眼瞼下垂を手術で治す

まぶたが重たいことによる弊害

僕の似顔絵を描くとすれば、髪型を除いて特徴的なのが「細い目」「団子っ鼻」の二つがあると思う。「生まれた直後はまんまるな目をしていたのに」と母親が嘆くくらい、成長とともに目は細くなった。

「目が細くなった」といっても、骨格がそうなったわけではない。腫れぼったいまぶたのせいで、目が細く見える状態だった。特にこれは、お酒を飲んでいた頃は顕著で、山小屋泊の登山中なんててきめんだった。夕方から酒をしこたま飲んで、山小屋のメシをしこたま食べて、そして標高が高くて気圧が低い。さらには寝苦しい夜でうたたね程度しかできない。翌日の顔はパンパンだった。まあこれは、まぶただけではなく顔全体の話だけど。

目が細い、なんてのは別に昨日今日の話じゃない。今更目をぱっちりと二重まぶたにしようなんて思った事は一度もないし、自分の容貌に劣等感を抱いたこともない。しかし、大きく困る事があった。それは、しぶとい肩こり・首こりだ。特に後頭部界隈の凝りが、僕の悩みの種だった。ずっと詰まった感じがして、気分が悪くなるし、全身倦怠感も強かった。

メガネがずり落ちている状態

あるときの僕の写真。ちょうど41歳の誕生日のときのものだ。

目が細いのはさておき、メガネの位置を見て欲しい。まるで老眼鏡をはめている老人のように、ずり落ち気味にメガネをかけていることがわかる。近視なのに。

これは、「腫れぼったいまぶたに邪魔された黒目が、僅かな隙間から外の景色を見ようとするため」にアゴを上げた状態で、人を見下すような視線で物を見ているからだ。今、写真を撮っている時こそ意識的に顎を引いているけど、普段はもっと顎を突き上げているというわけだ。

メガネのフレームが視界の妨げになるんじゃないか?というズレかたをしているけど、これくらいが僕にとっての通常モードだ。

黒目の半分が隠れている

別の写真。こっちの方がわかりやすい。

見ての通り、黒目の上半分50%くらいが隠れてしまっている。これでは視界が狭いので、どうしても顎を上げた状態が通常モードになってしまう。その結果、後頭部から首にかけてずっと縮こまった状態が続き、極度の凝りが発生していたというわけだ。

この写真を撮影したのは2015年だけど、ちょうどその頃は体調を崩し、毎月やたらとミニ湯治を繰り返していた。やたらと温泉に入りたがったのは、この首の不調によるところが大きい。首がまいってくると、精神までやられてくる。あまりにしんどくて、大沢温泉3泊4日湯治旅の時はカネに糸目をつけず、毎日マッサージを受けていたくらいだ。

顎をもっと引け、と他人から指摘されて顎を引くと、僕にとってはものすごく息苦しかった。そして、かなり上目遣いで、睨みつけているような感覚になった。それくらい、変なクセがついてしまったということだ。

「眼瞼下垂」とは

体調の悪さはどうにもならないものだと思っていたけど、ある日「眼瞼下垂」というキーワードを人づてに聞いた。聞いたことがない言葉だ。そもそも、漢字の読み方すらわからない。調べて見ると、「がんけんかすい」と呼ぶらしい。なんだそれは?

眼瞼下垂は、老化とともにまぶたを支える筋肉が衰え、まぶたが垂れ下がってきて視界を妨げる症状を指すのだという。病名だ。

人間、歳を取れば大なり小なり眼瞼下垂の状態にはなるらしい。そういえば、お年寄りで目がほとんどふさがって、寝ているんだか起きているんだかわからない人がいる。あれがまさに「眼瞼下垂」なのだろう。

このときの僕はまだ40歳になったばかり。しかも昔っからまぶたは腫れぼったかったわけで、老化だとか眼瞼下垂だとかは当てはまらないような気がする。しかし、いずれにせよまぶたのせいで姿勢が悪くなっているし、肉体面精神面に負担がかかっている。治せるものなら治したい気持ちになってきた。

眼瞼下垂の手術とは

この眼瞼下垂、さすがに薬を飲んだり塗り薬を塗れば治るといった性質のものではない。手術が必要になる。まぶたを切開し、余った部分を縮めることで対応が可能だという。なんだ、包茎手術と同じか。

それだけ聞くと、眼瞼下垂治療とは「美容整形」という印象を受ける。実際、「眼瞼下垂」でネット検索をしてみると、美容整形外科のサイトが多数ひっかかる。僕は自らの体に美容整形を施したくないので、ちょっと思案のしどころだった。しかし、この眼瞼下垂、生活に支障が出る症状でもあるということで保険適用になる場合もあるという。保険適用!

単に美を追究して、親から授かったたった一つの体にメスを入れるのは主義じゃあない。でも、健康保険で適用がきく「病気の一種」だとしたら?それは別にいいじゃないか、という気がする。歯が折れたのでインプラントを入れる、というのが「美容整形だ!主義主張に反している!」とは思わないように、眼瞼下垂も「つらい症状を緩和するための措置である」という解釈ならばなんとなく許せる。

ひとまず紹介してもらった、眼科の名医と言われる先生の元へ行ってみることにした。そこで、「これは眼瞼下垂ではないです」と言われたらああやっぱりそうでしたか、ということで諦めるし、「保険適用外の自由診療でよければやりますよ」という話なら、これもまた諦める。お金がもったいないからではなく、「自由診療」ってことは美容整形に等しく、だったらやらなくてもいいなあ、という気持ちがあるからだ。

