冬の味覚狩り2003
日 時:2003年(平成15年) 02月08日~10日
場 所:群馬県勢多郡富士見村 赤城大沼、群馬県吾妻郡中之条町 四万温泉、群馬県吾妻郡嬬恋村 万座温泉
参 加:おかでん、しぶちょお、だておー、ばばろあ(以上4名)
アワレみ隊が最近の活動拠点としている、無印良品キャンプ場。そのアウトドアクラブから、冬のアウトドアの告知が来た。さすが無印、あれこれ考えおるわい。キャンプのシーズンオフには、それに代わる娯楽を提案してくるとは。
スノーシュー、山スキー・・・そんな中、ひときわ目を惹いたのが「ワカサギ釣り」だった。ワカサギ釣り。なるほど、これはやったことがない娯楽だ。その気になればできそうだが、かといって何かきっかけがないとできない冬の遊び。いいじゃないか、これ。
ただ、問題は、群馬県の赤城大沼に土曜日朝7時半集合、という時間と場所の設定だった。アワレみ隊の隊員は、名古屋以西ばかりで、とてもじゃないが群馬県に登場、なんて事は無理だ。アワレみ隊としての開催は無理、とはなから諦めて、アワレみ隊BBSの常連でもあるだておー(埼玉県在住)と、あと誰かを誘って行くつもりだった。
しかし、何の因果か、この時期ちょうどばばろあが群馬に出張しているという。これはもう、アワレみ隊として企画しないわけにはいかなかった。スタッドレスタイヤを履いているアワレみカーも、名古屋からしぶちょおと共に参戦(あ、逆か、しぶちょおがメインでアワレみカーがサブだ)するというので、現地までの足も確保。
ということで、何やらバタバタしながら、ワカサギ釣り一週間前になってアワレみ隊企画が決定したのだった。
2003年02月08日(土) 1日目

金曜日、夜中1時過ぎ。ほんとうにしぶちょおは東京にやってきた。仕事を終えて、そのまますぐに名古屋から東京に向けてアワレみカーをドライブというわけだ。ご苦労様としかいいようがない。 もちろん、一睡もしていない。
東京のおかでんだって、当然寝る暇なんかなかった。仕事から帰ってきて、荷造りして、このサイトの更新をしたらもう時間。そのまま、埼玉のだておーを迎えにいく。
だておーをピックアップ後、関越自動車道で一路赤城山へ。
おっと、その前にばばろあと合流しなければいけなかった。ばばろあは、前日に出張先でのお仕事を終え、この日は総社鉱泉に泊まっているはずだ。
総社鉱泉、というのは聞いたことがない名前だ。総社温泉というのが岡山県総社市にあるのだが、それとは全然関係はない。地図で確認したところ、JR群馬総社駅にほど近い住宅地の中に存在するようで、ちょっとだけ怪しさ漂う。ばばろあはこういう場所を見つけてくるのがうまい。
案の定、「ええ?本当にこのルートなのかよ」とナビの指示に不安を感じさせる町並みの中を、車は走った。まったくの住宅地だ。こんなところに鉱泉、しかも宿泊もできる施設があるとはとうてい思えない。
結局、ナビの指示通りに目的地に着いたら、そこは総社鉱泉の駐車場だった。車の中から、ばばろあを携帯電話で呼び出す。
待っている間、周囲を見渡したら「毎週金曜日定休日」の看板を駐車場の入口に発見した。どうやらこの総社鉱泉、一週間に一度お休みをもらっているらしい。個人経営の飲食店みたいだ。
後で調べたところ、この総社鉱泉は、「宿泊もできる鉱泉施設」という位置づけであって、温泉宿という位置づけではないらしい。場所があまりに住宅地の中なのでイマイチな印象を受けるのだが、泉質はスバラシいらしく、絶賛しているwebサイトをあちこちで発見した。実際、宿泊したばばろあ自身も、「この宿は良い」と褒めていた。
「毎週金曜日定休日」という看板を発見したしぶちょおは、自分の股間に看板を押し当て、「俺の今日は定休日だから」という下ネタを披露していた。朝から濃密だ。

