常陸秋そばフェスティバル2005

2005年11月12日
【店舗数:—】【そば食:364】
茨城県久慈郡金砂郷町

合計9杯のもりそばでおなかいっぱい

昨年に引き続き、「金砂郷まつり」に行ってきた。そのときの模様を報告する。
昨年、ドライブがてらに訪れた金砂郷まつりだったが、そこで食べ歩いた蕎麦のクオリティの高さに驚愕したものだった。「さすが、そばまつり。主催者の意地をかけていいお店をそろえたんだろうなあ」と感心することしきりだった。そしてこの時、「そばまつり=美味い蕎麦を食べることができる」という方式を自らの中で見いだしたのであった。

ところが、今年に入ってから訪れた「大江戸めん祭り」「松本そば祭り」は、主催者及び出展者の方には大変申し訳ないのだが満足いかないものであった。金砂郷まつりだけが、特殊だったというわけだ。何しろ、ハズレのお店が一軒もないのだから、驚異だ。

金砂郷小学校は混雑

そんなわけで、蕎麦好きたるもの、訪問しないわけにはいかなかった。車で2時間ちょっと、行ってきました金砂郷。雨の予報もなんのその、到着頃にはすっきりきれいな秋晴れ状態。雨のおかげで客足が鈍るかとおもったらその逆で、僕のようなリピーターが多いのだろうか、昨年以上の集客を誇っていた。ま、これだけ美味い蕎麦がずらっと勢そろいしているなら、納得の人混みだ。

並ぶ屋台1
並ぶ屋台2

今年も12店舗が交流センターの敷地内にテントを並べ、出店していた。出店する面子は、昨年から大幅には変わっていないようだ。「おっ、今年もよろしく!」という感じのお店の名前が多かった。おや、中には先月訪問した「松本そば祭り」にも出店していたお店がここに来ているぞ。「蕎邑」「いばらき蕎麦の会」さん、1カ月ぶりです。ジャズメンが、夏のサマージャズフェスティバルシーズンになると全国行脚するように、蕎麦メンたちはこの新蕎麦の季節、各地のそば祭りを行脚しているのかもしれない。

達磨は長蛇の列

今年もぶっちぎりで集客力を誇っていたのが、広島の「達磨」.。言わずと知れた、高橋邦弘名人のお店だ。昨年はちょうど「情熱大陸」が放送された直後ということで、蕎麦に詳しくない人までもが行列を作っていたものだった。今年は行列が一段落しているかな・・・と期待していたのだが、昨年以上の大行列。何事かと思ったら、そういえば先月NHKの「趣味悠々」で何週間かにわたって高橋名人の蕎麦打ちが紹介されていたんだっけ。

行列に並んでいる人たちの会話を聞くと、蕎麦について全く詳しくない人が多数含まれている事がわかる。やはり、テレビに出演するということの影響力というのは非常に強い。「マス」メディアだなあ、と感心させられる。

「もりそば」のみの提供

今年も、相変わらず「もりそば」のみの提供。700円。出店している他店は全てもりそばを500円に設定しているのだが、このお店だけは唯我独尊だ。

確か「翁」「達磨」系列のお店は、もりそばのことを「ざるそば」と表現していたはず。いつの間にか、「もりそば」という表現になっていた。どうしたんだろう。

ちなみにこのパネル、昨年には存在しなかったもの。この一年の間に作ったのだろう。

達磨の店内

さすがは全国に蕎麦を伝導して回っている達磨陣営。非常にぱきぱきとした身のこなしだった。あと、このお店だけはテントの中に客を誘導し、行列→注文→お会計→蕎麦引き渡しまでを一直線の導線で完結させている。しかも食事場所はテント脇に独自に専用のものをこしらえてあり、その先に食器返却口がある。非常にこなれたレイアウトだ。他の店舗が、注文する行列、蕎麦のできあがりを待つ行列、蕎麦打ちを見学する人、お膳を返却しようと人混みをかき分ける人で大混雑していたのとは大違いだ。こういうところも、旅を重ねるうちに身につけたノウハウなのだろう。

高橋名人が蕎麦を打つ

またこのお店の特徴は、軒先で高橋名人が蕎麦を打つ手前に、ビニールカーテンがつり下げられていたことだった。これで、雨の日も風の日も、手元が狂うことなく蕎麦打ちに専念できる。この日、今シーズン初の木枯らしが吹いて、蕎麦屋さんもお客も突風に煽られて大変困っていた。その点このお店は悠然たる構えだ。

