スパイシーな夜を、貴方に。(とうがらし料理/赤ちり亭)

第05夜:とうがらし料理/赤ちり亭池袋西口店@東京都豊島区
[2008年11月29日]

なにかとストレスがたまりやすいこのご時世。ストレス発散方法は数多くあれど、やはり辛いものを大いに食べ、ビールでその辛さを中和するのが最高。ただしこれは個人的な見解であり、多分世論調査したら支持率20%割れで内閣不信任状態だとは思うが。

年末に向けて人は慌ただしくなる。自然、ストレスもたまる。そして何よりも、寒くなってくる。こういう時こそ、スパイシーな夜を、貴方に。

不定期開催のオフ企画「スパイシーナイツ」だが、今回も何となくのおかでんの思いつきで開催が決まった。とはいえ、人数だとか日時の調整がぐだぐだになり、直前まで何も決まらないという毎度のパターンを辿った。12月に入ると世間じゃ忘年会シーズン。不景気だからといって、店がガラガラということはあるまい。とっとと11月中に開催することを強引に決めた。

当初、お店の最有力候補は原宿にある「FOND DELA MADRUGADA」だった。メキシコ料理のお店だった。何でも、「本場と同じ辛さにして欲しい」とリクエストすれば、「日本人にはこの程度がお似合いだろ」という仮面を脱ぎ捨て、急にスパイシーなニクい奴になるという。猫をかぶるとはこのことだ。そうえいばメキシコのプロレス(ルチャリブレ)は覆面レスラーが多いよな。ほら、貴方も知ってるでしょう、ミル・マスカラス。

しかし、予約の電話を入れてみたらアウトだった。3名くらい、早い時間帯だったら潜り込めると踏んでいたのだが、「当日は貸し切りの予定が入っています」ときたら参りました、としか言いようがない。

そこで第二候補の「赤ちり亭」に大きく舵を切った。

赤ちり亭。とうがらし料理店、と銘打つ闘う気満々なお店だ。都内数カ所に店舗がある。前回第四回スパイシーナイツでここを予約無しで突撃したら、あっけなく満席で退却と相成った苦い経験有り。結局このときは全然辛くないベトナム料理を食べ、その帳尻合わせで四川料理の知音食堂に行くという迷走ぶりをいかんなく発揮した。

お目当ては、もちろん「裏メニュー」である「ハバネロ鍋」だ。あと、しゃれにならんくらい辛いとうわさの「スーパーハバネロチキン」。本来「スパイシーナイツ」企画は、単に激辛なものを食べようというものではなく、エスニック料理が持つ辛さと美味さと深みを味わおうというものだ。しかしこの際それは忘れて、今回はひたすら激辛道に邁進します。

赤ちり亭にリベンジ

2008年11月29日。18時25分に店の前集合。参加者はわたし。さん、やっさん、そしておかでんの3名。現地集合は毎回オフのお約束。どっか分かりやすいところに集合の上現地に移動だと面倒じゃん、というのがその理由。で、初参加の人が居ても、「おかでんを目印に集まれ」とだけ告げられる。不親切ともいえるが、該当店舗の前で人が集まっていれば大体分かるもんだ。

今回、赤ちり亭に予約電話を入れた際、とても店員さんの応対が良かったのが好印象だった。

こちらとしては、「裏メニュー」である「ハバネロ鍋」を食する事ができるかどうかの事前確認が必須だったので、「ハバネロ鍋、ぜひ食べたいんですけどやっていますか?」と聞いたところ「やってますよー」とうれしそうに言う。犠牲者3名追加、とニヤリとしたのか、ナイスガッツ、と思ったのかは不明だが。当日その場で注文しても構わないそうだが、「念のためにハバネロ鍋を注文されるということを記録しときますね」だって。事前に何か入念に仕込む気か。

「クーポンのご利用はありますか?」と聞かれたので、「ん?クーポン、あるんですか?」とこっちから聞き返したところ、「ございますよー、ホットペッパーなどに掲載しています」という。受話器を肩にひっかけながら、目の前のPCで検索をかけてみると確かに見つかった。「クーポン=寄せ餌」のはずなのに、既に釣り針に食いついた魚に餌をやっているという良心っぷり。有り難く使わせて貰うことにした。

「あれ・・・?ぐるなびクーポンとホットペッパーのクーポン、内容が違いますね」と聞いたら、両方併用できますー、とこれまたうれしそうに言う。いや、うれしいのはアナタではなくてワタシです。そんなに良きことはない。

