天国と地獄、真実は霧の中に【表銀座縦走】

2003年09月04日(木) 1日目

朝からビール

ごきゅごきゅごきゅーっ。ぷはあ。

「おいおかでん、さてはまた今回も俺がビール飲んでる写真を先頭に持ってこようとしてるな?」

自分のビールを飲むことをそっちのけで、カメラを構えていたおかでんにコダマ青年は気付いていた。

「そりゃそうよ、このシーンを押さえておかないと、旅に出るぞ!っていう感じがしないじゃないか」

・・・コダマ青年との「年に1度の登山旅行」は、このコーナー「へべれけ紀行」の歴史とも言える。2000年の羅臼岳登山からはじまり、2001年は鳥海山、2002年は高妻山。そして今年も開催だ。通算4度目となる。もう少し細かく見ていくと、車で現地入りした高妻山以外は、全てコダマ青年のビールぐいぐいショットから報告記事がスタートしている。「山に入る前にビールを飲む」というのがなんとなく、定番化しつつある企画といえる。

本当は、有給休暇を2日組み合わせて、裏銀座縦走を画策していた。裏銀座?知らない人からすれば、東京都中央区銀座の裏道を指しているのかと勘違いするだろうが、実際は違う。もう少し築地寄りの場所を指す。・・・すまぬ、でき心でうそをついてしまった。

北アルプスは「飛騨山脈」と呼ばれるように、山がずらりと横一列に並んでいる。「山脈」が「山地」と違うのは、「山地」がぽこぽこと脈略無く山が乱立しているのに対し、「山脈」の場合一列に並んでいるという事だ。すなわち、山から山へとほいほいと渡り歩いていく事が可能であり、これを「縦走」と呼ぶ。

では、「表銀座」と「裏銀座」とは何か。これは、槍ヶ岳を中心とした、北アルプスの主脈縦走のメインルートを指していて、「表銀座」は燕岳から大天井岳、槍ヶ岳と抜けていくルート(もしくは、大天井岳から常念岳、蝶ヶ岳ルート)を指し、「裏銀座」は烏帽子岳から野口五郎岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳を通って槍ヶ岳に向かうルートを指す。

たぶん、これだけ山の名前を出しても、ほとんど理解できないと思う。山登りをする人には常識問題だけど、山登りをしない人はさっぱりのはずだ。そりゃそうだ、まわりに人家など全くない、恐るべき山奥だからだ。特に「裏銀座」はあまりに山が深いことで有名で、恐らくルート上にある百名山の一つ、水晶岳は山頂に立つまでに日本で一番時間を要する山のはずだ。

そんなこんなで、裏銀座を縦走するためには最低でも2泊3日、予備日を入れて3泊4日は必要となるルートとなっている。予備日とは、荒天のため足止めになったとか体調不良となった時のために設定しておくべきもので、山奥に分け入るときは必須のものだ。「今日の17時までに下山して、バスに乗らなくちゃ明日の会社に間に合わない」なんて焦って事故を起こす人は多い。予定外のスケジュール遅延に対応できるようにしておくことは常識だ。ましてや、裏銀座の場合、途中で「やっぱやーめた」とギブアップできるエスケープルートがどこにもない。一度山に入ったら、事故ってヘリコプターで運ばれない限りは自力で這い降りてこないといけない。

で・・・今回、3泊4日の日程を工面することができなかったのだった。仕事が入った、ということで与えられたリミットは2泊3日。無理して裏銀座縦走も可能だったが、9月ということで台風や午後の雷が怖い。予備日無しは危険だ。

結局、あれこれ検討した結果、「裏銀座が駄目なら表銀座にしよう」ということで、オセロの黒が白にひっくり返ったかのように行き先は決定された。これだったら、2泊3日でクリアできる。難易度も、ぐっと低くなる。

予定したルートは、

初日朝JRを乗り継いで大糸線穂高駅へ、その後タクシーで中房温泉。そこから登山開始で、合戦尾根を経由して燕(つばくろ)岳、その日夜は燕山(えんざん)荘で一泊。

翌日は表銀座縦走開始、大天井岳を経由して常念岳。縦走をつづけ、蝶ヶ岳ヒュッテ泊。

最終日は、蝶ヶ岳から長塀尾根経由で徳沢、上高地から松本、東京。

みどころとしては、非常に快適と評判の高い燕山荘で生ビールをぐいーっとおいしくのめるかどうか、に尽きる。要注目だ。

1 2 3 4

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください