ばばろあとしぶちょおが絶賛してやまない郷緑温泉の浴室に入ってみる。ちょうど運良く誰もいなかったので、そのまますんなり入る事ができた。これが誰か入浴中だったらひたすら待たないといけないのでがっかりだったところだ。
なるほど、奥に源泉自噴の浴槽、そして手前が加温循環の浴槽がある。源泉温度が低いので、42度に加温された浴槽がないとちょっと冬場はきついだろう。
自噴浴槽はちょっと面白い作りになっている。
右半分はいかにも浴槽の床、という作りになっているのだが、左半分が割れ目の入った岩になっているのだった。で、毎分30リットル強のお湯がこの岩の割れ目から湧出しているという仕組み。
青緑色の岩は神秘的な印象すら受ける。それにしてもこんなところにお湯が沸くとは、油断ならんな温泉というのは。この郷緑温泉が石垣組んで高台に旅館をこしらえたのは、すべてがこの岩の割れ目のためだった。
時々泡がぷくぷくと沸いてくるのが可愛い。
カランには石けんしか置いていない。ボディソープ、シャンプーの類は一切置いていないので注意。
体を洗ってさて湯船に浸かってみると、なるほどこれは塩梅がよい。ちょっと温度が低いが、その分長湯ができるのがありがたい。体が冷えてきたら加温槽の方で暖を取れば良いわけだし、言うこと無しだ。
足下からお湯が沸いてくるという神秘性も相まって、とても満喫できるお湯だった。空気に一切触れることなく、浴槽に注がれる源泉。効能を一切損なわずに体感できるというのはなかなか得難い体験。
いつまでもお湯に浸かっていられたが、後からやってくるお客さんのためにそこそこのところで退出。譲り合いの精神でいかないと、この風呂はいつまで経っても入れないということになってしまう。
風呂上がりに厨房の横を通ったら、鍋が3つ用意されていた。すっぽん鍋らしい。
「3つ並んでいるということは、一人一つかな?」
「そんなバカな。今日は3組のお客さんが宿泊しているんだろ。一組1つの鍋」
きっとそうだろう。さすがに一人であの鍋を食え、となると相当なもんだ。
時間は流れて夕食時。ぜいたくなお風呂を満喫した後は、ぜいたくなすっぽんの満喫の番だ。
まず最初に供されたのは、すっぽんの生き血。当たり前だが、すっぽんって赤い血なんだな。まあ、青い血だったりしたら気味悪くてむしろ飲めなかったと思うが。
どろり、としているその外観はグロい。好奇心旺盛な人でも無い限り、あまり飲みたいとは思えない。われわれはもちろん飲む。だってすっぽんの血なんて滅多に飲めないもの。こんなの、都会の料理屋で注文したら一体いくらすることやら。
ばばろあが早々にぐいっと一気に飲み干す。おかでんもそれに倣ってぐいっと・・・うはあ、カーっとくるなこれ。さすが精力剤としても名高いすっぽん、飲むと体がほてるぜ。・・・え?これは血を焼酎で割ったもの?あ、そうですか、だからカーっとなったのか。
夕食はすっぽん尽くし。これでもか、というくらいすっぽんが出てきた。すっぽんだけ、といってもあながち間違いではないくらいの料理の数々におかでん、たじろいだ。びびった。
味はというと珍味の部類。どれも膝を叩いて美味いと言えるものではない。唐揚げがおいしかったかな、という記憶が残っている程度で、後は全く記憶がない。ただ、噂に聞いていた「すっぽんは生臭い」というのが無かったのは良かった。
いやー、一泊1万円程度の宿でここまですっぽんすっぽんさせて貰えるとは、ありがたい限りだ。
これら料理を食べたところで、本日のメインイベンター、すっぽん鍋(通称「まる鍋」)のご登場。
京都のすっぽんの名店なんぞでは、この鍋をコークスで焚いてすっぽんのダシを鍋にしみこませる、といった事をやるらしい。それをやることによって、水と米を鍋に入れて炊くだけでおいしい雑炊ができるほどの優秀な鍋に仕上がるんだそうだ。ただ、コークスの協力な火力に耐えかねて、割れてしまう鍋が大半で、実際に客前に出せる鍋は100個のうち1個だとかなんとか。
「この鍋もコークスで鍛えているのだろうか?」
と気になったが、さすがにそれはやっていないだろう。
ちなみにその「京都の名店」だが、先付から鍋、雑炊、漬け物、果物でお一人様23,000円だそうだ。たっけぇー。さすが99個の鍋をコークスで破壊しているだけのことはある。
鍋からすっぽんの肉をさらう。ポン酢につけていただきます。
これが一体どこの部位なんだかさっぱりわからない。見慣れないものなので、若干グロテスクに見えるがそこは気にしない気にしない。
味は鶏肉を堅くしたようなもの、と形容すると乱暴すぎるか。
すっぽんの肉を食べ終わったところで野菜を投入する。白菜、しめじ、長葱、豆腐。
最後、いったん鍋が引っ込められ、再度登場してきたときには鍋はおじやになっていた。
おじやおいし。「すっぽんだから」美味いのかどうかは分からないが。
食後、部屋に戻ったばばろあとしぶちょおがいそいそと取り出したのは「蒜山ジャージーヨーグルト」。
「これが美味いんよ、マジで」
鼻息があらい。その証拠に、一人一個なんてけちくさい買い方をせず、10個入りの1ケースを大人買いしてしまっている。