ちなみにホットペッパーのクーポンは、スーパーハバネロチキンを1グループにつき1本サービスというもので、ぐるなびは飲み放題が997円。

飲み放題997円は安いな。ただ、時間が書いていないので確認したら、「ラストオーダーは90分後です」ということだった。ただ、その後有償で飲み続ければ良いわけだし、これはお得だ。なお、クーポンを使わないと1,575円。

クーポンを斜め読みすると、重要な事に気がついた。18時半までに入店の場合、という条件がついていたからだ。慌てて、19時で予約を入れてもらっていたところを18時半にしてもらった。「これだったら飲み放題OKですよね?」と聞いたら、「OKです」と自信満々。予約完了。

そんなわけで、18時半過ぎたら飲み放題クーポンは駄目かもしれんので、18時25分現地到着となったわけだ。時間きっちりに全員そろったので、早速お店に向かう。その時、呼び込みのおにーさんが「鍋どうですか、赤ちり亭です、このビルの5階なんですけど」と話しかけてきた。「奇遇。ちょうど僕たちこれからそこに行くんですよ。楽しんできます」と手を振って、おにいさんを半分喜ばせ、半分がっかりさせた。

「・・・どうしたんですかね?客引きがいるくらい、お店は暇なんですかね?」とやっさんが言う。「ハバネロ鍋がTVで放送されてからもう1年近く経つし、混雑しなくなったのかもしれない」。ちょっと心配だ。

「この中ではわたし。さんだけが赤ちり亭に行った事があるんですよね?で、どうでしたか、味の方は」「いやー、覚えてないです、酔っ払ってから行ったんで」

話題だけで勝負、味は二の次だったらどうしよう、という不安が若干よぎる。そういえば、予約も3日前だったのにすんなり取れたしなあ。

テーブル席スタンバイ

エレベーターを降りたら、すぐそこがお店。

前回訪れた時にも感じたが、このお店は奥行きがほとんどない。ウナギの寝床状態で、横に長い。ぐるなびの情報によると、着席数64ということだが、実感としてはもっと狭い印象を受ける。

また、鍋を頼む人が多いということあって、四名卓が中心のようだ(詳しくは店内を見ていないので、二名卓があったかもしれないが)。そのため、2名で予約したとしても四名卓となってしまい、座席効率はそれほど良くはない。店がいっぱいになりやすい環境であるとは言える。

通された席には、既にカセットコンロとお玉がスタンバイされてあった。カセットコンロの上にお品書きが積み上げられてある。鍋をすることが前提のお店らしい。

おしぼりを持ってきてくれた女性店員さんが「今日はハバネロ鍋をご注文されるんでしたよね」と先制攻撃。こちらの電話予約がちゃんと記録されとる。店側に要注意人物としてロックオンされていたか。「はいその通りです」と防戦一方。鍋なので一名分だけください、というわけにはいかないので、二名分その場で注文。飲み物より先にハバネロ鍋を注文することになるとは思わなかった。三名分頼んでも良かったのだが、それよりもその他の激辛料理を数種類注文して楽しんだ方が良かろう、という判断で二名分に押さえておいた。

あと、「スーパーハバネロチキン」1本が無料になるというホットペッパーのクーポンを提示。無料1本、あと有償で1本を追加注文しておいた。このチキンを既に体験済みのわたし。さんは「ワタシはいいです」と首をぶんぶん横に振っていた。

飲み放題メニュー

飲み物の注文よりも何よりも先に、「ハバネロ鍋」と「スーパーハバネロチキン」というこの店を代表するボス2名を指名してしまったわけだが、忘れちゃいけない飲み放題もクーポンがあるということを。

ただここで不安な事があった。予約の電話を入れた後になって気がついたのだが、「18時半までの入店で飲み放題997円」にはさらに条件があって、「平日に限る」とされていたのだった。ただ、こちらとしては店員さんとこのクーポンを使うことを前提に電話でやりとりしており、そのために予約時間を30分前倒しした経緯がある。土曜日も「平日」・・・なのかなあ?

お店の人におそるおそる事情を説明し、クーポンを提示。するとあっさりと「いいですよ、予約時にそういう話になっていたのなら平日の価格でご提供します」と快諾してくれた。ありがたいことです。謹んで感謝しつつ、今日はビールを飲もう。普通、こういう場合は困った顔になって「・・・少々・・・お待ち、いただけます・・・か?」といいつつ後ずさりして、店長クラスに相談するなんてことになる。それでOKを貰えたとしてもこっちとしても非常に居心地が悪いし申し訳ない気持ちになる。その点今回はニコヤカに即答。いやー、予約段階から一貫して従業員さんの対応は気持ちが良い。辛いモノを賄いで食べていて、ストレスを発散しているのだろうか。

