長崎の過去と今-01

朽ちていく建物、護られる建物(その1)

2017年春。おかでんは珍しくやる気を出していた。むらっ気のある性格で、テンションが高いときと低いときに周期性があるのだけど、ちょうどテンションが上がり調子の時と春の訪れとが重なったからだ。

「ゴールデンウィークあたりに、アワレみ隊で一発なにかカマすか」

何かやる、といえばアワレみ隊活動しかあり得なかった。

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30年来のつきあいになるアワレみ隊一派だけど、最近はすっかりその活動が控えめになってしまっている。お互い40歳を越え、気力体力財力の余裕というのが20代の頃と比べてなくなってきているからだ。元々全国に散らばっているアワレみ隊メンバー、「ちょっくら会おう」というだけでも一騒ぎだ。これまで、長野界隈で蕎麦食べ歩きだのキャンプだのができていた方がむしろ凄いくらいだ。

ばばろあに至っては、長野でアワレみ隊活動をするために「前日のうちに名古屋入りし、しぶちょお宅で一泊し、それから当日を迎える」なんて有様。さすがに彼ももうこういう強行軍は難しい、と言っている。「アワレみ隊で集まるなら、名古屋以西にしてくれ」と。

日本において最大の都会である東京だけど、アワレみ隊においては「辺境の地」。

そんなわけで、なかなか活動ができていなかったのだが、このまま「なんとなく自然消滅」させるにはあまりに惜しい。僕らの「若気の至り」の集大成がアワレみ隊だからだ。組織とか人付き合いっていうのは、意識して続けないとどんどんじり貧になる。「親友だから、いつでもどうにでもなるさ」なんて甘く考えず、ちゃんと会う機会を作らなくちゃ。

で、改めてアワレみ隊で集まるならどうする?となったとき、やはり「離島」というキーワードを軸に据えるのが一番収まりが良かった。「キャンプ」なんて軸にすると、資材運搬の問題が非常に大きいし、「温泉」とか「蕎麦」とかいったらきりがない。しかも集まろうとしている時期は、泣く子も黙るGWだ。下手な観光地や都会にはいないほうがいいだろう。

早々に賛意を表明してくれたばばろあと僕とで、検討を進めていく。

「トカラ列島」「五島列島」「甑島」「壱岐・対馬」「隠岐」

といった中国地方~九州地方の島々が候補として出てきた。一足飛びに「台湾」という提案もあったのだけど、これは今後の宿題として、先送りにした。今年4月、4年だか5年だかの長期海外赴任から戻って来たジーニアスが、「台湾なら俺も参加したいが、GWは帰国直後でいろいろあるので参加できない」と言ってきたからだ。ならばジーニアスが落ち着いてからでよかろう、というわけだ。

唐突に「台湾」と思うかも知れないが、東京、愛知、大阪、山口・・・と散らばっているアワレみ隊において、むしろ海外現地集合・現地解散の方がやりやすいという事情もあった。成田、中部、関空、福岡といった国際空港から飛行機で台湾へは容易にアクセスできる。むしろ、鹿児島からフェリーにのって翌朝到着、なんていうトカラ列島の方がよっぽどハードルが高い。

「なんかすげえところ来たぞ!」というワクワク感を感じるならば、やっぱり秘境中の秘境であるトカラ列島、「祈りの島」として列島中いたるところに教会が点在している五島列島が素晴らしい。

トカラ列島

五島列島

そんな中、敬虔な・・・というか、むしろ敬虔すぎてギャグの領域ではないか?というくらいのカソリック信者、蛋白質が参加を表明してきた。彼は毎週末地元の教会に通い、時間が許せば一日二回もミサに出るというような男だ。だったら、「五島列島教会巡りの旅」がよろしかろう、という話になった。

念のために蛋白質に行きたい場所を聞いてみたら、五島列島で構わないという。しかし、「ついでに遠藤周作文学館に行きたい」とも付け足してきた。えっ、遠藤周作?

そういえば、マーティン・スコセッシ監督が遠藤周作の「沈黙」(隠れキリシタンの弾圧を目の当たりにした宣教師の話)をハリウッドで映画化し、つい先日公開されたばっかりだっけ。

これを契機に、すっかり蛋白質は遠藤周作ファン(というか、正確に言うと「遠藤周作の『沈黙』ファン)になっているらしく、遠藤周作文学館というキーワードが出てきたのだった。

えーと、それってどこにあるの、というと五島列島の対岸、長崎市の北側だ。あー、こりゃあ五島列島とセットで行くには結構キツいぞ。

五島列島巡礼手帳

旅の計画は遅々として進まなかった。とにかく五島列島は計画が立てにくい。なにげに島一つが結構デカいし、「列島」の名にふさわしくいくつもの島が連なっている。当然島を巡っていくためには船を使わなければならないし、島内の移動はレンタカーが必要だ。さらには、島内にたくさんある教会を巡ろうとすると、全く目処が立たない。

前日夜、全員が博多に集合し、24時ちょと前に博多港を出発するフェリーに乗って五島列島を目指す。そして早朝五島列島に到着・・・まではイメージが付くのだけど、さてそこからどうする・どうなるがさっぱりだ。

検討を促進させるために、「NPO法人長崎巡礼センター」というところに連絡をとり、「五島巡礼手帳」なるものを取り寄せた。値段は1,200円。これは、五島列島にある全53カ所の教会の紹介がされているだけでなく、スタンプラリー用の台紙にもなっている。スタンプラリー!・・・もう何を考えているか、わかるね?

