五十肩対策としてのグッズ遍歴2021

季節は冬。2021年1月頃は、五十肩で苦しめられている左肩を温める方策をあれこれ試していた。

五十肩というのは「肩関節周辺の炎症」だというが、温めると痛みが和らぐので不思議な病気だ。五十肩という病気の本丸は、炎症そのものが一段落したあとの、関節回りの拘縮からくる引っかかりと拘縮だ。その拘縮からくる痛み、というのは温めると少しごまかせる。

五十肩のことを「フローズンショルダー」と英語では言う。まさに言い得ていて、ある一定のところまで腕を上げたら、そこから先に上げられなくなってしまう。

五十肩と似た症状の「腱板断裂・損傷」というのがあるが、この場合は腱が切れてしまっているから挙手ができなくなる。なので、逆の手や他の人の介助があると、すっと手が挙がる。一方で、五十肩の場合は、介助されようがされなかろうが、手が挙がらなくなる。

でも、面白いもので、お風呂に入ったあとなど、肩を温めるとこの可動域が少し広がる。「今だ!」とばかりに、このときにストレッチをやるのが良いとされている。ただし、「もっとイケるはずだ、早く治したい!」とばかりにぐいぐいストレッチをやると、また炎症をぶり返してイチからやり直しになる。

整形外科医は、「痛くても動かせ」と言う。しかし、その言葉を信じて、調子にのってストレッチをやるのは悪手だ。そういえば、「痛くてもストレッチをやれ」とは言ってなかったな。「動かせ」とは言ってたけど。今気がついた。

肩を温めるといえば、使い捨てカイロが真っ先に思い浮かぶ。もちろん、一番最初の選択肢として、家に在庫として置いてある使い捨てカイロを使ってみた。・・・しかし、案外暖かくならない。というか、貼るタイプも、貼らないタイプも、どうにも肩のイイカンジな場所にイイカンジに当たらず、完全に空振りになっている感じがした。肩というのは複雑に動く場所なのでカイロはズレるし、鎖骨の出っ張りなど複雑な形をしていて、ピッタリと肩の輪郭に沿ってカイロが密着してくれることはなかった。これはいまいちだ。

肩に熱源を密着させるのは難しい。ならば、熱源を高火力・長時間耐久できるものに変えてはどうだろう。そう思い、僕のアウトドア用品棚から取り出したのがこれ。

ハクキンカイロ。

山登りやキャンプ、釣りといったアウトドアをする人ならば知名度があるけれど、そうではない人にとって「なにそれ?」という物体だろう。

その名の通り、カイロだ。「使い捨てではない」カイロ。

なんで今、ドラッグストアに売られているものがわざわざ「使い捨てカイロ」と呼ばれているか、キミは考えたことがあるだろうか?それは、使い捨てないカイロがこの世に存在しているからだ。

湯たんぽみたいなものじゃないぞ。ちゃんと発熱するからこそ、「カイロ」を名乗っている。

その材料は、ベンジン。

服のシミ抜き剤としてのベンジンでも使えないことはないが、一応はハクキンカイロに対応したベンジンを買うほうが安心だろう。あと、zippoなどのオイルライター用オイルでも使える。

僕は、日帰りで寒いところに出かける時はハクキンカイロ用ベンジンを使い、泊まりのときはzippoのオイルライターを持参する。オイルライター缶は携行性に優れているからだ。

どういう仕組みになっているのかというと、プラチナ(=白金=ハクキン)の触媒がこのカイロにはついていて、その触媒を加熱すると、気化したベンジンと反応してプラチナが発熱する、という仕組みだ。

最初、プラチナを触媒として活性化させるために、「換火口」と呼ばれるところをライターで軽く炙る必要がある。でも一度暖かくなると、ずっと化学反応が連鎖して続くので、熱が出続ける。