飲み放題メニューはたくさんある。ビールというジャンルだけ見ても、レッドアイ(トマトジュースとのmix)やマッコリビール、シャンディガフ(ジンジャーエールとのmix)なんてものもある。たくさんあっても頼むのはただ一つ、「生、お願いします!」

ただ、お酒が飲めないやっさんは「とりあえず、生。」とはいかない。「ミルク・・・ありますよね?」と店員さんに確認をしていた。ミルク?そんなものがお店にあるのか。慌てて飲み放題メニューを見ても、記述はない。やっさんいわく、「いや、ネットで見かけたんで可能だったらお願いしたいと思って」という。さすがに飲み放題メニューに載っていないものは無理でしょう、と思ったら、「大丈夫ですよ」とこれまた即答。一体どうなってるんだ、このお店。なんでもあり状態になっとる。メニューに載っていない飲み物をOKするのにも驚くが、ミルクがお店にスタンバイされていることの方が実はもっと驚きかもしれない。

それにしても考えたものだ、牛乳で胃腸の粘膜を保護しようという作戦というわけか。ソフトドリンカーならではの知恵だ。われわれ麦酒党な人間達は、ビールでますます胃腸を酷使することになる予感。

これまでのスパイシーナイツは、料理を実際に口に運ぶまで辛いか辛くないかは分からなかった。そして、「まあそうはいっても大して辛くは無かろう」とたかをくくっていたのも事実だ。しかし、今回だけは違う。相手はハバネロだ。間違いなく、辛い。店員さんがわれわれの無理なお願いに応えてくれるのも、きっとこの後ハバネロでぎゃふんと言わせてやろうと思っているからに違いない。辛さで悶絶する様を隠し撮りされ、ニコニコ動画なんかにアップロードされたらどうしよう。要注意だ。

妄想は兎も角、後になって「しまったぁ」と思ったのだが、このお店には「金魚」というカクテルがある。ジョッキに入ったチューハイ?なのだが、中に赤い唐辛子が浮いている。これが金魚みたいに見えることから、「金魚」。せっかくなので飲めば良かったのだが、結局このお店ではビールしか飲まなかった。

取り皿と割り箸

取り皿と割り箸。

箸袋に赤ちり亭のロゴと、「とうがらしでやせる?」という文字が記されてあった。

「唐辛子で痩せろ!」とか「唐辛子で痩せよう」と言わず、疑問符で終わっているところがなんとも微妙な表現だ。

でも逆に好感。

唐辛子に含まれているカプサイシンが体温上昇作用及び発汗作用をもたらす事は今や一般常識化しつつある。とはいっても、では本当にダイエットに役立つのかといえば、激しく疑問だ。ネットでカプサイシンにおける体重減少に関する医学的見地に立ったデータを探してみたが、一つも見つからなかった。やたらと検索には引っかかるが、全て二次情報であり、正直信憑性に欠ける。確かに、カプサイシンを取ると体温が上がるわけで、消費カロリーが増えるのは間違いなさそうだ。ただ、「ダイエット」と呼べるレベルまで基礎代謝を上げ続けようとしたら、一体どれだけの唐辛子を食べなくちゃいけないのやら。そんな事をやっていたら、恐らく胃腸を壊すか、それとも辛さを誤魔化すために飲み食いが増え、太るかのどっちかだ。

というわけで、「やせる?」という寸止め一本なこのロゴには好感を持った次第だ。

激辛の前に喉を潤そう

まあ、なにはともあれ飲み物が来たので乾杯だ。

これから来るであろうハバネロ鍋に乾杯。

なんかそわそわしちゃって、まだ落ち着いてお品書きすら見ていない。ハバネロ鍋とスーパーハバネロチキン以外に何を頼むか、調べないと。

卓上調味料が豊富

このお店は特徴というかつっこみどころというか、そういうのが満載。たとえば、これ。卓上調味料がずらりと並んでいるのだが、定番である醤油だとか胡椒、七味といった類ではない。どれも激辛調味料で統一されている。

七味だって辛いじゃないか、と思うかも知れないが、そんなのはお子様レベル、という強者がそろっている。95万パワーのキン肉マンに対して、1000万パワーのバッファローマンみたいなものだ。

辛さが足りねぇだと?だったら自分で好きなだけ辛くしやがれこんちくしょう、という店側の意地と執念が素晴らしい。この写真一枚だけでも「美貌の盛り」コーナーで記事を書きたいくらいだ。

島のらー油

旨い島とうがらし

黄金一味

写真上から順に。

まず、「スパイシー島のらー油」。小粒だけど相当辛いぞ、こーれーぐーすでおなじみだぞ、の島とうがらしをラー油にしたというもの。黒糖やらウコンも入っているそうで。ほとんど空になっていたので、「こんなのすぐに僕たちで使い切っちゃうよ、後で店員さんに補充してもらわなくちゃ」なんてみんなで話をした。結局このあとさんざん料理そのもので痛い目にあったため、味見すらする機会がなかったが。

