2012年12月11日
【店舗数:329】【そば食:553】
東京都荒川区南千住
ざるそば
蕎麦業界で有名な老舗看板は「藪」「更科」「砂場」の3つだと言われる。
砂場といえば、過去に「巴町砂場」、「室町砂場」に訪れた事があるが、ここ最近はとんとご無沙汰している。ならば久しぶりに砂場系の蕎麦を食べに行くことにしよう、と決めた。なんでも、全国に100軒以上ある「砂場」の暖簾を束ねている「砂場総本家」というのが荒川区の三ノ輪にあるらしい。あんな俗っぽい町に「総本家」があるというのには驚かされるが、物は試しだ、三ノ輪へGO。
三ノ輪は、長いアーケードがあることと、都電荒川線(東京に唯一現存する路面電車)の終着/始発駅があることで有名。さっそく三ノ輪の商店街、「ジョイフル三ノ輪」を歩く。さすがにご時世なのか、シャッターが閉まっている店舗もあちこちに見受けられるが、それでも営業しているお店は多く、活気がある。ちょうどこのとき、衆議院議員選挙に立候補している候補者がマイク片手に商店街を練り歩いていたから余計活気があるように見えたんだと思う。
それにしてもこの商店街の中に老舗の蕎麦屋が?にわかには信じられない。
あった。これが砂場総本家。年季が入った面持ちで、商店街の他のお店とは様子が違う。とはいえ、「総本家」という大仰な名前がついている割にはこじんまりとしている。
店頭にはお品書きが掲示されているのだが、何だか入店前からイヤな予感が。お品書きよりも大きく、お店が紹介された新聞記事の切り抜きが貼り付けてある。10年前のものだ。そのほか、いろいろべたべたと張り紙がしてあり、お世辞にもあまりきれいではない。
英語で書かれている張り紙がある。こんな場所に外国人って来るのか?と不思議だが、格安旅館がいっぱいある、日雇い労働者の町・山谷地区が隣町。安宿目当てで宿泊した外国人観光客がひょっとしたらこのお店を訪ねるのかもしれない。
何が書いてあるのか興味深かったので読んでみた。
Look my words!!
recommend LONDON PRIDE mit KAMONUKI(かもぬき) not incloded noodle only soup and meat
だって。LONDON PRIDEとはイギリスのビール名。鴨抜きと相性がいいよ、と言っている。でも、外国人で鴨抜きを頼む人なんているのだろうか?
ところで、こんな老舗蕎麦屋がロンドンプライドを扱っているなんて不思議だ。しかし、それだけでなく、輸入ビールはドイツの「バウラーナー」、「ベックス」、そして「ギネス」まで扱っている幅広さ。最近の老舗はこんなことまでやるのか。
でも、もっとびっくりしたのは店の中に入ってから。壁の張り紙によると、炭酸水の「ペリエ」が430円で売られているらしい。それだけならまだ常識の許容範囲だが、「レッドブル」420円というのを見かけた時はさすがに椅子から転がり落ちそうになった。蕎麦屋でレッドブル!?どういう組み合わせだよ、それ。多分日本広しといえども、レッドブルを扱う蕎麦屋ってこのお店だけだと思う。
16時前の入店ということもあって、お客さんはおかでんただ一人だった。このお店は10時半開店と結構早く、終わるのは20時となっている。中休みなし。暇な時間が多そうだが、少人数できりもりしてなんとかやっていけているようだ。厨房には職人さん一人で、客席にはご主人がいる。ご主人は店内をふらふらしながら来客を待っているのだが、そのせいでこっちはどうにも落ち着かなかった。
このお店に入って真っ先に思ったのが「雑然としてるなー」だった。掃除はきっちりとされているようだが、とにかく壁際にいろんなものがありすぎる。ごちゃごちゃしていて、味わい深いといえば味わい深いが、悪く形容しようと思えばいろいろな言葉が頭に浮かぶ。そんなお店。