達磨の厨房

昨年とほぼ同じ店内の様子。一度に六人前の蕎麦をゆでる事ができる。蕎麦の量は、まず六人前をちゃんとはかりで計って、ゆでがまに投入していた。

高橋グッズいろいろ

高橋グッズいろいろ。

達磨のもりそば
もりそばアップ

達磨の蕎麦。

達磨が食べられて幸せ

では、いただきまーす。

ずるずる。

うううん、一枚目に達磨、いいねぇ。

いいよぅ。

・・・んー、でもベストな状態よりも、香りが薄いような気がする。のどごし、食感は最高なんだけど。まだ新蕎麦を導入していないのかしらん?達磨の場合、「すげー美味くて当然」という印象を持っているので、高望みしすぎたのだろうか?

つゆを飲む。・・・んー??やや醤油が強い気がする。以前頂いた印象は、あまりにまろやかで角が立っていない、球面体のようなつゆだった。醤油だとかみりんといったどれか一つの味が突出している印象がしない味だった。だから、達磨のつゆの味を形容しようとしても、イマイチいい言葉が思いつかないという事になる。しかし、今日のつゆに関して言うと「うん、醤油ですね」と言えちゃう。まあ、そばつゆだから醤油が入っていて当たり前なんだが。これはこれでおいしいので問題ないのだが、ちょっといつもと感じが違うなあ、と感じた。

そば湯

最後、下膳口脇にある鍋からそば湯をひしゃくですくって、いっぱい頂く。ああ、おいしい。そばの香りがぷーんとするそば湯、非常に美味なり。許されるものなら、ペットボトルに詰めてお持ち帰りしたいところだ。

調子に乗って二杯、三杯と頂きたいところだが、本日はこの後たくさんの蕎麦を食べ歩く予定。そば湯って、てきめんに胃袋を膨らませるので多飲は無用。いっぱいでやめておく。

栃木のうまい蕎麦を食べる会

すかさず2軒目。今度は、昨年の金砂郷まつりで「わっ、ダークホース出現!」と驚きの蕎麦を出してくれた「栃木のうまい蕎麦を食べる会」に行った。昨年のレポートで、「うまい蕎麦を食べさせる会」に改名したらどうか、と書いたが、今年もやっぱり「うまい蕎麦を食べる会」のままだ。あくまでも「俺たちが美味いモン食うんだ」っていう姿勢のままだ。それにしちゃ、めっぽう美味い蕎麦をうつんだよなあ、このお店。

4品を提供している

全店舗中もっとも品数が多い、4品を提供している。愛好会だけあって、「これもぜひメニューに加えたい」など、蕎麦ファンの立場からあれこれメニューを増やしたのかもしれない。

もり蕎麦500円、5色かき揚天麩羅600円、海老天そば600円、なめこ蕎麦600円。種物でも100円増しで押さえているというのは良心的な価格設定だ。

店内の様子

店内の様子。

まるで食品加工工場の様相を呈している。このブースに限らず、どのブースも大量の人員を投入して運営されていた。おかげで、客の流れが非常にスムーズで快適だった。金砂郷という田舎町故に来客数がそれほど多くない、という事情もあるだろうが、店舗運営の良さで行列を抑止できている側面は見逃せない。信州そば祭り、大江戸めん祭り共に行列が非常に長かったからなあ・・・。いやあ、金砂郷そば祭りは別次元だ。

注文票のやりとり

このブース、今年は新兵器を投入し進化を遂げていた。

カウンターでお客からの注文を受けたら、整理番号が書かれた注文票(ラミネート加工済)を洗濯ばさみではさみ、洗濯ひもを滑らせて奥のトッピング担当の方に注文を伝えていた。トッピング担当は、その注文票を見ながら次々と盛りつけを行っていた。やるなぁ。

もり蕎麦
もり蕎麦アップ

もり蕎麦500円。500円といえども、結構なボリュームだ。昨年はどうだったか覚えていないのだが、今年の蕎麦はところどころにそば殻が含まれていて、食べると喉もとにちくっ、ちくっと刺激を与える。ちょっと堅めにゆで上げられており、なかなかに楽しい触感だ。もちろん、蕎麦の香りも味もばっちり。うん、おいしい。「高崎の『梅の花』にちょっと似ているかもね」と連れと話をする。

