初登場ダッチオーブンの威力(その1)
日 時:2002年(平成14年) 07月20日~21日(1泊2日)
場 所:無印良品南乗鞍キャンプ場
参 加:おかでん、ばばろあ、ひびさん、しぶちょお(以上4名)
椎名誠の著書に端を発した「アワレみ隊」だったが、椎名誠がそうであったように、初期の力技天幕合宿から徐々に文明の利器を取り入れたキャンプへと変貌していった。そんな中「おかでんの転向宣言」が出され、敵視していたオートキャンプ場への出入りをも完全に容認するようになった。アワレみ隊第二期のスタート。
ただ、この転向宣言は隊員無視の一方的すぎる発言であると、一部から批判があったのも事実。そんなわけで、「第二期アワレみ隊」の第一歩となる今回のキャンプは結構重要な位置づけにあった。
投宿場所として選定したのは、無印南乗鞍キャンプ場。名前から見て判るとおり、無印良品が運営するキャンプ場だ。乗鞍岳の南側に位置し、標高は1,600m。相当な高所だ。車で行けるオートキャンプ場としては日本でも有数ではあるまいか。
場所は岐阜県になる。東京から行くとなると結構遠いのだが、「ほんとうに気持ちいいキャンプ場100 新装版 (小学館SJ・MOOK)」だと82点の高得点をマークしているし、写真を見ると実際に気持ちよさそうな場所だったのでここにした。
「オートキャンプ場って、AC電源があって、炊飯器でご飯炊いたりしてるんでしょ?で、夜はライトをこうこうと灯して、音楽をガンガン鳴らして、周囲に迷惑かけてるんでしょ?」
という偏見があったのだが、ここならそういう心配は不要だろう。オートキャンプ場利用一回目としてはここが最適に思えた。
また、このキャンプ場の良いところは、MTBや釣り竿がレンタルできたり、いろいろなアウトドア教室が開催されているということだ。週末になると教室のスケジュールがびっちりあるので、どれを受講しようか目移りする。
われわれは今回、「石窯でピザ焼き」の教室を申し込んでおいた。ピザなんて普通自分で作る事はないので楽しみだ。
2002年07月20日(土) 1日目
「まさかこんなところでお昼ご飯になるとは」
一日目お昼、諏訪湖SAで馬刺し丼を食べているおかでん。海の日三連休ということもあって、中央高速道路は激混みだった。八王子時点で、「大月 3時間以上」という表示。以上ってなんだよ、以上って。もう、予測する事すら放棄してしまうくらいの渋滞っぷりはむしろ清清しかった。
おかでんは半月ほど前にマイカーを入手したばかりで、高速道路の混雑パターンなど全然知らなかった。だからまんまと渋滞にドはまりしてしまった訳だ。
このとき、同席していたのはひびさん。仕事の関係で名古屋から東京に転勤になっており、おかでんカーで現地に向かうことになっている。
一方、名古屋出発はアワレみカーを運転するしぶちょおと、神戸からやってくるばばろあ。一泊二日でもわざわざ神戸から出てくるんだから彼の情熱はいつも本格的だ。
集合場所は木曽福島駅前に11時、としてあったのだが、もう既にお昼。大幅な遅刻が確定してしまっている。
テーブルにビールの広告があった。
おや、SAにビールとはけしからんな、おかでんみたいな酒飲みかつ「渋滞に巻き込まれて相当お疲れ気味」「自分にちょっとした休憩とご褒美をあげたい気分」な状態だと、ついつい手が伸びてしまうではないか・・・
あれ。ノンアルコールビールですか。へー。そんなものがあるのか。バービカンしか知らなかった。
2002年当時はノンアルコールビールなんてものはほとんど存在しなかったので、驚きの対象としてこのクラウストなんたら、という飲み物を見つめたのだった。
「飲みます?」
「いやー、こんなビールもどき飲むくらいなら我慢するけどなあ。我慢できないシチュエーションってどんなんだよ」
しかもSAという高速道路のまっただ中で。ううむ、わからん。
2002年当時は権兵衛トンネルすら開通していなかった。おかげで、伊那谷から木曾谷に向かう際は車一台がやっと通れる権兵衛峠をくねくねと通っていく必要があった。
やっとのことで集合場所の木曽福島駅に到着したのは14時半頃になった。3時間半というグレイトな遅刻。その間、ばばろあとしぶちょおには食材調達をしてもらっていたが、だとしてもこれだけの時間、よく待ってくれたと思う。
木曽福島駅の近くにはco-opがあるので買物には不自由しない。ひととおりの物がそろう。ただし、木曽福島からキャンプ場へは開田高原経由で1時間くらいはかかるので、決して「食材調達が便利なキャンプ場」というわけではない。でも、オートキャンプの末恐ろしいところは、少々買物する場所が遠くても何ら問題ないということだ。飯能河原では徒歩で買いだしをしてしたことを思うと、隔世の感あり。