しばらく駐車場で待機していたら、暗闇の中からばばろあが現れた。
登場した途端に、笑った。
頭は、ロシア人がかぶっているような毛皮の帽子、そして足下は長靴。暗闇から現れる姿としてはあまりに奇妙で、笑えたのだった。
しかし、参加要項には確かに「防寒のため、長靴、厚手の服、帽子は持参のこと」と書いてあった。遮るものが何もない氷上の釣りだ、それくらいの事はしないといけないのだろう。
げらげら笑っていたおかでんであったが、長靴は持参していないやら、帽子も無いやらで、完全に防寒対策を怠っていた。大丈夫なのか、おい。

現地に向かう前に、前橋市内のファミリーレストランで朝食をとることにした。
「なんだか寝とらんから、朝飯って感じがせんのよ、わし」
としぶちょおが言う。だったら、ということで「朝飯っぽくないメニューを敢えて頼もう」という意味不明な縛りができてしまった。
ばばろあは、男が食うには少々恥ずかしい、クリームたっぷりの三段重ねホットケーキとチョコレートパフェを注文していた。朝からカロリー高いもの、よく食べるなあ・・・
「いや、これから寒いところに行くんじゃけえ、カロリー摂取しとかんと。死ぬで?」
なるほど、そういう訳なのですか。でも僕にはすでにあり余る余剰カロリーが体内に蓄積されているので、特に必要はなさそうです。
かくいうおかでんは、ドリアをはふはふいいながら食べる。

隣では、しぶちょおが「フライドポテト定食」を前にご満悦だった。「+○円で定食(ご飯+みそ汁)にできます」というメニューの表記が気になったようで、「だったら、あり得ない組み合わせにしてみよう」とワンダフルなガッツを燃やした次第。
結論として、「アンタそれは食事として間違っているような気が」という組み合わせであっても、店はちゃんと用意してくれた。
フライドポテトにケチャップをつけ、食べる。その後、おもむろにみそ汁をずずずーっ。
「ううん、ポテトとご飯が炭水化物同士なので、いまいち食べ合わせが悪い」
まあ、そりゃそうだ。

外は夜が明けてきた。
朝7時30分までには現地に着いていないといけない。それ、赤城レッドサンズになった気分でこれから赤城道路をいっきに駆け上るぞ。目指すは赤城山の山頂湖、赤城大沼だ。
あちこち凍結している道路を滑りながら駆け上り、予定通りの時間に赤城大沼湖畔の駐車場に到着した。到着と同時に、しぶちょおとだておーは防寒体制をとりはじめた。

あ、やっぱり完全防寒するんスね。僕だけっすか、ぬるい格好をしてるのは。
しかし、氷上のワカサギ釣りでわざわざ長靴なんて必要かなあ。こちらは登山靴で勝負だ。

朝が相当早いので、遅刻する人が出てくるんじゃないかと思っていたが定刻通り点呼。さすがに、ここまで朝が早くて場所も辺鄙だと、参加者も気合いが入るらしい。おそらく、「前橋駅集合」とかにしてると、うっかり遅刻する人も出てきそうだが。
点呼後、各自に買い物袋が手渡された。中から、ぴょこんと細いワカサギ釣り用の釣り竿が顔を覗かせている。袋の中には、仕掛け。至ってシンプルだ。海釣りしかしたことがないので、リールやジェットてんびん(重り)がないとどうも不安だ。
そして、「じゃあこれを引っ張って行ってください」と言われて、ずるずると引っ張り出されたものが写真のもの。なんだ、これは。ひもを引っ張ると、そりのように引きずっていくことができる。
説明によると、これは釣りをしている最中の座席兼風防らしい。ビニール部分が蛇腹状に広がって、かたつむりのような形になって座っている部分をすっぽりと上から覆うことができる。だから、寒風が吹きすさんでも大丈夫というわけだ。なるほどよく考えている。氷上のワカサギ釣りならではだろう。