ハクキンカイロが温かいのは、ベンジンが燃えているから、という勘違いをしやすいが、そうではない。

換火口は、いずれヘタってくるので交換が必要になるが、そう簡単にはダメにならない。石綿のようなものがついていて、これがヘロヘロになるか、点火時のライターのすすのせいで黒くなってしまったら交換時だ。

ハクキンカイロは、値段を見てもらえば「えっ!?」と思うくらいに、高い。もう少し安くても、と思うだろう?僕はそう思った。で、最初は、ホームセンターでハクキンカイロ的ななにか、を買った。ちょっと調べればすぐわかるけど、ハクキンカイロの半額以下で、似たものが買える。

でも、買ってすぐに後悔した。着火がすごく大変で、何度やっても暖かくならかったり、暖かくなったと思ったら鎮火したりと、やり直しが多いからだ。で、何度もしぶとく触媒のプラチナをライターで炙っていると、ススで黒くなってしまい、ますます暖かくならなくなるという悪循環。

この手のカイロというのは所詮こんなものか、と思っていたのだけど、ダメ元で本家本元のハクキンカイロを買ってみたらあまりの違いにびっくりした。本当にあっけなく、暖かくできるからだ。こんなに違うのか!と驚くと同時に、値段の差に激しく納得させられた。

ハクキンカイロの便利なところは、燃料を注ぐためのろうとがついていることだ。安物にはこれがないので、そーっと本体にベンジンを注ぐことになる。でも、目盛りが本体についているわけではないので、どこまで入れたらアウトなのか、疑心暗鬼になりながらチキンレースをやることになる。

ハクキンカイロのろうとは、換火口を取り外してセットする。きっちりと固定され、グラグラすることはない。そして、そこにベンジンを注ぎ込んでも、まだこの時点では本体の中に注ぎ込まれることはない。蓋がされている状態になっているからだ。そのため、「ろうと一杯分、燃料を注いだ」と量がはっきりとわかる。

ろうとに燃料を注いだら、ろうとを90度回すと本体に燃料が注ぎ込まれていく。

ちなみに、ろうとなみなみ一杯で、だいたい12時間の暖かさをキープできる。もうちょっと燃料を入れることができるので、一日近く温かさをキープすることができる。

「砂鉄が空気と触れて酸化鉄になることで発熱するのです」という使い捨てカイロとはわけが違う。ベンジンが気化してハクキン触媒を発熱させるのだ、そりゃあもう、激アツですよ。何事もやりすぎくらいがちょうど気持ち良い、と思う僕でさえ、こればっかりはちゃんと袋に包んで使わないと、熱くて耐えられない。迫力が違う。

しかも、時間とともに熱が落ちていく、ということはなく、燃料が尽きる直前まで暖かさが一定にキープされる。これはなんとも頼もしい。

とはいっても、肩の上にハクキンカイロを乗せるというのは、やっぱり無理があった。

金属の塊なので、肩にうまくフィットしない。

しょうがないので、肩を直接温めるのはやめにして、ふだん使っているハクキンカイロ用のネックウォーマーを使うことにした。

ポケットに熱々のハクキンカイロを入れて、これを首にまく。おんぶしているような格好にする。

そうすると、首の下、肩甲骨と肩甲骨の間の部分を温めることができるようになる。

一応、ここが温めれば、間接的に肩関節も暖かくなる。それで少しは癒やされた。あと、肩こりで首と肩がガチガチな人には、このハクキンカイロとネックウォーマーの組み合わせはおすすめだ。しっかりとした熱を長時間、与え続ける事ができるので身体がほぐれる。

(つづく)

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 四十肩なり五十肩の男女差ですが、
    女性の方が家事が多く、高い棚のものを取る動作を日常的にしているので、肩をよく動かしているから、という話を聞いたことがあります。
    洗濯物を干す、にしても。

  • 男性は痛風も尿路結石も、女性と比べて多いので激痛系は男ならではのお楽しみ。。。
    かと思いましたが、女性には出産という最大の激痛があるし、膀胱炎にかかりやすいということもある。

    結論として、「人間って、生きるのは大変ですね。」ということです。

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