つゆの味は、ちょっとあわなかったような気がする。

ごめんなさい、記憶がほとんどないです。いや、このお店に限らず、その他全部のお店について。この日、一度に9店舗も蕎麦を食べ歩いちゃうと、蕎麦の記憶が混乱するし、「うまかった」「まずかった」くらいしか記憶に残らないんですな。ICレコーダーを持参しわすれたこともあって、これ以降の文章は非常に簡略化します。記憶がないので、仕方がない。「写真を楽しむ」という事で以下をお楽しみクダサイ。

いばらき蕎麦の会

いばらき蕎麦の会。食べた後になって、「あっ、そういえば松本そば祭りでも食べたっけ」ということを思い出した。思い出したきっかけは、店の脇に掲げられていた「素人蕎麦打ち名人四代目」という看板を見て、だった。

○○蕎麦の会、っていうのは結構ありがちなネーミングなので、これだけ店舗数があると全く記憶に残らないというわけだ。

つけ鴨せいろがある

このブースではかけそば系は一切やっておらず、その代わり暖かいメニューとしては「つけ鴨せいろ」をやっていた。みそ汁茶碗のような器に、鴨入りのあたたかいつゆが入っているものだった。もりに100円増しで鴨がつくというのはお得だ。「100食限定」と書かれていたが、実際はもっと用意されていた模様。

何しろ、日が照っているうちは暖かいのだが、日が陰ると急に寒くなる。どのブースも、暖かいそばが飛ぶように売れていた。

食事券

常陸秋そばフェスティバル限り有効、と書かれている食券。

松本そば祭りのときは、ここに「松本そば祭り限り有効」と書かれていた。

厨房

厨房の中。

もりそば

もりそば500円。

おっ、お盆が「いばらき蕎麦の会」の専用だ。凄いな、こういうものまで用意しちゃうんだ。

帰宅後、写真を確認してみたら、松本そば祭りのときはこのお盆が用意されていなかった。新調したのかな?

蕎麦は、おいしかった。松本で食べたときはこれといった印象が無かったのだけど、新蕎麦になったのだろうか。ただ、惜しいことにゆですぎたか、ゆで置きしちゃったのか、麺が非常に柔らかかった。おかげで、「ずるずるっ」と麺をすすって、鼻腔に広がる蕎麦の香り・・・ふああああ、いいねえ・・・と感極まっている時に、もぐもぐすると、急にがっかりしてしまうできだった。惜しい!風味高い蕎麦であるが故に、非常に惜しい!

ふるさと寒河江そば工房

「広島→栃木→茨城ときたから、次は山形にしよう」という理由で、「ふるさと寒河江そば工房」を4枚目のターゲットとした。

ここは、「板そば」を提供すると言う。「板そば」と言っておきながら、プラスチックのコンビニ弁当的容器に入れられて出てきたら相当に愉快だが、このお店は驚いた事にちゃんと木の容器を用意してきていた。

厨房

厨房内の光景。

板そば
蕎麦アップ

かわいらしい木の箱に入れられ、板そば500円登場。お盆も兼ねていて、蕎麦猪口も一緒にトッピング・・・じゃなかった、載せられていた。

小野小町の里

小野小町の里。名前からすると、山形か秋田の方を連想させられるが、筑波山麓の新治村のそば愛好会だ。

てんぷら100円

ここはなんといっても、「てんぷら100円」があるのが強い。キラーコンテンツといっていい。われわれ、先ほどからひたすらもりそばばかりを食べてきたので、そろそろ違った味を欲していたところだった。てんぷらとは渡りに船だ。

てんぷら大量

その期待に応えようとしているのか、てんぷら大量に作りすぎ。もう、カウンターに乗り切らないぞ。蕎麦のゆで上がりの方がはるかに時間がかかるため、天ぷらが一時的に大量ストックされてしまった模様。

天ぷらの具は、かき揚げ1枚と蓮根が2個。これで100円だからお得だ。そのせいか、このお店で注文をする人はほぼ全員てんぷらをつけている様子だった。そのため、われわれの直前のお客さんがもりそばのみの注文だった時、「えっ、もりそばだけなの?」と店員さん、お客さんに聞き返していた。「へぇー、うちのてんぷら、食べていかないんだ。ふーん」という感じだった。ま、確かに100円だったらついつい注文しちゃうよな。