次に手にしたのは「石垣島 ぴにおん 旨い島とうがらし」。またもや島唐辛子登場だ。原材料を見ると、島唐辛子と泡盛が先頭にくるので、一応こーれーぐーすの一種なのだろう。しかし、胡麻やにんにく、生姜、、酢などいろいろ配合されているので、全然違った仕上がりになっている。どろっとしたソース状。これは辛くて、なおかつ旨そうだ。赤ちり亭のサイトによると、「炒め物に良く合う」のだそうな。

その次は「祇園味幸 黄金一味」だ。日本産の唐辛子で一般的に一番辛いとされる「鷹の爪」品種の10倍の辛さ、というから突出している。ただ、細々と生産しているので絶対量が少なく、鷹の爪ほど流通していないし値段も高い。そこまで辛い唐辛子を日本人が欲していない、という嗜好の問題もあるのだろう。瓶の中の粉末は黄色っぽい。まるで賞味期限切れで劣化した七味唐辛子のようだ。そのようなことを口にしたら、わたし。さんから「こういう色ですよ、もともと。だから黄金一味って言うんですよ」と言われた。あ、なるほど、「黄金(おうごん)」というのは「黄金(こがね)色」をしているからなのか。今更ながら納得。

BEWERE

グリーンハバネロペッパーソース

ハバネロ一味

さてここまでが和風激辛部門。これからは海外激辛部門になります。
まず手にしたのは、マリーシャープス ハバネロソース BEWARE(激辛) なるソース。マリーシャープスはハバネロソースで名を馳せるブランド名。激辛愛好家なら定番の商品と言える。が、そういう特殊な趣味を持っている人でないと知らないブランドではある。

まあ、数十年前まではタバスコでさえ全く市民権が無かったくらいだから、この商品も時代の流れと共に認知度が上がってくると思う。タバスコなんて、マキルヘニー社という1企業の商品にすぎないのだが、なんとまあ世の中に普及したことよ。普通のスーパーに行って、タバスコ以外のチリソースを見つけるのはなかなか困難だ。(逆に、100円ショップにいくと怪しいメーカーのチリソースがよく売られている)

それは兎も角、いつかは市民権を得るかもしれないマリーシャープスには、いくつかランクがある。さすがにハバネロソース、フルスロットルで辛さ全開にすると、振り落とされる人が多すぎるというわけだ。

まず、「HOT」という中辛に相当するソースがある。写真中央のマリーシャープス ハバネロソース GREENも中辛だ。そして、その上に「マリーシャープス ハバネロソース FIERYHOT」という大辛があり、それでもめげない人向けにラスボスとして「BEWERE」(超辛口)がある。で、お店にはしれっとさりげなくBEWERが置いてあるのだから素晴らしい。辛さには不自由させねぇぜ、というわけだ。

最後に、小振りな瓶に入っているのがハバネロ一味。なんだか「悪の親分ハバネロとその一族郎党」っぽいネーミングだが、要するにハバネロペッパーということだ。これは味の想像がつく。というか、そのまんまハバネロ粉末だ。赤ちり亭オフィシャルサイトによると、BEWEREと並んでこのハバネロ一味をこう評していた。「超危険!!!宇宙レベル 」と。要するにニュータイプになれるかもしれないというわけか。凄いな。

K点越え鍋・・・

事前に座席にカセットコンロが据え付けてあることからわかるとおり、このお店の売りは鍋だ。「白ちり鍋」と「赤ちり鍋」の紅白鍋が双頭として鎮座している。

白ちり鍋は豚骨と鶏ガラ、香味野菜でとった白濁したスープで頂く鍋。赤ちり鍋は、丸鶏を煮込み、そこに韓国唐辛子やコチュジャンなど各種混ぜた味噌系スープ。当然赤ちりの方は辛口仕様。

この二つは知っていたのだが、もう一つ鍋がお品書きに記されていた。しかもデカく。その名も、「K点越え鍋」。なんじゃそりゃあ。「野菜しゃぶしゃぶ!食のエアロビクス!!!」なんて煽り文句があるが、なにがどうエアロなのか、どうK点越えなのかがわからない。どうも、写真では普通のだし汁が鍋に入っているように見えるが、実はこれが辛口に仕上がっているらしい。ネットで検索してみたが、この情報社会においてもあまりその全貌が見えてこない、謎の一品。「カプサイシンエキスが溶け込んだ出汁」ということだけは分かった。それにしても「食のエアロビクス(有酸素運動)」って何だよ。言いたい事は分かるけど、それじゃまるでそれ以外の食事は息を止めているかのようだ。逆に、ここは「食の無酸素運動。目指せボルトの100m9秒69」とした方が良かったような。