ただこの眼瞼下垂、病院によって診察基準はまちまちらしい。その先生が「これは眼瞼下垂です」と認定すれば保険適用で治療はできるし、「いやー、この程度では眼瞼下垂とは言えません」と言われれば保険はきかない。なので、眼瞼下垂手術を保険適用で受けたいがために、ドクターショッピングをする患者もいるらしい。さすがに僕はそこまでする気はない。

ちなみに、美容整形外科でも、眼瞼下垂手術に関しては診察結果によっては保険適用にすることができるようだ。いくつもの美容整形外科でそういう広告を大々的に打っていた。そりゃそうだ、自由診療が原則の美容整形ではあるものの、その先生自身はれっきとした医師免許を持っている人だ。その人が「これは保険の適用範囲となる症状である」と認定すれば、保険適用にできる。

だいたい相場として、健康保険が適用できた場合は5万円くらいで、自由診療となった場合は20万円くらいだったと思う。かなりの差だ。

まぶたというのは非常に皮膚が薄くデリケートだし、顔の要素を決める重要なパーツだ。手術の仕上がりを気にするなら、町の眼科医よりも美容整形外科、または形成外科に頼ったほうが良い場合があるという。とはいえ、僕としては「自分の顔にメスを入れるかもしれない」という負い目があり、「眼科医の範疇でやってもらいたい」という願望があった。仕上がりを気にする時点で、「外見を気にしているだけじゃねーか。眼瞼下垂とか理由つけてるけど、本当にやりたいのは美容整形だろ?」って自己嫌悪に陥ってしまう。だから、やるなら眼科。

どこの眼科でも眼瞼下垂の手術をやってくれるわけではない。白内障手術など、ちゃんと手術設備と実績を有している病院に頼る必要がある。なので、僕は自宅から1時間近く離れた病院まで通うことになった。

診察 2015年5月9日

診察室へ入る。院長先生から「どうされましたか?」と聞かれ、思わずドギマギする。まぶたを切開し、おめめをぱっちりさせたい・・・なんて、まるで美容整形じゃないか。僕のプライドとして、そうは思われたくなかった。

「目が細いせいで顎を上げないと正面のものが見辛いんです。そのクセがついてしまったので、首や肩が凝って、日々精神面でつらいでんです」

「ほう」

先生はまだ傾聴モードだ。若干焦る。もっと「それは治療しなくちゃいけませんな!」と前のめりなセリフを欲しい。早く。

「で、眼瞼下垂じゃないか、と思いまして」

「ああー、眼瞼下垂ね」

先生が「そういうことを言いたかったのね」という雰囲気で苦笑する。しまった、見透かされたか。「眼瞼下垂、ということにして、おめめぱっちりの美容整形を保険適用でやろうと企んでいる」と思われたか?恥ずかしい!僕は断じてそんなことはない。

慌てて、

「保険適用できるくらいのよろしくない状態なら、手術をお願いしたいと思ってます。でも、そうでないなら・・・まあ、いいかな・・・なんて」

後半になるに従って、言葉が小さくなっていく自分。いかんいかん、もっとしっかりしろ。

何もやましいことをしていないのに、おまわりさんの横を通り過ぎる時は軽く緊張してしまう自分。それと一緒だ。全くやましくないのに、「やましいと思われたらどうしよう」という気持ちで、ぎくしゃくしてしまう。自意識過剰が邪魔をする。

早速検査に入る。

顎を計測器のようなものの上に乗せ、先生の方向をまっすぐ見た状態になる。顎が上がっていない状態だ。それで先生はまぶたを引っ張ったりしている。

診察はあっけなかった。

「うん、眼瞼下垂ですね」

あ、やっぱりそうでしたか。

「まぶたの皮が余っているから視界が妨げられています。まぶたの皮を切開して縮めれば、視界は広がり楽になりますよ」

でしょうねぇ。

「おかでんさんの場合、皮を切開するだけで大丈夫です。まぶたの筋肉を縮める必要はありません」

それは朗報だ。眼瞼下垂手術はいくつかパターンがあって、皮膚だけの短縮というパターンと、皮膚の下の筋肉まで短縮させるというパターンがある。筋肉が緊張感を失い、だらーんとしているならば筋肉も縮めないといけない。ただしこれは手間がかかるし、自然な風に仕上げるのは結構難しいと聞く。手術に失敗したら、まぶたが閉じなくなってしまったりするらしい。その点今回は狙い通りのところに落ち着いた感じ。

慎重に検査をする病院だと、まぶたに数グラムの重りをぶら下げ、その状態でまぶたが開けられるかどうかという負荷テストもやるそうだ。僕がかかった病院は特にそういう検査はなかった。

先生はデジカメを手に取り、僕の写真を正面から撮影した。病院の診察室で、コンパクトデジカメが出てきたのは初めてみたのでちょっとびっくりした。先生と看護師さんは慣れた手つきでデジカメをPCにつなぎ、モニタで現在の僕の顔を映してくれた。

「ずいぶん顎が上がっていますね。また、正面を見るときに眉間にしわが寄っています」

これが眼瞼下垂の特徴的な顔付きなのだという。お医者さんからこうやってお墨付きをもらったことで、これまでの苦痛が少し報われた気がした。

手術は後日改めて実施することになった。診察室を退室後、看護師さんと手術の日程調整をし、手術に関する説明を受けた。3枚にも渡る、眼瞼下垂手術の解説書を渡されてちょっとビビる。ああそうか、虫歯治療とかとは違う、れっきとした「手術」をやるのだな、ということを実感した瞬間。




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