喜乃字屋

2014年11月29日
【店舗数:375】【そば食:629】
東京都台東区上野公園

かき揚げ、もり

喜乃字屋

上野駅前、昼下がり。雨が降っているし、寒いし、「さて、お昼ご飯でも何か食べとかないと」と思った時、特にアイディアがなかった。いつもなら、上野駅にあるタンメンのお店「トナリ」で野菜が多いタンメンをがっつくのだが、今日はそんな気分でもない。はて・・・と思っていたら、「蕎麦」の文字を発見した。何だこれ。

「上野の森さくらテラス」という、新しい施設の一階。上野駅とは道路を挟んですぐの場所。ガラス張りのお店は、蕎麦屋っぽくない。いや、それ以前に

「蕎麦は生粉打ちワインは角打ち」

なんて書いてある。なんでも、「立ち食い蕎麦バル」を標榜するお店らしい。へえ、最近はいろいろな業態があるものだな。

食べ物というのは日常生活にあまりに密着しているので、時代の変化に適応せざるを得ない。マクドナルドでさえ、2014年においては時代遅れになりつつある昨今、蕎麦だってそうだ。「伝統芸能」として足踏みなんてしてられない。その結果が「立ち食い蕎麦バル」なんだろう。そういや、最近バルが流行ってるよな。がっつり座ってしこたま飲む居酒屋よりも、ちょい飲みの気軽さが受ける時代。「気軽な食べ物」の代表格であった立ち食い蕎麦とくっついても、何ら不思議じゃないってことか。

それにしても、清酒ではなくワインとくっつくあたりが軽薄というか、今風というか。やっぱり清酒じゃ、おっさん臭いんかな、時代遅れなのか?

黒板

生粉打ちの蕎麦を提供しているのに、もりそば/かけそばを400円で提供しているというのは「ほほう!」と思う。「生粉打ちなんて、できが悪けりゃボソボソしているだけでうまくねーよ。適当に割粉が入っている方がむしろ旨いことがあるよ」とか悪態をついてみるものの、やっぱり「生粉打ち!」と言われると思わず振り向いてしまう自分がいる。キャッチコピーとしては上出来だ。

このお店、お昼は普通に立ち食い蕎麦屋として機能し、夜は酒肴とともに酒も楽しんで、シメに蕎麦食べちゃってくださいというお店になっている様子だった。蕎麦屋の二毛作といえば、「そじ坊」「高田屋」なんかが昔っからやってたけど、あれは和風であり居酒屋的な位置づけだった。しかしこのお店はもっと洋風な出で立ちであり、時代の変化を感じる。

店内

立ち食い蕎麦屋とはいえ、簡単な椅子はある。ただし、立ち食い蕎麦屋の定番アイテムである「自動食券機」はない。居酒屋としても機能するお店なので、いちいちお客に食券を買わすわけにはいかないからだろう。店入ってすぐのところのカウンターで注文とお会計を済ませ、客席で待つことになる。

このお店は立ち食い蕎麦屋とはいえ、注文してから天ぷらを揚げたり、蕎麦を茹でる。「立ち食い=時間がない人が、短時間で胃袋にカロリーを押し込む」という構図は、既にこの世の中では通用しない。

ワイン

本来、「角打ち」という言葉は、「酒屋の店頭で酒を買ってそのまま飲んじゃう」スタイルのことを指す。しかしこのお店は酒屋ではないけど、「角打ち」という言葉を使っている。言葉の解釈の幅が広がっているようだ。

ワインを銘打っているだけあって、冷蔵庫にはワインボトルが並ぶ。蕎麦屋ならここに清酒が並ぶはずなのに。時代だなあ。そこまで日本人ってワイン大好き!なわけはないのだが、雰囲気に飲まれてしまっているのだろうか。これはもう、清酒もっと頑張れとしか言いようがない。ワインに近いカジュアルな雰囲気と味の商品開発とマーケティングが不足している。スパークリング清酒なんてもっと力を入れるべきジャンルだと思う。

一昔前なら、「お店がワイン推しであっても、俺は義理に生きる。おい店主、清酒もってこい」とか意地を張ったものだ。でも今のおかでんはお酒を飲まないものでして。歯がゆい思いをしながら、冷蔵庫に並ぶワインを眺める。ワインが憎いわけじゃない。清酒がふがいない、と思うのだ。

ちなみに夜に供される酒肴だけど、さすがに生ハムといったバル的なメニューがありつつも、金時豆ゴルゴンゾーラ味とかポテトサラダ本山葵味といった和洋折衷創作料理が並び、面白い。

かけ
もり+かき揚げ

もりそば400円+かき揚げ170円。連れはかけそば400円。

店内はお客さんで一杯で、その多くのお客さんがかき揚げを注文していたため、揚げ場が追いついていなかった。厨房は「かき揚げ待ち」で結構な待ち時間となっていた。その分、サイズはかなり大きい。

このかき揚げをガスガスと箸で突き崩しつつ食べるのが美味しいし、楽しい。ただしこれ一個でかなりおなかに貯まる。満腹感、というより「カロリー摂取したぁぁぁ」感だ。

蕎麦自体は、なるほど400円相当といった感じではある。過度に期待しちゃいけない。だから、蕎麦の味がモロにわかるもりそばよりも、かけそばの方がいいと思う。この法則は、駅ナカの立ち食い蕎麦屋と全く一緒。かけそばにすると、結構イケた。かけそば+かき揚げにすると、かなり満足感は高いんじゃなかろうか。

今後も、ますます「蕎麦」という食べ物は今風にカスタマイズされ、新しい料理として我々を楽しませてくれるだろう。それはとても健全であり、良いことだと思う。古典的な蕎麦ばかりがもてはやされ、伝統芸能化していくのは良くないと思う。もちろん、ニューウェーブな蕎麦はメインストリームにはならないはずだけど、こういう新鮮な動きがあるからこそ、蕎麦全体が底上げされ、ますます魅力が増すと思う。

・・・とかいいつつ、そういえばガレットって流行りそうで微妙な位置づけのままだよな、と思った。あれは素敵な蕎麦だと思うんだけど、なんで「オサレな店」限定なんだろうな。

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