で、われわれが頼んだハバネロ鍋は当然「裏メニュー扱い」なので、このお品書きには掲載されていない。なんだか秘密めいたことをやっているようで、わくわくする。・・・と思ったら、壁に張り紙で「裏メニュー:ハバネロ鍋」というのがあった。おい、張り紙を貼った時点で表メニューだぞ。待ってくれ、ワクワク感を持続させてよお願いだから。

赤ちり亭のメニュー

お品書きをざっと見る。

現時点でハバネロチキンとハバネロ鍋をそれぞれ2人前ずつ注文しているので、後はぐいぐいと辛い単品モノを頼んでいきたいところだ。ここで日和って、「さっぱりきゅうり」とか「シーザーサラダ温泉卵のせ」のようなオーダーをしたら自己批判の対象だ。総括してもらうぞ。ひたすらストイックに行こうじゃないか。

ただ、お品書きを見て困惑してしまった。赤ちり亭オフィシャルサイトのメニュー一覧には、スーパーハバネロチキン「24辛」をはじめとし、「12辛」だとか「5辛」といった辛さの目安が記載されてあった。だから、今日はその数字が大きいものから順に注文していけばいいや、くらいの考えだった。ところが、お店のお品書きは唐辛子マークの有無(無ければ、辛くない)と、唐辛子の色(色によって、「ちょい辛」「けっこう辛」「ちょー辛」に分かれる)で辛さを識別してあった。何から頼んで良いのか、大混乱。「今更キムチ食べて辛いねぇ、というのもいまいちさえないしなあ」などといいながら苦悶する。

すでに店員さんを呼んでしまっていて、店員さんがオーダーをとろうと身構えているので焦った。「えっと、とにかく辛いモノから順に注文したいんですけど」という頭の悪いリクエストをしたが、店員さんも全てを食べたわけではないらしく「ならばこれを頼め!」という頼もしさは期待できなかった。「赤チキ(スパイシー赤ちりチキン)なんかお勧めですよ」という事だったが、手羽先で小振りとはいえ10ピースからのオーダーとなる。さすがにスーパーハバネロチキン食べて、また鶏肉食べるのはさえないのでパス。

結局、目に付いたやつと店員さんとの会話で、適当にオーダーした。ハバネロ鍋を前に、ちょっと浮き足立っているなと思う、我ながら。もう少し冷静にならないと。

これがスーパーハバネロチキン

当然のことながら、スーパーハバネロチキンがメニューに載っている。「危険!!」と記されている。危険なものなのにでかく表示したり、1本200円と良心的な価格で提供しているあたり、確信犯だ。気をつけろ、今スナイパーライフルのスコープでロックオンされている状態だぞ。

ある意味、赤ちり亭を有名にした立役者はこの「スーパーハバネロチキン」だと思う。しかし、あまりに危険故にお店としてはこれ以上大きく掲載はできなかったようだ。危険ではない(と思われる)赤チキと比べて、表示が小さい。安易に手を出されても困る、困るけど一発食らわせてやりたい、という心のギャップが透けてみるような気がする。

お通しのえびせんべい

最初に出てきたのは、お通し。

えびせんべいだ。さすがにこれは辛くない。

ちなみにこのお店、テーブルチャージ料として一人300円がかかる。お通し代300円、といわれてこれが出てきたら暴動を起こしたくもなるが、テーブルチャージ料という名目なので文句はない。なにしろテーブルには各種激辛ソース類がずらり並んでいるのだ、さすがに家庭でこれだけをそろえるのはなかなか難しい。だから300円の価値はある、ということにしておこう。

スーパーハバネロチキン

スーパーハバネロチキン登場。

「32辛」と、お店のメニューの中では突出して辛い食べ物とされている。鶏もも肉のフライにハバネロ粉をまんべんなく、隙間無く、逃げ道なく埋め尽くしましたという代物。既に重力に負けたハバネロの粉がお皿に降り積もっている。それくらい、たっぷりのハバネロだ。この茶色、油でこんがりと揚げたからこんな色になりました・・・なんてもんじゃないぞ。

いちめんのハバネロいちめんのハバネロかすかなるむぎぶえ、と山村暮鳥の心境。

鶏もも肉にしては小振りではあるが、とはいっても腐っても鯛、ならぬ鶏もも肉。それなりのサイズはある。これ1個で200円というのは相当良心的な価格設定だと思う。ふんだんに使ったハバネロだって決して安くはない代物だし。安い価格で引きつけておいて、激辛の世界へようこそ、と釣り上げるという新手の罠か。でも喜んで釣り上げられます、僕ら。だってそれが今日の目的なんだから。

