2003年02月09日(日) 2日目
2日目の夜が明けた。
旅行先ではもっとも寝起きが良い(というか、熟睡できない)おかでんが真っ先に起きる。
そして恒例の、寝起き写真を一枚。
別にみんな寝相が悪いわけではないのだが、どうしても雑然とした画づらになってしまう。昨晩の食べ残した菓子類、そしてモコモコした布団。寝起き写真で、ぴしっと整然とした姿ってぇのを撮ってみたいものだ。・・・死体みたいに見えて、気持ち悪いか?
しぶちょお(奥から2番目)は、かけぶとんをはねとばして、そのかわりにに毛布をしっかりと体に巻き付けて寝ていた。暑いのか寒いのかわからない。逆に、おかでん自身は毛布を敬遠して、かけぶとんだけで寝ていた模様。
一番手前に寝ているだておーは、寝相よく寝ていますねぇ・・・と思ったのだが、肩から見える浴衣が紺色だ。あ、こいつ丹前着たままで寝たな。
朝ご飯は一階の広間で頂くことになっていた。
ご朝食会場に、いざ。
朝食は、シンプルだけどこれで十分な内容だった。あんまりゴテゴテとおかずが並んでいるのは考えもので、これくらいの量が一番よい。
しかし、席につくやいなや、即座におかずをチェックする。納豆、温泉玉子、海苔か。3杯はご飯を食べなくちゃいけない計算だな。
無理に食べる事はないんですけど。
この日のメインは鮭でした。相変わらず海のお魚なんですな。まあ、鮭というのは見栄えと値段のバランスが非常に良い食べ物だから、宿の朝食に出しやすいのだろう。
おっと、油断していた。
しぶちょおの膝元にご飯のおひつが届けられていた事を忘れていた。気がついたら、しぶちょおがご飯を「まんが日本むかしばなし」盛りにしていた。
あのー、それ、誰のゴハンになるんでしょうか。
聞くまでもなかったか。
ばばろあは、こんな盛りのご飯を食べないのは過去の付きあいで分かり切っている。必然的に、おかでんの手元にナイスシュート。
横から見ると、お茶碗の高さの2倍以上、盛られてしまった。
いやぁ、朝からハイカロリー。
昨晩、夕食でけっこう飲み食いしたために現在顔がむくみ中。「やっぱり食べる量は計算しなくちゃ」と自戒している側からこれだ。
さっきまでは、「納豆・玉子・海苔でご飯3杯」と計算していたが、早速軌道修正。1杯でやめときます。おひつがしぶちょおの手元にある限り、毎回冗談みたいな盛りにされてしまう。
とまあ、嫌々食べているような表現を使ってこの文章を書いているわけだが、写真の顔を見る限りなんだか幸せそうなんである。結局喜んでるじゃないか。
とばっちりをくらってしまっただておー。
呆然としている。
彼が手を合わせているのは、素晴らしい盛りに拍手喝采をしているわけではない。手をこすりながら、お盆の上のおかずとご飯を交互に眺めつつ、「これだけのご飯をどうやっておかずと組み合わせながら食べていくか」を計算中、という状態。
食後の4人。
何やら、朝ご飯後とは思えないまったり感に支配されている。
スポーツをやった後みたいだ。
部屋から外を眺めたところ。
たんなる住宅地に見える。
四万温泉のこの辺りは、民宿的な規模の旅館が多いみたいで、これぞ温泉街!という作りにはなっていない。
なんとなく散漫なイメージがあるのは惜しい。もう少し、街全体をトータルコーディネートすると、非常にいい温泉地になると思うのだが。
今日はまず、歩いて10分ほどのところにある「山口露天風呂」に行くことにした。この四万温泉には、無料の外湯が5カ所(だったかな、記憶曖昧)あるという。そのうちの一つが山口露天風呂だ。
