2018年04月29日
【店舗数424】【そば食:700】
長野県松本市深志
(特上)安曇野葉わさびそば
GW最中のこの日、上高地の小梨平でキャンプをやろうと思い立ち、松本駅にやってきていた。
キャンプ決行を決めたのが当日朝8時半。幸い荷造りは前日のうちに済ませてあったので、即座に出発できたものの、松本到着時点で既に13時。
ここから上高地まで、まだ2時間はかかる。これ以上のんびりはしていられない。
最近の松本界隈は「山賊焼き」を推しているお店が多いと聞いている。僕自身、ぜひ山賊のお仲間に入れてほしいと思っているのだが、ゆっくりレストランでご飯を食べる時間はなかった。
仕方がないので、駅弁売り場で「山賊焼き」の弁当を買い、松本電鉄上高地線乗り場がある7番線を目指す。新島々まで、約30分。その間に、車内で駅弁を食べることにした。
このホームには、大糸線の白馬方面に向かう6番線と、松本電鉄上高地線の7番線がある。陸橋から階段を下りてすぐのところが7番線、そこからしばらく歩いた先に6番線がある。
その6番ホームがあるあたりに、なにやら「蕎麦」の字が見える。
あっ、松本駅には立ち食い蕎麦屋があったのか!
しまった、と思わず手にぶら下げている「山賊焼き弁当」を見つめてしまう。
この駅弁を買う前に、いちおう陸橋の上から、ホーム上に立ち食い蕎麦屋があるかどうか目視確認はしていた。で、
「おそらくなさそうだ。あったとしても、探すのに時間がかかって、電車を1本やり過ごしてしまう。それはまずいので、諦めよう」
と判断したばっかりだ。しかし実際は、立ち食い蕎麦屋のほうがわざわざ目の前に現れてくれたのだから、困惑してしまう。
でも、こういう挑発を受けて、「残念!既に駅弁買ってるからね!またの機会に!」と言えないのが僕のかわいいところでもありダメなところでもある。「おう、食ってやらあ」と力強く、お店を目指す。
駅弁?これは今日の夕食にしよう。どうせキャンプだし、夕食に何を食べるかなんて何も決まっていなかったんだ。
上高地の食堂でも、「山賊焼き定食」を出すお店はある。何でわざわざ駅弁を担いで上高地くんだりまで行かなくちゃいけないんだ、と思う。でもそれは言いっこなし。蕎麦は一期一会だから。
近づいてみると、本当に立ち食い蕎麦屋だった。
昔っからあったと思うのだけど、これまでぜんぜんその存在に気づかなかった。何度もこのホームは利用してきたのに。たぶん、登山だ!上高地だ!と気持ちが高ぶって、周りが見えていなかったんだろう。
瓦屋根と白壁・なまこ壁風の外観。
「信州生そば」と書いてある。
店名は外観からはわからなかったけど、後でネットで調べてみたら「山野草」という名前であることがわかった。どうやら、0番/1番線ホームにもお店があるらしい。
店内で食べることもできるし、ホームに面したカウンターで殺伐と立ち食うこともできる。僕は電車の時間が気になるので、外で食べることにした。
自動食券機は、メニューでびっしり。
種類が多くて、慣れないとどれを選んでよいのか、目指すメニューがどこにあるのかを探すのが大変だ。シンプルなメニューである「かけそば」がボタン群の右下の方にあったりする。
メニュー数が膨大な理由は、そもそもの蕎麦が二種類あるからだった。
「特上」と銘打たれている「信州特上生そば」と、ノーマルのそばの二種類となっている。味の違いもさることながら、「ノーマルなら提供まで1分、特上は3分」とのこと。つまり、ノーマル麺は茹で置き、特上は生めんから注文の都度茹でるということをやっているわけだ。
その違いは値段にも出ていて、特上を選ぶと40円増しとなる。
「うどんと蕎麦は同じ食券で、注文時にどっちの麺にするか口頭で宣言する」
というスタイルのようにはいかない。なにせ「特上」だから。40円高いから。
特上を注文すると、店員さんが土下座しながら食券を受け取るかもしれない、と淡い期待を抱いたけど、さすがにそれはなかった。そうして欲しかったら、もっとお金を払わなくちゃ。
ちなみに特上蕎麦は、長野県産の6割蕎麦、生冷凍麺なのだという。
立ち食い蕎麦の世界では、「6割」でも特上の分類になるのだな。じゃあ、ノーマル蕎麦は一体何割の蕎麦粉を使っているのだろう?食べ比べをするとおもしろそうだ。
電車の待ち時間にちゃちゃっと食べる蕎麦なのだから、激ウマである必要なんてない。しかし、「特上」という言葉を見てしまうと、つい脊髄反射してしまい、それを選んでしまった。
そういえば、この手の「蕎麦の種類が2種類あって、上ランクの蕎麦を選ぶと提供時間が3分になる」という立ち食い蕎麦屋ってどこかで体験したことあるよな、と記憶を辿ったら、同じ長野県にある茅野駅だった。
茅野駅のお店の蕎麦屋とは店名が違うけど、系列のお店なのかもしれない。
ホームに松本電鉄が到着した。乗客が降り、入れ替わりに上高地を目指すお客さんが乗り込んでいく。まだ発車時間まで余裕があるはずなのだけど、ひょっとしたら僕が時間を勘違いしている可能性は否定できない。悠長に蕎麦を待っていると、電車が発車してしまうという可能性があるので、気が急く。
きっちり3分待って、蕎麦を食べる。
(特上)安曇野葉わさびそば。
ひょいっと「特上」の言葉に惹かれて選んでしまったり、「旅情っぽい」という理由で「安曇野葉わさび」のそばを選ぶところが、非常に安直だ。
最近、「人間というのは常に賢い行動を取るとは限らない」という観点で語られる行動経済学が話題になっているけど、こういうのもまさにそうだ。本当に僕自身が食べたかったかどうかはともかく、つい選んでしまった。
麺は、黒くて細い。確かにこの細さなら、茹で置きにしておくとボロボロになってしまうだろう。生麺から茹でるからこそできる細さだ。その分、のど越しがとても良い。
本当なら、ゆっくりとこの麺を味わうべきだ。しかし、電車が既に停車中だし、ホームには人っ子一人いない状況を目の当たりにすると、焦るなというほうが無理がある。
二両編成の短い車両だし、乗客数はさほど多くない。出発するよ!となったら、周囲の客を焦らせるようなベルやアナウンスはなく、スルッと発車しそうだ。そうなると、たとえ電車から20メートル程度の距離感でも、走って乗り込むのは無理だ。
というわけで、ほとんど味わってられず、あわただしく蕎麦を飲み込み、電車に駆け込んだ。
「蕎麦は飲み物」。今回はこの言葉を覚えた。
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