2021年12月31日
【店舗数:—】【そば食:739】
岡山県某所
鶏南蛮
2021年、僕は2年ぶりの実家での年末を迎えていた。
「2年ぶり」というと大げさな聞こえ方がするけれど、「年末」というのは必ず1年ごとにやってくるものだ。要するに、1回、年末帰省をパスしただけのことであってそんなに大げさな話じゃない。
昨年は東京の自宅で、道具を自作しつつ蕎麦を打った。夫婦ふたりで食べる年越し蕎麦は日常の延長線という感じで、「よっしゃ、一発うまいやつを作って驚かせてやるか」というやまっ気がなく平穏な年末となった。

そして2021年年末。今年もまた、過去20年激戦を繰り広げてきた「実家」というフィールドに戻ってきた。毎年、「いまいち」だとか「ぬるい」とか批評され続けてきた、因縁の地だ。

昔は、千葉県銚子市の「古川製粉所」から粉を仕入れるのが定番だった。使い勝手が良い値段だったし、打ち粉割り粉のセットがあるなど「年末だけ、ちょっと蕎麦を打ちたいんだよね」という僕にとって都合がよかった。あと、なによりもドメインが「sobako.co.jp」だったので覚えやすかったというのもある。
しかし、昨年来webサイトを閉じてしまっていて、アクセスができない状態が続いている。なので、まずは蕎麦粉の入手ルートの開拓からはじめないといけない。
あれこれ探した結果、今年は長野県諏訪市の「高山製粉」のものを使ってみることにした。このお店も、割り粉と打ち粉を小口で売ってくれるので都合が良かった。
「絶妙なコシ・風味・甘み」なんだそうだ。そりゃいい、絶妙という言葉、僕は大好きだ。

今年、新型コロナウイルスの家庭内感染を懸念して、おかでん家は分散帰省となっている。
大晦日に実家にいるのは、両親と我々夫婦、そして0歳の子供だけだ。
なので、これまでのように「蕎麦粉1キロ」ではなく半分の500グラムで蕎麦を打つ。蕎麦打ちを2回に分けなくて済むので、楽だ。
蕎麦粉1キロのときは、粉の残りが出ても扱いが面倒だからと「蕎麦粉1kg+割り粉500g」の合計1.5キロを打っていた。今回も割り粉が500グラムあるのだけれど、さすがに蕎麦粉500g+割り粉500gだと薄まりすぎだ。割り粉のあまりは別の使いみちを考えよう。

誰からも相手にされず、一人ダイニングテーブルでもくもくと蕎麦を打つ。
我が子にも父が蕎麦を打っている光景を見せたかったけど、蕎麦アレルギーが出たら大変なので別の部屋に退避してもらった。まだ彼は蕎麦という食物を口にしたことがない。万が一蕎麦に過剰反応したら大変だ。
僕の周囲で蕎麦アレルギーの人はいないのだけど、一旦アレルギー反応が出ると大変らしい、というのは聞く。蕎麦のイベントに行くと、会場の入り口に警告が出ているくらいだ。蕎麦のイベントなら蕎麦アレルギーの人はそもそも来ないだろ?食べないだろ?と驚いたけど、おそらく空気中に微細に蕎麦粉が漂っているだけでもアレルギーの人はアウトなのだろう。食べる・食べない以前の話だ。
そんなわけで、我が子に蕎麦を食べさせないのは当然として、蕎麦打ちが終わり、床の掃除機がけが終わるまでは立入禁止だ。はいはいをする子供がいると、床に粉が残っているだけでも危ない。
いずれは息子に蕎麦打ちを継承させたいと思う。でも、まだしばらくは蕎麦の存在は内緒だ。

1年ぶりの蕎麦打ち&誰も見ていない状態なので、適当な打ち方になってしまった。

生地を伸ばすのも適当。なので、厚みが場所によってまちまちになってしまった。
両手で綿棒を使って伸ばすのが、以前と比べてしんどくなった気がする。腰をかがめて腹筋背筋を使うからだ。面倒なので、片手で綿棒に重心をかけつつ生地を伸ばしたのだけど、当然圧力がかかる範囲が狭くなるので生地が凸凹になる。

