オミクロン禍のターミナルを歩く【羽田空港第3ターミナル】

出発ロビーがある、ターミナル3階に向かう。ベビーカーとともに行動しているので、いちいちエレベーターでの移動となる。

第3ターミナルは5階建てだけど、1階から5階に向けて一気通貫で上り下りできるエレベーターは存在しない。ちょっとずつ、場所を変えてエレベーターを乗り換えていかないと上の階にはたどり着けない。

なんでこんな面倒な作りなんだ、と思ったけど、空港なら当たり前なのかもしれないと納得した。出発ロビーって、大抵が大きな吹き抜け空間になっているからだ。

吹き抜けの「手前側」に駐車場や車寄せ、公共交通機関乗り場がある。そして吹き抜けの「あっち側」に商業施設がある。吹き抜けによって上層階の空間が遮られていて、直接商業施設にアプローチできないのだった。

これがショッピングモールだったら、吹き抜けのあちこちに渡り廊下が用意されていて、吹き抜けを横断できるようになっている。しかしここは空港。モールの吹き抜けと規模感が違う。

到着ロビー同様、ほとんどお客さんがいない空間。ああ、こりゃすごい。ここまで「広くて、営業していて、でも人がいない」空間を見るのは人生で初めてかもしれない。

出発便が表示されている大型ディスプレイを見てみる。

もともとこのターミナルから発着する便がどの程度の頻度で行き交うのかをしらないので、「うわっ、少ない・・・」と言い切れないのがもどかしい。一応、2画面で本日正午から深夜24時までの12時間分、表示されている状態。

でも、よく見ると画面左端の列で黄色く「欠航」と書かれているものが多い。29便中、14便が欠航だっった。なので就航率は半分弱。そもそもここに掲載されている便も、あらかじめ航空会社から調整済みのものなので、本調子のときと比べるともっと就航率が低いのだろう。

20時から22時過ぎまで、ホノルル行きが怒涛の4便設定されている。みんなハワイ大好きなんだな、と驚かされる就航状態だけど、残念、3便が欠航で1便だけが運行していた。ちなみにホノルル4便の打ち合わけは、JAL2便、ANA1便、デルタ1便。

それにしても子供が小さいこともあってか、コロナの影響もあってか、こういう世界各国の地名が並んでいるのを見ても全然海外に行きたいと思わなくなったな。

吹き抜けの「あっち側」の4階と5階部分、保安検査場の上にあたるところに木造の橋がかけられていた。この吹き抜けをバーンと横断する橋だったら随分カブイているな、と思うけれどさすがにその勇気はなかったようだ。江戸東京博物館がバーンと日本橋を広い会場内にぶち抜きで再現しているのだから、こちらでもできないはずはなかったのに。

あの木造の橋は日本橋かな、それともこのターミナルがあるすぐ近くの天空橋かな?と思ったが、日本橋だった。そりゃそうか、「天空橋」ができたのは、この羽田が埋め立てられてからだ。その頃、こんな木造の橋が作られるわけがない。

この橋は、「はねだ日本橋」という名前がつけられていた。あ、やっぱり日本橋だったのか。

旅の起点「日本橋」が時を越えて今、世界へのゲートウェイ羽田空港に架かる。

というキャッチコピーがつけられている。お、おう。なんだかマンションポエムみたいだな。

マンションポエム研究の第一人者、大山顕氏はこう述べている。

「マンションポエムは何を表しているか」ではなく「マンションポエムは何を隠しているか」を問うべきだ。

1000作品以上集めてわかった「マンションポエム」に隠された“ワナ” https://bunshun.jp/articles/-/10004

「旅の起点が日本橋」という概念が、江戸時代から日本は進歩していないという停滞を表しているのかもしれない。

なにやら江戸時代風な構造物がはねだ日本橋を渡ったところに展開されている。

結局日本は未来に向けて飛び立つんじゃなくて、過去に先祖返りするのか・・・?

でも、外国からやってきた人がわかりやすくジャパニーズコンテンツを楽しむなら、こういう表現が良いのだろう。現実問題、21世紀の日本で何を外国の人に見せられる?という問題があるし。

少なくとも、「三丁目の夕日」的世界観の路地ではないのは僕の好みだ。あの「昔はよかった」的なノスタルジーは僕は苦手だ。江戸時代まで振り切ってくれて、誰もノスタルジーを感じないくらい昔のほうがむしろ清々しい。

出発ロビーの片隅に、ついたてが並べられた空間があるので何事かと思ったら、PCR検査場だった。

出国前に検査ができるようになっているのか。・・・あ、違う違う、PCR検査じゃないぞここ。ワクチン接種会場だ。

ワクチン!今ここで打ってどうするんだ?という気がするけれど、まあ、ないにこしたことはない。ちなみに外国の人でも受けられるかと思ったけどだめらしい。必要なものとして、予診票や接種記録書が必要、と書いてあった。あとパスポートも。