ちゃんと遊漁券を買わないといけない。1日につき500円。500円分のワカサギを釣ろうと思ったら相当大変だと思うが、払っちゃった以上は覚悟を決めなくては。悪いが、赤城大沼は明日から不漁になるだろう。・・・なぜかって?アワレみ隊が根こそぎ釣り上げてしまうに決まってるだろうがアッハッハ。
「おかでんさん物理的に無理ッスよそんなことは」
こらだておー、冷静にツッコミを入れるのはやめろ。

各自の個人装備品をそりの上に載せて、いざ氷上に移動開始。
なるほど、赤城大沼は完全に凍結していた。おそるおそる、氷の上に足を踏み出してみる。
・・・
大丈夫だ。この程度の体重では、氷は割れないらしい。うれしくなって、ドシンドシンと飛び跳ねてみる。
「おお!?だておー、割れないぞ氷が。なんだかすごいすごいすごい」
「子供じゃないんですから、おかでんさん!あと、湖のふちで飛び跳ねているあたりチキンっすよ。真ん中でやらないと」
「いや、万が一割れても、湖畔だったらすぐに助けてもらえるかな、って思って」
「だったら飛び跳ねなきゃいいじゃないスか」
「いや、まあ、その、あれだ。風情ってヤツだよ風情」
「全然意味わかんねーッスよ、それ」

夏の間は、水面となっている場所を歩くというのは、結構不思議な気分だ。そういえば、以前夏にこのあたりでボートを漕いだことがあるなあ。
「誰とですか?」
「誰と?いや、昔の話だからな、忘れたよ」
「ほんとースかねえ?」
「ああわかったわかった、兄貴とだ、兄貴と」
「兄弟でボートっすか。大の大人二人が。結構キモい組み合わせ・・・ぐはっ」
「生意気な事を言っているのはどの口だ?ああん?」

一体どこまで歩かせるんだ、とだんだん不安になってきた。岸から歩き出すこと10分以上。どうやら、ワカサギっていう生き物は湖底のどこにでもいる生き物ではないらしい。
随分沼の中心地に近いところまで歩いたところで、先頭を歩いていた地元のプロの方(?)が、おもむろに氷に穴を開けだした。試しに釣ってみようというのだろうか、そりゃまた気長な話だ・・・と様子をうかがっていたら、懐から何やらコードのついた機械を取り出し、コードを穴の中に落とし込んだ。
魚群探知機だった。
たかがワカサギ、されどワカサギ。魚群探知機という文明の利器が登場するとは思わなかった。
しばらく機械とにらめっこをしていたが、「うん、湖底に魚がいるね」という一言が発せられ、本日の釣りポイントはこの地に制定された。

一人に一つづつ、穴を掘らなければならない。独特の形状をしたドリルで、氷に穴をあけた。氷の厚みは20センチ程度。一人でぐるぐるハンドルを回すと、どうしても軸がぶれてしまうのでおばちゃんに支えてもらいながらの操作だった。
「ぬおおおお、ドリルは男のロマンだ!」
「でもおかでんさん、へっぴり腰っすよ。ロマンも糞もないっす」
「馬鹿をいえ、今この格好は崇高で光り輝いているはずだぞ」
写真を後で確認してみたら、うむ、確かにロマンというのは言い過ぎだった。

おかでんが掘った穴のすぐ脇に、だておー用穴が掘削された。
「ぬおおおお」
「やっぱり君だってへっぴり腰だぞ、人の事、言えないじゃないか」

ひととおり全員の穴が確保されたところで、釣り方の説明をおこなうため全員集合となった。
ワカサギの釣り方は、一種独特だ。
・・・ざっくり解説しようと思ったが、説明しにくいのでやめた。興味がある人は個別に調べてください。

さて、肝心のエサなのだが。
渡されたのは、小さな虫だった。早い話、ウジ虫だ。ハエかなにかの幼虫なのだろう。正直、あまり気持ちの良いものではない。
なにやらシールが貼ってあるので、読んでみた。
「喰せ・寄せに抜群 秘伝チーズさし」
だ、そうな。なるほど、開封してみるとぷんとチーズの臭いがする。
「こんなので本当にワカサギ、集まるんですかぁ?」
とおばちゃんに聞いてみたところ、
「他のと全然違うんだから!大丈夫」
って自信満々に答えられた。うむ、さすがは秘伝だ。
しかし、「秘伝」という和風な、侘び寂びの世界の言葉のあとに「チーズ」という西洋食材の名前がついてくるのは、何か違和感を感じる。というか、胡散臭い。まあ、とにかく釣れればいいのだから、ありがたく秘伝の恩恵を受ける事にする。