打ち上がった蕎麦。麺が太くなったけど、まあいいや。

今年は一家勢揃いしない年末だったこともあり、蕎麦の前に食べる食事がいつもと違った。
ここ数年は、「銀のさら」で握り寿司を出前していたのだけど、今回は天ぷら。これも僕がせっせと揚げた。
「銀のさら」の握り寿司は大変に結構なのだけど、特に姪のようなチビたちは寿司だけでお腹がいっぱいになってしまう。なので、おかでん渾身の作である蕎麦をあまり食べてくれない。大人たちから、「お蕎麦の量は少しでいいから!残したらよくないから!」とまるで邪魔もの扱いの忠告をされ、毎年残念に思っていたものだ。
その点今年は天ぷらだ。まずは天ぷらで一献やってもらって、満腹になりきる前に蕎麦に移行だ。

今年の蕎麦は鶏南蛮。
ここ最近はずっと鴨南蛮にしてきたけど、僕の技術不足のせいか鴨から良いダシが出ている感じがしない。高いお金を払ったわりに、満足度が伴っていない気がしていた。なので、今年は鶏肉だ。鶏もも肉の脂で、蕎麦つゆをいい感じにコーティングできるといいな、と思っている。
これでもイマイチなら、来年は豚バラ肉で豚南蛮だ。もう、「蕎麦そのものの味を楽しんでもらう」なんて、これっぽっちも考えないようになってきたぞ。
で、作った鶏南蛮は良い味になった。ネギから甘みを引き出そうと欲をかいて煮込んでしまい、ネギがどす黒くなってしまったので見栄えが悪いけれど。
「ウチの店はね、味重視なんスよ。見た目なんて二の次ですよ」
と強がってみる。
あと、これまで体験のない「大人4名で食べきる量」を目指したため、最後僕の丼はつゆが足りなくなってしまった。麺も、形がいびつなものが僕の丼に集結したので、写真を撮るとなんだか全く美味しそうに見えない蕎麦だ。
でも、父からは「これまでで一番美味しいんじゃないか?」と評価してもらった。ごめんお父さん、これまでの蕎麦は「割り粉を使い切ろう」という一心で、6.6割蕎麦だったんだ。でも今回は二八蕎麦なんで、それで美味しくなったのかもしれない。
あと、昨年は新型コロナウイルスの流行第3波のせいで帰省ができなかった。帰省しない1年を挟んだことによって、改めて「息子が手打ちする蕎麦」のありがたさを感じたのかもしれない。
味も見た目もいまいちかもしれない蕎麦。でも、かれこれ20年以上年末の風物詩としておかでん家を彩ってきた。継続は力なり、というのはまさに正しく、続けることで意味が生まれてくる。僕の場合はそれが蕎麦だ。そしていずれ、次世代に蕎麦打ちを引き継いでいき、僕が「今年の蕎麦はまあまあだな」などと評する側に回るのだろう。
(「蕎麦喰い人種行動観察」コーナー これにて完)
コメント
コメント一覧 (2件)
あけましておめでとうございます。
さて、
忙しいのはわかる。そば打ちから茹で上げ、天ぷら揚げに至るまで調理でそれどころじゃないのは重々伝わってくる。まぁでもちょっと暗すぎんか?せっかくの渾身料理がもったいない。
X-T20の内蔵フラッシュ使わないまでもせめてwin10フォトの後加工でスライダー一閃。明るさだけでも上げてみてはいかがでしょうか。
てなことで記事だけでなく掲載写真も引き続き楽しみにしております。(jpg処理に変えられたんですね)
2022年がおかでんファミリーにとって更なる飛躍の年になりますように。
本年も何卒よろしくお願いします。
あけましておめでとうございます。
確かに、年越し蕎麦の写真は薄暗いですね。自分も、記事を書くために写真を貼り付けて「おやっ?」と思いました。
蕎麦粉のパッケージを写した写真は
f/3.6、露出1/60、ISO-320
なんですが、その割には暗いです。露出補正をかければよかったですね。あとホワイトバランスがおかしいようです。オートに任せないほうが良かったかもしれません。
いつもご指摘ありがとうございます。