南乗鞍キャンプ場は標高1,600mの値に恥じない登り坂をうねうねと登っていった先にある。標高が上がるにつれ、うっそうとした木々がまばらになり白樺林になっていく様は見事。
キャンプ場は広々としている。もっとみっちりしているイメージがあったが、広々。
センターハウスに行き、手続きをする。ホテルのチェックインと同じ感覚。
おっと、言い忘れた。この無印キャンプ場は会員制を採っている。このためにおかでんはわざわざMUJI OUTDOORの会員になった(無料)。そうなると、おかでんの紹介でその他3名がここを利用する、ということになる。会員価格とビジター価格は差があり、それはアウトドア教室でも同じ。無料なのだから、会員になっておいた方がお得というわけだ。
キャンプ場内はフリースペースというわけではなく、細かく区切られたスペースを利用することになる。それぞれのスペースには番号が振られており、予約時にwebで指定することが可能。web予約画面には、ご丁寧に「車2台駐車可能」「願望良し」「洗面所から近い」「ペット可能」などスペースごとの特徴が書かれてある。
また、自然をできるだけ残しつつキャンプ場をこしらえているので、テントサイトのブロックごとに特徴がそれぞれちがう。だから、今回どのサイトに泊まるかは結構悩みどころだった。ブロックをどうするか考え、その次にブロックの中のどのサイトに決めるか。
たとえば、今回われわれが利用したDブロックの解説はこうだ。
白樺等の樹木に囲まれた雰囲気が隠れ家的なサイトを演出し、なお御嶽方面の景色のいいことから、センターハウスから遠いにもかかわらず、人気があるエリアです。夏は高山植物の花にも囲まれ、サイト周辺で自然観察もできます。
こういう文章、うまいなあと思う。読んだだけでわくわくする。
一方、Bブロックはどうかというと、
センターハウスからも比較的近く、サニタリー棟も3棟点在していますので、 小さなお子様連れやキャンプを始めてまもないお客様にもお勧めです。比較的平坦なテントサイトが多い事も特徴です。高台で静かな雰囲気を楽しみたい方にはB72~84のサイトがお勧め。池に近いサイトからはゆっくりと釣りの風景も楽しむことができます。(フィッシングエリア内は釣り人専用です。)
だって。先ほどのDブロックと様相が異なる事がわかる。
われわれのサイトは60平米強はあろうかという芝のスペースだった。たき火台が完備。というわけでここでの直火は禁止。
サイトに到着後、早速テントを組み立てる。テントをまず建ててみないことには、かまどの位置だとかテーブルの位置とかを決めることができないからだ。テントがまずはキャンプ場のヘソ。
全員慣れたもので、あっと言う間にテントを組み立てた。そういえば神島で天幕合宿をやったのが1993年だから、もう9年もこのテントと共に過ごしてきたのか。そりゃテント組み立てるのが早いわけだ。
この頃、だんだん竹製のポールはヒビが入り始めており、老朽化が懸念された。さすがに9年も経てばボロくなって当然だ。
先ほど、しれっと「テーブル」という言葉を使ったが、今回初登場なのがこのテーブル。あと、ディレクターズチェアも新調された。おかでんがオートキャンプやるといったのはマジでございます、というわけでこういう品物がトランクからぞろぞろ。
「こんなの買ったぞ」
しぶちょおがうれしそうに箱を取り出した。
「あっ、ダッチオーブン!」
手にしていたのは、買ったばかりのダッチオーブンだった。
ダッチオーブン。アウトドアキャンパーの憧れ。その重い鉄の鍋は、時には鍋、時にはオーブン、時にはフライパン、さらには蒸し器にもなるという万能調理器だ。
分厚い鉄でつくられていて、とても重い。だから、ふつうのキャンプだと重いやらかさばるやらで持参するのは現実的ではない。しかし、「オートキャンプ」となると話は別。車のトランクから徒歩数歩でかまどまで持ってくることができる。こういう重いものを使うには最適。
「でもなんでいきなりダッチオーブン買ったんだ?」
と聞いてみる。いくらオートキャンパーらしい逸品だとしても、衝動買いするようなものではない。
「箱に書かれている文字がいいんだよ」
と謎なことをしぶちょおは言う。
見ると、箱には「ダッチオーブンセット」と書かれているのだが、確かになんだかヒーローもののフォントというか、おもちゃのパッケージに書かれているようなフォント。味がある。
「しかも、『男のワイルド料理』って書かれてるんだぜ。これはもう買うしか」
「なるほど、確かに、買うしか」