外は雪が残っている寒さなので、防寒していけばいいのだが「いや、やっぱり温泉街を歩くときは浴衣でないと」と誰かがいいだし、部屋にいる時の格好そのままで突撃となった。
当然、裸足にサンダルという格好なわけだが、足の指に雪がついて冷たいったらありゃしない。
「おい、僕ら浮いてないか?周りの光景から」
「何を今更。浮きまくっとるに決まってる」
道路を、チェーンを巻いてガラガラ音をたてる乗り合いバスが通り過ぎていった。乗客が全員、こっちを見ている。
「ほらー!やっぱり」
途中、飲泉できる場所があったのでばばろあがペットボトルに給水。何しろ、「四万の病を治す」ことから「四万温泉」と名付けられたくらいだ、飲んでおけば御利益はきっとあるだろう。
特に胃腸に良いとのこと。
しばらく歩いていると、川の対岸にあずまやが見えてきた。あれが山口露天風呂らしい。あー、よくバラエティ番組で見かけたなあ、この場所。なるほど、四万温泉だったのか。
混浴露天風呂という位置づけだが、対岸から丸見え。これだと、女性は入りづらい・・・というか、明るい時間帯だとほぼ入れない。・・・ん?いや、女性が入っとるぞ。
どうやらカップルで訪れたらしく、男女のペアが湯船に入っていた。ご苦労様です。そのガッツに激しく拍手を贈りたいのだが、こちらも同じく温泉に浸かりにきた以上相席させて頂きます。
脱衣場は男女別で完備されていて、脱衣場を出たすぐ手前が「一応の目隠し」となっている湯船がある。周囲の視線が恥ずかしい方は目隠しされている湯船をどうぞ、という事なのだろう。
湯船で記念撮影。
目隠しが無い、開放的な湯船に移動したいのだが例のカップルが滞在してらっしゃる。お邪魔しちゃ悪いので、われわれはこちらでお湯をいただく。
結局、われわれが退去するまで、このカップルは湯船に陣取り続けた。30分以上われわれは滞在していたので、この二人は相当ゆで上がってしまったはずだ。やはり、女性が脱衣場に向かうまでの間に裸を見られるのを嫌ったのだろうか。
彼氏のほうは、彼女を湯船の隅に押し込んで、自分がその手前に陣取るというガードぶりを発揮。いやぁ、ご苦労様です。
カップルをゆでガエルにしちゃ申し訳ないので、そこそこで切り上げて退散。
湯船から見た光景。
温泉旅館が対岸に並ぶ。温泉旅館を眺めながらの露天風呂ってのもなんだか不思議だ。
こっちからこのような光景が楽しめるってことは、逆もまたしかり。客室は川に面しているので、当然こちらの湯船は丸見えだ。双眼鏡を持ってきた人はラッキー・・・じゃなかった、ええと、まあ、そういうことだ。
われわれが湯船でばちゃばちゃやっている最中、何組かの女性客がやってきたが、その都度引き返していった。さすがにこの開放感は女性にとって鬼門らしい。
男に生まれてきて良かったーと叫びたくなる瞬間だ。
山口露天風呂のすぐそばに、「上之湯」という共同浴場がある。これも無料。
われわれはさんざん露天風呂を満喫したので、ここでまたお風呂に入る気はしなかった。
しかし、とりあえず中身はどうなっているか、確認にGO。
「おい、誰も入ってないぞ」
「なに?じゃあ、写真だ写真。カメラカメラ」
お風呂には入らなかったけど、写真だけはとっておきましたー。
はい、これが上之湯です。
以上、おしまい。