手袋で防御態勢

このスーパーハバネロチキンの特徴は、1個につき1つ、使い捨てのビニール手袋が支給されるということだ。あまりの激辛故、素手で触ると危険。そのため、手袋をどうぞというわけだ。おかでんは過去、myハバネロを常に持ち歩き、食事の都度使っていたという病んでいた時期がある。その頃は、食後うっかり手で目をこすったりして何度も酷い目にあってきた。だから、この重装備の必要性がよく分かる。「今日は手に粉が付いていないはずだ」と思っていても、目に見えないレベルで粉が残っていたりするもので、そのせいで後で痛い目に遭う。手はさすがに皮が厚いので問題ないのだが、問題なのは皮膚が薄い顔などだ。

あと、やばいのが性器。ハバネロを使った食後、手を洗って安全を確保しようと洗面所に行くのだが、そのついでに小用を足す事が多々ある。で、手洗いより先にトイレを済ませようとするので、うっかりハバネロがついた手で性器を触ってしまうのだった。これがよろしくない。1時間くらいは股間が熱い。なんとも情けない状況だ。

ということで、このスーパーハバネロチキンと手袋は、「食べるとき」に厳戒態勢を敷いてもあまり意味はない。食べた後のフォローアップが重要。

・・・で。えーと、この手袋、どっちの手にはめるのが良いのだろう?一人一枚なので、困った。「やっぱり利き手でしょう」とわたし。さんが言うので、右手にはめてはみた。しかし、左手は?無防備なんですけど。チキンを最初一かじりするまではこれでも良い。しかし、その後キチンと全部食べきろうとすると、どうしてももう片方の手を添えないといけなくなる。左手、どうすんの。

何か上手い方法で、片手だけで食べられるのかもしれないが、そんな知恵の輪的クイズをやっているのも不毛だ。かといって、店員さんに「すいません、もう一枚手袋貰えますか?」と聞くのも野暮ってもんだ。店側は「この手袋一枚でなんとかせえや」と挑戦状を出してきている以上、受けて立たないと。これがこのお店の流儀、と理解し、郷に入っては郷に従えだ。手袋一枚で行くぜ。

スーパーハバネロチキンをかじる

がぶりと一口。

うん、ハバネロだ。まさにハバネロ。辛い、というより口の中が痛い。唇がすぐに熱くなった。しかし、肉の中までハバネロを染みこませるという凶悪な下ごしらえまではしていないので、ハバネロの辛さは外側だけ。最初ガツンとくるキックをこらえて懐に飛び込むと、鶏肉がもつ甘みにたどり着く。痛い、けど旨い。でも、旨さと痛さどっちが上ですか、と聞かれたら痛さだ。食べ物としてどうかと思う域に一歩足を踏み入れている状態。

「ああああー」とうめく。ここはいったんビールにエスケープ・・・あ、駄目だこれは、エスケープにならん。あわてて突き出しのえびせんにロープエスケープ。いったん辛さはブレイク。

とにかく、ハバネロまみれの手袋を利き手に装着しているので身動きがつかない状態。にっちもさっちもいかないので、ここは一気に食べてしまうことにした。「ええいもう好きにしろ」と、無防備の左手も使ってわしわし食べた。さほど大きくないチキンのことだ、一気に食べればあっという間だった。

「終わった・・・戦いは常に虚しいものだ」と若干虚脱状態。辛さ耐性は人一倍あるおかでんでも、「これは一度食べたらもう満足です」という一本だった。辛さ、という点では絶望的にキツいわけではないが、ハバネロ粉がストレートに口腔内や唇につくので、その痛さがキツかった。

たった一本のチキンの分際のくせに、おかでん大汗。となりのやっさんも同じく大汗。二人の大の大人が何だか怪しい。店員さんに「サウナに入った時みたいになってますよ」とからかわれた。

さて、チキンとお手合わせ願った後は、入念に汚染物質の廃棄処理をしなければならない。まず手袋を脱ぐ・・・のだが、頭がパニックになっていて、そのまま左手で手袋を引っ張って右手から外しはじめてしまった。わたし。さんから「手袋裏返しにしながら外した方が良いですよ」と言われるまで、全く思いつかなかった。余計左手がハバネロ汚染。

その左手は当然そのままでは二次被害、三次被害を招くので入念にお手ふきで手を拭いた。もちろん、「通常のお手ふきとして使う面」と「ハバネロがついた手を拭く面」を使い分けたつもりだ。

