こんなイベントがあるという。
「嬉野温泉 presents とろとろ温泉湯どうふガーデン」
ビアガーデンのシーズンが終わり、ああもう冬の訪れを感じる季節になりましたね、と思っていたら、今度は「湯どうふガーデン」か!これには不意をつかれた感じがした。
不意をつかれて、とてもいい。
なんでも、嬉野温泉名物の湯豆腐を5店舗、食べ比べることができるのだという。なにその幸せな提案。行くしかあるまい。
湯豆腐、というのは、僕は昔は好きではなかった。子供のころ、冬の季節になると一月に一回以上、この「湯豆腐」なる鍋が食卓に上ったのだけど、子供心にワクワクしなかったからだ。
お湯を張ってぐらぐらしている鍋の真ん中に、普段はココアなどを飲むのに使う、幅広のマグカップが沈められている。そしてそこに、真っ黒な醤油と鰹節が注がれている。
お湯で豆腐を温め、その後湯切りしつつ醤油そのものにドブンと豆腐を沈め、それから食べる。とにかく、しょっぱかった。それがおかでん家の湯豆腐。ご飯の上にオンしながら食べる、というのがおかでん家流だったけど、それでも辛かった。あれは一般的な食べ方なのか、おかでん家独特なのか、よくわからない。少なくとも、僕の父親が愛してやまない料理、それが湯豆腐だった。
そんな「塩辛くて、豆腐ばっかりで単調な食事」のイメージだった湯豆腐だけど、大人になってみると案外うまいものだな、と思えるようになってきた。もちろん、塩っ辛いのはノーサンキューだけど、豆腐のしみじみとした美味さがよくなってきたんだな。この歳になると、湯葉なんて大のごちそうだ。
2017年、アワレみ隊は長崎ツアーを敢行し、その際に嬉野温泉に一泊した。僕は「嬉野温泉といえば湯豆腐。湯豆腐を食べたい」と主張し、おかげで念願の湯豆腐にありつくことができた。
あれは良かった。また、食べたいものだ、と思っていたが、東京に住んでいる以上、そうやすやすと嬉野温泉に行くわけにもいかない。
そんな中での今回のイベントですよ。
まさか嬉野温泉が東京に殴り込みをかけてくれるとは、思ってもいなかった。ありがたい。「鴨が葱しょってやってくる」という言葉があるけれど、嬉野温泉が湯豆腐をしょってやってきたぞー!
嬉野温泉の湯豆腐は、他ではマネができないものだ。単に、佐賀県産大豆100%でお豆腐を作りました!というだけでは、湯豆腐にならない。というのも、嬉野温泉の湯豆腐は、「嬉野の温泉水で煮る」ことによって成立するからだ。
嬉野温泉の重曹泉を用いて豆腐をゆでると、豆腐が煮溶けて茹で汁が豆腐色に染まる。それはまるで豆乳のようで、固まりかけのおぼろ豆腐のようにも見える。
そういう、ほろほろ、とろとろの状態の豆腐を茹で汁ごといただくのが、嬉野温泉の湯豆腐の特徴だし、醍醐味だ。他にこんな湯豆腐、見たことあるか?嬉野温泉、すげえ!と言わざるをえない。
今回、その湯豆腐を一挙5店舗も食べられるというのは、なんとも贅沢のきわみだと思う。
ああお父さん、昔の僕は「湯豆腐=貧相」と思っていた時代がありました。ごめんなさい。でも今や、「湯豆腐が食べられる」ことを「贅沢のきわみ」とまで形容するようになりました。すくすくと育ち続けて44年、あなたの息子はここまで成長したのです。
2018年11月8日(木)
イベントのチケットを手配したのが早めだったこともあり、うっかりしていた。この日僕はテレワークで、在宅の仕事をやっていた。会社帰りにさくっとイベントに立ち寄るつもりだったのに、わざわざ自宅から仕事を終え次第「面倒くせー」とぼやきつつ、品川へ。
場所は、品川港南口にある「品川シーズンテラス」だという。どこだ、それ?