宿に戻り、荷造りをしてチェックアウト。犬のボスと、二人のガキンチョ・・・じゃなかったお姫様にお別れ。10年後が楽しみだ。美人姉妹がいる宿!なんてことになっているかもしれない。そのときにはぜひまた訪れてみたい。
駐車場への道、誰かが「あっ」と声をあげた。
指さす先には、何かの看板が。
「かみつけ信用組合」噛み付け、信用組合・・・?なんというネーミングだ。
しばらくして、ようやく「上野(かみつけ)信用組合」という意味に気がついた。地元の地名ですな。しかし、確信犯だなこの名付け方は。がるる。
今日は、せっかくの四万温泉なのでもう一軒温泉を楽しむつもりだ。積善館という、四万温泉の中でも歴史がある温泉宿に向かう。
積善館周辺は、大型旅館が建ち並ぶ地域のようで活気があった。四万温泉は、このように宿がコロニーになって散らばっていて、装いが全然異なっていて面白い。
面白いが、やっぱり散漫な印象は、受ける。
これが積善館。元禄時代に作られた建物らしく、300年以上の歴史を持つらしい。よくぞ長持ちしたものだと感心させられる。普通、温泉宿は温泉の成分が含まれた湯気のせいで老朽化が激しく、20年もすれば改築しなければいけないはずだ。ビバ木造建築、って事だろうか。
四万温泉の観光名所になっているらしく、ひっきりなしに観光客がうろうろしている。われわれはその間隙を縫って、セルフタイマーで記念撮影。
積善館入り口。
入り口に入らず、すぐ右手が有名な「元禄の湯」だ。
受付を済ませなくてもお風呂に入れるじゃーん、と思うがそれをやってはいけない。
元禄の湯入り口に飾られていた注意書き。
元禄の湯は、こじんまりとした湯船が5つ並んでいた。温度違いになっているのかと思ったが、そういう訳ではないようだ。どれも同じ温度に感じる。なので、誰も入っていない湯船を選んで浸かる。
いい湯だ。
浴室の写真を撮りたかったのだが、のぼせたオッチャンが前を隠さない状態で寝っ転がっていたため、断念。ワイセツ物というより、むしろ汚物に近いものを撮影しても、後の処理が面倒だ。
積善館には、いくつものお風呂がある。しかし、日帰り入浴できるのは「元禄の湯」と「岩風呂」だけだ。岩風呂は、混浴だという。
・・・
精神的ダメージを受けて引き上げる。混浴というのは、えてしてそういうもんです。女性が入っていれば、なんて期待はしてないし興味もなかったのだが、オバチャンが先客で入っていて、もう、何というか、うわぁ。
岩風呂、お風呂としては見所全くなし。元禄風呂に干上がるまで入っていた方が良いです。
「この浴室、脱衣所から結構段差があるよな。まるで宝塚劇団の階段みたいになってる」
「これから入場する人の品定めにはちょうどいいよな、脱衣場からしゃなり、しゃなりと階段を下りてくるのを、湯船から見上げる」
「まだ混浴というキーワードに甘い妄想を抱いとるのか。さっきの現実を直視せよ」
「ううむ、確かに。みたいモノが階段から下りてくるとは限らないからな」
この積善館は、山の斜面に作られているためにこのような段差がある。渡り廊下の傾斜が結構きつそうだ。そんなこんなで、この宿は3つの建物に分かれ、合計8階建てという仕組みだ。もちろん、上に上がればあがるほど値段も高くなる。
ちなみに、われわれが今いるこの本館は、1泊2食で5,350円(平日)だ。えらく安い。からくりは、食事が弁当という事だ。松花堂弁当みたいな弁当を、セルフサービスで食べる。追加料理はないし、布団の上げ下げは自己解決。その代わり、安い。