・・・だったが、汗がとまらないのでお手ふきで顔を拭いたところ、ハバネロ汚染された面で顔を拭いてしまった。「痛い!痛い!顔が痛い!」悶絶するおかでん。特に、鼻の両脇、頬の骨が出っ張っている部分が痛む。もっともお手ふきに触れた場所なのだろう。

店員さんを呼んで、お手ふきを交換するようお願いした。お手ふきチェンジを要求するなんて、飲みものをこぼした時くらいしか経験が無いが、まさかハバネロでお手ふき交換と相成るとは。これで「交換は別途料金100円がかかりますがよろしいですか?」と言われたとしても、「それで良いですから早くお手ふきを!」と言っていたと思う。ちなみに、あまりに動揺していたので、店員さんに「手ぬぐいを交換してください、手ぬぐい!」と意味不明な言葉を連呼してしまい、周囲から「手ぬぐいではなくてお手ふきでしょ?」と訂正を入れられた。

これがハバネロ鍋

ハバネロ鍋登場。

スーパーハバネロチキン、ハバネロ鍋と一気にお店はラッシュに出てきたぞ。やばい、1Rノックアウト負けしそうだ。

とはいっても、見た目は普通の鍋だ。キャベツ、豚肉、もやし、ニラが階層をなして積み上げられている。

思わずこの光景を見て屋久島を思い出した。鹿児島県の屋久島は、標高1935m(九州一)の高さを誇る宮之浦岳がある。そのため、広くない島にもかかわらず海抜ゼロメートルの植生から2,000mクラスの植生までバラエティに富んでおり、山に登っていくにつれどんどんと植物の種類が変わっていくのが特徴。まさにそんな感じ。海抜ゼロメートル地点にはキャベツがいて、500mくらいまでは豚がいて、そこから1,500mくらいまではもやし畑が続いて・・・と。

モヤシの盛大な盛りを観ると、ラーメン二郎も思い出す。

他にも何か具が入っていたかもしれないが、覚えていない。玉ねぎ、入っていたっけな?どうだったっけ。
その見た目は至って普通。上から唐辛子の粉末が振りかけられて真っ赤に染まった毒々しさを想像していたので、この平凡っぷりには一同拍子抜けだった。わたし。さんに至っては「なんか、チョロいっすね」とまで余裕の発言。確かに、これは期待外れだ。豚肉のあたりに、ハバネロの粉が少し見受けられる程度。まあ、常識の範囲内で鍋を作りました、ということか。

今のところ笑顔でハバネロ鍋に接する

いや、待て待て待て。

ハバネロ鍋が煮たってきたら、俄然ハバネロ臭がしてきた。これは危険な臭いだ。ハバネロの辛さを知っているからこそ、言える。これは、やばい、と。カナリアだったらまず間違いなくこの時点で死んでいるだろう。

ハバネロの臭いと味を知っている人ならよくわかると思うが、はっきりいって唐辛子の味ではない。何か別のものだ。メキシコ料理やケイジャン料理に使われるチリパウダー的な癖のある味。そして、猛烈な辛さ。いや、辛いんじゃないな、痛いんだ。

熱が加わると、あれだけうずたかく積み上げられてあった野菜はあっという間にしぼんでいった。危ない、モヤシタワーが崩れる、とお玉を手にしたが時すでに遅し、モヤシが横に倒れた。慌てて修復作業。でも気をつけろ、スープには触れるなよ。また顔が痛くなるぞ。

しばらくすると、すっかり具は鍋の中に収まってしまった。こうもコンパクトされるものなのか。布団圧縮袋もびっくりだ。

おかでんとやっさんはまだスーパーハバネロチキンと格闘中だったので、先にわたし。さんに食べてもらう。この時点では、わたし。さんはまだ何も食べておらず、汗だくの男二人をけらけら笑いながら観ていただけだった。

痛さのあまりに耳が痛くなる体質の人

汁すくなめで具を中心に取り皿によそうわたし。さん。警戒心むき出しだ。いやでもこのお店選んだのはアナタの提案があったから、ですから。ぜひがっつりいっちゃってくださいモウ。

・・・で、がっつり行ってもらったわけだが、「うあああ」とうめき声が。「痛い!」という。飲食店に行って、料理食べたファーストインプレッションが「痛い」とは凄いことだ。彦麻呂もびっくりのありえへん形容だ。味覚じゃないじゃん、痛覚じゃん。

あまりの刺激の強さに、しばし固まるわたし。さん。辛さは人を動けなくする。人間にできることは、ただ痛みに耐えること、それだけ。痛みから回復するまでの間は動きがぴたりと止まる。恐らく、体力と運動神経の全てがハバネロの痛みに耐えるように向かっているんだろう。