朝8時過ぎ、釣り開始。おかでん・だておーペアとしぶちょお・ばばろあペアの二組に分かれ、どちらがより多くのワカサギを釣るか対決しよう、という話になった。
気合いが入る。
気合いが入る、の、だが・・・
小さなエサを、これまたさらに小さな針に刺すのが非常に面倒。米粒に文字を書く職人の気持ちになった。おかでんみたいに指がある程度太いと、こういう細かい仕事は大の苦手だ。釣りを開始するまでに、結構精魂使い果たしてしまった。

人生に疲れ果て、公園でうつむく男性
というキャプションはいかがでしょうか。しぶちょおが親指を突き立ててポーズをきめていなければ、まさにそんな感じだ。周りを見渡すと、みんな黙ってうつむいている。当たり前なのだが、誰一人として頭を上げていないので、何やら変な集団に見える。鬱打氏脳集団、とでも形容するべきか。

釣りを開始してから1時間弱。
・・・全然あたりがない。魚群探知機ではこの下にお魚ちゃんがいっぱい居るということなのだが、どうもわんぱく少年のような食欲はないらしい。一向に食いついてこない。
「今日は寒いから動きが鈍いのかも」
と地元の方は仰っているが、そのような困難をも乗り越えるのが「秘伝チーズさし」ではないのか。何をやってるんだチーズ。
釣れない不平不満をチーズさしに当たり散らしていたら、しぶちょおが「おお?」と奇声を発し、釣り糸をたぐりだした。
「釣れたかも、いや釣れとる」
「まさかー。長靴とか空き缶とか引っ掛けたんじゃないだろうな」
「そんなの引っ掛けたら、糸が切れるわい」
・・・
しばらくして、本当にワカサギが見えてきた。
「あ!ほんまに釣れとる!なんで?なんで?」
釣りをやっているからに決まってる。当たり前の事を口にしてしまった。

無印良品のスタッフが騒ぎを聞きつけ、写真を撮らせてくれと言ってきた。
誇らしげに写真に収まるしぶちょお。さすがに、口にワカサギをくわえるとか「今まさに釣り上げた瞬間」みたいなポーズを穴のそばでとるといったわざとらしい演技はしなかった。もったいないが、撮影された写真がどこでどう使われるかわかったものじゃないので、仕方がないか。

「くそう、あちらのチームに先を越されたぞ。こちらも負けてられないぞだておー」
「まかせてくださいおかでんさん。でも魚がこの下にはいないような気がしてならないんですが」
「焦るな。焦ると負けだ。ここには魚がいるんだと信じていれば、いずれ釣れる」
「宗教みたいなもんスかね」
「釣れなきゃ妄想、釣れれば宗教、だな」
そんな会話をしているうちに、こんどはだておーが「おお?あれ?」と何やら興奮しはじめた。
「あっ、このやろー、僕よりも先に釣り上げたらただじゃ済まさないぞ」
・・・チームプレーもへったくれもない。
実際、糸をひきあげてみたらそこにはワカサギが一匹。だておーもヒットだ。
「でも、これ・・・食いついたというよりも、針に体が引っかかったみたいですね。脇腹に針がささってますよ」
「あれ、本当だ。自ら魚のエサになってしまいました、って感じだ」
でも、釣れたモノは釣れたモノとして、事実は変わりない。だておーは「こんなのは釣れたうちに入らない」と納得いかない様子だったが、それでも今のアンタは俺にとって眩しすぎるぜ。

