2003年09月06日(土) 3日目
朝5時。そろそろ空が明るくなってきた。
昨日の夜明けがイマイチだったので、今日こそは高度2700mからの朝日さんオハヨウゴザイマスをしなければならない。長時間の滞在を覚悟して、服を着込んでから外にでる。
今日は、一面の雲海が広がっている。松本あたりは、切れ目無く低い雲で覆われている。まるで大海のようだ。しかし、そのせいで日の出が遅くなってしまったようで、予定時刻になってもまだ太陽の姿が見えてこない。
また、そういう時に限って山小屋から「お食事の準備ができましたので、食堂に・・・」なんてアナウンスが聞こえてきた。おい、5時30分から食事の予定なのに、まだ5時20分だぞ。山小屋スタッフ、頑張りすぎたなさては。
宿泊客の大半がご来光を見ようとして外に出てきていて、このアナウンスが聞こえているにもかかわらず誰も動こうとはしなかった。最初は、「朝食は先着順なんでしょ?5時半の回にあぶれたら、6時の回に回されるらしいから早くいかなくちゃ」なんて会話をしていた人も、今や日の出目前となったこの状況下においては朝食なんて言ってられない。
日の出を待ち続け、赤く染まる東の空を眺めるのも愉快なのだが、西に視線を転じて徐々に漆黒から赤く染まっていく槍ヶ岳、穂高岳の山並みを見るのも楽しい。
おかげで、きょろきょろと前を見たり、後ろを見たり・・・ということになってしまった。日の出を待っている間の時間の流れはゆっくりなのだが、実際は案外せわしない。
時々、山肌がキラッと光る事がある。どうやら、他の山小屋に宿泊している人たちもご来光を待ちわびていて、写真を撮っているようだ。フラッシュの光が、はるか離れたこちらでも確認できた。北穂高小屋、槍ヶ岳山荘・・・ああなるほど、あそこが山小屋なのだな、と一発でわかる。
しかし、こういう朝日を撮るのにフラッシュを焚くと、きれいに写らないと思うんですけど・・・。みなさん、それに気づかないでどんどんフラッシュを焚きまくっていた。ご苦労様です。
おっと、他人への同乗をしている間に、朝日が顔をだしてきたぞ。完膚無きまでに素敵な朝日!
隣でこの光景を見ながら深々とうなずいているオッサンが、こう解説していた。
「ご来光ってのはね、雲一つない状態じゃ面白くないわけ。ああいう風に、ちょっと雲がある方が風情があるんだよ」
なるほど。
焼岳、乗鞍岳方面も日が差し込んで来だした。
北アルプス北から南まで、ずずずいと夜明けだ。
槍ヶ岳も赤く染まる。
相変わらず、槍ヶ岳山荘の場所と、北穂高小屋、穂高岳山荘の場所からフラッシュが光るのが見える。まだやってるのか。
それにしても、ここ蝶ヶ岳の恐るべき展望には呆れるばかりだ。北アルプスのおいしいところを全部並べちゃいました、という感じで隅々まで見ることができる。今、こうしてブッたまげているが、本来であればこの光景は昨日、稜線をてくてく歩きながら見ていたはず、すでに見飽きていたはずの光景。ちっとばかし悔しいが、でもこうやって百点満点の光景を見られただけでも良しとしなくちゃ。
何しろ、蝶ヶ岳ヒュッテの真っ正面には、涸沢がどーんと構えている。3つ並ぶ山の右から、北穂高岳、涸沢岳、奥穂高岳。その3つの山の懐にあるカールが、涸沢だ。
見ている人たちのほぼ全員が、涸沢の光景を眺めて「ほー」とため息をついていた。「あんなに涸沢って急斜面だったか?」「もっとのっぺりとした場所だったと思うけどなあ」と、わいわい議論している。確かに、ここから見ると、絶壁の山の中腹にしか見えない。
