カニのヨコバイ、アリの門渡り【立山・剱岳】

登場人物(2名)
おかでん:いい山小屋にも泊まってみたいが、地獄のような山小屋にもちょっと惹かれる悪食山ヤ。
おかでん兄:山がらみのイベントになると、大抵引っ張り出されてしまう人。

2001年09月22日(土) 1日目

[行程]
06:52大宮(あさま501号)→08:04長野08:20(川中島バス)→10:20扇沢10:30(関電トロリー)→10:46黒部湖11:50(ケーブルカー)→11:55黒部平12:20(ロープウェー)→12:25大観峰13:00(トロリーバス)→13:10室堂(昼食)→14:00立山室堂山荘→14:45雷鳥沢ヒュッテ(泊)

長野新幹線の中で宴会

さて、今回は立山・剣岳紀行なんである。9月の連休は台風シーズンもそろそろ一段落しつつある時期であり、寒すぎず暑すぎず、かといって紅葉シーズンにはまだちょっと早くて人もそれほど多くなく、と何かと好条件がそろっている。

え?紅葉を見逃すとは何てもったいない、だって?

確かにそうかもしれないけど、紅葉シーズンに北アルプスの涸沢に行ってみ?畳一畳に3人寝ました、という例の山小屋残酷物語が延々と繰り広げられる地獄絵巻になっちまうんだから。

今回の山行も、最初兄貴から「奥穂高に行きたい」という要望を受けての企画だった。しかし、兄貴に「本当に山小屋は激混みだけどいいのか」と、webに掲載されていた各種タレコミ情報を見せてやったら、さすがにおそれをなしてしまって「やっぱり別の場所にしよう・・・」と方向転換。急きょ場所の再検討となってしまった。

結局、出発一日前になって決まったのが立山と剱岳の二座に登ろう、という話。立山だったら若干は空いているのではないか、という希望的観測からだ。なに、根拠など何もない。っていうか、空いているだとか混んでいるだとか調べるだけの時間が無かったんだからしゃあない。とりあえず、当日朝までばたばたしてしまった。 もちろん、宿の手配なんぞしとらん。

行程としては、初日に室堂まで行って泊。2日目に立山登頂、そのまま北上して剱岳直下の剣山荘に泊。3日目に剱岳登頂、室堂まで引き返して東京に戻る、と。結構しんどいコースではあるが、きっと充実感に満ちあふれた山行になるだろう、きっと。恐らく。多分。思うに。

始発の長野新幹線で、長野に向かう。今回、立山には富山側からではなく、黒部ダム側からの侵入を試みる事にした。黒部といえば、信濃大町が玄関口になり、一般的には「特急あずさ」や夜行「急行アルプス」による突入なのだが、カネさえあれば新幹線-バスの乗り継ぎが早くて楽ちん。

扇沢

長野駅で、信濃大町経由扇沢行きバスに乗り換え。1時間半で扇沢に到着(乗車賃:2,300円)。ここから、いよいよ「立山黒部アルペンルート」の始まりだ。

立山黒部アルペンルートは、その険峻な地形と、自然保護のために頻繁に乗り物を乗り継がなければならない仕組みになっている。ここから立山室堂に行こうとすれば、

トロリーバス→ケーブルカー→ロープウェー→トロリーバス

とまあ、ざっと4種類の乗り物にのらなければならない事になる。乗り物マニア、垂涎!一粒で4回おいしい!

チケット窓口

しかし、おっと待ったお客さん。 もちろんお代はタダってぇわけにはいかねぇ。きっちり耳そろえて払ってもらいますぜ。

扇沢~室堂 片道5,460円(往復8,500円)

た、たけぇ!さすがに乗り物乗り換えまくるだけある!まあ、3000mクラスの山の中をトンネルで走り抜けたり、ロープウェーでよじ登ったりするから仕方がないのかもしれないが・・・。

ちなみに、扇沢~室堂~立山~富山、と立山黒部アルペンルート完全制覇すると、合計7種類の乗り物にのれます。お値段は恐らく1万円近くなると思われる。リッチマンだけが楽しめる、雲上の楽園ってわけですな、室堂ってのは。