最近の港南口は結構変わったと聞いてはいるけれど、これは知らない。
しかし、地図に導かれて行ってみて、驚いた。ああここ、昔浄水場があった場所だ。お前、ビルになっちまったんか。
いや、たぶん、浄水場そのものはまだ残っているのだろう。
オフィステナントが入っているタワービルの背後に広大なイベント広場がある。
地図を見ると、更地のように見えるけど、このイベント広場に行くためにはエスカレーターに乗って二階に上がらないといけない。
浄水施設を覆って、その上に公園を作ったというわけか。かなり大掛かりだ。
でも、そのお陰で湯豆腐が佐賀県は嬉野からやってきてくれたわけで。感謝だ。
イベントは4日間の会期。木曜日から日曜日まで。
チケットは当日券もあるものの、事前にネット販売されている。
僕は偶然、チケットを販売しているネットサイト(Peatix)をサーフィンしていて、このイベントのことを知った。
Peatixは、この手の「ちょっとマニア心をくすぐる」イベントがちらほら見つかるので、僕は一週間に一度ざーっとイベント一覧をチェックするようにしている。
Peatixは、「結婚式の二次会幹事が参加者からお金を回収する」ような使い方もできる、少額決済に強いネットチケット販売サービス。わざわざ「イープラス」や「チケットぴあ」のような大手に取り次いでもらうまでもない、という中・小規模イベントが活発に利用している。
さすがに「○○君△△さん結婚披露宴二次会チケット」みたいなものは非公開イベントにされているので、僕が目にすることはない。そのかわり、今回の湯どうふガーデンみたいな「おっ、これは!」というキラリと光るイベントが見つかることが多いので、サーチをやめられない。
会場案内図。
温泉マークののれんが会場入口にバーンと掲げられ、風が吹いてそれがヒュウ、とめくれあがるとその先に東京タワー。
東京で嬉野温泉!湯豆腐!というこのギャップを強く意識させる、ナイスロケーション。
「きものレンタル」ならぬ「ゆかたレンタル」を会場では行っているらしく、浴衣を着た男女もチラホラいた。これもギャップがすごい。東京タワーを眺めるオフィス街で、浴衣だもの。
テントが並ぶ。それぞれが、湯豆腐をふるまうお店。
一度に五店舗分をどかんどかん、と1プレートで提供されるのかと思ったけど、そうではないらしい。
一軒一軒、チケットを手に食べ歩くというスタイル。
利き酒飲み比べセットみたいなものとは違って、湯豆腐は熱々を食べてナンボだ。一度に1プレートで盛られたんじゃあ、食べる順番が後になった湯豆腐店がかわいそうだ。
先着制だったようだけど、前売りチケットを買った人は木桶がもらえた。
宅配便で、自宅に木桶が届けられたときはびっくりした。その時は、全く心当たりがなかったからだ。てっきり、会場で桶が貰えるものだとばかり思っていた。
送られてきた木桶には、「うれしの温泉湯どうふガーデン」という焼き印入り。今回、このイベント専用に作ったものだ。
桶の相場というのがいくらなのかわからないけど、安いものではない筈。なにしろ、水漏れしないように精密に作らないと意味がないものだから、安いわけがない。それをチケット購入者に事前に宅配便で送る。もう、この時点で前売りチケット代1,300円では赤字の筈だ。
なにやっとんねん、嬉野温泉!サービスしすぎや。
もうね、東京の奴らからどんどんカネをむしりとればいいんですよ。採算度外視で地元PRなんて考えなくていいんですよ。どうせ東京の人は、娯楽と刺激に飢えているんですから。少々高い値段を提示したって、人が集まりますよ。せめて、原価割れはしない程度に儲けて欲しい。心底、そう思う。
ただ、この桶には紙が入っていて、それがくせ者だった。
「当日は、(ネット予約した)チケットと、この木桶を持ってきてください」
と書いてある。まじか。これ、折りたたみができないし、結構かさばるんですが。これを担いで持ってこいとな。それは何かの罰ゲームのようだ。
幸い僕は、自宅からこの会場に向かったから問題なかったけど、職場経由、または仕事上のお客さんオフィス経由で会場を目指すとなると、この桶はすごく目立ったことだろう。ははーん嬉野、さてはそれが狙いか!
「木桶大サービスだけど、それは広告宣伝看板の役割も果たしています。そこんとこ、考慮して職場の同僚などにPRしてくださいね」
というわけだ。
ついでに、イベント後に家に持ち帰って、捨てるに捨てられない良いものなので使い続けることになる。わかった!銭湯の「ケロリン」の桶と一緒だ!
スマホの画面を受付で提示して、湯どうふの引換券をいただく。
最後の最後でアナログなチケットに戻る、というのが、2018年の現状。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (2件)
この続き、一体どこに有るんや..w
amariftさん>
ちょっと広告等に埋没してわかりにくいですが、記事の続きへのリンクがちゃんとあります。