登場人物(4名)
おかでん:スキーよりも岩原リベンジマッチに気が向いている人。
ヲガタ先生:今日はあっちのスキー場、明日はこっちのスキー場。
ミズカミ:今回は愛車プジョーを駆って参戦。
うっちゃん:濃い世界の大御所。なんと今回広島より参戦という神出鬼没男。
2001年03月03日(土) 1日目
[行程]
04時頃東京出発→07時八方尾根着、雪見酒宴会→08時滑降開始→11:30昼食
→12時滑降再開→14:00滑降終了→15時八方温泉→16:30手打ち蕎麦美郷→
17時宿(泊)
おかでん「八方尾根、とうちゃーく」
ミズカミ「ん・・・着いたか。なんかさっき、おかでん運転しながら『やばい』とか『怖い』とか叫んでなかったか?」
おかでん「ん?ああ、大丈夫だってば、このプジョー、僅かにアクセル踏んだだけですぐに100km/hくらいは余裕でスピード上がるから、ビビってただけ」
ヲガタ「おい、まさか150km/hくらい出していたんじゃないだろうな?」
おかでん「あっ、違う違う、出してないってば。新幹線じゃないんだから」
ミズカミ「さて。まだリフトが動くまで1時間あるねえ」
おかでん「うふふ。元より想定の上よ。ならば、早速雪見酒じゃ雪見酒ぇぇぇ」
ヲガタ「あっ、やっぱり本当におでんを持ってきたのか」
おかでん「当たり前よ、こういう事に関しては、僕は冗談が通じないよ。本当に持ち込んじゃうんだから」
ミズカミ「岩原に続いて今回も朝から盛大だねえ・・・」
ヲガタ「何なんだ、このシチュエーションは。濃すぎるぞ」
おかでん「いい構図だねえ。こりゃ最高だ!なんせ、雪の上でおでんを煮込んでいるだけでも奇妙なのに、その向こうには颯爽と広がるスキーゲレンデだもんな」
ヲガタ「スキーしに来たんじゃなかったんか」
おかでん「まあ落ち着け、まだリフトは動いてないんだから。ほらほらよそ見していると練り物落とすぞ。ちゃんと入れてくれよ、せっかくスキー場にまで持ってきたんだから」
ヲガタ「おかでん用意周到すぎだよ・・・練り物、何種類持ち込んでるんだよ。食べきれるか?こんなに。まだ朝だって事忘れてないか?」
おかでん「うーん。いわれてみれば確かに多い気もするが。まあいい、おでんで食べきれない練り物類は全部お酒のつまみで今晩飲み食いすればいい。おお我ながらナイスアイディア、夜のことまで用意周到ではないか」
ミズカミ「単なる買いすぎの言い訳では?」
ヲガタ「煮えるまで少々お待ちください」
おかでん「ああもう待てない、とりあえずビールで乾杯をしようではないか」
ミズカミ「きっちりとビール缶が雪に突き刺してあるんだな。冷やす為か?」
ヲガタ「ほっといても冷たいとは思うんだけどネ」
おかでん「風情って奴ですよ風情!それ、プルタブオープン」ぷしゅ。
おかでん「とりあえず、お疲れさまっ。乾杯!」
ミズカミ「まだスキー全然滑っていないから、お疲れでもなんでもないんだけどねぇ」
ヲガタ「じゃーん。完成」
おかでん・ミズカミ「おおおおっ」
ヲガタ「ば、馬鹿すぎる。なんという馬鹿馬鹿しいシチュエーションなんだスキー場の片隅でオデンとは」
一同呆れるやら感動するやらしている時に、駐車場の管理人がナニゴトが始まるのかとやってきた。
管理人「あらっ、君たちいいのぉ?君たちだけでそんなイイことしちゃってぇ」
おかでん「えへへ、いいでしょ。苦労して持ってきたんですよ雪見酒!」
管理人「滑る前にあんまり飲み過ぎないようにね~」
われわれ「はーい」
管理人は去っていった。
ヲガタ「僕ぁてっきり敷地内で何をやってるんだと怒られるのかと思った」
おかでん「君たちだけイイことしちゃって、って言い方がヘンだったから、その言葉の裏に何かあるのかと勘ぐってしまったけど・・・何もなかったな。最悪ビールの1本くらいは上納せんといかんかと覚悟してたんだけど」
ミズカミ「通り過ぎる人、みんなこっち見ていくぞ」
おかでん「羨ましいのさ、きっと。ならば、見せつけてやろう。ぬおー、おでんがうまーい」
ミズカミ「やめなさい、みっともない」
ヲガタ「暖かいおでんが体に染み渡りますな。でもビールで体が冷える」
おかでん「さすがに朝から熱燗ってのは支障が出るだろ、こう見えてもちゃんと計算してんのよ」
ヲガタ「その割にはワインを買ってきてるってのはなぜ?」
おかでん「うぐっ」
おかでん「鍋物のシメはやっぱりうどん」
ミズカミ「マジで?マジで入れんの?」
おかでん「いつ食べんのよ、今食べなかったら」
どぶん。うどん玉3つ投入
ミズカミ「ああー」
おかでん「大丈夫だって、うどんは別腹だから」
ヲガタ「誰の別腹だよ、初めて聞いたぞ」
結局、気が付いたら汁一滴も残さずに全部食べきってしまっていた。
ミズカミ「案外食べられるモンだねえ」
おかでん「だから言ったろ、うどんは別腹って」
おでん食べた、お酒も飲んだ。ならば残るはスキーなのだ。
ミズカミ「やっとそれらしくなった」
おかでん「何をいう。おでんお酒セットでスキーではないか」
ミズカミ「何か違う気がするけど・・・」
おかでん「見よこの青い空。清々しい気持ち。描くシュプール。こんなに楽しいのはなぜ?ああ、皆まで言うな、俺が言う。それはだな、滑る前のおでんがあったからなのだよキミィ!」
ミズカミ「準備運動みたいなものだったのか、アレは」
ヲガタ「わはははっ、いいですなあやっぱスキーは」
おかでん「お願いだから笑いながら滑るのはやめてくれ、端から見て気持ち悪いから」
八方尾根スキー場の一番上にある「第一ケルン」。登山者のための道しるべであり、ここからさらに唐松岳に向かって登っていくと、第二、第三とケルンが続く。
おかでん「記念撮影しとくか」
ミズカミ「スキー場の敷地外になるんだな、ケルンは。ロープが張ってある」
おかでん「・・・ひょっとして入ってはいかんのか?」
ヲガタ「かまへんかまへん。写真撮るだけだし」
おかでん「長野オリンピックで問題になった、『国立公園』って奴ではなかろうな。えい、ジャンプしてケルンに取り付けッ」
ミズカミ「おーいあぶないってば」
ヲガタ「ん?おかでんなにやっとん」
おかでん「あっ、コラこっち振り向いてはいかん、向こう向いててくれ」
ヲガタ「なんで?」
おかでん「ゲレンデで下界を見下ろし黄昏れるスキーヤーというタイトルだから」
ミズカミ「ああ、やらせ写真か」
おかでん「やらせって言うなァ!ゲイジュツって言え!」
何度かケルン近辺で滑っているうちに、5名くらいの集団がケルン近くに座り込んで宴会を開いているの若者に遭遇した。
おかでん「あっ、こんなところで宴会やってるではないか!」
ヲガタ「しかもガスコンロ持ち込んで鍋作ってるぞ、おい!」
ミズカミ「凄いなあ、負けたか?うちら」
おかでん「ま、負けた・・・」
彼らを発見したのは11時頃だったが、その後14時を過ぎても宴会は続けられていた。
ミズカミ「あいつら何しに来たんだ?滑りにきたんじゃないのか?」
おかでん「まあまあ、これだけの絶景をツマミに酒を飲めればそれはそれで充分な目的になるんだろうな」
ヲガタ「おかでん羨ましい?」
おかでん「うん、めっちゃ羨ましい」
11時30分、ちょっとだけ早めの昼食。
ミズカミ「まだおでんが胃袋に残ってるって感じ」
ヲガタ「だよなあ、あんまり腹が減ってないんだよな」
おかでん「まあそりゃそうだよな、あれだけ食べたんだから。やっぱうどんは余計だったか」
ヲガタ「腹が減ってないからさくっと麺類とも思ったんだけど、朝うどん食べたしとりあえずカレーってことで、ここは」
おかでん「僕も悩んだ結果カレーにしました」
ヲガタ「あっ、ちょっとセンセイなんなんですかその右側の液体は!」
おかでん「健康麦芽飲料。しかも生。ケルンでの宴会連中を目の当たりにして、こちらも負けてられんという事だ」
ミズカミ「でもカレーとビールって段階で既に負け負けって感じがするんスけど」
おかでん「うーん、それは言わない約束。朝のおでんと足して二で割って、五分と五分で引き分けって事にしておいて」
ヲガタ「奴らと勝負してどーすんのよ」
ごきゅーっ。
おかでん「すいませんねえ、僕だけビール飲ませてもらっちゃって」
ヲガタ「どうよ、山の上で宴会やってる奴らに勝てそう?」
おかでん「うーん、気分的には負けてるんだけど、物理的には勝てる方法が一つだけある」
ヲガタ「それは何だ?」
おかでん「もういっぱいビールを買ってくればいいって事だ」
がたがた。おもむろに席を立ち、自販機でビール350mlを追加購入。
おかでん「うん、これで自分としては勝ち負けを超越したな」
ヲガタ「酔っぱらったからだ、とかいうなよ」
14時過ぎ、ちと早いがスキーは終了となった。これから温泉に入って、その後本日のお宿に移動せにゃならんからだ。
おかでん「いやー、今日のイチバンはケルンそばで宴会やっていた若者達だなあ。まんまともって行かれた、って感じだったよ」
ヲガタ「まさかあそこで宴会とはねえ」
おかでん「で、二番はケルン近くの崖から滑落する人続出、って事かな」
ミズカミ「3人くらいか?俺らが見ただけでも」
おかでん「かっこわるかったよな、救助隊に前後ロープで引っ張られながら崖から登ってきてるんだから。ケルンの近くだからみんなのさらし者になっていたし」
ヲガタ「ロープで引きずり揚げられている時点で井戸に落ちた家畜っぽくてかっこ悪かったな」
おかでん「おかげで、スキー場との境界線であるロープを跨ぐな、って警備の人が厳しく指導するようになってたな。早い時間に記念撮影していてよかった」
ミズカミ「しかし気づかないもんかなあ、あそこに崖がありゃずり落ちるってことくらい」
おかでん「まさに崖っぷち人生って奴だ」
白馬八方温泉「小日向の湯」。ここら辺では唯一天然温泉を使っているらしい。白馬近辺に温泉は多いが、大抵は循環湯で塩素投入されたもの。
場所は八方から白馬岳登山口である「猿倉」に向かう途中。車が無いと行くのは無理。午後4時に閉まるので注意が必要。
おかでん「・・・と、観光ガイドっぽい事も言っておこう」
ヲガタ「なーにが観光ガイドだ、全部中途半端な事しか書いてないのに」
おかでん「当たり前だ、このコーナーは観光ガイドではないんだから」
ヲガタ「うそくせーッ」
おかでん「はーい、撮影しますよー。セクシーショットよろしく」
ミズカミ「よろしく、ったってどーすりゃいいのよ」
おかでん「とりあえず、乳が見えそうで見えないところまで中腰になってみ」
ミズカミ「11PMじゃないんだから」
ヲガタ「大体、お湯が濁ってないから水中がまるみえだっつーの」
おかでん「オウ、セクシィカモーン」
ヲガタ「勝手な事言うな、フルチンでカメラ構えている奴に言われたかぁない」
おかでん「あっ、すっかり己の格好を忘れていた」
ヲガタ「いい湯ですなあ」
ミズカミ「そうですなあ」
おかでん「ナニしに長野まで来たのか、ますますワケがわからんですなあ」
一同「そうですなあ」
おかでん「スキー・・・でしたっけ?」
ヲガタ「えーっと、おでん・・・だっけ」
おかでん「あー、そうでしたっけ」
温泉の後、おかでんのたっての希望で美麻にあるそば屋「美郷」に立ち寄った。【詳細は別途蕎麦ば喰い人種行動観察にて記述】
ミズカミ「ああー、こりゃおいしいなあ」
ヲガタ「予想外だなあ。こんな田舎だし、カレーライスがメニューに並んでる店なのに」
おかでん「皿もプラスチックだし。結局こういうのを食べると、江戸前のキアイが入ったそば屋って一体何なの?って気になってくるよな」
そば屋の隣が雑貨屋だったので、ジュースやらを買いだしする事にした。
ミズカミが店の奥で叫んだ。
ミズカミ「見てみろ、これッ」
ヲガタ「ぬおっ、なんじゃこりゃあ。何十年前のモノだ一体?」
おかでん「恐らく15年は経過していると思われ。大体、今時こんなヘアバンドしているやつ見たことあるかぁ?」
一同「・・・・。」
ミズカミ「ということはアレか、これは10年以上このお店で売られ続けていて、いまだに完売していないという事か」
おかでん「イヤ待て。それにしてはこのおねーちゃん、色褪せがそれほど酷くないぞ」
ヲガタ「ということは、これは入荷してそれほど時間が経っていない・・・?」
おかでん「あり得ることだ。恐ろしい事だが」
ミズカミ「そういえばさっき、賞味期限切れの牛乳が冷蔵庫で売られていたぞ。この店は時間という概念が無いのかも」
一同「・・・。」
ここに一冊の本がある。「とほ」という同人誌のような冊子だ。これは、「旅人宿」と呼ばれる宿を紹介するガイドブックだという。今回の旅行をコーディネートしたヲガタ氏が持参したもので、今晩の宿もこの本からセレクトしたらしい。
おかでん「見るからに怪しい本なんだけど、大丈夫なのか?」
ヲガタ「さあ、わからん」
おかでん「おいおい。で、この旅人宿って何よ?初めて聞くぞ」
ヲガタ「ユースホステルの個人経営版みたいな感じ、なのかな敢えて言えば」
おかでん「ますますわからんぞ」
おかでん「で、今日泊まるところがこれか。『ポッポのお宿』・・・おーい、本当に大丈夫なのか?」
ヲガタ「宿の名前からして怪しいだろ」
おかでん「怪しさ満点だよ。しかも、『北海道を旅する人の民宿 旅人のねぐら』って書いてあるぞ。おい、僕ぁ北海道1度しか行ったことないんですけど」
ヲガタ「はっはっは、気にするこたぁないって」
おかでん「おい、『お酒を少し飲みながら・・・北海道や旅の話をしにきませんか・・・』って書いてあるぞ。『すいません北海道ほとんど知りません』なんて言ったらぶっ飛ばされるんじゃないだろうな」
ヲガタ「この旅人宿っていうのがそもそも北海道に多くあるらしいのよ、北海道を旅する奴らって多いじゃない?バイクとか自転車とか。そういうのをターゲットにしてるわけだから、自然とこういう書き方になるけど大丈夫、宿泊に資格なんていらないんだから」
おかでん「それにしても濃ゆい本だな、この冊子は!たった1頁の紹介記事だけでもツッコんだりツッコまれたりするところがもりだくさんだもんな!」
ミズカミ「おい、あの左側にある・・・あれじゃないか?目的地は」
ヲガタ「ぬおっ。ぼ、ボロいぞこれは!?」
ミズカミ「違った。たんなる物置だった」
おかでん「おいおい」
到着した「ポッポのお宿」は、そのリーズナブルな宿泊料金(1泊2食+暖房費付きで5,000円)にもかかわらずえらくちゃんとした外見(失礼!)でやや拍子抜けだった。
おかでん「えー、普通の、ごく普通の民宿じゃん」
ヲガタ「だから言ったでしょ、心配しなくていいって」
おかでん「いや心配はしていなかったけど、怖いモノ見たさってのがあったのよ。あまりに普通で拍子抜けー」
ヲガタ「じゃどっちだたらよかったのよ。ボロくて汚い宿と予想に反してきれいな宿と」
おかでん「そりゃ・・・ええ、文句は無いです」
・・・
部屋は2段ベッド×2で4人が宿泊できる男女別相部屋。この日宿泊したお客は僕ら3名と女性1名だったので、部屋を独占する事ができた。
ミズカミ「二段ベッドに泊まるなんて久しぶりだぞ」
おかでん「しかもシーツは自分で敷く。なんか青少年自然の家みたいな施設に宿泊したって感じだな」
・・・
食事からそのまま店の主人と酒を飲みながら談話。さすがにこんな宿を経営する人だけあってオモロいキャラで、奥さんがいるにもかかわらず「僕は独身だ」と言い張り、台所にいる女性は「おく」という名前の人で、普段は「おくさん」とさん付けで読んでいるに過ぎないなんて事を真面目な顔で主張していた。
また、5月くらいには何週間か宿を閉めて、しばらく北海道で「とほ宿」のオーナー連中と逢う予定だとうれしそうに言っていた。会社勤めの我々からするとその自由奔放さに始終圧倒されっぱなしで、主人の話をあっけにとられて聞いている始末。
10時過ぎにお開きになったけど、あまりの濃い空間に一同ぐったり。
おかでん「凄かったなあ。われわれの世界と微妙に違う世界がここに」
ミズカミ「そうか?おかでん結構ノリノリだったじゃん。一番気があっているように見えたぜ?」
おかでん「いやー、ついていくのがやっとだったよ、あまりに濃くて」
ヲガタ「なんかおかでんの笑いが乾いてたもんな。よくつきあってたよ」
どっと疲れが出て、23時前に就寝。
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