雷鳥さんから注意事項

扇沢駅にあった看板。

雷鳥の親子が描かれていて、上には「私たちからのお願いです。ごみは持ち帰ってくださいね」と記されている。

はーい。

ところで、今回の写真はなぜにこんなに汚く、しかもパノラマサイズになっているのかというと、先日酔っぱらった勢いでデジカメの入ったビジネス鞄をぶんぶん振り回していて、故障させてしまったからなんですな。1カ月間の故障修理対応中。ってなわけで、よりによってナイス な写真が撮影できることが約束されている場所に行くにもかかわらず、「写ルンです」で対応しなくちゃいけない事に。ちっ、いつぞやの白馬岳登山を思い出すぜ。良い風景に出会う時、それ即ちデジカメが故障している時。

時々兄貴に写真を撮影してもらっていたが、できあがった写真を見ると・・・あーあ、画面のあちこちに指が写りこんでしまってやんの。初歩的ミスをしやがって・・・。つくづくトホホな感じだ。

ちなみに、今回の旅行の写真を現像に出して、CD-Rに焼いてもらったら、合計で7,000円以上もかかった。デジカメだったらこれがタダだったのに。ますますトホホ。

扇沢駅ではポンチョが売られている

扇沢の駅は無駄に広くて、お土産屋などあったりするのだが、こんな「中継地点」でお土産を買う人がどれだけいるのだろう、と端から見ていて不思議だ。

売り場の中で一番目立つところに、ポンチョが売られていた。防寒用なのだろう。こういうのが売られているということは、黒部湖方面は結構寒いという事か。

われわれは山登りの装備を持参しているので問題ないが、下界気分で半袖でやってきたうっかりさん向けなんだろう。しかし、ここで売るよりも、黒部ダムに着いてから売った方が正解のような気がする。

トロリーバスは武骨

黒部ダム行きの関西電力トロリーバス。日本でトロリーバスが走っているのはここだけなので貴重ですぞ。「トロリーバスって何?」って人に説明しておくと、要するに「路面電車+バス」を二で割ったようなものだ。ますますわかりにくい?ええと、動力源はガソリンエンジンではなくて電気で、その電気はパンタグラフで供給されているバスって言えば正解だろう。これから黒部ダムまで延々と16分近くトンネルの中を走るので、電気自動車でないとトンネルが排気ガスで煙ってしまう為の対策。

扇沢駅のバス乗り場は、まるでスキー場のゴンドラ乗り場のようなつくりになっていて、そこには5台のバスが停車していた。灰色なので、何か機動隊のバスのようだ。 御免なさい僕が悪かったです。

出発直後に、トンネルの中へ。トンネルは、バス1台がやっと通れるだけの幅に造られていた。もちろんこのバス専用の道路なので、対向車と正面衝突するということはない。

全行程のちょうど中間は、上り線と下り線がすれ違いできるようになっていた。そこで、先に着いた黒部ダム行きの5台が一列に並んで待機。扇沢行きのバスをやり過ごしてから再度動き始めた。ケーブルカーと同じ運行方式だ。

駆動音は路面電車と全く同じ「うぃーん」という音なので、電気自動車という感覚はほとんどない。ああ、路面電車だな、と。しかし、路面のデコボコがしっかりと伝わってくるので、そこが路面電車と明らかに違うところ。なかなか違和感たっぷりな乗り物だった。

黒部ダム湖畔

黒部ダム到着。気温は確かに低くなったが、さすがにまだ上着を羽織らないと寒いというレベルではない。

見上げると、そこには立山の姿が。あしたはあの山頂に立つ事になる・・・はずだ。

この立山の山腹を、これからロープウェーやらケーブルカーやらでよじ登っていくはずなのだが、それらしきものは全く見あたらない。さすが、自然の景観を守るように配慮されているだけある。

黒部ダムを上から見下ろす

黒部ダムといったら、お約束のアングルでの写真を一枚。ほら、この写真は誰でもどこかで見たことあるでしょう。

ダムの真ん中から水が溢れているのは、別にダムが決壊しかかっているわけではない。「ダムをかっちょよく見せる為」の観光目的での放水らしい。

黒部湖

黒部湖は、神秘的な青色をしていた。

そのはるか先には、赤牛岳が。なかなか印象的な山で、「いつか登ってみたいものだ」と思わずにはいられない。しかし、あそこにたどり着くまでが一苦労二苦労かかるので、一体いつになったら行ける事やら。

なお、この黒部湖を遊覧する観光船「ガルベ」は、「日本最高標位を航行する遊覧船」という謳い文句が付けられていた。なるほど、標高1500mの遊覧船は他には無いな。箱根 の芦ノ湖で、せいぜい900mくらいのはず。

しかし、「だから、何?」と言ってしまえばそれまでという事については、そっとしておいてあげてください。

雷鳥の風見鶏

展望台にあった風見鶏。

にわとりかと思って見上げてみたら、雷鳥だった。さすが、ご当地。

土産物屋で、「雷鳥の着ぐるみを着たキティちゃん」が売られていないかと確認してみたが、さすがにそんなふざけたものは存在しなかった。ちっ、残念。

あと、「雷鳥肉のソテー」とか「若雷鳥の唐揚げ」がレストランのメニューに載っていないかとも思ったのだが・・・ま、天然記念物ですからね、売ってるわけがない。大人しく、カレーライスやうどん、そばが売られておりました。

黒部のわき水を飲む

わき水があると、喉が渇いていないにもかかわらず必ず飲もうとする自分はウレシイ奴でしょうか?

あと、わき水や小川を発見すると、必ず手を突っ込んでみて「うむ、冷たい!」、「いまいちだな、ぬるい」と「にわか水温評論家」になる兄貴も同じくウレシイ奴でしょうか?

黒部の太陽を彷彿とさせるマネキン

黒部の秘境で、今もなおトンネルを掘り続ける人たちがいるのであった・・・

というワケではなく、黒部ダムができるまでこんなに苦労したんですよぉ記念館みたいなのがあって、そこにあったマネキンを撮影してみた次第。「黒部の太陽」や「高熱隧道」そのまんまの世界。

ケーブルカー改札前

ダムをとことこと歩くこと15分。いやあ、迫力ありましたな、ダムの上は。高所恐怖症の人は、絶対にダム上の下流側歩道を歩いてはイケナイ。あまりの迫力に即身成仏するから。険峻な谷底、異様なまでにデカいダムのコンクリートアーチ、そしてそこから吹き出る大量の放水。

しかも、ダムの壁面のあちこちにメンテナンス用の通路がへばりついているんだけど、その狭い通路上で身を乗り出して作業しているダム作業員の姿を見て、ますます恐怖。 思わず失禁。

ダムを渡りきったところは、またもや防空壕のようなトンネルがあった。ここからは、立山の山中をケーブルカーで登ることになる。わざわざ地中にケーブルカーを走らせているのは、景観を維持するためのもの。なんだか、地中にこのような交通機関があるのを見ると、SFの世界を連想させる。

ケーブルカー改札までの間、マイクを持った駅員のおっちゃんがあれこれと立山の解説をしてくれた。これがなかなか面白く、さすが観光客相手の商売だなと感心。曰く、

「皆さん、アルペンルートの交通費が高いと思ったでしょ?でもあれね、しょうがないんですよ、毎年春の除雪で8000万円かかるんですから。少しでも皆様から回収しておかないと、冬が越せません」

「称名の滝っていうのがありましてね、350mと日本一の落差がある滝でして・・・普段でしたら、ソーメンが流れているようでとてもきれいなんですが、ちょっと上流で雨がふったらこれがきしめんになってしまうんですねえ。で、酷いときは讃岐うどんになってしまうんです」。

ひととおり、名調子をぶちかまし終わったところで

「さて、こういう素晴らしい立山の風景をまとめた、『立山黒部物語』という本がありましてね、これが一冊千円ということで。今係のものが皆様のお近くに参りますので、買って頂ける方はぜひお願いします」

と急にセールストーク。ふと振り返ると、両手に件の『立山黒部物語』を持った駅員さんがニコヤカに接近中。これには並んでいた観光客全員が笑ってしまった。そうか、いままでの熱弁は全てここに行き着くのか、と。

馬鹿負けしたというか、感心したというか、結構購入している人は多かった。なかなかよいビジネスになった模様。でも、実際カラー写真豊富な本で、1000円ということで良心的な値段だったと思う。僕らも、山にこれから登るのでなければ買っていたかもしれない。

ザックは別料金が取られる

さっきから「交通費高い、高い」と言っているが、ザックのような重くてごつい荷物を持ち込んでいる人はさらに別途、手荷物料金がかかるのであった。

扇沢-黒部湖(関西電力):210円

黒部湖-室堂(立山黒部貫交):400円

要注意ですぞ。

黒部湖駅

何か、炭坑の中にいるような感じだ。地中を走るケーブルカーにお目にかかるのは、青森のJR竜飛海底駅くらいじゃないかな。

普通、ケーブルカーは風光明媚なところにあるものだ。だから、動いているときは外の景色を楽しむと相場は決まっているのだが・・・ありゃ、窓の外は真っ暗。地下鉄と何ら変わりない。

しかし、乗客はそのシチュエーションが珍しく、楽しくてしょうがないので、なーんも見えない窓の外を一生懸命眺めていた。怪しい光景だった。

黒部平から立山を見上げる

地下ケーブル0.8kmを5分。到着したのは黒部平と呼ばれる場所。いきなり室堂には到着してくれない。じらしの天才、マニアック&エンドレスの熟女殺しと敢えて呼ばせてもらおうか。

ここは、その名の通り平地になっていて、ちょっとした公園になっていた。ここで、ロープウェーに乗り換える事になるのだが、接続まで時間がややあったので外をお散歩。

見上げるとそこには立山。大人しく、左側の峠(一の越、という)を越えていけばいいのに、そこは土木技術のメンツをかけて、突き進むは山をぶち抜くトンネルときたもんだ。漢だねぇ。

巨大カブトムシがお出迎え

黒部平を目的地とする観光客など、一人も居ない。あくまでもここは中継地点だ。だから、さっさとケーブルカーとロープウェーを接続すりゃいいのに・・・と思うのだが、それはそれ、大人の事情って奴だろう。振り向くと、そこには大きな土産物屋とレストランが。うーむ。

ツアー旅行で、頻繁に「トイレ休憩ですー」とかいって街道筋の大型土産物屋にバスを停車するってぇのと一緒だな。

さて、行者にんにくとか雷鳥ぬいぐるみとかが売られている中、土産物屋の一角にて売られていた奇妙な商品。題して、「ネイチャーコレクション」だそうな。カブトムシだのクワガタだの昆虫にチェーンがつけられていて、飾りとしてどっかにぶら下げてみては如何、という代物だ。何しろ、「本物を使っています」というだけあってリアルすぎて、ちょっと気持ち悪い。誰が買うんだろう、これは。

笑ってしまったのが、上の看板で、立山をバックに颯爽と進むロープウェー(一体どこに向かってるんだ?立山は後ろだぞ)、さらにその手前にカブトムシという妙な俯瞰図。いや、素晴らしい。

ロープウェーに乗り換え

ようやくロープウェー。25分の接続時間だったんだけど、「ひょっとしたら定員オーバーになるかもしれない」という恐怖を抱いた観光客が早くから列を作ろうとして、駅員から「並ばないでください!並ばなくても乗ることはできます!」と何度も何度も指摘されていた。

ここで乗りそびれると次は20分後。

大観峰

さて、ロープウェー1.7km7分の旅終了。いや、接続時間よりも移動時間の方が短いってぇのはどうも損した気分になるですな。しかも、ここのロープウェーは張り切っちゃって時速27kmもの快足で動くもんだから。

ちなみに、27km/hのロープウェーがすれ違った時は、相対的に54km/hで通過して見えるわけで、結構な迫力でしたぞ。車ならたいしたことのないスピードだけど、ロープウェー だとすこぶる早い。

さて、到着したのは大観峰というところ。バルカン砲ではない。ここで、40分の待ち合わせ。乗客の一部がイライラしだした。おかでんも、そのときの手記を確認すると「次のバスは13時。殺意を感じる」と書かれていた。

大観峰から黒部湖を見下ろす

まあ、イライラする気分は絶景を眺めて穏やかに、ってわけで駅舎上にある展望台に。なるほど、大観峰という名前がついているだけあって、ちょうど真っ正面に針ノ木岳が見える。見下ろすと、あれだけデカかった黒部湖がほら、こんなに小さくなってしまってる。

やはりここも土産物屋が充実。駅員の制服を着た人が商品を売っているので、何か変な感じだ。ここには「うまいものや」という店があり、おやきやら五平餅をその場であぶって売っていた。建物中に臭いが充満し、こっちも暇ときたもんだから食べようかどうしようか悩む悩む。結局手を出さなかったけど、ごへいもち300円、生ビール500円には相当ぐらぐら来た。

その傍らで、ついにキレたお客さんが駅員とバトルしていた。黒部平と全く同じシチュエーションなんだが、あそこで我慢していた感情が大観峰でついに爆発、って事か。確かに怒りたくなるのもわかる。

13時10分、ようやく室堂に到着。ここにたどり着くまで、自宅から乗り継いだ交通機関の数8つ。所要時間8時間。いやあ、長い長い。

室堂は霧に包まれていた。黒部側とは全然違う。トンネルをくぐっていきなり富山側にぽーんと放りだされた格好なので、その気象状況の違いに驚いてしまった。しかも、やや寒い。

さっきまでは、それほど数が多くなかった人だが室堂のターミナルには人、人、人。富山側から観光バスで押し寄せてきた下界人共がガハハハと下品な笑い声をだしながらドタドタと歩いていた。・・・うーん、表現がきつくなってしまった。大観峰までが「秘境」だったとすると、ここ室堂は「俗世間」という感じだ。

「けっ」とか言いながら、とりあえず昼食を確保することにした。しかし、いくらここが観光地だからといって、標高2000m近い山の中であることには変わりない。レストランや土産物屋が軒を連ねて・・・という事は決して無く、近場で食事ができるところはとりあえずこの室堂ターミナルしかなさそうだ。

って事でターミナルビル3階にあった食堂に。値段を見て「嗚呼」とうめき声を出してしまったが、我慢我慢。そうだった、ここは「観光地物価」と共に「山小屋物価」が適用される場所だった。

兄貴は、「ここでぜいたくしても始まらない、どっちにせよ大して美味くないんだから」とメニューとの格闘を放棄し、カレーライスを選択。ちーん、1350円也。

・・・・えっ、せ、1,350円!?

山頂物価のお昼ご飯を満喫

騙されていると分かっていても、「いかにも」な料理に必ず手を出すおかでんは、ここでまんまと「山菜きのこ丼」をセレクト。

あのー、室堂って殆ど森林限界に近い場所にあるので、「地のもの」としての山菜は採れないんですけど・・・。

でも、「山に来た」という事でつい頼んでしまうあたり、レストランからすると手放しで大歓迎なカモなのかもしれない。

お値段は、1,600円。・・・うわあ!

室堂を歩く

外は一面の霧。全てを包み込むような、乳白色・・・静寂が、あたりを包む。

のはずなんだけどなあ、ターミナル周辺はあまりの観光客の多さに辟易。しかし、ちょっと歩けばすぐに観光客の群れは少なくなる。なーに、室堂に来たって、特に「○○の滝」だの「△△寺」みたいな見所があるわけでもなし。あるのは絶景のみ。今日みたいにガスってて何も見えないんだったら、ターミナル近辺でたむろするしかやることはない。

高度2000mの山の上とは思えない、やけに整備されまくった石畳の道路をてくてくと歩く。まだ14時にもなっていないんで、宿にチェックインするのはちと早い。

立山室堂

向かった先は、立山室堂。これが、日本最古の山小屋って事になる。立山講の信者さんたちがここで夜を過ごし、そして翌朝導師に導かれて立山山頂に詣でたという。

今は、さすがに文化財として保存されているらしく、宿泊施設としては機能していない。とはいっても、明治の頃の山小屋が今だに残っているわけもなく、今ここに建っているのは何度目かの立て替えがなされたものだ。その証拠に、扉の一部がサッシになっていた。

この建物が当時の面影を残すものだとすれば、建築機材も何もない中、よくもまあこんな山の中にこれだけ立派なものを建立できたものだと感心させられる。何しろ、室堂周辺は建材になる木が一本もない。宗教の力、って奴ですか?

立山室堂山荘入り口

「元祖」立山室堂の横には、現在進行形の山小屋・立山室堂山荘があった。先ほどの小屋が「ご隠居」だとすると、この小屋は「跡継ぎ」って感じか。

明るく開放的な窓側には食堂があり、中では軽食を取りながら生ビールをジョッキでぐいっと飲んでいる人たちがいた。思わず足が止まる。まてまて、今日はここが宿泊地ではないぞ。

立山室堂山荘外観

室堂山荘横。

窓の配置から見ても、個室がたくさん並んでいる事が分かる。山小屋、というジャンルに位置される宿泊施設だけど、民宿に限りなく近い。

まあ、公共交通機関の駅(室堂ターミナル)から徒歩15分程度なら、当然か。

しかも、「山小屋の横に車が横付けされている」し。

立山室堂山荘振り返り

室堂山荘を振り返ったところ。ガスが、やや晴れてきた。

山の写真は、天気が変わりやすいので「うーん、まだイマイチ!」というシチュエーションでもとりあえず写真を撮っておかないと、後で後悔する。今よりも眺めが良くなるだろうとたかをくくって写真を撮らないでおくと、結局一枚も写真を撮れないまま日が暮れる事になることだってある。

ってことで、雲がまだたくさん残ってるけど、一枚。

こういうとき、やり直しがきくデジカメは精神的に非常によろしい。写ルンですだと、カリカリとフィルムを巻くときに「ああ、いらん写真を撮ってしまったかもしれない」と軽く後悔する事多し。

室堂はアップダウンが激しい

室堂は、平らなように見えて実は結構起伏の激しい地形にある。正面100m先に行こうとしたら、地形に従ってぐるりと大回り300m、とか池が邪魔して真っ直ぐ進めません、とか。

しかし、その複雑さが美しい風景を作っていると思えば、これしきの事・・・

と、自分を納得させようと必死。

立山が見えてきた

やあ、ガスが晴れてきたぞ。ようやく、立山の全貌が見えてきた。真っ正面のピークが、大汝山。標高3,015m。

やっぱり、さっきの写真は無駄だったか。ちっ。

山の上が白いのは、雪が積もっているからではなく、岩肌が露出しているから。

まだちょっと紅葉の季節には早かったようだ。植物が青々としている。しかし、静寂を求める登山である以上、「見頃ではない」ってのはしょうがないわけで。むむむ。

雷鳥沢ヒュッテ

本日の宿泊地として予定していた「雷鳥荘」に行ってみたら、「今日は予約がいっぱいで泊まれません」と断られてしまった。山小屋のつもりでいたので、予約無しで全く油断しまくっていた。そうか、ここはあくまでも「観光地・室堂」なんだった。山小屋だからって、来たお客を片端から収容して、すし詰め状態にはしないのか。

さあ困った、途方にくれて・・・くれようとする間もなく、雷鳥荘の主人は「この先10分くらいいったところに『雷鳥沢ヒュッテ』があって、そこは予約なしで宿泊できますよ、そちらに行けば大丈夫です」と教えてくれた。むう、ならば行ってみるしかあるまい。

今回の室堂泊における宿の選定条件は、「温泉がある」という事、これに尽きた。室堂周辺には山小屋が何軒かあるが、そのうち数軒は温泉風呂付きなんであった。殆ど同じ値段であれば、もちろん温泉があるに越したことはない。その温泉付き山小屋のうち、見てくれの良かった雷鳥荘を第一目標にしていたのだが・・・。って事で、同じく温泉はあるけど「見てくれはいまいち」の雷鳥沢ヒュッテに有無を言わさずに移動。

兄貴 「おい、あの建物の事か?」

おかでん 「それしかあり得ないけど・・・えらく変な建物だな?半分山丘に埋もれているような作りになってる!?」

兄貴 「ああ、看板が出てる。雷鳥沢 ュッテ・・・」

おかでん 「ちょっと待て、建物の一部が壊れているぞ?」

兄貴 「ひょっとして廃墟か?」

おかでん 「いや、待て。予約無しでも宿泊できますって書いてある。営業はやってるみたいだぞ?」

何ともはや、不安な作りなんである。正面に回ってみて、また笑ってしまった。

おかでん 「こっちには雷鳥 ヒ ッテ、って書いてある。何だよ、どっちの看板も一部が欠けてるじゃないか」

兄貴 「両方補いあって、一つの看板にすればいいのに・・・」

何でも、冬になるとこの建物はすっぽり雪に埋もれてしまうらしく、春はショベルカーで掘り起こさないといけないらしい。故に、建物の痛みが激しいとのこと。建物内のどっかに、そういう説明書きがあった。

でも、わざわざ建物の半分が丘に埋もれたような作りにしたってのにも問題があると思うぞ。写真では見切れてしまっているが、すぐ右側は丘になっている。唐突に建物がすぱっと終わってしまっているのだ。不思議なデザインだ。

雷鳥沢ヒュッテ館内

もちろんちゃんと営業しているに決まっているわけで、中はきっちりとした宿泊施設だ。失礼な事を口走ってしまって申し訳ない。これから予約なしでお世話になろうっていうのに、なんという不埒な輩なんだと激しく後悔するふりをしつつ、チェックイン。

一泊二食付き8,400円。ごく一般的な北アルプスの山小屋値段だ。

宿の中は、既にストーブがたかれていた。いくら9月とはいえ、標高2350mの宿ということでストーブが恋しい季節。

建物の中は、外見の奇妙さに引きずられる形で、やや奇妙な作りにはなっていたがごく普通だった。山屋が多い場所柄を配慮して、部屋の入口脇には靴を置くためのすのこが敷かれていた。

一部屋に算段ベッドが4つ並ぶ

室内はこんな感じ。3段ベッド×4個、合計一部屋で12人が宿泊できる仕組みだ。「山小屋」というイメージで泊まりにきていたので、一人一人の睡眠スペースがきっちりと確保されているベッドは感激だ。

まさか、「混んできましたので、一つのベッドにお二方、相席になりますがご了承願いまーす」なんて言ってくることはあるまい。もし、そんな悪夢が現実になったら、僕ぁ床で寝る。

しかし、「予約無しで泊まる事ができる」のに、そんな悠長な事でいいんだろうか?もし、キャパシティオーバーの宿泊客が来たらどうするんだろう?と思って、建物内をうろうろしてみたら、一部屋数十畳の大部屋があった。恐らく、最終手段としてここに詰め込んでいくんだろう。ハイシーズンに来なくて良かった。

破壊されたトイレ

トイレ。

なにやらカーテン代わりの布きれが掛けられているので、何事かと思って近づいてみると、開け放しになっているドアにこんな張り紙がしてあった。

「酔っぱらいがドアを壊しました。扉は開閉できませんが使えます」

いや、誰も使わないと思う。

地獄谷

まだ午後3時。夕食まで相当時間がある。だったら、少しでも山頂に近いところまで侵攻できればよかったのだが・・・温泉のある山小屋を選んだら、必然的に室堂の近場になっちまうんだよぉ。たった数十分、翌日の行程を短縮するために温泉を逃すのはもったいないんだよぉ。

小屋から出てしばらく歩くと、地獄谷と呼ばれる谷がある。ここが、室堂周辺の温泉山小屋の源泉地だ。標高2,150m、日本で最高地点にある温泉湧出ということになる。

地獄か?と問われると、温泉がわき出ているということでむしろ天国なんだが、立山講が盛んなりし昔は、この光景をもって「地獄」と見なしたのだろう。

地獄谷はまさに地獄

あっちこっちから煙がもうもうと吹き出ている。

かといって、商売っ気を出して、温泉玉子を売るおばちゃんが居るわけでもなく、ただただ、ひっそりとお湯が沸いていた。

あちこちに、温泉宿用の引水ホースが敷かれているのが、観光地であることを思い出させる。

この世の果ての光景

地獄谷。岩の隙間から・・・とかケチ臭いことをいわず、平らなところのあちこちから無差別攻撃で煙を噴き上げていた。豪快なり。

しかし、長時間ここにいると体にはよくないらしい。さすが地獄谷だ。

すっかり青空の室堂平

やー、すっかり晴れてしまいました。

雷鳥沢キャンプ場から、立山を仰ぎ見たところ。このキャンプ場、登山者しか使わない立地条件にもかかわらず、オートキャンプで使うようなデカいテントを持ち込んでいる人が何組かいた。やはり、交通の便がいいから、少々荷物が重くても快適さを求めるのだろうか。

雷鳥沢ヒュッテには大浴場がある

ヒュッテに戻り、温泉を堪能することにした。

浴槽に入ってびっくり。・・・ここ、山小屋だっだよな?

もう、どう見たって旅館の風呂なんである。見よ、この浴槽のでかさ。いくらキャパシティ200名以上の宿だからって、こんな山の中で快適にお風呂に入れるとは思っていなかった。しかも、ちゃんとボディソープとシャンプーまで用意されている。

「すごい、すごい」とついついはしゃぎながらお風呂に入ってしまった。窓の向こうには、雄大な立山。こりゃたまりませんなあ。

雷鳥沢ヒュッテの売店

自分における「山小屋」の定義がぐらぐら揺れている中、風呂上がりに1階ロビー横売店に行ってみると、そこには「北陸づくり生」の表示が。

おお、生ビールも置いてあるのか!これはもう飲むしかあるまい。

ちーん。

おでん500円、北陸づくり600円。お値段も非常に良心的だ。いわゆる「山小屋価格」よりは安め。

売店の前には、すっかりビール飲んでくつろいでしまっているオッチャンが多数。

山の上での生ビールは格別

くくくっ。ぷはーっ。

山の上で飲むビールは格別。これ定説。

風呂上がりのビール。これもまたタマランものがあります。

二つのシチュエーションが一つになったら?いやもう、言葉にならないシアワセ感に満ちあふれるんですな。全ての人類に幸あれ!なんて、世界規模で平和を祈ってしまうくらい、シアワセでございました。

あまりにシアワセだったんで、兄貴にこっそり内緒でビールもういっぱいお代わりしてしまいました。うぐぅ。いやだって、隣のオッチャンが柿の種くれたんだもん。飲むものがなくなっちゃって。

暮れゆく立山

暮れゆく立山。小さく、キャンプ場の色とりどりなテントが見える。

兄貴が、「夕飯準備をしているテント泊の奴らを視察しにいこう」と言い出したので、出歯亀しにいく。

行ってみたが、しょせん山屋の夕食。レトルトを暖めて食べている人、ラーメンをゆでている人・・・オートキャンプみたいに、ダッチオーブンでなにやら煮込んでいるといった光景は見あたらなかった。

非常に正しい山のテント泊の風景を見て、二人とも満足してヒュッテに帰還。そろそろ僕らの夕食の時間だ。

雷鳥沢ヒュッテの夕ご飯

夕食でごんす。皿洗いが容易なように、弁当箱みたいな形をしたお皿に料理を盛るというのがいかにも山小屋。

本日のメインディッシュはトンカツだった。山で油もの・・・というのもちょっと不思議な感じがするけど、後始末用の油凝固剤さえあれば、どこでも油ものの料理はできるんだろう。

変わっていたのが、おみそ汁の代わりにクリームシチューが出てきたこと。濃厚ではないので、表現するなら「クリームシチュー汁」と言うべき料理なんだけど、一風変わっていて非常に良かった。もちろん、ご飯ともどもお代わり自由。

トンカツでご飯、シチューでご飯。うむ、ついついお代わりしてしまう。

ここでもビールを飲む

ご飯もうまいが、ビールも相変わらず美味いんである。夕食時には、既に「北陸づくり生ビール」は完売御礼となっていて、缶ビールで我慢。でも、

500ml→500円
350ml→400円

というのは山小屋物価を考えると驚異的な安さだ。いくら室堂ターミナルから近い(といっても徒歩1時間はかかる)といえ、この値段は何度見ても驚く。

しかし、山に登らない人や酒をたしなまない人からすると「えっ、ビール500mlごときに500円?しかも、安い安いと嬉々として買ってる?ばっかじゃないの?」って言われそうな予感。

「へべれけ紀行第一話」で出てきた、黒部名産のぐるぐる渦巻きかまぼこと再会。うれしくなって、かまぼこでビールをぷはぁ。

三段ベッドで眠る

消灯時間は22時。消灯時間があるってところでさりげなく「普通の宿じゃないよ、山小屋だよ」と宣言しているのだが、そうはいっても22時というのは山小屋時間でいえば深夜だ。やっぱり、普通のお宿と山小屋との折衷って感じがうする。

ちなみに、山小屋の消灯時間は20時~21時というのが多い。

消灯が遅い分、24時間自由に入ることができる風呂だって何度も楽しめる。出たり入ったりを繰り返しながら、まったりとした夜を楽しんだ。

21時半、消灯を待たずして就寝。お休みなさい。

明日は、いよいよ立山登山だ。