我が妻子堂々と静岡に退場す!お見送りテレワーク

昼飯を食べずに仕事を続け、勤務時間終了。

ご飯を食べてから、静岡を後にして東京の家に戻るつもりだ。

ここでもう一度、実家に顔を出して妻子の顔を見てくるということは考えていない。里帰りというのは主に母親がゆっくり・のんびりすることが目的だ。いなくなったと思った夫がニョッキリとまた顔を出して気を遣わせるのは、趣旨から反すると思う。

また、そもそもコロナによって人間不信が渦巻いているご時世だ。いくら母子の里帰りの同伴とはいえ、東京モンが静岡にやってきて、ましてや一泊しているというのは世間体が非常に悪い。21世紀なのにそんな馬鹿な、と後世の人は思うだろうが、マジでそんな時代だったのが2020年-2021年頃だった。

そんなわけで、僕が実は静岡に一泊しているということは義父母にさえ伝えていないくらいだ。

なので、僕は今日のテレワークが終わったらそっと東京に戻る。それしかやりようがない。

「せっかくの静岡!すごく久し振りな一人暮らし気分!ならばあっちこっちを探検だ、旅行だ」だなんて、これっぽっちも思わない。そういう雰囲気じゃないし、もしそれで自分がコロナに罹ったりすると、周囲から心底軽蔑され差別されるだろう。

コワーキングスペースの近くに、新静岡駅がある。

その駅ビル「cenova」の中に、ハンバーグレストラン「さわやか」があるということを知り、訪れてみることにした。

「さわやか」は、言わずと知れた静岡を代表する、超有名なハンバーグ屋さんだ。チェーン展開しており、静岡県内ならば何店舗も存在する。しかし、静岡県から一歩も外に出ようとしない経営スタイルが特徴だ。

静岡県内にしかお店がないのに大人気、ということもあり、静岡県境近くの「さわやか」は県外からの越境客が大勢押しかける。御殿場にある「さわやか」の場合、東京・神奈川界隈の人間が大量に流入し、入店まで8時間待ちはザラ、ひどいときは10時間を越える待ち時間という目を疑う状況になる。

そんなわけで、静岡県外人からの猛攻を避けるために、できるだけ県中央部付近の「さわやか」を狙って訪問したほうが空いているのではないか?と推測するのだが、実際はどうなのだろうか?

新静岡駅にある「さわやか」は県央にあるとはいえ、交通の要衝にある都市型店舗だ。混んでいてもおかしくない。

しかし、ダメ元で訪れてみたら、待ち客がなく入店することができた。ラッキー。16時近く、という中途半端な時間だったこと、コロナで人流が少なくなっていることの両方が功を奏したのだろう。

ということで、さわやかのハンバーグを初体験。

僕の場合コロナが流行したから子どもを授かったわけで、その子どもを義理の実家に送り届けてほっと一息だ。なので、ちょっとしたお祝い気分でハンバーグを食べる。

うん、うまい。

鉄板に刻まれた牛にじっと見つめられているので少々居心地が悪いが、許せ。お前の肉はうまいぞ。噂に違わぬ味だった。

静岡駅の土産物コーナーを見てから新幹線に乗ることにする。

仕事はフルテレワークになったし、そもそも「静岡に行ってきます」なんて、友人知人でさえ誰一人教えていない。なので、お土産を買って手渡す相手がいない。買うとしたら、自己消費用だ。

そうだなぁ、だったら僕が長年愛してやまない静岡のスナック、「バリ勝男クン」でも買って帰るか。

静岡駅の新幹線改札真正面にある「GRAND KIOSK」は、店頭の一番目立つところに「東京ばな奈」の看板と売り場が設置されていた。ご丁寧に「静岡出張中」まで書いてある。なんで静岡に来てまで東京ばな奈なんだ。静岡には土産に適したお菓子がいっぱいあるのに。

ひょっとしたら、有象無象あったお土産がコロナによる売上の減少で消滅してしまい、売り場が空いたところに東京ばな奈が進出してきた・・・のかもしれない。いや、だからといって不動の四番バッター、「うなぎパイ」よりも目立つところに売り場があるというのはすごいことだ。

だって、新幹線に乗って静岡にやってきて、新幹線改札口から出てきてまっすぐにKIOSK方面に歩いてきた人が最初に目にするのが「東京ばな奈」の文字だぞ?どうなってるんだ一体。

静岡駅は静岡県の県庁所在地で、(100万人はいないものの)政令指定都市だ。

「のぞみ」号が静岡県を完全通過してしまうのは有名な話だけど、「ひかり」と「こだま」がバンバン静岡駅に停車するものだとばかり思っていた。しかし実際には、1時間あたり「こだま」が2本、「ひかり」が1本の合計3本しか停車しない。えっ、ひかり号ってもっと便数が多いのでは?と思うが、浜松に停車するひかり号などは、静岡を素通りするのだった。

で、「こだま」だと東京駅まで1時間半かかり、「ひかり」は1時間かかる。だったら「ひかり」に乗るよね、ということで、東京-静岡を行き来しようとすると実質的に1時間に1本しか新幹線がないことになる。

不便っちゃあ不便だが、東京まで新幹線で1時間というのはかなり快適だ。なにせ、僕が普段新幹線に乗るときは、3時間半かかる岡山とか、4時間かかる広島に行くときだから。1時間というのはあっという間に感じる。

それはともかく、無事に子どもが生まれ、母子ともに健康な状態で実家に送り届けることができたのでかなりほっとした。義父母が喜んでいる様子を見ることができたのも、良かった。子育ての重責はこれからだけど、一旦今日は肩の荷が下りた気がしている。

とはいえ、だ。

今回は実家帰省にかこつけたワーケーション初体験のワクワクを楽しむつもりだったのに、大して楽しくなかったのは大誤算だった。だって、朝起きて食事を食べたらすぐ仕事で、仕事が終わってご飯を食べたらすぐ新幹線で帰京だから。静岡ならではの食事が食べられたとはいえ、「静岡に来て、リラックスムードで仕事ができたので気分転換しました!」という展開にはならなかった。

ワーケーションって、温泉旅館に泊まるとか、大自然に囲まれた宿とか、何泊もするとかじゃないと期待通りにはならないのだと思う。一泊で、駅前ビジホだとワーケーション感が全然なかった。しかも新幹線駅の目の前のホテルだったこともあり、「とっとと東京に戻った方がよくね?」という疑問がずっとつきまとったし。

これがコロナ流行中でなければ、もっと自由に歩き回って探検をしていたのだろう。しかし、不要不急の行動が禁止されている以上、「単に静岡の部屋に籠もって仕事をしました。おわり。」という一日だった。

この不本意感もまた、コロナ時代の良い思い出だ。

(この項おわり)

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