こうしてアワレみ隊は安易な理由でダッチオーブン持ちとなったのだった。
買い出しした荷物一覧。
発泡スチロールをスーパーで入手し、そこにみっちりと要冷蔵品を詰め込んである。みっちり、といってももっぱらビールが主体。
本日のメインイベント、牛肉の塊。料理長のばばろあに聞くと、これでローストビーフを作るんだという。どうやって作るのかというと、ダッチオーブンを使えばできるんだとか。なるほど、さっそく有効活用しようというわけだな、ダッチオーブン。フライパンがわりに炒め物作っておしまい、なんてデビュー戦じゃつまらないもんな。
サニタリー棟というのがキャンプ場の随所にある。トイレ兼炊事場になっているところだ。
ばばろあ主導のもとひびさんも野菜の下ごしらえ中。
キャンプで難しいのが、サニタリー棟からどれくらいの距離を確保するかだ。あんまり近すぎると便利な反面、テントサイトの近くを人がうろうろすることになりうっとおしい。逆にサニタリー棟から離れると、プライバシーがある程度保てて良いが、トイレなどが不自由になる。ビール飲みのおかでんにとっては大変面倒。だから、このテントサイトは「サニタリー棟から遠からず、近からず」の中間的な場所を選んだつもりだ。
到着してからまだ一時間足らずだが、テント設営してほとんど休む間もなく食事の準備開始。何しろもう17時だ、早くしないと日が暮れる。
テントだが、ペグダウンなんて全くしないのでフライシートがしわ寄りまくり。ペグ?一応あるけど、わざわざどうにかしようとは思わないねぇ。だって面倒じゃん。以上。
大きな肉に塩コショウして、タコ糸で縛って。ばばろあ孤軍奮闘。
にんじんジャガイモ玉ねぎ・・・。まるでこれからカレーライスを作るかのようだ。でもそうではない。この野菜たちはダッチオーブンに入れられるために用意されたものだ。さて一体何ができるのかな。
テントサイトを遠目から眺める。二台の車が余裕で入れて、なおかつ十分なテントスペースがある。しかも、隣のサイトとの間には木や草が十分に生えており、プライバシーがある程度保たれているというのがうれしい。おかげで、テントサイトの中でおちんちんびろーんとかやっても通報されることはない。・・・もしできたとしてもやめとけ。ジャングルファイヤーとかやるんじゃないぞ、おい。
しぶちょおが持参したものの中に、炭火コンロがあった。炭火コンロに炭を入れ、下からダッチオーブンを加熱・・・してみたんだが、ダッチオーブンに熱がうまく伝わらない。ダッチオーブンは炭火と密着した状態にしないといけないらしい。作戦失敗。
ちなみにひびさん、ばばろあ、おかでんがおそろいの白い服を着ているが、これは2001年お遍路の時に作った「アワレみ隊ブルゾン」。背中と胸のところにアワレみ隊のロゴが入っている。実は翌日昼に「石窯でピザ焼き」体験を受講することになっているのだが、その際に「長袖持参」と書かれていたので、じゃあみんなでブルゾンを着ようじゃないかとなった次第。
結局、たき火台の一角に炭を固めて置き、そこにダッチオーブンを載せることにした。そうしたらうまいことダッチオーブンが温まり、調理ができるようになった。何しろ初めてづくしなので、あれこれ難しい。
そもそも、これまでのアワレみ隊キャンプは「直火」が調理火力の主体だった。炭火を使うこと自体、あまり経験がない。
さて、蓄熱したところで調理開始だが、まずは大きな肉の表面を固め焼きする。表面にまんべんなく火が通ったところでいったん取り出し、次に先ほどひびさんが少しだけ焦がしたジャガイモ、ニンジン、玉ねぎを敷く。そして、その上に大きな肉を配置してダッチオーブンをフタ。
炭をダッチオーブンのフタの上にも載せる。こういう芸当ができるから、単なる「鉄なべ」ではなく「ダッチ『オーブン』」と呼ばれるのだった。上下同時に火力を加える。
そうこうしているうちにご飯が炊けた。4合炊きの炊飯釜いっぱいにご飯が炊けている。
「疑問に思ったら、加熱中であってもいつでもフタを開けてよい」というアワレみ調理法によりご飯は見事に炊けている。おこげすらないジャストな炊け具合。「赤子泣いてもフタとるな」という格言が日本では昔からあるが、うちらフタあけまくりだもんね。自信がないときは3回も4回も開けちゃう。焦げたメシ食べるよりはマシだ、と考えているからだが、今んとこその行動で不利益を被った事は一度もない。
「馬鹿な。フタを開けなければもっとおいしいご飯が炊けるのに」という意見もあるだろうが、まあ、そういうご飯は家の炊飯器で食べればいいや。
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