瞑想の丘にたむろする、蝶ヶ岳ヒュッテの宿泊客。ちなみに手前右の赤いウェアを着ている女の子はヒュッテの従業員なのだが、何でこんなロリータな感じの子が山小屋のバイトやっとるんですか、と不思議になる。燕山荘でも不思議だったのだが、「えっ、アナタ山登りが趣味なわけないでしょ?」という女の子がバイトでいる。どうやってこの地まで登ってきたのですか、というそもそものところから質問したいくらいだ。まさか、ヘリコプターで荷物と一緒に輸送されたって訳じゃないだろう。
こういう女の子を見るにつけ、「人さらい」という商売は今でも本当にあるのでは・・・という気がしてきた。
・・・と、いうことを以前大キレット越えの時にも書いたな。毎回同じ事で感心している大馬鹿たれだな、自分。少しは学習しなさい。
奥に、常念岳が見える。嗚呼、なるほど。表銀座縦走ルートってこうなっていたのか、と今頃になって知る。
朝日をバックに。
何となくカッコイイ仕上がりになったが、何をしたい写真なのだかさっぱりわからなかったりもする。
もう少し二人の距離が近いと、「固く結ばれた男の友情」なんてタイトルにもできるかもしれないが、微妙に離れているし。
「またやってしまった~終電で終着駅まで行ってしまい、始発を待つ間に昇ってきた太陽を見て激しく後悔する男たち」
というタイトルが一番ぴったりかもしれない。
朝日を満喫したあと、ゆっくりと食堂に向かった。
山小屋の食堂はどこでもそうなのだが、ここも一般的な山小屋のルールを踏襲しましたぁ、とばかりに狭い狭い。肩と肩をぶつけ合いながら食事なんて当たり前、この蝶ヶ岳ヒュッテの場合は一人頭のスペースが、写真のご飯どんぶり+扇形のお皿分しかない。すぐ右側に、隣のコダマ青年のご飯どんぶりが見えることから、その狭さはよくわかるだろう。
だから、体をちょっと左前にズラして食事をしなければならない。端から見ると、まるでダークダックスのようなコーラスグループだ。
朝食は、やっぱりお前は朝食の王様やなぁ、と見つめてしまった鮭だった。あと、玉子焼き他。扇形皿の上部に4種類の料理が盛りつけられているのが見えるが、そのうち二つが同じきんぴらゴボウだった。なぜ二カ所に分ける?見栄えの問題だろうか。
ご飯は、昨晩同様芯があるギリギリ一歩手前の炊き具合。これくらいがちょうど食べやすく、ついついおかわりをしてしまった。今日はあと数時間、下山するだけなのに。
出発前、すっかり夜が明けきった山々をバックに写真を一枚撮っておいた。
#0017の大キレット越えで通った道の全貌だ。
右側の尖った山が槍ヶ岳。そこから、軽く下って日本最高所の峠、飛騨乗越。そこから登り直して大食岳、中岳、南岳となだらかに進んだところで、いっきに300mの下り。ここが大キレットになる。そこから登り直し、登り切ったところが北穂高岳。下って、登って涸沢岳、そこを下ったところが穂高岳山荘。そして、画面左端の見切れているところが奥穂高岳となっている。
さて、3日目の行程開始。
まずは、蝶ヶ岳ヒュッテ裏手にある蝶ヶ岳本峰に昇る。
徒歩数分で到着。なんだか拍子抜けだが、とりあえず記念撮影と、お約束の握手を交わす。
さあ、あとは高度を下げていくだけだ。
蝶ヶ岳から、ヒュッテの方を振り返ったところ。
さらば、表銀座。
とはいっても、イマイチ「お別れ」って感じがしないんだよなあ。だって、昨日はあれだけの霧と風だったので、あんなところを歩いてきたって気がしない。
宇宙人に拉致されて、気が付いたら記憶が消された上にえらく遠いところに放置されていた・・・っていうのはこういう感じなのでしょうか。え?喩えが変デスカ私?