洗濯干し

ここでは、ゆで釜の近くに洗濯干し用具がぶら下げられていた。まるでソックスでも干すかのように、注文票が挟まれていた。時折、店員さんが確認しながら蕎麦を盛りつけている。

まるで複雑なオーダーが存在するような感じだが、実際は「かけ」と「もり」の二種類、それにてんぷらをつけるかどうかという判断しかないわけで、ちょっと大げさな気がする。

どこかで見たことがある光景だなあ、と思ってぼんやりと眺めていて、思い出した。ああそうだ、モスバーガーって、注文票をああやってぐるぐる回しながら店員さんがチェックできるようになっていたっけ。

もりそばと天ぷら
蕎麦アップ

もりそば500円+天ぷら100円。

みたらし団子

一気に5杯ももりそばを食べたので、しばらくは食休み。周囲のブースを見て回ることにした。

商工会青年部・女性部が今年も模擬店をやっていた。みたらし団子がうまそうだ。

しゃも鳥の焼き鳥

そしてこちらは、今年もやっとりますなぁ、焼きそばと焼き鳥。しゃも鳥の焼き鳥、というのに非常に惹かれたのだが、本日の胃袋と食道は「蕎麦のみ通行可能」の扱いになっているので、指をくわえて眺めているしかない。

じぅー

ああ、いい音だ。

「家帰ったら、鶏肉食いたいよな」と連れと話をする。

蕎麦打ち名人決定戦

交流センターの中では、蕎麦打ち名人決定戦らしきものが開催されていた。小学生の部ということで、ぎっしりと詰めかけた観客の前で蕎麦をうっているのはまだ小さなちびっこ達。僕が小学生の頃って、蕎麦なんて腹の足しにならない「好きじゃない食べ物」だったわけだが、この子供達は一体どうなんだろう?蕎麦打ちをやるからには、蕎麦の美味さをよく知っているに違いない。この小学生たちに、「好きな食べ物は何ですか?」とインタビューしてみたかった。

審査員ガン見

人前に晒されながら蕎麦をうつというのは非常に神経を使うことだろう。ましてや、審査員がすぐ側でじーっとその動作をチェックしているのだから大変だ。こういうところで経験を積んだ子供達が、いずれは蕎麦エリートとしてニューウェーブな蕎麦屋を作る日は来るのだろうか?

金砂郷蕎麦愛好会

腹ごなしを済ませ、また戦列復帰。

一番端のブースである金砂郷蕎麦愛好会から、斜めにテントを眺めたところ。各店舗の厨房を一望できる位置になるのだが、いや壮絶だわ。大学祭の模擬店なんかとは訳が違う。

ここにいる人一同、一生懸命働いている。まるで食品工場のような印象をうけるが、蕎麦をうっている人がいたり、お会計をしている人がいたり、いろいろな人がいるので面白い。各店舗、スムーズな運営ができるように配置や導線に工夫がなされており、それを比較するだけで楽しい。

常陸野

目で楽しむだけでなく、舌も楽しまなくては。

次に選んだのは常陸太田市から出店の「常陸野」。この金砂郷まつり、さすがに地元常陸太田市からの出店が多く、全体の半分くらいが常陸太田市勢だった。

このブースは、「達磨」の横に位置しているからだろうか、行列が一番短いお店だった。こういうイベントの場合、一見客ばっかりなので「行列が短い店=おいしくないお店」というわけではない。オペレーションが非常に早いのだろうか?

・・・こういうイベントの場合、ちょっとは行列があった方が華やいで良いな、と思った。効率が良すぎる運営というのもちょっと味気ない。

メニューは「もりそば」のみ

あたたかい蕎麦は売り切れだった様子で、メニューは「もりそば」のみ。つり下がっている短冊には、「盛りそば」「もりそば」と、二種類の文字列が書かれていたので「あれっ、これは違うメニューなのか?」と思ったが、試しに「もりそば1枚ください」と言ったら、「はいモリソバ1枚ね」とオーダーが通った。「漢字で書く盛りそばの方ですか、それともひらがなで書くもりそばの方ですか」と聞かれたら、衝撃的だったのだが。