わたし。さんが取り皿いっぱい分食べ終わった時点で、彼女はなにやら耳の穴を塞ぎだした。「耳の穴が痛いー耳の穴がぁぁぁ」とうめく。どうやらあまりに脳に到達した痛さが強かったので、耳の方まで痛みが響いてしまったようだ。

人間、ここまで辛いと「水分で薄めて誤魔化す」なんて事はできなくなる。その証拠に、写真を見ればわかるが、わたし。さんのジョッキにはまだ十分な量のビールが残っている。とにかくもう、ひたすら耐えるしかないのだ。自分との戦いだ。

男は黙って体力勝負

その後に続いた男どもも全く同じリアクションなので詳細は割愛。暑苦しいだけなので。

汗が目にしみる。「辛いものはビールが進むぜ」なんて余裕はかましていられない、ひたすら防風姿勢で嵐が止むのを待つしかない。

とはいっても、ここでビールを愉しまないといつ楽しむのよ、ということでどんどん頼む。1杯じゃ足りないので、一度にビール2杯ずつ持ってきてもらうことにした。

やっさんは追加で牛乳を頼んでいたが、「品切れです・・・」と言われてしまっていた。さすがにメニュー外のものは在庫が少ないか。ただ、このお店にはカルピスがあったので、それをやっさんは注文していた。つくづくおなかに優しい飲みかただ。

ハバネロ鍋で頭がおかしくなってしまい、おかでんは対応してくれている店員さんに「僕たち『世界激辛愛好協会』に所属していまして、今日はわざわざ海外から理事長と副理事長がお越しになっているので接待なんですよ」なんてむちゃ苦茶な事を吹聴していた。

ふと壁を見ると、「男はだまって体力勝負 これ基本 とんがらし食べて体脂肪落とす これも基本」と書いてあった。基本なのか。しまった、全部基本から逸脱しているぞ。店員さんにでたらめしゃべってるし、ビールぐいぐい飲んで逆に体脂肪と肝臓の脂肪を増やしてばかりいるし。いかんな、もっと大人しくしていないと。

でもご安心を、3人ともしばらくすると随分と大人しくなった。ハバネロのせいだ。

TVで激辛料理に芸人がチャレンジ、という企画のときに「辛い!」と叫んでジタバタしたり水をがぶ飲みしたりする光景をよく見る。あれは相当にやらせが入っているな、と思う。リアクション芸、というやつだ。本当に辛いと、動きが止まる。

想像してみてほしい。頭を思いっきりバットで殴られたとしよう。その直後、貴方ならどういう行動に出る?「痛い!痛い!」と飛び跳ねるだろうか?いや、きっと違う。頭を抱えて、無言でうずくまって痛みに耐える事になるだろう。それと同じ事が、激辛料理では起きる。

だから、「あのTVはやらせだ」と批判することもできるし、逆に「これだけの激辛体験なのに、リアクションできるのはさすがプロの芸人」と褒め称えることもできる。

チャンジャで玉子ポン

次にやってきたのは、丼。

「チャンジャで玉子ポン」という料理だった。後で確認すると、メニュー上では「ちょい辛」扱いであり、今回の企画主旨を考えると頼むべきではないものだった。しかし、オーダー時に浮き足立っていたため、ついつい名前だけで選んでしまったという一品。

「ご飯モノかぁ」とわたし。さんに言われる。確かに、ビール飲みにとってみればご飯モノは今、いらない。おかでんも同様だ。これは酒を飲まないやっさん中心に食べてもらうことにしよう。

チャンジャとは、鱈の胃袋を唐辛子などで漬け込んだもの。白菜キムチならぬ、鱈の胃袋キムチといったところだ。こりこりした食感がおいしい。ジャンルとしては珍味の部類なのだろうが、珍味として片付けるには惜しい旨さだ。マッコリにしろビールにしろ焼酎にしろ、とにかく酒が進む味なので、韓国版酒盗だな。

「ビール飲みながらご飯ものなんて」と思っていたが、案外おいしく頂けた。ハバネロ鍋から現実逃避しているという理由もあるが。しばらく、ハバネロ鍋には誰も手をつけようとしなかった。しばしの休息タイムだ。
この料理、「ちょい辛」ということで辛さレベルはそれほど高くないのは前述の通り。とはいえ、唐辛子で漬け込んである以上当然辛みはあるはず。なのに・・・全く辛く感じないのだった。すっかりハバネロで口の中が麻痺した状態。

「おかでんさん最初に一番辛いモノ注文しちゃうからですよ」と二人からとっちめられたが、「イヤだって、クーポン最初に提示しなくちゃいけないからチキンはしょうがないし、ハバネロ鍋だって向こうがやる気満々で事前スタンバイしてるんだもの」と防戦一方。