ハイマツの中を抜けていく。
さすがに今日みたいにすかっと晴れていると、雷鳥は出てこないようだ。
「らいちょ~う、らいちょ~う、出ておいでぇ~」
と声をかけてみたが、出てこなかった。当たり前だ。
目の前に見える丘から、一気に高度を下げていくことになる。あー、もったいない・・・。せっかくこんなに絶景なのに・・・。
降下開始。
「晴れている時は既に下山だもんなー」
と愚痴を言いながら下っていく。はるか下に、梓川が見える。あの標高まで一気に降りないといけない。結構傾斜がきつい。
槍ヶ岳も、これで見納め。
最後に、名残惜しくて写真を一枚撮っておいた。針葉樹林の隙間から見える槍ヶ岳もまた良い。
妖精の池という名前の池の脇を通り過ぎていく。
「で?妖精は居たか?」
「さあ?見かけなかったけど」
「じゃ、駄目じゃん。妖精いないのに妖精の池って名乗っちゃ!」
絶景とおさらばした悔しさを、妖精の池に当たり散らす。無駄な事だが。
稜線沿いにぐいぐいと下っていく。これは相当疲れる。下山でも相当参るくらいだから、登りはそれ以上にヘロヘロになるはずだ。
長塀山到着。あと徳沢まで3.8キロ・・・。
「ああ、かったりぃ。ああ、足いてぇ」
昨日濡れた靴とソックスが、まだ全然乾いていなかった。そのため、歩くたびにスレて、既に足の中は靴擦れが起きていたのだった。一歩歩くたびに、皮膚が悲鳴を上げる。これは拷問だ。
「ちょ、ちょっと待って、ギブ!」と言いたくなるような足の痛みをこらえながら、足をひきずりつつ下る。傾斜がキツいため、ひたすらジグザグで道は下っていく。
よっぽど、足の痛みに耐えかねて長野県警の救難ヘリでも呼ぼうかと思った。
「靴擦れの痛みに耐えかねて救難要請」
って、末代までの恥として語り継がれそうだが。
も、もう駄目だぁ、足の皮がめくれすぎて 体全体が裏返ってしまうよ!と弱音を吐きそうになったとき、急に平らな場所に出た。徳沢だ。
救難ヘリが到着するよりも先に、自力脱出成功。ああ、よかった。おかでん家がご近所から後ろ指さされなくて済む、これで。
登山口はちょうど徳沢のキャンプ場に面していて、まだテントを片づけたり遅めの食事を食べている人たちのところにでっくわした。そうか、まだそんな時間だったのか。
同じく靴擦れをおこしていたコダマ青年と、登山口で記念撮影。
「いやー、無事で何よりだったな」
「昨日はホントどうなるかと思ったもんなぁ。無事に降りてこれて良かった」
「昨日なんて、風で体浮いたぜ?それが今日、これだけ快晴だもんな、山は本当にこれだからわからない。でも、良かったよ結果的に絶景が見られたわけだし」
早くも総括を始める二人だった。
って、おい!うっかりしていた。
徳沢キャンプ場の片隅にあった、標識。
「上高地 6.4KM」
あー、そうだった。徳沢に到着すればそれでゴールってわけじゃないんだった。まだ、梓川沿いに2時間ほどかけて歩かなくちゃいけないんだった。ここから下界に降りるバスなんて存在しませんよー。
「ぐはぁっ。ちょっと考えてみれば当たり前の事なんだけど、うっかりしていたぁっ。俺のビールが!」
もうビールをお飲みになられるんですかアナタは。
「はー、川沿いの平行移動はめんどいのぉ」
と愚痴を言いながら、ひたすら上高地への道を進む。
明神岳を見上げながら、てくてく歩いていくのだが、何しろひたすら平坦な道なので全く面白みのない道だ。ここまでバス道作ればいいのに、とちょっとだけ思うのだが、そんなことをやったらこの辺りまで観光客が溢れてしまうので、それは避けたほうがいいのだろう。
梓川は、明神岳に抱きかかえられるように曲がっていく。川沿いの道も、川に従って曲がっていく。
大天井岳方面も、これで見納め。
「ところでおかでん」
「なんだ?コダマ青年」
「・・・ひょっとして、もう水分断ちってはじまってるの?」
「おう、もちろんだ。長塀山以来、かれこれ1時間以上は。上高地到着頃にはちょうどよい熟成具合じゃないかと思われ」
「はは、やっぱりそうきたか」
「コダマ青年もぜひ水断ちしたまえ、たまらんぞ」
「いやぁ、俺はいいわぁ」
交通機関がなくたって、観光客はぐいぐいと上高地の奥まで足を運んでいる。徳沢から明神までの間でもちらほらとその姿を確認することができた。格好が山ヤと明らかに違うので、遠目でも判定がつきやすい。徳沢まで2時間かけてやってきて、一体何を見るというのだろうか。
道が明神を過ぎ、上高地へのルートに入ったところで一気に観光客が増えてきた。胸に、タビックスだのなんだのと、団体ツアーのバッチがつけられている。
普通、山ヤ同士は登山道で出会うと必ずあいさつをする。しかし、これは山独特の風習であり、いつでも誰でもそのようなあいさつをするわけではない。さて、この道ですれ違う一般観光客とあいさつをするべきかどうか・・・?
結論として、観光客にはあいさつをしないことにした。あまりに数が多くて、あいさつしてられないというのもあるし、山文化を知らない人からすると、いきなりあいさつされたら面食らうからだ。だから、すれ違う際に相手のザック、靴をはじめとする身なりを確認して、「あ、この人山登りにきたな」とわかったら「こんにちはー」とあいさつするという「選別」をするようになった。
人によってあいさつしたり、しなかったりするのは「あいさつ道」の観点から非常にヨロシクないことなのかもしれない。でも、すれ違う人全員にあいさつってそりゃ無理だよ師匠!ヘタな繁華街よりも人が多いんだから師範!