おかでんも一個貰って食べてみたが、なるほどおいしかった。ジャージー牛の乳だからか、ヨーグルト独特の酸味が少なくあっさりとまったりとして食べやすい。前回、ばばろあとしぶちょおが郷緑温泉に泊まった際に、スーパーで買いだしした際に発見したものらしい。
辛党のおかでん、なおかつ間食をしない性分ときたものだから、こんな商品にはとんと疎い。連れがいるといろいろ食べつけないものが食べられて良いものだ。
2008年04月29日(火) 2日目
2日目の朝。
すっぽんのせいで夜眠れなかった、とかむらむらしてがばっと隣に寝ている奴にのしかかったりとか、そういうエピソードは一切なし。
「どうだった?何か違いはあった?」
「特に何も」
誰も変化はなかったようだ。まあ、すっぽんを少々食べたくらいで何かが劇的に変わるなんて事はないか。
朝食は幸せなお皿の数々。とろろが用意されているあたり、ありがてえありがてえ。これでご飯が何杯食べられるんだろう。一人前で結構とろろの量、多いぞ。
温泉玉子が用意されているのが微笑ましい。ここの泉温は34度なので、当然温泉玉子は作ることができない。しかし、「温泉地に泊まったんだから、せっかくだから」という客の心理をおもんばかって、用意してくれているのだろう。だからこれは「温泉玉子」ではない、「半熟玉子」と言うのが正しいだろう。
毎度恒例ですな。しぶちょおにお茶碗を渡しておくと、必ずこういうことになる。でもそれがいい。
こんなご飯ぎゅうぎゅうに押し込めるよりも、ご飯を二膳お代わりした方がおいしく食べられるだろうに、と言われる。その通りなんだが、ずしりと手にのしかかるこの重み、それもまた美味のうちなのですよ。だからおかでんはこの盛りを愛す。
今日はとろろがあるし、これ一膳でも足りないくらいだ。さあ、がっつり食べよう。
食後、部屋に戻ってヨーグルトを食べる二人。
何しろ10個も買ってしまったので、どんどん食べていかないと無くならない。
チェックアウトする。
郷緑温泉の手前になにやらビニールハウスがある。何だろう。何を栽培しているのだろうか。このあたりではちょっと珍しい光景だ。
中を覗いてみて納得。すっぽんの養殖池がそこにはあった。
「この池に落っこちたら大変な事になるな」
想像しただけで恐怖してしまう。それくらい、すっぽんがうようよしている。中には甲羅干ししている暢気な奴もいるのだが、なにせ凶暴なすっぽんだ、やるときはやるだろう。
郷緑温泉をバックに記念撮影。
郷緑温泉がいかに石垣の上に建てられているかがよく分かる。すべてはあの岩の割れ目のために、この石垣が組まれている。
それにしても、食材の運び上げとか大変だ。ビールケースを運び上げるだけでも一苦労する。ここの宿を切り盛りするには足腰が鍛えられていないと駄目だろう。
この日まず訪れたのは、湯原温泉。
ダムの下流すぐのところに「砂湯」という混浴露天風呂があるのは非常に有名で、露天風呂番付で西の横綱に輝く名湯だ。
なぜ砂湯というのかというと、ここも郷緑温泉同様、足下から自然湧出する温泉であり、その湧出の際に砂を巻き上げるからだ。だから、昔は「砂噴き湯」と呼ばれていたが、いつのまにか略されて「砂湯」になったんだとか。
混浴と行っても、川の対岸の旅館からは丸見えだし、われわれのように「様子を見に来ました」というだけの人達もひっきりなしにやってくるので、ここで女性が入浴するのは相当にハードルが高い。ここを平然とクリアできれば混浴名人の称号が授与されてもおかしくなかろう。
この砂湯だが、入口近くにユニークな「マナールール」が掲げられている。
ここを見つけた人たちが代々大切に守ってきた湯原の宝じゃから 入るんじゃったら、次のことは守ってもらいたいんじゃ。
1. 水着は着んといて。はだかの人が恥ずかしくなるからなぁ。
2. かけ湯をせぇよぉ。みんなが入る湯じゃからなぁ。
3. のんびりせぇよぉ。せっかくの湯じゃから 静かに楽しんでや。
4. どろぼうもおるよぉ。自分のものは自分でみといてょ。
5. 酒はいけん。血圧も上がるし、足元がたよりのぉあるけぇなぁ。
6. 石鹸はいらん。湯原のお湯はアルカリが強いけぇ。汚れはとれるんじゃ。
7. スケベェな考えはおえん。見せびらかしたり のぞいたり さわったりそれはお湯がかわいそうじぁ。
8. ごみは捨てんといて。それはケガをしたり 湯が汚れるけぇなぁ。ぎょうさん書いたけど ようするに 砂湯は湯原の宝物。
岡山弁丸出しでほのぼのしている。
湯原温泉から次に向かったのは、岡山県と鳥取県の県境にある「人形峠」。
日本唯一のウラン鉱床がある(あった)場所として有名。採算が合わなかったのとコストが高かったために現在はウランの採掘は終了している。そんな跡地に「人形峠展示館」というのがあったので、そこに行ってみた。
職員さんが出迎えてくれたが、一体どこに住んでいる人なんだろうと心配になるくらいここは山奥。
ウラン鉱石に紫外線を当てると光るとは知らなかった。勉強になるなあ。
でも、この石の名前が「リンカイウラン石」というのはちょっとしゃれになっていないぞ。
リンカイウラン石って、てっきり「臨界ウラン石」という漢字なのかと思っていたが、実際は「燐灰ウラン石」だということが判明。ありがとうWikipedia。
コメント