盛りそば
盛りそばアップ

常陸野の盛りそば。500円。

会津山都蕎麦 蕎邑

会津山都蕎麦 蕎邑に行ってみた。

このお店の蕎麦を昨年食べたとき、「納豆みたいなにおいがする」というとんでもない評価を下してしまったといういわく付きのお店だ。さて、今年はどうかな。

高遠そばあります

高遠そばも扱っているようだ。大根おろしの絞り汁と醤油で食べる、あっさり・さっぱりした蕎麦。普通のつゆを使うもりそばよりも100円高い。仕込みに時間と手間がかかるであろうそばつゆよりも大根おろしの方が値段が高いのか。

洗ったざるを洗濯干しでぶら下げていた

このお店の一工夫は、洗ったざるを洗濯干しでぶら下げていた事だった。

この程度のぶら下げ可能枚数だったら、お客さんの回転からかんがえると到底足りないような気がするが、とにかくざるが鈴なりだ。

もりそば
そばアップ

この蕎邑は器に凝っている。特注の円形ざるに、おぼん。おっと、箸袋つきの割り箸も用意されているのだな。ちょっといい箸を使っているぞ。その割には、薬味入れが「お弁当箱にちょっとした料理を詰める」用の銀紙皿になっているのがアンバランス。

早速食べてみる。うん、・・・・あれれ。

箸から、木の香りが相当するのだった。蕎麦の香りを楽しもうと思ったのだが、箸のにおいがまず先に鼻に届いてしまい、何ともったいない。

「なるほど!昨年『納豆の香り』と形容しちゃったのは、この箸の木の香を勘違いしたからだ!」

1年越しの疑問が解消した。ありがとう蕎邑。

でも、箸の材質は変えた方がいいと思う。

客は少し減ってきた

昼下がりになってくると、風が猛烈に吹き始めた。後でニュースを見ると、今シーズン初の木枯らしが吹いたんだそうな。いきなりどうっ、と風が吹くので、そのとき蕎麦を手に歩いていた人は必死になって蕎麦をガードしなくちゃならなかった。恐らく、風のせいで蕎麦をひっくり返した人も居たんじゃないか。

どっしりした器に蕎麦が供されているお店なら良いのだが、コンビニ弁当的な容器に蕎麦が盛られている場合、食べ進むにつれてどんどん容器が軽くなっていく。風でとばされるリスクが徐々に増していくという事だ。おかげで、食べ終わった人はひたすら片手で容器を押さえていなければならなかった。そのせいで、食べ終わったらすぐに席を立つ人が心なし増えたような気がする。

日が陰ってきて、風が吹くと体温がそれなりに奪われる。しかも、さっきから体が冷えるもりそばばかりを食べている状態で、連れは「うう寒い。暖かい飲み物が欲しい」としきりにぼやいていた。

がまんできずに、運営本部の人に「どこかで暖かい飲み物が買える場所ってないですか?」と聞いたら、本部の人は「えっ?暖かい飲み物ですか?」と、想定外の質問だったらしくびっくりしていた。「そうかー、体が冷えるまで蕎麦を食べ続ける人ってほとんどいないんだろうなぁ」と妙に感心する。

交流センター内に自動販売機を見つけ、そこで一服。

「交流センター内は飲食禁止」と書いてあったのだが、その中に自動販売機があるという不思議な状況であった。センターの入り口でホットコーヒーを飲む。

体を暖めて会場に戻ったら、既に相当人の数がまばらになっていた。時刻は14時すぎ。さすがに一部の店舗では、暖かい蕎麦をはじめとして品切れをおこしはじめていたが、まだどのお店も営業終了にはなっていない。行列せずに蕎麦を食べ歩きたいのであれば、この時間に訪れるのが一番良いだろう。

ただ、今日はお祭りなんだから、行列を作りながら蕎麦を待つというのも楽しい。やっぱりお昼頃には到着しておきたいところだ。

金砂庵

「ラスト2!」

高らかに連れが叫ぶ。

「いやだってねおかでんさん。今7軒食べたじゃないですか。全部で12軒あるわけなんですが、10軒目を食べちゃうと「・・・だったら全部食べようか?」って気になっちゃうじゃないですか。オイラの胃袋の状況をかんがえても、フタケタになる前にやめておくのがいいのかなと」