ま、あれですな。乗り合いバスなんかで、同じ会社のバスがすれ違う時に運転手同士が「ヨッ」と手を挙げてあいさつするようなもんだ。運転手さん、道行く全ての車にあいさつしているわけじゃ、ないでしょ?
上高地河童橋、午前9時10分到着。コダマ青年の「早歩き」に引きずられるような形で、オーバーペースで歩いたのでやや披露気味。
朝9時だというのに、上高地はもう人だらけ。よくもまあこんなところまで人がやってくるものだ・・・。
しかも、上高地といえば河童橋周辺しかうろちょろできる観光スポットがないので、橋周辺は人だらけだ。橋が陥没するんじゃないか、おい。
記念撮影をした後、バスターミナルに向かう。河童橋方面に向かう観光客をよけながら進む。
「多分、俺らからすれば『上高地ナメてんじゃねぇよ観光客ども』って感じなんだけど、観光客からすれば『こ汚い格好で歩いているんじゃねぇよ山ヤども』って思ってるんだろうな」
「そうだな、絶対そう思っているはずだぞ」
「悲しきすれ違いだ・・・」
本当は、上高地温泉ホテルにて一風呂浴びたかった。しかし、ここの外来入浴は朝9時までと昼以降なので、入ることができなかった。「・・・確か、新島々駅の向かいにある宿が、外来入浴をやっていたような気がするような、しないような・・・」というおかでんの曖昧な記憶を信じて、そのまま上高地を離脱することにした。
上高地バスターミナル。正面に焼岳が沖縄名物「さーたーあんだぎー」のような格好をしてふんぞり返っていた。
そのやや下に視線をおろすと・・・あっ!
「生ビール」
非常に力強い、毛筆フォントで「生ビール」。どうだ、どうだと胸を張っているかのようだ。
「おいコダマ青年大変だ、生ビールってのぼりが立っているぞ」
「そうだな」
「焼岳という今も活動中の活火山のすぐ下に、生ビールという文字。これは、マグマのようにたぎる気持ちがもう抑えられないぞ生ビール!という解釈でよろしいか」
「よろしいのではないかと」
「コダマ青年~、もっと喜べよ。生ビールだぞ、生ビール」
「わかったわかった」
「ちぇっ」
生ビールもいいが、まずは帰りの足を確保しないといけない。
上高地から新島々までのバス+新島々から松本までの電車のチケットは、通しで買うと割引がある。2,400円なり。今時珍しい硬券だ。
これにくわえて、乗車整理券をもらっておかなければならないのが上高地流だ。観光シーズンはバス待ちで1時間、2時間待ちがざらな場所柄、「僕は○時の便に乗りまーす」と事前に宣言をしておかないと イケナイ、というわけだ。
ちょうど10時の便があったので、それに乗ることにした。おや、乗車時間まであと30分もないぞ。ビール、急がないと。 まあちょうどいい、「ビールの泡が消えない程度」の時間でぐいぐいと飲めるってぇもんだ。
バスターミナル2階の村営食堂に入る。のぼりのお誘いのとおり、きっちりと「生ビール」を注文。
結構大変な山旅だったのだ、ここは朝とはいえ、生ビールを痛飲する正当な資格があるはずだ。食券売り場のおにーさんに力強く「生ビール」と宣言した。
ここで、「生ビール!」と叫んではいけない。がっついているようでみっともない。いかに心が高ぶっていようとも、「生ビール。」と、句点で終わるよう心がけないといけない。間違っても、語尾上げで「生ビールぅ?」とやってはいけない。今までの旅 、全てを否定するようなものだ。
注文を済ませると、写真のような券を渡された。上高地食堂の飲食が全て10%引きだそうだ。「え・・・?ということは、次追加注文する時から使えるってことですか?」「ええ、そうです」
好 機 到 来 !
