足立さらしなの里(01)

2017年08月06日
【店舗数:411】【そば食:679】
東京都足立区古千谷本町

もり蕎麦とミニうなぎ丼セット

足立さらしなの里

ずるずる。

蕎麦をすする音ではない。

蟻地獄にはまっていくような感覚に、今、陥っている。

目の前にある建物は、「足立さらしなの里」。初めて訪れる土地、初めて訪れるお店だ。

東京都足立区の最果て。埼玉県との県境からほど近い場所に、このお店はある。もともと僕にとっては縁もゆかりもない場所だ。新交通システム「日暮里・舎人ライナー」の終着駅、見沼代親水公園が最寄りとなる。

もともと、この界隈に足を踏み込むようになったのは、ここから数キロも離れている「珈琲屋OB」に通うようになったからだ。

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東武スカイツリーライン竹の塚駅から徒歩またはバス。遠い。

遠いついでに、ということでこの界隈の大盛りとか激辛の店がないものか、と探してみたら、舎人公園に近いところに「四川菜苑」という麻婆豆腐が辛くてうまい店を発見した。ただし、珈琲屋OBからも竹の塚駅からも、かなり遠い。歩いて行くのは限界に近いくらいの距離だ。

「ついでのついでに」ということで、周囲のお店を探していたら、見つかったのがこの「さらしなの里」だった。

芋づる式に、どんどん自宅から、竹の塚駅から遠ざかっていく。さすがにやりすぎだ、と思った。

しかし放置できないのがそのネーミング。「さらしなの里」というのは、僕が本格的に蕎麦屋でほっと一息つく楽しさを教えてくれた店だ。

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おそらく偶然の一致ではないと思う。このお店から暖簾分けを受けたお店は何店舗かあったと記憶している。そのうちの一軒、板橋区の前野町にある「さらし奈乃里(後日、蕎庵と改名)」は僕が毎週末昼酒を飲んでいた場所だ。

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そんなわけで、この店名には思い入れがとてもある。見つけてしまったからには、ほっとけない。なんとしてでも訪問しなくては。

・・・で、ようやくたどり着いたお店は、何やら「法事のあとの会食などにぜひご活用ください!」といった感じの建物だった。蕎麦屋独特の凛、とした雰囲気はあまり感じられない。正直、若干不安になった。

でも、足立の地で営業していくのであれば、澄ました顔をして聖人君子のような立ち居振る舞いではダメなのだろう。そんなに生やさしいものではない。

とはいえ、店頭の看板に「そば・ろばた焼き」と書かれていて、かなり怯んだ。居酒屋的な利用を意識したお店らしい。

お品書き

中に入ると、たたき席とお座敷席がある。キャパシティは結構大きく、数十名は入る。

天井からはアサヒビールのちょうちんがいくつもぶら下がり、まるでビアガーデンのようだ。たたき席を囲むように、L字型に厨房がある蕎麦屋にしては珍しい作り。

メニューを見る。

もともと、築地のさらしなの里自体が「キリリとした通ごのみの趣味蕎麦の世界」というより若干ふんわりした蕎麦屋だけど、ここもそうだった。でも、さすが手打ち蕎麦屋だけあって、もりそば、田舎そば、さらしなそばと3種類の蕎麦を打ち分けている。季節の変わりそばは売っていないようだけど、3種類もあれば大満足だ。

大盛りは170円増し。

酒肴系のお品書き

おおう、「おつまみ各種」のメニューは、完全に居酒屋モード全開だった。「まぐろ刺」やら、「コーンサラダ」やらヒレカツやら、その他焼き鳥があれこれ。昼からこれらのメニューを注文できるんだとすると、こいつァ地元の人たちの格好の社交場だ。

ただし、訪れた土曜日13時半頃は、酔客は誰もいなかった。昔の僕のように、板わさを肴に一献、といった一人酒も皆無。おとなしいものだ。

さすがの僕も、これだけガッツリ居酒屋モードだったら、むしろお酒を飲むのを遠慮したかもしれない。「蕎麦屋だから!蕎麦前だから!」という言い訳をしながらちびりと酒を飲む、という背徳感がここにはまったくない。開放的に、まさに居酒屋だからだ。

面白いことに、ここには「板わさ」「天ぷら盛り合わせ」「だし巻き卵」「蕎麦味噌」といった蕎麦屋の定番つまみは全く登場していない。ひょっとしたら見落としで、別のページにあったのかもしれないけど、ちょっと驚いた。

ランチ

初めての訪問なので、もちろんベーシックなもりそばにしよう。奇をてらって焼き鳥なんて頼むなよ?

ここまでやってきたのは、このあと四川菜苑で激辛陳麻婆豆腐を食べようと思っているからだ。蕎麦はあくまでも前菜の位置づけ。おなかいっぱいになるつもりは、ない。

と、思っていたら、店員さんから今日のサービスランチについて教えてもらった。もりそばにミニうな丼がついて、980円なのだという。

うお、しまった。丼なんていらないのに、ついつられて「じゃあ、ランチで」とお願いしてしまった。こういうとき、「うなぎ」様の御威光はすごいな。うっかり頼んでしまうだけのインパクトがある。

で、到着したのがこちら。あー、久しぶりだよこういう蕎麦と対面するのって。

蕎麦アップ

最近、がっつく系の蕎麦を中心に食べてきたので、久々の清楚な蕎麦。久しぶりだな、身がしゃんと引き締まる気分。

「居酒屋的な蕎麦屋だし、味なんて期待できないね」・・・昔だったら、そう思っただろう。しかし、2010年代に入ると、蕎麦屋は多様化したし保存技術の進化などで味はかなり向上した。蕎麦屋の店構えや業態で味の優劣はつけづらくなってきている。少なくとも、「うまい蕎麦屋を見つけるための宝探し感覚」というのは随分と減った。今回もそう。キリリと引き締まった蕎麦屋ではないにしても、蕎麦そのものには色気がある。おや、これはいいぞ、と思った。

食べてみて納得。良いです、これ。ああ、そうそう、「さらしなの里」系列の味ならではだ!と膝を叩く味。つゆもしかり。つゆを一口飲んだ瞬間、猛烈に懐かしい気持ちになった。この味、久しぶりでもフラッシュバックする。

つまり、うまいってことだよ。

猛烈にうまい、驚愕するほどうまい、というわけではないけど、「いいねえ!」というくらいの旨さはある。いやお前、さっきから「うまい」ばっかり言ってるけど、どううまいのかちゃんと形容しろよ。下手くそ。

こういう蕎麦を食べたのは久しぶりすぎて、コメントに窮するのでパス。

そのかわり、お会計のときに思わず店員さんに

「築地さらしなの里で修行をされたのですか?」

と聞いてみた。普段僕は、店員さんとはコミュニケーションを取らないのに。確認せずにはおれなかったのだ。

すると、その通りで、20年ちょっと前に暖簾分けをしたのだという。僕が通っていた板橋区のさらし奈乃里にも一度行ったことがあります、とのことだった。嬉しいものだね、僕を育んでくれたお店の流派と、こういう形で出会えるなんて。

「おいしかったです、またきます!」

と言い残し、名刺をちょうだいしてお店をあとにした。

さて・・・もちろん再訪したいのだけど、どうしようか。もういっそのこと、レンタカーでも借りてこのお店に行くことにしようか?遠いんだよなぁ。

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