岩本そば屋

2020年11月14日
【店舗数:438】【そば食:732】
長野県下高井郡山ノ内町苗間

はやそば(そばがき)、盛そば、天ぷら

「山の実」で蕎麦を食べたのち、この界隈であともう一軒蕎麦を食べていくことにする。

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このあたりは、小麦粉のかわりに「オヤマボクチ」をつなぎとして使った独特の蕎麦打ち文化がある。せっかくだからオヤマボクチの蕎麦を食べたい。

近くに「北志賀家電そば部」という面白すぎる名前のお店があったり、評価が高いっぽい「手打そば樽滝」というお店がある。そして、もう少し北上すれば、オヤマボクチの蕎麦ではないものの、「山愚」という良い蕎麦屋もある。この山愚は訪れた事がある。

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それらのお店のうちどれにしようか迷ったけど、ちょっと「山の実」でゆっくりしすぎた。なので、もっとも近場の「岩本そば屋」に行ってみることにした。

このお店は昔っから知っている。「山の実」に向かう時、必ずこのお店の横を通るからだ。

駐車場には車が並び、「ああ、繁盛しているんだな」ということがわかる。オヤマボクチの蕎麦を出すということは知っているけれど、どういうお店なのかまではよくわからない。

ちょうど通りすがりで、「営業」の札が出ていたので「ええい、ここにしよう」と決めた。

お店、というより個人のお宅に上がるといった感じだ。

どうもお邪魔します。

お座敷に上がらせてもらう。

お座敷の真ん中には、超巨大な灯油タンクを備えたストーブがデン、と置いてあった。

雪国で大きなストーブを見かけることがあるけれど、タンク部分がここまで大きいのを見たのは初めてだ。

それはともかく、お客さんはかなり多い。14時近いというのに、いっぱいだ。

山の実は山の上の別世界、という感じだったけど、こちらは一気に庶民的な雰囲気。

清々しいメニューで僕ァ大好きだな、こういうの。

盛そば 700円
はやそば(そばがき) 400円
天ぷら 400円

これだけ。しかも値段が激安。

「だったら全部ください」と言える。しかもこっちは二人だ、二人でこの3品ならお店としても問題ないだろう。

おっと、お通しが出るのね。

北信エリアは、このようにお通しが出る蕎麦屋がちらほらある。野沢菜というパターンが多いけれど、ここはそれだけではなくかぶ、沢庵、そしてじゃがいも?大根?のきんぴらも出てきた。

居酒屋じゃないので、もちろんこれは無料。もともと安いお値段で蕎麦を振る舞ってくれるというのにこの歓迎っぷりには恐縮させられる。

早そばが早速やってきた。

かきっぱなしの、無骨なそばがき。ボコボコした形がなんとも荒々しい。

つゆが注がれている椀に、ごろんと載せられている。こういうのは、箸でガシッとつかんで、どんどん食べていくのが楽しい。グイグイ食べてこその、早そば。

一足遅れて、「早くないそば」、つまり「盛そば」がやってきた。

太さは若干のばらつきがある。

「オヤマボクチをつなぎにして打った蕎麦はかなり大きく生地が広がって弾力があるので、麺も長くなるんだよ」

とうんちくをたれながら麺をつまんでみたら、運悪く短い麺で若干バツが悪かった。しかしそれは偶然で、そのあとは長い長い麺が出てくる。顔の高さまで麺を持ち上げても、まだ麺の端がざるの上に残っているような状態。食べるのに大変だ。

そしてこういう蕎麦の場合、「ずぞぞぞぞっ」と吸い上げる際、肺活量が必要になる。なるほど、蕎麦の風味を楽しむためには、学生時代に水泳をやっていたとか、吹奏楽部にいた人のほうが有利かもしれない。

最後に、天ぷらがやってきた。抹茶塩とともに。

これだけ盛られて400円なのだから、まいった。安すぎだろういくらなんでも。慈善活動だ、これは。

二人で一皿で正解だった。隣のテーブルでは、マダムたちが全員等しく蕎麦と天ぷらを頼んでいて、天ぷらを持て余してしまってお互いに押し付けあっていた。天ぷらを食べ残している者同士が天ぷらを押し付けあっている地獄絵図。

「山の実」がバキッとキマった蕎麦屋なのに対して、このお店は「庶民食の延長としての蕎麦」という感じで楽しい。長野はこういう、「ハレの蕎麦」と「ケの蕎麦」がお互い、(東京モンからしたら)非日常的に存在しているという点で素晴らしい。特に「人んちに上がりこんで食べるような感覚」のこういうお店は東京には存在せず、嬉しいものだ。

いい蕎麦屋行脚ができて幸せだ。ここまでやってきてよかった。

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