机の下で足をジタバタさせながらビールの到着を待っていたら、さあやってきたぞ生ビール。
じゃ、頂きましょうか。
「お疲れさまでした」
「お疲れー」
あの2日目の風と霧と雨を乗り越えた者でないとわからない、シンプルだけど実感のこもった「お疲れ」という言葉に共感しながら、ジョッキをカチンとならす。
ぐびり。
「のぉぉぉぉーん」
「くはぁ」
ああ、いいなあ、山登りは。
・・・山がいいのか、ビールがいいのかどっちかよくわからんが。
あまりにおいしかったので、つまみとして頼んだ山菜と野沢菜が到着するまえに、1杯目を空けてしまった。
「オイ待て、1杯目ってことは」
「ああ、もういっぱいもらってくるよ、だってつまみが来る前だもん。このあと、山菜がやってきてどうやって食べろというのよ、喉が渇いてしまうでしょ?」
「あ、やっぱり」
なにしろこちらは10%割引券があるのだ、これを活用しない手はあるまい。やあやあ、2杯目も相変わらずおいしそうなビールだぞ。それ、ぐびり。
「・・・とかやっているうちに、そろそろバスが出発しちゃうんですけど」
「あっ、いけない。早く飲まないと!」
新島々駅の向かい側にある、「妙鉱」という温泉宿。
日帰り入浴できると聞いていたのだが、外観を見る限りそのような記述が一切見当たらない。
「おかしいな、普通日帰り入浴ができる場合はそういう看板、出しているよな」
「われわれみたいな登山客も多いだろうしな、本当にやっているのだろうか?」
非常に不安になりながら中に入ってみたら、ちゃんとお風呂に入らせてくれた。500円なり。なんだ、大丈夫じゃん。もっと大々的に宣伝すれば、駅真っ正面という便利さも相まって利用客は増えると思うのだが・・・汚い山ヤには来て貰いたくないのだろうか?
お昼前ということもあり、貸切状態でお風呂を満喫。しかし、こっちはソックスが血でべっとりするくらいの靴擦れなので、「ギャー」という叫び声が風呂場にこだました。
ちなみにこの妙鉱、源泉温度は12.5度ということで鉱泉に位置づけられる。温泉の成分表やら効能書きが書いてある保健所認定の資料を読んでみたが、「この温泉固有の適応症」「この温泉固有の禁忌症」のいずれもが空欄になっていたのがしみじみ面白かった。
要するに、ご家庭の風呂と比べて、特にみるべき効能はないよっていうことだ。
まあ、ここで一風呂浴びる人は、効能を期待しているわけじゃないからそれはそれでOKなのだろう。
13時ちょっと前のあずさ号にのって、東京に戻る。
お昼ご飯は、駅弁になった。松本駅は、駅のホームに駅弁屋が臨時売り場を設けて駅弁を売っている。
コダマ青年は地鶏めし、おかでんは釜めしをセレクト。
こちら、地鶏めし。生野菜がついているのがポイント高いのではないでしょうか。
そして、こちらがおかでんセレクトの釜めし。
「いやね、釜飯っていったらもう圧倒的に横川の峠の釜飯なわけじゃない。で、なぜあれがあんなに有名なのか、っていうのを今日検証しようと思って。単に歴史と知名度があるから、いまだに絶大なる影響力をもっているだけなのか?それとも、味も他の釜飯を圧倒しているのか?って」
カパと蓋をあけてみると、なるほど横川の釜飯とはひと味違ったトッピングだ。だいだいの変わりに、サクランボが入っているのが憎い。何で甘いものを必ず入れるんだろう・・・日本人は、基本的に「酢豚にパイナップル」系は嫌いな民族なのに。
味は、けっこうおいしかったと思う。ただ、好みとしては横川の方が好きだ。
今回の旅を振り返りながら、またもやビールをぐびり。さすがに今回のビールはちょっとおいしさ、感動という点では劣ったかも知れない。でも、ああ東京に戻っているんだなあという安ど感は、ビールという液体を心地よい酔いに変換してくれた。
隣では、自分の手持ちのウィスキーをすっからかんにしてしまい、おかでんの泡盛をあおっているコダマ青年がいた。お互い、シートに深々と身を沈め、この3日間の思い出に浸ったのだった。
今回の旅を振り返ってみて、燕岳は初心者向け登山としてものすごく最適だと思った。合戦尾根はベンチが整備されていて歩きやすいし、燕岳はその奇っ怪な風貌が達成感をあおってくれるし、燕山荘の快適さは下界の旅館と大差がない。たとえば自分の彼女を山に連れて行くぞ、なんていう時だって、燕岳+燕山荘は安心して連れて行ける場所だと思う。
それにしても、初日:天国、二日目:地獄、三日目:また天国 ということで2勝1敗となった今回の山行。まあ、山の天気は変わりやすいので、勝ち越しできただけでも良しとしなくちゃいけないんだろう。しかし、「縦走」が目的だった山歩きだったのに、まんまと縦走のタイミングで雨だったというのは非常に痛かった。でも、じゃあもう一度リベンジマッチを組みますか?と言われると・・・いやぁ、しばらくはいいですわぁ、って感じだ。おなかいっぱいって感じで。あと、またあのウナギを食べるのはしばらく遠慮願いたい、ってことで。
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