
比較的新しい施設のようだが、俗に言う「逆さクラゲ」の文様が書いてあったり、「ゆ」と染め抜かれたなんだかレトロというかチープというか、そういうのれんが下がっているあたりなんともミスマッチ。
入口の扉のところには、
「大露天風呂」
「洞窟風呂」
「トンネル風呂」
なんて書かれている。一体どんな風呂がわれわれを待ちかまえているというのか!?

こちら、花いっぱい温泉のすぐ脇にある瀟洒な別荘、というかコテージ。
人数さえそろえば、この建物を貸し切って温泉三昧の貸別荘旅行を楽しむ事ができるんだという。最大収容人数25名ってえんだからなかなかなものだ。クラスの同窓会でもできちゃう。

「源泉←」なんて、表示がある。
「ぜひ見てくれ!」と言わんばかりのこの表示に、「見てもしょうがないとは思うけど、まあ行ってみるか・・・」と雨の中、傘も差さずに別荘の裏側へ向かってみた。

源泉。
はいそうですか。
以上おしまい。
そうだよなあ、自噴しているわけじゃなくて、当然ボーリングしているわけだから、汲み上げ用のやぐらとポンプがあるだけに決まってるのに。くそー、ついついあの真っ白く目立つ「源泉」という表示に釣られてしまった。

さて花いっぱい温泉に入ってみる。
男子風呂は、脱衣場がトンネル状になっているところにあって、熱気がものすごい。

トンネルを越えた先が、お風呂。
何だか湯船に変な仕切りがついているなーと思ったら、これが感心することにバリアフリー仕様になっているからだった。
すなわち、写真手前から、左側にそってずっとスロープ状になっていて、L字型に折れ曲がった先で肩までお湯に浸かれまーす、というわけだ。車いすのままでも入浴可能という、高齢化社会を先取ったと言える感心すべき温泉施設だ。

で、そのバリアフリー用スロープの一番降りきったところでおかでんが待機していて、「何しに来たんじゃコラア」と妨害する、と。
いや、そういうつもりはないですけど。

カルシウム・ナトリウム-塩化物泉・硫酸塩泉が泉質らしい。
うかつな泉質だったら、「わーいバリアフリーだ♪」と車いすで突撃して、車いすが溶けちゃいましたーなんてことになりかねない。どんな温泉でもバリアフリーにすれば良いというものでもないということだ。

何で「花いっぱい温泉」という名前なのかと思ったら・・・
「どうやら、このぶら下がっている造花の事を差しているんじゃないかと」
「ええっ!?」
湯の花がいっぱい、というわけでもないし・・・とお湯をすくって確認してみたが、うん、確かに湯の花はいっぱいではない。ということは、この造花がいっぱいだということが「花いっぱい温泉」ということなのか?そうなのか?

「あと、洞窟風呂ってどうなった?」
「ここがそうなんじゃないか?」
「ええー?洞窟になってたっけ?確かに、片側は山の斜面だったので一部掘った部分があるかもしれないけど・・・じゃあ、トンネル風呂は?」
「さあ?女風呂の方にあるのか、それとも先ほどの脱衣場のことを指しているのか」
「えー」
風呂あがり、ひびさんに「ねえ、そっちの方にトンネルってあった?」と確認したら「トンネル?何ですかそれは?」と逆に聞かれてしまった。おい、やっぱりさっきの脱衣所、あれがトンネル風呂だったらしいぞ。
「風呂じゃないじゃん!」
あと、大露天風呂がどこにあるのかわからんかったが、どうやら別荘の中にあったらしい。
温泉としては「!?」だったが、ただ、バリアフリーを徹底しているのは素晴らしいと思った。足腰が弱っている親家族を温泉に連れて行きたい、と考えている向きには、ぜひ選択肢の一つとして入れて良い場所だと思う。

「ひびさん、減点1だな」
「何でですかー」
「微妙な温泉をセレクトしたから」
「そんなこと言われてもわかりませんって、あのガイドブックだけじゃ」
「罰として混浴露天に行くのだ」
「マジっすか」
東伊豆には、波打ち際スレスレのところに温泉が2カ所ある。そのうちの一カ所がここ、北川温泉にある黒根岩風呂だ。混浴で、水着着用不可。女性にとっては相当ハードル高い温泉といえる。ただ、海抜ほぼゼロメートル、目の前はすぐ波打ち際ということもあって若い人たちがたくさん訪れていた。よく見ると、カップルでの訪問もそこそこあるようだ。
「・・・」
初めてその光景を見たおかでんの方が、この開放感に絶句。しぶちょおはぜひ入ろうとノリノリだったのだが(ひびさんは当然拒否)、肝心のおかでんがなぜか恥ずかしがって、照れて、結局入浴を断念したのだった。
「何で男のおかでんが遠慮するんだよ」
「いや、何だか、あの開放感はちょっと。もう一カ所の温泉にしようぜ?混浴じゃない方」
「おかでんチキン過ぎ」
「ああなんとでも言え」
次に目指したのは、大川温泉にある「磯の湯」という場所。ここも波打ち際にある温泉として有名だが、普通に国道を走っていると見落としてしまいそうになるような場所だ。