本当は、四万温泉の宿を探すときにこの積善館本館を最初にあたってみた。しかし、さすがに予約がいっぱいで宿泊不可。人気は相当高いようだ。
朝から連続してお風呂に入ったので、少々疲労気味。一息いれて、積善館を後にした。
駐車場までの河原に、何やら公衆便所みたいな建物が見える。あれも共同浴場の一つで、河原の湯という。どう見ても、公衆便所だ。「たたたた、大変だ」と股間を押さえながら駆け込んできた人の絶望する顔が目に浮かぶ。でも、間違っても湯船に用を足したりしちゃ、駄目だぞ。
源泉に近くて、効能が最もある温泉らしい。
われわれは湯あたり気味なので、パス。
世間一般的には、明日は月曜日、平日だ。ばばろあは通常通り仕事があるため、今日以降の旅は参加できない。残る3名は、もう一泊どっかで遊んで帰る予定。神戸在住のばばろあからすれば、お昼時点で群馬県にいるというのは憂鬱な状況になりつつあった。とりあえず、高崎の近くまでばばろあを送り届けることにし、昼ご飯を食べる場所探しとなった。
水沢観音の周囲に、うどん屋が密集していて「水沢うどん」が名物・・・という話を以前聞いたことがあったので、ではその名物とやらを食べてみよう、という事にした。水沢へGO。
いざ、訪れてみると確かにうどん屋だらけ。一体どうしちゃたの、というくらいうどん屋ばっかりだ。名物だからうどん屋が増えたのか、うどん屋が増えたから名物となったのか謎だ。
しかし、そのいずれも結構な大型店舗で、観光客いらっしゃいな状態なわけであって、「うわぁ、どのお店がいいのかさっぱりわかんねぇよ」と言いながら、駐車場に入りやすかったお店にするりと入場。
これが名物水沢うどん。
メニューには、「うどん」ではなく「うんどん」と記載されていた。うんどん、が縮まってうどんになったのだそうで。
日本三大うどん、というのがあって、稲庭、讃岐、そして水沢らしい。知らなかった。誰が決めたんだ、その「三大」ってのを。東京の人間でも、「水沢うどん」を知らない人は多いぞ。
さて、しばらく悩んだ末、熱燗を一本だけ注文してみた。山菜をつまみにして、飲む。やっぱり、蕎麦屋と勝手がちがって、どうも落ち着かない。しかし、周囲を見渡すと結構な数のお客さんがビールを飲んでいた。うどん屋でお酒。まあ、それもありだろう。しかし日本はいつの間に、昼から酒を飲んでもはしたなくないという文化になったのだろう。非常に良いことです。ただ、問題なのはどう見てもあんたドライバーでしょ、というお父さんがビールを飲んでることだな。
うどんを食べる人々。しぶちょおは、暖かいのと冷たいの、両方を食べていた。あっ、しかも天ぷらもついてる。
一見豪華そうに見えるが、「お酒+山菜+ざるうんどん大」の値段と大差がなかった。なんだか、激しく損した気がする。お酒なんて飲まないで、天ぷらをつけるべきだったか。
舞茸の天ぷらがおいしそうだ。
水沢うどんの特徴は、「一度天日干しにして麺の表面にひびを入れる」だという。だから、麺ができあがるまでには2日がかりとなる。そういう独特のうどんなのだが・・・美味いのは事実なんだけど、家庭で食べるうどんの延長線にある感じがして、平凡な印象だった。讃岐うどんの強烈な個性を想像して食べると、ギャップに戸惑う。でも、おいしいです。値段が高いですが。
ざるうんどん「大」とはいえ、夏目漱石さんが1枚消えるお値段というのは、ちょっと困る。観光地物価、ってヤツなんだろうか?