長いつきあいのばばろあは当然僕の目論見に気がついていて、

「全部回るの、無理で?中には一つの教会に行くだけでホンマ1日潰れてしまうような所もあるんで?」

と言ってきた。それはその通りで、さすがの僕でさえも「完全制覇!」というのは最初から諦めていた。でも、この巡礼手帳を見て、教会ごとに特色がある建物にワクワクが止まらない。「これは美しい!」という教会だけでも、ベストセレクションとして訪れておきたいものだった。

長崎の教会写真

ちなみになんで五島列島に教会がたくさんあるのかというと、もちろん信者が多いからなのだけど、明治時代になって禁教令が解かれキリスト教が解禁されると、これまで隠れキリシタンとして先祖代々耐えてきた人たちが嬉しくなっちゃって、この喜びを是非!と教会をこしらえたのだという。なので、サイズは小さいながらも、どれも気合いが入りまくった立派な教会だらけだ。よくもまあ、離島の集落単位でこんな立派なものを作れたものだ、と呆れるレベルだ。

よくわからんなりに旅の計画を練ってはいたが、そんな折、参加表明をしていたもう一人、しぶちょおが諸般の事情により参加できないということになってしまった。本人、とても悔しがっている。そりゃそうだ、五島列島なんて一生のうちに一度いくかいかないか、という場所なので、アワレみ隊企画として教会巡りで島内をウロウロしちゃったら、もう次がないかもしれないからだ。

だったら五島列島もまた今度にしようや、とばばろあから提案があり、結局離島企画は取りやめとなった。というのも、五島列島ツアーだと3泊は確保しなくちゃいけないし、移動と宿泊に結構お金がかかる。なんやかんやで、10万円くらいは費用としてかかってしまいそうだからだ。さすがにこれだけの巨費を費やすからには、参加希望者全員が集まれるときの方がいいに決まってる。

・・・で、結局ここで思い出されたのが、

「そういえば蛋白質、『遠藤周作文学館』に行きたいって言ってたな」。

結局、長崎に行くことになった。

あれこれ調整した結果、今回は3泊4日の旅、参加者はおかでん、ばばろあ、蛋白質の3名、行き先は長崎/佐賀ということになった。

ざっくりとした旅程はこうだ。

[1日目]
長崎集合。
午前、高校の修学旅行で訪れた長崎市街を再訪し、「昔はどうだったっけ?」と思い出す旅。
午後、軍艦島上陸ツアー。

[2日目]
午前、長崎市街観光、遠藤周作文学館。
午後、外海エリアの教会を巡りつつ、「日本最後の炭鉱があった島」池島へ。

[3日目]
午前、池島炭鉱ツアー。
午後、嬉野温泉へ。湯豆腐。

[4日目]
未定。佐世保に行くか、吉野ヶ里遺跡の方に行くか。
解散は新鳥栖駅の予定。

「軍艦島(端島)」と「池島」、両方の炭鉱の島を巡る旅ということになった。すなわち今回は「祈り」と「掘削」がテーマ、というわけだ。

軍艦島のツアーはもちろん大人気で予約が取れなかったのだけど、執念でキャンセル待ちをゲットすることができた。池島も、島内に宿が取れて一安心。

池島というのは軍艦島と比べて知名度が低く、知らない人も多いと思う。しかし、実はメジャーになりすぎた軍艦島なんかよりもよっぽど興奮が止まらない島として、僕らは以前から目をつけていた場所だ。今回、その両方を訪問することができて、本当にラッキーだ。

池島とはなんぞや、という話はおいおい説明していく。

3泊目に嬉野温泉泊というのはちょっと場所としておかしいのだが、僕が嬉野温泉に泊まったことがない上に名物である「温泉水で煮込んだ湯豆腐」を食べたいと所望したので、ばばろあがセッティングしてくれた。ばばろあは、今回殆どの旅のコーディネートをしてくれ、本当に助かった。

「GWじゃし、大陸からよぉけ人が来とるけぇ、全然宿が取れんのよ!どこもアウトで、ようやく取れた嬉野温泉の宿は、『熊本地震の影響で温泉の配管が壊れて、お湯が出ません。風呂は外の共同浴場を使って下さい。そして素泊まりのみです』っていうところじゃったで」

ばばろあが目を丸くしながら熱く解説してくれる。3泊もの宿を確保するのに、結構手こずったらしい。

さあ、アワレみ隊2017、全員43歳の中年独身男性による旅が始まる。

2017年05月02日(火) 1日目

羽田空港第二ターミナル

06:17
我ながらビックリするくらいの早朝に、羽田空港にいる。

朝6時17分。

今日はまだ平日。有給休暇を取得し、この日からアワレみ隊の旅が始まる。

本来であれば、「この日の夜までに全員博多に集合。深夜のフェリーで五島列島に行くぞー」という予定だった日だ。しかし五島列島計画が潰えた後も、そのままこのド平日である5月2日が旅行の初日となっている。

というのも軍艦島のツアー予約が取れたのが、この日の午後だからだ。GW中だなんて、当たり前だけどツアーの空きなんてありっこなかった。平日だからこそ、滑り込みセーフでツアー予約が取れたんだ。ならばこの日から、しかも早朝から東京を発つしかあるまい?