大川温泉自体、商売っ気があまりないんじゃないかというこじんまりとした温泉地。漁港もあるのだが、こちらもこじんまり。観光地が林立する東伊豆の中ではおとなしい場所ということになる。
波打ち際に車を停めるわけにはいかないので、いったん山側に車を停め、国道の高架橋をくぐり抜ける形で海側に出る。
あら漁船さんコンニチハ。
これから温泉に向かうとは思えない光景だ。

漁船の脇をくぐり抜けると、何やら怪しい建物が出て参りました、これが目指す「磯の湯」。
これまた、先ほどの黒根岩露天風呂同様、波打ち際ギリギリの温泉だ。台風の時には水没するんじゃあるまいか。というか、きっと水没する。

入口のところに、「磯の湯御利用について」という掲示があった。
年中無休だけど、荒天時は休むと書いてある。あと、「赤点灯営業」なんて書いてある。ああ、そういえば、国道からでも見えるように、高いところまで何やらパトランプが突き出ていて赤色のランプが灯っていたが、あれって「営業してまっせ」という意味だったんか。
営業時間はお昼12時から、ということもあって比較的短い。あと、灯りがないからだろう、日没と同時に閉館となるようだ。入りに行こうと思っている人は要注意だ。

受付でお金を払って、中に入る。

これが磯の湯。
うわー、ホント海の正面だー。
残念ながら、湯船に浸かってしまうと目の前の岩壁が邪魔して視界はあまり良くない。まあ、これは転落防止上しょうがない。しかし、開放的な空、潮風、そしてのぼせたときにちょっと腰を浮かせれば目の前に広がる大海原。しかも至近距離だ。これはなかなか得難い体験といえる。
ただし、この磯の湯の斜め前方に漁港の防波堤が突き出ており、そこでこっち側を向いて釣りをしている人がいたのが気になった。
しぶちょおが後で言ってたのだが、
「女子風呂の方で、あっ、今防波堤の釣りやってる人と目があった!って言ってる女の子の声がしたぞ」
だって。こういうの、釣り人もちょっとは配慮して欲しいところだ。気持ちはよーくわかるんだが。

伊豆半島の欠点を一つだけ挙げよ、というと、致命的な渋滞ということになる。これは伊豆に限らず、半島全てにおける宿命となるわけだが、どうしても海沿いの道が主要幹線道となってしまい、そこに車が集中する。そのおかげで午前は半島先端方面に向けて渋滞、午後は半島付け根方面に渋滞。しかも伊豆の場合それがハンパじゃない。
風呂場から見ると、あーあ、伊豆高原方面に向けて、お盆か正月の帰省ラッシュじゃあるまいか、というくらいの大渋滞だ。信号がほとんどない状態でこれってことは、一体何百台が詰まっているのか想像すらできない。
「こりゃ、伊豆高原方面を散策するのは無理だなー。やめとこう」
われわれは城ヶ崎に行く予定だったのを取りやめ、伊豆稲取方面をぶらつくことにした。

伊豆稲取。
まあ、以前にもアワレみ隊として来たことがある場所だし、特に珍しいことはない。あたりをぶらぶらと散策してみる。

「おお、神社もあるぞ!」
大げさに驚いてみたりなんかして、神社を「重要な観光名所」扱いとし、とりあえず参拝しておいた。ありがたやありがたや。
この稲取の散歩の途中、町役場のすぐ隣で翌朝、朝市が開かれる事が判った。金目鯛のあら汁が無料で振る舞われるらしい。これは良い情報キャッチ。
「では、明日の朝食はその朝市会場だな」
あてもない旅なので、こうやって一つ一つ、「次回予告」が決まっていくとほっとする。

さてまだ時間が早いが、そろそろ夕食を食べてもバチがあたらないだろう、という時間になってきた。
しぶちょおがいろいろwebで調べた結果、「ここなら良いのではないか」とセレクトしていた、「磯辺」というお店に向かう。伊豆稲取の近く。地魚を出すお店として、魚好きの間では人気のお店らしい。
「ここでね、伊勢海老とかあわびなんぞを今日は豪勢に食べちゃったりなんかするわけですよコレがぁ!」
と鼻息が荒いしぶちょお。
・・・だったが、いざ着席して、メニューみて、店員さんとあれこれ話をしてみてしぶちょおがだんだん意気消沈してきた。
席を外していたおかでんが戻ってきた時には、売られていく子牛のように悲しい目をして、
「今日は海老もあわびも、ないんだって。キンメも無いって」
「ええ?こんな週末のかきいれ時だというのに?じゃあ何があるんだよ」
「アジとか」
「アジ!?、いや、それはちょっと。確かにアジは旨いけど、何もここで食わなくても」
「だよなあ。やめとくか・・・」
「やめよう」
お茶を出してもらっておきながら申し訳なかったが、このお店は断念して別のお店に向かうことにした。
「おいしいさかなの店 磯辺」って書いてあるけど、肝心なおいしい魚が無いんじゃあしょうがないよなあ。
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