ばばろあをJR渋川駅に置き去りにして、残る3名は本日の宿探しに取りかかった。いろいろ考えた結果、万座温泉に向かうことにした。
宿の記事が載っている本をぱらぱらとめくる。
「ええと、いろいろあるけどね、混浴露天風呂があるところとか」
「そこにしよう」
即決だった。まあ、別に助平な意味はないのだが、なんとなく。
宿に電話したら、空いているとの回答。予約を入れた。
有料道路を使って走っていくと、スキー場が見えてきた。万座温泉に到着だ。
万座温泉、豊国館。ここが今日のお宿。
ゲレンデのすぐ横に位置していて、周囲にはスキー客がたくさんいた。スキー目的で万座に来るなら、非常に都合の良いロケーションだ。
「ああ、そういえば今ってスキーシーズン真っ盛りなんだよな。この光景を見て気がついたよ」
「言われてみればそうだな」
なんとも間抜けな会話をする。
玄関の中に入ると、そこは広いロッカールームだった。スキー場ならではの造りだが、何だか殺風景な印象を受ける。
宿の外観がややくたびれた印象があったので、この光景でさらにドキドキしてしまった。宿を手配した立場として、「やばい、はずれくじを引いてしまったか」と心配でしょうがない。隣の旅館の方が小きれいだったよなあ、と。
しかし、中に入ってとりあえずは安心。確かに建物は古いけど、ボロいという訳ではなかった。大丈夫、スキー客を泊めればいいんでしょ?的な投げやりな宿でもなんでもなく、しっかりしている。
見よ、この廊下を。ワックスがけしたかのような光沢。手入れがしっかりされているのだろう。こういう宿は安心して利用して間違いない。
何か既視感がある光景だなあ、と思ったら、何となく山小屋に雰囲気が似ているのかな、ということに思い当たった。北アルプスにある、規模の大きな山小屋がこんな感じだったっけ。ちょっと古びた印象があって、でもそこそこ清潔で、若干殺風景な印象がある内装で、それを補うかのようにポスターが貼ってあって。
建物は増改築を繰り返しているらしく、外見はシンプルな建物にもかかわらず、中は結構入り組んでいた。今日のように、日が高いうちにチェックインした場合、夕食までの間に圧倒的に時間が余ってしまう。そういう時は、館内探検ができる適度な「変な造り」の建物は歓迎だ。
案内された部屋。窓からスキー場がよく見える。眺め良し。
お手洗いと洗面所は共同のものを使うことになっていて、室内には鏡だけが壁に貼り付けてあった。至ってシンプルだ。窓側にテーブルと椅子が置いてあるような、そんな気の利いた事もない。
早速、風呂に向かう。
万座は、集落全体がすでに硫黄臭いので、「風呂場に入ると温泉のにおいが立ちこめて・・・」という事は今更ながら、ない。しかし、そんな臭気をまき散らすくらいの気合いが入ったお湯なので、こちらも気合いを入れて入る。
露天風呂は、女性専用のものと混浴のものが二つあった。女性専用の露天があったら、わざわざ混浴のほうにやってくる酔狂な女性はいないだろう、と思ったが眺めの良さが全然違うらしい。しかし、当然のように露天風呂はオッサンが大量にいるため、そう簡単には入れっこない。
ほーら、いざ露天風呂に行ってみると、お酒や箱詰めされたワインを持ち込んで、湯船で宴会しとるオッチャンらが居るぞ。酔いが相当回りそうだけど、大丈夫なんだろうか。顔が赤いのは酔っぱらってるからなのか、それとものぼせているからなのか。オッチャンら、ちょうど脱衣所から降りてきたところの正面のお湯に浸かってやんの。長期戦で、女性が脱衣所から出てくるのを待ちかまえているって算段ですかい?同じ男として、それは情けないからやめとけ、と言いたかったが確たる証拠もないので、指摘はやめといた。
この露天風呂、まるでプールのようだ。深さは1m近くあるし、幅は15mはあるんじゃないか。人が少なければ、十分に泳げる。ただし、強酸性のお湯なので、目を開けたまま潜ったら確実に眼球がやられるに違いない。
さすがに広い湯船なので、場所によって湯温が全然違う。だから、自分のポジション取りによって、好みの湯温で楽しむことができるという事になる。ただ、2月の標高1,800mということもあって、相当寒い。源泉は高温のはずなのだが、露天風呂のお湯はちょっとだけぬるめだった。長湯には向いているが、ガツンとした満足感を得ようとするとちょっと物足りない。その場合は内湯に入れば、ちょっと熱めの湯加減が楽しめる。いずれにしても、とても良いお湯だ。やっぱ、安直だけど硫黄臭がして白濁した温泉っていいなあ、と思う。
部屋の窓からみる夕焼け。そろそろ日没だ。
思い返してみれば、アワレみ隊の企画ってぇのは大抵あわただしい。あれも、これもと欲張るので、大抵宿に着くのは日没だ。だから、こうやって「風呂にも入りました、一息つきました、そして外を見たらあらまだ夕暮れじゃないですか」というのは非常にお得感が強い。
ああ、腹減った。
お昼がうどんだったので、やけに腹が減る。「今晩のおかずは何か」という議論で、部屋は盛り上がった。
「おそらくハンバーグじゃないかと思うんだが」
としぶちょお。
「この宿の造りからして、そんなに凝った料理がでるとは思えないんだよ。だから、ハンバーグ」
なるほど、確かにもっともだと三人ともうなずいた。この山小屋然とした建物の造りだと、固形燃料を使った料理がでてきたり、皿数が多いとは想像がつきにくい。シンプルな料理がでてきそうな気配だ。
「山小屋なんてね、案外みそ汁の変わりにシチュー出したりするところがあるんだよ。おかずのリッチさが欠ける分、汁物でなんとか見た目の帳尻逢わせをしようとするのかね。この宿も案外シチューかもしれんよ。で、メインのお皿は冷凍物のフライ。もしそれだったら、完璧山小屋だけどな」
とおかでんは推測。
「ははは、夕食でシチューねぇ・・・」
ま、普通の旅館ではちょっとあり得ないシチュエーションだ。
食事時間になったので、食堂に降りた。
しばらくして、配膳された料理を見て三人とも「おおっ」と声を出してしまった。
ホントに、シチューがあったからだ。
「すごい。本当にシチューがあるぞ」
「呆れた。冗談で言ったつもりだったのに。お刺身の小鉢があることを除けば、まんま山小屋料理、というのも愉快だな」
山小屋料理というよりスキー宿料理、と呼ぶべきなのかもしれないが、それにしても既視感を覚える料理だ。特にメインディッシュの構成なんか、そのものだ。中途半端な量の生野菜、冷凍物のフライと魚、そしてオレンジの輪切り。山小屋料理の文法をそのまま使っている感じだ。
ただ、山小屋と根本的に違うのは、瓶ビールが置いてあるということだ。うれしくなってしまい、ビールを痛飲する。
ただ、気をつけないといけないのはビールを10本も飲んでしまえば、一人分の宿代になってしまうということだ。飲み過ぎ注意。言うまでもないことだが、食事の席でのお酒は高い。
「気をつけろ?ビール3本飲んだら、この夕食代を越えるぞ多分」
「それは非常にイヤだな、だったら2本で抑えておかなければ・・・」
といいつつ、結局3本飲んでしまった。まあ、そんなもんです。車は急には止まれない。
食後、もう一度露天風呂に向かった。
食事時間中ということもあってか、誰もいなかった。広いプールを独占だ。
夕方入浴したときは、風呂の写真を撮りたくてうずうずしていたのだが、人が多すぎて撮影できる状態ではなかった。これで、ようやくココロおきなく撮影ができるってもんだ。
・・・後で写真を見ると、真っ暗で何が何だかわからなかった。
お湯の流入口そばで暖をとった。さすがに外は冷え込んできた、流入口から遠いお湯はぬるくて居心地が悪い。
内湯にも誰もいないことがわかったので、カメラをもって内湯に移動。カメラを手にした男が風呂場のあたりをウロウロしている光景を他人に見られたら、絶対に覗き屋と勘違いされる。だから、タオルでカメラは隠しつつ移動。
隠すところが違うんじゃないか、と思うが、これ重要。
個人的には内湯の方が居心地良かった。のぼせるまで入って、大満足。
部屋に戻って、カードゲーム「脱税天国」を2時近くまでプレイし、寝る前にもう一度風呂に入って就寝。
寝る前に入った露天風呂には、夫婦が先客でいた。やはり混浴における女性は、夜中に出現するものらしい。
風呂から部屋に戻る途中発見した光景。
雪がまるで生き物のように、屋根にアーチを作っていた。何がどうなったらこういうオブジェができるんだろう。
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