とはいえ、この日は朝4時半起床。笑っちゃうしかない。これから3泊4日の旅行だぞ?体力持つのかね、ホント。

蛋白質は居住地である大阪を昨晩のうちに出発し、深夜高速バスで長崎入りを果たすのだという。今頃、高速道路をひた走っていることだろう。朝8時には長崎に着くという。

山口のばばろあは、前日も休みをとっていて、昨晩は佐世保に泊まったらしい。なんで佐世保?・・・いや、疑問に思う必要はない。行動派の彼が動き回るのは、「城跡」か「砲台跡」巡りと決まっている。きっと、佐世保界隈にまだ見ぬ砲台跡を発見したのだろう。

ばばろあは、長崎空港に到着する僕を車で拾い上げ、長崎駅まで運んでくれることになっている。そこで蛋白質と合流する。

掲示版

06:18
この時間に羽田空港に到着していられるって、いいよな。眠いけど、朝この時間から旅先に向けて移動できれば、昼前から現地で大暴れできる。昼飯はご当地グルメで!なんて言わず、なんなら遅い朝飯をご当地グルメで!とすることだってできる。

しかも、早朝の便は昼間よりも値段が安い。いいこと尽くめだ。

東京界隈に住むなら、「早朝の新幹線・飛行機に乗ることができる場所」がええのぅ、という思いを新たにした。究極的には品川界隈、っていうことになるんだろうけど、さすがにあそこは住みにくそうだ。ビジネス街すぎる。

朝から便がいっぱい

えーと、今回乗るのは、06:55のソラシドエア長崎行き。ソラシドエアに乗るのは初めての体験だ。

宮崎に本社がある航空会社で、昔は「スカイネットアジア航空」って名前だったよな。いつの間にか「ソラシドエア」という微妙にカッコいいような可愛いような名前の会社になっちゃった。エアドゥやスターフライヤー同様、単独での経営が難しかったのでANAの出資を受け、予約発券システムなどはANAのものを使っていると聞く。

やっぱり、ガッチリとマイル制度や予約システムを固めているJAL/ANAには勝てないってことだな。そりゃそうだ、マイルがたまりもしない航空会社など、使うのに躊躇してしまう。

それでも今回ソラシドエアを使ったのは、東京発で長崎に最速で着く便がそれだったということと、案外お値段が安かったと言う理由だ。

18,790円。

「安くないだろ馬鹿」と言われそうだが、いや、長崎に行く飛行機って、余裕で2万円を越えてくると思っていたのでこの金額が燦然と輝いて見えた。ただし朝7時前に羽田を発つという、都内在住でも乗れる人が限られてしまうような便だけど。

バスラウンジ

さすがソラシドエア、飛行機は沖止めだ。成田空港のLCC同様、ボーディングブリッジは使わない。バスで、ターミナルから離れたところにぽつんと駐機している飛行機に向かうことになる。

羽田空港第二ターミナルにおいて、「500番台」のスポット名が付いているのは、バス乗り場ですよっていうことだ。

501番搭乗口

06:37
501番ゲート、長崎行き。まだ改札を開始していない。

自動改札機の奥すぐのところに、空港内を走りまわるバスが待機している。

ソラシドエア、ANAのシステムを使っているだろうから、いわゆる「SKiPサービス」(スマホ画面などに表示された二次元バーコードを自動改札機に読み取らせるチケットレスサービス)が使えるのかと思ったが、使えなかった。極力余計な機能はANAから拝借せず、コストを下げているのだろう。

ANAFESTA

バスの待合所に、そば・うどんを扱っているANA FESTAを発見。

朝飯抜きで、昼に長崎で胃袋フルスロットル!ということを考えていた。しかし搭乗手続きはまだ始まっていないようだし、ここで「転びキリシタン」ならぬ「転びアワレみ隊」。蕎麦をつるつるッと手繰っておく。栄養をつけておかなくちゃ、これからの長丁場をフルパワーで動き回れないってば。

「誤魔化してはならぬ」フェレイラは静かに答えた。「お前は自分の弱さをそんな美しい言葉で誤魔化してはいけない」

(遠藤周作「沈黙」)

このとき食べた蕎麦の記録はこちら。

ANA FESTA 羽田バスラウンジフードショップ
2017年03月30日 【店舗数:408】【そば食:676】 東京都大田区羽田 たぬきそばアワレみ隊の長崎ツアーがあるため...

(つづく)

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