることが多い。そのちょっとゴージャス版、とでも言えるものが出てくるっぽい。

とりあえず3人で訪れていたので、並3人前を。

「笹ずしは無しでいいですかー?」

奥さんに確認される。

富倉地区の蕎麦屋においては、笹ずしも定番らしい。上杉謙信が川中島に向かう途中(またかよ)、富倉の住民が謙信に笹ずしを差し入れしたという由来があるんだと。

じゃあわれわれも笹ずしを食べて、戦に負けて逃走しようではないか、という考えもあったが、何せ「800円の蕎麦」がこれからくる。量が多いかもしれんし、今日このあと食べ歩きがあるのでやめておいた。

おかず

「おかず」として届けられたのは5皿。そのうち1皿は薬味の葱なので、実質4皿。

写真は既に1/3ほど食べた後のものなので、実際はもうちょっと量が多いものだと想像たくましくして欲しい。

わらび、ふき、野沢菜、高菜の4種類。これが結構うまい。わらびはゆで加減が絶妙で、シャクっとした歯ごたえが楽しい。高菜を煮たものは一同絶賛で、「どうやって作ったんだろう」という声が挙がったくらいうめぇ。

「雪国の田舎料理だから味が濃くて醤油ッからいんでしょ」と思う無かれ。いずれも塩分適度で美味い美味い。

これで200円は安いと思う。ドライバーでなければこれで酒が飲める。お酒とともに「おかわり」したくなるくらいだが、おかわりという制度がこの「おかず」には存在するのかどうか、謎。でも値段が200円と明記されているくらいだから、頼めばやってくれるかもしれん。

どっちにせよ、おかでんはドライバーなので飲んで食ってアハハハ、というわけにはいかん。箸をぐぅ、と握りしめてこの味を堪能するだけ。

並三人前
並三人前到着。

テーブルでまとめて一皿にて提供されるらしい。量が多いかと思ったが、三人分でこの量なら寧ろ普通かそれ以下といった感じ。戸隠風のボッチ盛りで盛られているので、特に量が少なく見えるのだろう。

ボッチ盛りをするには、長い蕎麦だけしか使えない。端切れの短い蕎麦は隅っこに固めて置いてあった。なるほど、ごまかしが利かない盛りつけ方なんだな。

蕎麦をたぐる

「ボッチ盛り、どうも苦手なんだよなあ」

とぼやくおかでん。同意する人一名在り。ボッチ盛りは水切りをしないで盛りつけ方。その分つややかで見た目は良いのだが、どうにも水っぽくなるのがおかでんは苦手。この蕎麦もしかりで、ボッチを手繰ると水がしたたる。味が薄くなってしまう。夏場なんて涼しげで良い食べ方なんだろうけど、蕎麦の風味を楽しみたいクチにはちょっと向かない。

「こういう食べものなんである」と納得して食べれば良いのだろうな、きっと。

蕎麦は、オヤマボクチが入っているからかなめらかな食感。歯ごたえは普通。オヤマボクチが入っている蕎麦といえばもっとグミグミした食感のものを想像していたので、やや拍子抜け。以前「栄忠」で食べたオヤマボクチ蕎麦の印象が強すぎたようだ。でも、蕎麦として成立させるためにはそこまでグミグミしている必然性はないわけで、これくらいでちょうど良いのかもしれない。

われわれが食事をしている間に、別のお客さんがやってきた。このお客さんも地元ではなく遠方から来た人のようだ。「富倉の蕎麦」という名前はマニアックゆえに有名になっている、不思議な環境。



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