国営昭和記念公園。
馴染みがある人はあるし、ない人は全然ないであろう、東京西部にある公園だ。上野公園のように都営の公園はいくつもあるが、国営、しかもそれをバーンと公園名で謳っているのはあんまりないと思う。しかも、元号として使われた「昭和」をタイトルに使っている。「国営」であり「昭和」であり「記念」している公園。とにかくパワーワードが並ぶ迫力たるやもう。
迫力があるのは名前だけではない。見掛け倒しとは言わせないぞ、といわんばかりの広大な敷地は、来るものをビビらせる。いや、御冗談を?と公園内を歩いているうちに不安になる、そんなデカさだ。
地図で見ると、最寄り駅はJR中央線立川駅、またはJR青梅線西立川駅ということになる。二駅にまたがって公園の敷地が広がっている、ということになる。
「どうせ東京なんだし、一駅の間隔が広いんでしょう?」
と思うだろう。実際それは間違ってはいないのだけど、ここは東京都の郊外。数百メートルで次の駅、みたいな山手線とは違う。しっかりと距離があって、それでもなお公園が続いているというのは東京人にとっても理解に苦しむデカさだ。
なにしろ、映画「シン・ゴジラ」では、首都がゴジラによって壊滅状態になった際に臨時政府が引っ越してきた場所だ。実際にこの地は、大規模災害が起きた際のバックアップ場所として機能するよう、できている。あの映画は極力リアルに作ってあるため、そういう設定も忠実だ。そんなわけで、公園はやたらとデカい。デカすぎて、地平線が見えるんじゃないか、というくらいだ。
うっかり公園に足を踏み入れ、面白がって奥へ奥へと歩いていくと痛い目に遭う。足腰がさほど強くないご高齢者ならなおさらだ。公園から脱出できずに遭難、ということがあってもなんらおかしくない。いや、マジで。
公園でまったり過ごす、という趣味がない僕は全然この地に足を踏み入れたことがなかった。でも、2019年は春先にここで「Lala linlin」という曲のPV撮影に演者として招かれ、初めて訪れた。
あちこちの風光明媚な場所でロケは進んだため、スタート地点は西立川駅から公園に入った場所だったけれど、帰りは立川駅まで歩いた。そして、そのデカさに驚愕したものだ。なにしろ巨大公園だ。地平線が見えるんじゃないか、という水平方向の驚きだけではなく、「空がこんなに広いのか!」という垂直方向の驚きもあった。とにかく、驚いた。
そんな「驚きと興奮の巨大公園」で、グルメイベントが開催される!というのをこの時知った。昭和記念公園の敷地内で、いろいろな屋台がずらりと並ぶのだという。
わざわざ巨大公園でやるくらいだから、お店の数は半端ないだろう。でないと、わざわざここでやる意味はない。何しろ、公園が巨大すぎて、「駅からすぐ近くにある公園」だけど、肝心のイベント会場までが徒歩15分、20分とかかってしまう。会場にたどり着く前に脱落者を出してしまうので、そうならないだけの魅力を提供しなくちゃ。
つまり、面白そうなイベントだ、ってことだよ!
そのイベントのタイトルは「まんパク」という。いい名前だ、潔いったらない。わんぱくな子供のように満腹になってくれ、という意味なのだろう。よし任せろ、満腹になるぜ。
土曜日夕方、我々は立川駅集合にし、まんパクに突撃することにした。
2019年05月26日(土)
わかってはいたけれど、駅から結構歩く。
駅の改札で「やあどうもどうも」とみんなで集まるまではいい。そこから延々と、黙々と歩くことになるので、それまでの間の持たせようが大事だ。
今回は、僕と女性2名の3名構成だった。3名とも食に対するモチベーションが高い人なので、行軍には全く支障がなかった。「あれが食べたい、これも食べたい」という話が尽きなかった。でも、もし「まあ、なんとなく面白そうなので参加しました」的な人がメンバーの中に混じっていたら、この会場到着までにへこたれるかもしれない。
そんな来場者の心境を主催者もよくわかってらっしゃる。「満腹まであと1分!」という看板が会場近くでお出迎え。
いやちょっと待ってくれよ、入場する際に「とりあえず水1リットルをその場で飲み干せ」みたいな話じゃないよな?満腹まで1分ってあんたそりゃ無茶ってもんですよ。
でも、嘘だとわかっていても、僕らは「おう!あと1分後には満腹になってやるぜ!」と気合が入る。改めて、人間って「ついちゃいけない嘘と、ついていい嘘ってものがある」ということを知る。
まんパク会場が見えてきた。
昭和記念公園の中でも、一番立川駅に近い「みどりの文化ゾーン」が会場だったので良かった。これが公園奥の「みんなのはらっぱ」だったら、途中で諦めるところだった。
このあたりは全てがスケールがでかいので、実際に会場を見てもさほど驚きはなかった。
まんパク会場入口。
このイベントは入場料がかかるイベントだ。中に入るだけで、お金がチャリンとかかる。もちろん、飲食をすればその分お金もかかる。
「激辛グルメ祭り」など、飲食イベントでも入場料をとらないものは多い。気軽にイベントに参加できるから嬉しいけれど、今回お金を払ってみて、これはこれでアリだと思った。
土日入場券、800円。安くはない値段だ。
しかし、このおかげで土曜日夕方だというのに会場は激混みとはならず、広大な敷地ということもあってのんびり過ごすことができた。
最近、音楽フェスや花火大会など、人が集まるイベントにおいて「お金を払ってでも、混雑は避けたい」というニーズが高まっている。別にみんなが金持ちというわけではないけれど、なけなしのお金を払ってでも、混雑はイヤだというわけだ。その気持ち、今ならよくわかる。800円を払うことで、快適な空間。これだったら払う価値がある。
いや、でもひょっとしたら、単に立川という東京都心からズレた場所での開催だから、人の数が多くないという事情があるのかもしれないけれど。
仮に、都心の代々木公園でのイベントで、入場料1,000円を払ってください、と言われたらどうだろうか。
うーん、ごめん、払わない。「タイフェス」のように足の踏み場もないイベントが空くのはありがたいけれど。でも、結局2~3店舗のお店で料理を頼んで、食べて、終わりだからなあ。くつろげる場所と時間があって、空いていれば、お金を払う価値を感じるけれど。単に空いていればいいっていうもんでもない。代々木公園イベントなら、「10分で100円」みたいな時間課金制にするなら、使う。
入場券とセットで、カラフルな割引券がついていた。
これの面白いのが、なんでも使える割引券というわけではなく、「ラーメン・チーズ」ジャンルの飲食店の50円割引券1枚、「餃子・揚げ物」ジャンルの飲食店の割引券1枚・・・とあれこれジャンルが分散されているということだ。
「せっかくだから、この割引券は使おう!」と思うと、必然的にあらゆるジャンルの料理を注文することになる。まんべんなく、満腹にさせる気だ!おう、その心意気やよし、まんまと乗せられてやるぜ!
(つづく)
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