さあ、そのあとはぱたりと動きがなくなった。周囲の参加者たちも、全然釣れていない。やはり今日は駄目なのか。
「昼に近くなると、なかなか釣れなくなりますね」
という話だったので、朝早い今のうちに何とかしたいところなのだが・・・。
しかし、当然だが寒い。
防寒を完全に嘗めていたのが災いした。上半身はジャンパーを着ているので問題ないのだが、耳が冷たくて痛い。そして、Gパンから冷気がしみこんでくる。さらに、登山靴を伝って氷の冷気が上がってくる。我慢できない寒さではないが、じわじわと寒い。
寒いとなると、お手洗いが近くなってしまう。しかし、ここは池の真ん中。用をたそうとすると、片道10分往復20分の道のりを延々と歩かなければならなかった。どこかでこっそり済ませちゃおう、というわけにもいかない。何しろ、氷の上だ、何も遮るものがない。
「ワカサギ釣り用の穴に腹這いになって、そこで用を足したらどうですか?端から見るとわからないですよ」
「おい、そんなことしたら自分のものが凍り付いてしまう。抜けなくなったらどうするんだ」
「いや、そのときは自分の尿で溶かすってことで」
「それ以前に、そんな事をやった穴で今後ワカサギを釣る気にはなれんぞ、根本的な話として」
結局、2回お手洗いに遠征することになったが、合計40分のタイムロス。お手洗いに行くだけで相当面倒なんである。

スタッフたちが、何やら荷物をバラしてごそごそやり始めた。何を始めるのか、手元のワカサギ釣りよりも興味津々で眺めていたら、豚汁を作り始めたのだった。
そう、このために各自箸とお椀を持参するように、との指示があったんだっけ。
冷えた体には豚汁かお汁粉が一番だ。ああ、あと忘れてはいけない、熱燗があれば言うこと無しだな。
とかいいながら、さすがのおかでんも熱燗のスタンバイなどはしていなかった。後で思い返せば、ガスストーブとクッカーを持参して、コーヒーくらいその場で作れば良かった。
そんなこんなで、豚汁のにおいが周囲に漂い始めると、もう釣りが手につかなくなってしまった。投げ釣りなどと違って、アクションが小さいので地味で地味で。

できあがった豚汁。ああ、見ているだけで暖まる。
しかし、見ているだけだと、豚汁が冷めてしまうので早速食べることにする。
昔、「まんが世界偉人伝」っていう学研が出している漫画を読んでいたとき、西洋の貧乏人ってみんなパンとスープを食事にしていたんだよな。あれ見て、妙にうらやましかった記憶がある。パンとスープ!ごちそうじゃないか、って。


釣りは一時中断して、豚汁にむさぼりつく男達。
ばばろあは、まだワカサギを諦め切れておらず、豚汁を食べるのもそこそこに釣りを続行していた。執念の人だ。
一方、おかでんは持参したはずの割り箸を紛失してしまい、だておーの割り箸を1本強奪して犬食いをしていた。

豚汁のおかわりもし、とりあえず一段落したところで釣りを再開。
このころになると、大分手さばきが雑になってきた。太陽が高くなってきたこともあって、「どうせ釣れるわけないんだろ?」という諦めの境地に立ちつつある。現に、周囲の人たちもほとんど釣れていない。
先述のしぶちょおが掲載されている無印のレポートだと、さも「あちこちで次々と釣れた」かのような記述があるけど、ホントの話をこっそりすると全員(15名)で4匹しか釣れませんでしたよー。
しかし、一人だけ大物を釣り上げた人がいた。
ばばろあが、手さばきを失敗してしまい自分のジーンズに針をざっくりと刺してしまったのだった。小さい針だから、すぐに抜けるかと思ったのだがどうもお互い非常に相性が良いらしく、押しても引いてもびくともしなかった。しかも、複数の針が刺さっているので大変。
「・・・あれも1匹釣り上げた、ということでカウントすべきなのかなあ」
「いや、あくまでもワカサギを何匹釣るか、というルールじゃなかったか?」
「どうだったっけ。特にワカサギって限定していなかったような気がしなくもない」
針と悪戦苦闘しているのを後目に、そんな話をする。


結局、お昼前になっても全然お魚は釣れなかった。時々魚群探知機を穴に垂らしてもらい、確認はする。「確かにこの下にいるんだけどなあ・・・」という科学技術のお墨付きをもらっておきながら、全然釣れないこの悔しさたるや、もう。網をぶら下げて、ぎゅっと引き上げた方がいいんじゃないか、と思うがそんな用意周到さはもともとない。というか、網は反則だ。
結局、これじゃあ最後のお楽しみだったワカサギの天ぷらが食べられないねぇ、と諦めの境地だった。豚汁食べて終わり、じゃあ何のためにワカサギを釣りにきたんだかわからない。
がっくりきていると、即席の厨房では何やら油の音が聞こえてきた。一体何を揚げているんだ、と釣りそっちのけで偵察に行ってみたら、わかさぎだった。
・・・「一体何を揚げているんだ」なんて、わざとららしいレトリック使ってすいません。ここで豚カツを揚げている訳がないじゃないスか。
どうやら、今日のように「ほぼボウズ」になるパターンを見越して、ワカサギを大量に持参していたらしい。ありがたい事です。「釣れたてのワカサギを、そのまま天ぷらで頂く」という醍醐味(だいごみ)は欠けるものの、そんな事を言ってられないほど全然釣れていないわけで、ぜいたくは言ってられない。

わかさぎを食べる人たち。
だておーのニットがえらく深くかぶられているため、何やら謎のマスクマンみたいになってしまっている。
そういえば、「みちのくプロレス」にこんなマスクをかぶった「阿蘇山」というご当地レスラーがいたなあ・・・。それに似ている。山の形をした頭のてっぺんからからもくもくと煙を吐く、というギミックがあるレスラーだった。

ワカサギを食べた事でがぜん元気が出てきた。
こんな楽しげな記念撮影をしてみたりする。

ふと見ると、執念の人ばばろあが一人、釣りを続行していた。
彼は、最初のポイントがあまりに釣れない事にいらだち、われわれから離れたところにポイントを移していた。
一人、赤城大沼の真ん中でぽつんと釣りをするばばろあ。
画になる、と思って写真を1枚。
キャプションは・・・やっぱり鬱打氏脳、かな。

ばばろあの姿に触発されて、こちらもやる気復活。負けてはいられない、釣りを再開だ。
しかし、
「まだ天ぷらが欲しい方がいらっしゃったら、揚げますよー」
というスタッフの声を聞き、釣り竿をまた放棄してしまった。やる気持続時間、約1分。

天ぷらにされたわかさぎの一部は、クーラーボックスの中で泳いでいたものだった。
「見ててごらん、ワカサギ、油の中でも泳ぐから」
とスタッフのオッチャンが言う。んな馬鹿な、お湯の中で泳ぐことすら信じられないというのに、油の中で泳いでたまるか。
そんな疑いのまなざしを向けていたら、「まあみてご覧なさい」と自信満々。実際、ぴちぴち跳ねているやつに衣をつけて、そのまま油に投入した。
・・・ああ!本当に、ワカサギが平然と泳いでいるではないか、油の中を。しんじられん、投入された直後に「じゅわー」という音がしたというのに。これはすごい、これは驚いた。しかし、驚くのはいいんだけど、これだといつまで経っても揚がらないから、僕いつまで経ってもお預けを食らうんですか?
と思ったら、数秒でワカサギは熱さに気づいたらしく、わずかにジタバタしたのち、動かなくなった。ううむ、残酷だ。これはおいしく食べてあげないと、成仏できんだろう。「アイスクリームの天ぷらと同じ原理なんですよ、これ。外の衣に熱が通っている間は、中は熱くなっていないんです」との解説に、なるほど納得。
頂いたワカサギは、新鮮だから・・・というよりもなによりも、生命の偉大さに感極まった状態で美味でございました。


さて、美味といえば、やはり自分が釣り上げた獲物を食べるというものに勝るモノはないだろう。本日釣果のあっただておー、しぶちょおがその栄誉を授かっていた。ああうらやましい。
食べてしまえばたったの一口、のワカサギだが、二人とも愛おしそうにかじっていた。

天ぷらが一段落したにもかかわらず、スタッフは何やらごそごそ準備を進めている。今度はパン粉を取り出した。
「次はワカサギフライを作りますかね」
それは非常にイカす提案です。訴求力ありまくりです。酒を持参しなかった事に対して非常に無念感が強いです。
できたてのフライに、ソースをかけて頂く。ううむ、おいしいです。これはビールが合うな。でも、こんな氷の上でビールを飲んでも、おそらく寒くて全然酔わないだろうな。
そんなこんなで、12時頃になってワカサギ釣り大会は終了となった。釣り、というよりも氷上お料理会みたいな様相を呈してしまったが、すこぶる楽しかった。これでワカサギがじゃんじゃん釣れていたら、もう悶絶するくらい楽しかったかもしれない。

とはいっても、豚汁とワカサギ天ぷら/フライをもって昼食とみなすにはちと量が少なかった。
高崎に繰り出して、蕎麦を手繰ることにする。アワレみ隊の場合、「飯は何を食べようか」でもめることはまずない。蕎麦屋に入ることにすれば、誰も反対しないからだ。
高崎駅ちかくの、「梅の花」に突撃。
この時の模様は、「蕎麦喰い人種行動観察」コーナーの 「#0240 梅の花」 にて報告しています。

さて、本日の予定はこれにて終了。まだ昼下がりだが、宿に向かうことにする。
一週間、出張のためネットから隔絶されていたばばろあは本日のお宿について知らされていなかった。こちらも、今日ばばろあと逢ってからも一切教えないままでいた。
「うわ、なんだか拉致される気分。おい、変な場所に連れて行こうなんて考えとらんじゃろうな?」
「いやぁ・・・もちろんちゃんとしたところだけど、さ」
「あっ、その間は何だ。絶対変な所に連れて行こうとしとる!おい!わし、明日神戸に戻らんといかんのんで。交通の便が悪いところだけは勘弁してくれ」
今回、ばばろあは1泊2日の予定でこの企画に参加していた。残りの3名は、2泊3日の予定だ。だから、2日目でばばろあを最寄りのJR駅にて解放しなければならなかった。
ナビに目的地を設定することをやめ、直前までばばろあをドキドキさせる事にした。そして、後部座席のばばろあに、ぎりぎり見えるか見えないかくらいの角度で日光周辺の地図を広げてみせ、ドライバーのしぶちょおに
「だいたいこんな感じだから・・・」
と思わせぶりなせりふ。しかも、ばばろあが見ている事に今更気づいたかのような演技をして、
「あっ!おい、地図見るなよ!見たら行き先わかっちゃうじゃないか」
と動揺してみせた。するとばばろあ、まんまと罠にはまってしまい、
「おい、今わし見たで!今、日光の地図だっただろ!うわぁ、これから日光行くんか!あっちからわし、明日どうやって神戸に戻ればええんや。うわあ」
と悶絶しまくりだった。
しかし、車がなぜか榛名山方面に向かいだしたので、ばばろあは混乱してきた。日光方面じゃ、ないのか?と。
「いや、とりあえず頭文字Dの舞台になっている峠道を攻めてこようかなと」
「そんなことせんでええわ!早く宿に行けって。日光じゃろ?日光方面に行くつもりなんじゃろ?」
・・・
榛名山を越え、中之条までやってきたところでばばろあはようやく異変に気がついた。
「さては、日光じゃないな?今晩の宿、温泉地・・・なんだよな?」
「誰が日光に行くって言った?一言も言ってないぞ。泊まるところは、温泉地で間違いない」
しかし、このあたりは温泉地だらけだ。
「わかった、草津じゃ。草津で一泊するんだな。草津かー。明日はどうやって帰ろう?軽井沢まで送ってもらうか、それとも長野か」
どんどん早とちりして、思考回路が先行していく。でも、われわれはその対応を楽しむため、ばばろあの暴走をほくそ笑んで眺めていた。
車は、そのまま中之条から北のほうに向かった。道路の青看板にも、行き先が表示されるようになってきた。
「え・・・。草津温泉、じゃ、ないのか」
ばばろあ、ようやく自分の考えの過ちに気がついたようだ。
「もうそろそろ現地に着いちゃうから、それまでにコンビニでジュース類の買い出しをしておこう」ということで車をコンビニに停めた。
「え?もう目的地が近い?どこ?草津はまだ先だよな?」
コンビニ店内でロードマップを確認するばばろあ。
「これか!この・・・しまん温泉とかいうところ」
しまん温泉、ではない。四万(しま)温泉だ。いかにも、本日の目的地は四万温泉だった。草津はすでに宿泊した事がある場所だったので、初めて行く温泉地として四万が選ばれた次第だ。
ばばろあがようやく連行先に気がつき、まだココロの整理がついていない間に車は四万温泉に到着してしまった。
「うわ、てっきり栃木の方に連れて行かれるんかと思っていたので、なんか予想外」
だ、そうな。