ワクチン接種よりも、検査して、その場で陰性証明書を出してくれる場所の方がありがたいとおもうのだけどそれは難しいのか。

空港というのは、日進月歩で機器がリプレースされていく。数年間飛行機に乗らなかったら、「えっと、どうすればいいんだっけ・・・?」とわけがわからなくなる。鉄道の乗車と違って、手順が少し直感的ではないからだ。

このターミナルには、自動チェックイン機がずらりと並ぶ。パスポートの自動読み取り機能、顔認証のためのカメラが備わっている。

荷物預かり用の有人カウンターには立ち入らせないぞ、とばかりにぐるっとカウンターを取り囲む配置になっているのが印象的だ。

海外との行き来なので、機内持ち込みだけでオッケーの旅人は少ないと思うのだけど、中にはそういう人もいるのだろう。

有人カウンターもなにやら最新鋭感漂う、かっこいいハードウェアが備わっている。コロナの間にこのデザインや機能もどんどん陳腐化していくんだろうな、と思うと惜しい。

特徴的なのが、預ける荷物を乗せるベルトコンベアがぐっとお客の右手にせり出していること。ここに荷物を預けたら、自動的に重さを計測し、そのままカウンターの中に引き込まれていくのだろう。実際に動作しているところは見えなかったけど。

で、お客さんの目の前には大型のディスプレイ、そしてカウンターには飛沫防止のアクリルパネル越しにグランドアテンダントさん用の大型ディスプレイ。

モニターアームによってディスプレイが可動できるようになっていて、ご家庭のPC環境に近い世界だったり、専門的機材でご家庭では到底真似できなかったり、いろいろな要素が混じっている。いずれにせよ、「何から何まで特注部品」で構成されたハードウェア、というのは時代の流れではないのだろう。汎用機器を使えるところは使う。

江戸前横丁、という名前が付いた飲食店街。ここは天井が低めに作られていて、洞窟感がある。むしろ客の視線が散漫にならず、どのお店にしようかと集中できる気がする。

寿司屋、天ぷら屋、蕎麦屋などが並ぶけど、どれも「えっ、国際線の空港なのにこのサイズ?」と驚いてしまう小ぶりな作り。敢えてそうしたのだろうけど、モールのレストランよりも小さい。

空港内に人がぜんぜんいない印象だったけど、お昼時ということもあってここにはそれなりの人がいた。昼酒を楽しんでいる人もけっこういる。飛行機の出発までしばらく時間があるし、飲んで時間をつぶすのかもしれない。

「空港のお店だし、さぞやお値段が高いんでしょう?」と薄ら笑いを浮かべながらメニューを見てみた。しかし、思ったよりは高くなくて、良い意味で拍子抜けだった。もちろん、市街地のお店と比べて安くはないのだけれど、空港という場所を考えればもっと場所代として高くついても良いのでは?と思うくらいの値段だった。

こちらは「江戸小路」と名前がつけられているフロア。

うわあ・・・全く営業していない。清々しいまでに、活動が停止していた。人っ子一人いない、というのはまさにこのこと。

どこかひょっこり営業をやっているお店があるかも、と思って歩いてみたけど、見当たらなかった。そりゃそうか、この様子を見た人は、「こりゃダメだ」と諦めてこの地を離れるだろう。探してまで何かお店を探そうとは思わない。

写真左に、金子眼鏡店がある。眼鏡!空港で眼鏡を作る人がいるのか。

この金子眼鏡店は僕が使っている眼鏡で、国産のフレーム(鯖江産)を使っている。大変気に入っているのだけれど、フレームのお値段が高いお店だとレンズも高いことを思い知った。老眼用の遠近両用レンズを作ろうとしたときにそれに悟ったのだが、青山店だと「おすすめのレンズは15万円から20万円」と言われたのには心底びっくりした。

なお、金子眼鏡店の名誉のために言っておくが、青山店は一等地の旗艦店ということもあって良いものばかりを取り揃えているのでお高い。この後僕は御徒町店でレンズを買ったが、3万円ちょっとで済んだ。いや、でもレンズだけで3万円。

4階から出発ロビーを見下ろしたところ。

おっ、マニラ行きの便のチェックインが始まっているので人がそこそこいるぞ。

フィリピンは現在新規ビザの発行を停止しているので、フィリピン国籍を持っているか、2020年以前にビザを取得した人だけが出国できる。限られた人たちが今あそこにいるわけだ。

(つづく)

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