それにしても、彼とは「大江戸めん祭り」でも一緒だったわけだが、本当によく蕎麦を食べる。「土下座バイキング」などの戦績を持つ僕とタメを張るくらいの食べっぷりだ。こういう仲間が傍らに居ると、非常にありがたい。

「じゃあ、どうする?残りのお店は」
「やっぱり地元でしょう。地元の蕎麦を食べておかないと」

ということで、西金砂湯けむりの郷 金砂庵 の蕎麦を食べることにした。時刻は14時過ぎ、既に一部のお店では閑散としはじめていた。職人さんもふらふらと外を散歩しているし、店員さんは暇そうにしている。このお店は、受付をやっているお姉さんたちが「いらっしゃいませー」と黄色い声で、一生懸命客引きをやっていた。仕事熱心で大変によろしい。

厨房

お昼時はごった返していた厨房も、今ではこんな感じ。「やれ一仕事終えたわい」という感じだろうか。既に蕎麦打ちも停止している。後は、在庫を見ながら必要に応じて少しずつ追い打ちをしていくのだろう。

外は相変わらずの突風。どうっ、と強い風が吹く。どうも寒いと思ったら、太陽が雲に隠れていた。太陽が出ていると暖かいのだが、日が陰った瞬間に急に寒くなる。

こういうとき、冷たいお蕎麦を食べるのは正直、しんどい。幸い、このお店は「けんちんそば」なるものを扱っていた。うう、けんちん汁+蕎麦かぁ。そそられるなあ。

「何ー?おかでんさん、蕎麦はやっぱり冷たいやつじゃないと」

と、連れに指摘されてしまい、「お、おう、その通りだとも」と強がって、またもや冷たいもりそばをオーダー。いい加減、もりそばを8枚も食べたら、何が何だか分からなくなってきた。

もりそば
蕎麦アップ

金砂庵のもりそば500円。

見た目はのっぺりした表面で、それほど美味そうには見えないのだが・・・一口すすったとたん、思わず「うおぅ」と声を上げてしまった。連れも「うほっ」と想定外の事態にびっくりした声をあげた。

この麺、固いのだ。ゆでが足りないのかと思ったが、ちゃんと火が通っていて、でも固い。まるでごりごりの田舎蕎麦を食べているような感覚。見た目が柔らかそうな印象だったので、そのギャップで思わず驚きの声を上げてしまった。

「うーん、美味い。まるで田舎蕎麦のように香り立つ蕎麦だ」

もぐもぐ力強く噛むことによって、香りが引き出されてくる蕎麦だ。それにしても、寒いな。冷たいものをすすり上げるよりも、口の中でもぐもぐやっている方がもっと寒く感じる。

金砂郷蕎麦愛好会

「ラスト1!」

これがおおとり。金砂郷蕎麦愛好会をセレクトした。ここはまだ若干の行列ができていた。どのお店も似たようなネーミングだし、すごく特徴的なわけでもない。なのにお店毎に行列にむらができているのはなぜだろうか。

もりそば
蕎麦アップ

金砂郷蕎麦愛好会のもりそば500円。

これも食べた瞬間、「うはっ」と声をあげてしまった。二食連続、堅めの麺だったのだった。そういえば、さっきのお店も金砂郷だったっけ。金砂郷の蕎麦は堅めというのが定番なのだろうか?

堅めの麺が、うまい。先ほどの蕎麦よりも一層蕎麦の香りが高いような気がする。うん、おいしいです。つゆもおいしく、バランスがとれた蕎麦。最後の最後でいい蕎麦に出会えて良かった。・・・寒いけど。

テント裏でくつろぐ職人さん

15時前に退却。

テントの裏では、大きなプロパンガスボンベの脇でくつろぐ職人さん達の姿がちらほら。激戦、お疲れさまでした。

テント裏を眺めていたら、水回りの配管が臨時で施されていて、感心させられた。屋外蕎麦屋を営業しようとしたら、大量の水を使うことができる給排水機能が必須。なかなか大がかりな作業だったに違いない。・・・ところで、水道代って誰が払ってるんだろうね。

15時に金砂郷を出れば、三郷JCTの混雑もほとんどなく17時過ぎには都心に戻ってくることができた。遠いようで近いのが金砂郷。今回も大満足でした。ごちそうさま。

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