本日のお宿。
四万温泉は縦に細長い温泉街で、泊まる場所によってその雰囲気が全然違ってくる。今回は、縦長の温泉街のへその部分に位置する宿にお世話になることにした。
各宿毎に駐車場があるわけではないので、河原に車を停めることになった。
建物の中にはいると、犬が出迎えてくれた。なんだ、おまえがこの宿の主なのか?そりゃどうも。名前を「ボス」と言うらしく、首には缶コーヒーBOSSのバンダナがくくりつけられていた。さすが宿に飼われている犬だけあって、「誰だおまえ」という不振そうな態度はとらない。初対面だというのに、「どうもー」という顔で出迎えてくれた。

泊まった部屋には、何やらふすまに書が張られていた。おっと、看板まであるぞ。
「焼肉定食・・・?」
「どう見てもそんな事は書いていないぞ」
ここの先代主人が書いたものらしい。なかなか凝っていて面白い。

四万温泉には5カ所の外湯があるのだが、外湯巡りはとりあえず明日にすることにした。今日は宿の内湯にお世話になろう。3人も入ればいっぱいになってしまう湯船だったが、かけ流しでざばざばお湯が捨てられている様はぜいたく。単純泉(弱アルカリ性低張性)だそうな。

宿の夕食。
海のもの、山のものがバランスよく配置されていました。
それにしても、こんな山の中でもやっぱり、マグロ赤身の刺身って出てくるんだねえ。見栄えがいいからだろうか。

なぜか定番化しつつある、しぶちょおの山盛りごはん。
このメンツの場合、他人に自分のご飯を盛らせてはいけない。必ずこんな盛りになってしまう。
で、残すならば食べ物に対して失礼千万なのだけど、ちゃんと食べてしまうから・・・いいような、悪いような。
もちろん、こういう盛りを相手に施すと、後で自分も同じ目に遭う。
しぶちょおの場合、一人でわれわれ(特におかでん)酒飲みのチンタラした飲み食いに付き合わないといけない。だから、必然的にご飯の量が増えてしまうという事情もあるだろう。

旅館の食事は酒の肴になるものばっかりで困るわい、とただ一人ぐいぐいお酒をあおるおかでん。他の人たちと明らかに食べるペースが違う。
インターネットで予約したからだかなんだかで、今日はお一人様お酒一本ずつのサービスがあった。おかげで、ますます杯が重なる。

食後、ご主人のお孫さんである娘二人と廊下でじゃれあった。酔っぱらい相手でも、育ち盛りの子供ってのは構ってほしくて仕方がないらしい。
3歳くらいの下の娘さんは、抱きついてきて構ってもらおうとする。それを見た6歳くらいのお姉ちゃんは、縄跳びをしたりして、離れたところから地味に「構って構って」光線を発してくる。直接的な妹と、間接的な姉と。両方構ってあげないとかわいそうなので、聖徳太子のように同時に話を聞いてあげたりした。
そうしているうちに、犬のボスが「何か面白そうなことやってるな?」と顔を出してきたりして。
ひととおり構ってあげたら、徹夜明けの疲れがどっと出てきてそのままダウン。まだまだ元気があったばばろあやしぶちょおには悪かったが、「食後の二次会」はそこそこに切り上げて就寝となった。
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