古いラジオやカメラなどが飾ってあるのだが、脈略がなく、インテリアとしてまとまりがない。しかも、それに加えて壁にはいろいろな張り紙が貼ってある。きょうび、趣味蕎麦ではない普通の蕎麦屋でもこんなに雑然とした店は少ないのではないか?せめて、客室の片隅にある電撃殺虫機くらいはどうにかして欲しい。
「登録商標 砂場」と書かれた荘厳な看板。この看板と、その下方に展開されているごちゃごちゃワールドとのギャップがものすごい。
お品書きもお店同様不思議ちゃんな状態。まず、蕎麦のメニューなのだが、温かい蕎麦と冷たい蕎麦が混在して書かれているので、ぱっと見た時に何が何だかわかりにくい。そのため、本当は「もり」(630円)を注文すべきところを、間違って「ざる」(780円)を頼んでしまった。もっとよくお品書きを読めば良かった。まあ、これはお店の問題というよりおかでんの単純ミスなのだが。「もり」の存在に気がついたのは、蕎麦を食べ終わった後のこと。
特筆すべきはお品書きの「おつまみの部」。7品と少数精鋭で臨んでいるのだが、「天ちらし」というのが仰天価格の2,990円。なんだこれ。天ぷら盛り合わせであることは容易に想像がつくが、ほぼ3,000円の値付けは強気すぎる。お店の雰囲気とはぜんぜん違う価格帯。一体何が出てくるのだろう。穴子や海老を少々混ぜたくらいでは2,990円にできないぞ。量がとにかく多いのか?「上天ぷらそば」でさえ2,310円止まりなので、この正体がとても気になって仕方が無い。でも、頼む気はさらさらないけど。さすがにこの店の雰囲気で高級なメニューを頼む気にはなれない。
あと、強気といえば「焼きのり」が940円というのもすごい。のりに940円を払う人なんてまず居ないと思われ。よっぽど良いのりを使っているのだろうが、だとしてもこれはあんまりだ。あと、「枝豆」が680円だったり、何でこんなに強気の価格設定ができるんだ、と不思議でしょうがない。酒肴の値段を高くすることで、実は酒を売りたくないのではないか、と勘ぐってしまうくらいだ。
ざる到着。当然のことながら海苔がかかっている。荒くちぎられた海苔で、一つ一つが結構大きい。そのせいで、蕎麦とよく絡まず、食べにくいだけだった。細切りにした方が海苔は生きると思う。
この海苔は、先ほどの「940円」高級焼きのりと一緒のものだろうか?うーん、海苔の善し悪しはよくわからないけど、食べた感じ普通っぽいけどなぁ。
蕎麦は白っぽい。「藪」は緑、「更科」は白、「砂場」は黄、と言われるが、黄色というほどの色ではない。なぜ黄色なのかというと、砂場系の蕎麦は玉子をつなぎに使うからだとか。
麺は若干うねっている。最初、ラーメンみたいに手もみでもしたのかと思ったが、別にそういうわけではなさそうだ。どうやら、せいろの上に盛りつけた時の形状で麺が少し堅くなってしまった模様。こんなのは初めての体験。なお、写真撮影は迅速に行ったので、そのせいで麺が変化したという事はない。麺が非常に長いので、ウェーブした麺同士が絡み合って、食べにくかった。
蕎麦の風味は平凡。つゆも平凡だった。つゆは蕎麦猪口にどっぷり入っていて、蕎麦湯を飲むとき難儀した。少しずつ飲んでは蕎麦湯を継ぎ足し、を繰り返してようやくちょうどよい濃さになった。やっぱりつゆは徳利で用意してもらいたいものだ。
町中の普通のおそば屋さん、というのだったらこんなものだと思うが、「砂場」ブランドを束ねている総本家なわけで、その金看板と現実のギャップが凄すぎるお店だ。ある意味貴重な体験をしたと思う。
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