2003年08月01日(金) 0日目
今年は、どうも週末が多忙で暇がない。天候不順も重なって、8月になろうとしているのにキャンプも、登山もいまだ一度もできていなかった。
キャンプだったら晩秋までなんとか楽しめるが、登山となると10月にもなれば高い山は雪が降ってくる。のんびりしていると、結局今年はどこにも登れませんでしたって事態になりかねない。
なんとかしなければ。
ということで、以前から暖めていた企画を実現することにした。
「2日間で百名山を4座、踏破しよう」
アンタ何を言ってるんだ、山なんて早く登ればいいってモンじゃないでしょうが、なんて言われそうだが、こういうお馬鹿企画を一度やってみたかったのだからしょうがない。いや、そもそもそんなことが物理的に可能なのか?という疑問については、「大丈夫、科学技術の進歩は人間を未知の体験ゾーンに連れて行ってくれますから」と答える。
さすがに、麓からえっちらおっちら登って下りて、を2日間で4回やるのは無理だ。近所の裏山を登るのとは訳が違う。しかし、中腹までゴンドラリフトが設置されていたり、車道がある山というのは案外あるもので、それを恥を忍んで活用すれば、意外と踏破の数を稼ぐことができるのだった。
今回、ターゲットとした山は
- 蔵王山 (隣の山のほぼ山頂まで車道がある)
- 西吾妻山 (山の中腹までロープウェイとリフトを乗り継いで行くことができる)
- 磐梯山 (山の中腹まで車道がある)
- 安達太良山 (山の中腹までゴンドラで登ることができる)
の東北4名山とした。
単に山頂を踏むだけじゃん、恥ずかしい奴め!と登山愛好家から馬鹿にされそうな企画ではあるが、今回はあくまでも山をネタにしただけだ・・・と言い訳をしておこう。
これで、予定通り4座踏破できれば、今シーズンの山登りにも弾みがつくというものだ。

・・・とかいいながら、なぜ写真は「おぎのや」のドライブインなのかと 小一時間問いつめたい。
いやね、理由を言いますと実は。
急きょ、「前夜祭」・・・ええと、「前日祭」の方が正解か・・・を開催する事にしたからだ。仕事の塩梅が非常によろしかったので、急きょ金曜日に会社を休ませてもらった。
本当だったら、土日で予定していたスケジュールを1日前倒しして、金土で行くつもりだった。しかし、うだうだしているうちに早朝出発を逃してしまい、スケジュール前倒しは断念。 ならば、日帰りでお気楽百名山登山をやって、明日からの本番に華を添えてはどうか、という気になった。関東近辺でお気楽な山といえば、真っ先に登頂失敗した記憶が生々しい筑波山が思い出される。しかし、筑波山なんて冬にだって登ることはできる。いくらなんでも安直すぎるので、あれこれ検討した結果、美ヶ原に行く事にしたのだった。
ただ単に高速道路をかっ飛ばして往復したんじゃ、カネかかるやら味気ないやら、で盛り上がりに欠けるので下道で爆走するぜ、もちろん碓氷峠は旧道をドリフトするぜコノヤロー、というわけで。
あと、せっかく平日にお休みを頂戴したのだから、何かご当地の美味いモノでも食べようじゃないか、というのも一つねらいとしてあった。
あった、のだが・・・事前学習が全然不足していて、佐久界隈の美味いものって何があるのかさっぱりわからぬ。長野旅行には必ず携行している「長野味本」も手元にない。ええと、えっと・・・とあたふたしているうちに目の前に見えるは横川駅前にあるデカいお釜の看板。おぎのやだ。
いくらなんでも、駅弁で何度も食べている峠の釜飯を、ドライブついでに食べるなんてそりゃあり得ない選択肢だ、なんて考えて通過しようとしたのだが、気が付いたら駐車場に車が吸い込まれてしまった。あらー。

おぎのやはドライブインなので、別に釜飯を食べ無くったっていい。おやきをはじめとしていろいろな食事ができる。いいか、ここで釜飯を買ったら、人生負けだぞ、あまりに平凡すぎてつまらない人生だぞ。
・・・
ということで。
あれれー。釜飯が手元にあるんですけど。くそ、大いなる平凡にまんまとはめられた。しかも、その脇には200円で買ったなめこ汁まであるしー。やられたー。
はあ、まさか釜飯を食べることになるとは、ちょっと前までは想像だにしなかった。何しろ、今朝時点では長野方面に向かうことすら考えてなかったのだから。
食後、碓氷峠を予定通りツイストしながらよじ登り、軽井沢に突入。軽井沢を走っていると、その街路沿いに有名な蕎麦屋があることに気が付いた。かぎもとや、源水、水音・・・。あー、もっと早くそのことに気付いていれば!さすがに釜飯でおなかいっぱいになった胃袋にはこれ以上詰め込む事は不可能。ちくしょうちくしょうと、蕎麦屋のありかを示すカーナビに八つ当たりしながら、車を進めた。

タイヤがきゅきゅきゅと泣きながら、急カーブの道を進んでいく。晴れていたのに、高度があがってくるとガスに包まれるようになってきた。標高1900m、美ヶ原に到着だ。
美ヶ原という名前のとおり、この辺り一帯ははるか昔火山の噴火によってできた高原で、特にこれといって高い山があるわけではない。だから、今回「山登り」とはいっても、ほとんど「高原散策」なわけだ。今日、こんな中途半端なときにあえてターゲットとした理由はそんなところにある。
だから、服装だってとうてい山に登るものとは思えない格好。なにせ、ジーパン履いているんだから。
※ジーパンは雨や汗で濡れると非常に重くなり、行動しづらくなるので山登りには厳禁の服装です

・・・おい!
ジーパンまではまあOKとしても、サンダルで山に登ろうとしてるんじゃないだろうな?それはいくらなんでもナメすぎだぞ。
はーい。
後部座席にしまってあったトレッキングシューズを引っ張り出して履く。あくまでも、登山靴は用意していない。登山靴、がっしりしているかわりに重いんだもんなあ。ハイキング程度では履く気にはなれない。せいぜい、サバゲーの時に履くくらいだ。

美ヶ原の高原散策で起点となるのが、ここ山本小屋。名前からして、てっきり渋い山小屋なのかと思っていたのだが、見てのとおり立派な観光施設となっていた。そりゃあまあ、駐車場を眺めていれば理解はできる。大型観光バス数台をはじめとして、たくさんの車が駐車してある。そう、ここはあくまでも観光地。

立派なのは施設だけではなく、お手洗いもそうだった。
お手洗いの入り口に燦然と輝く、「有料トイレ百円」の文字。以前、富士山の山小屋で有料トイレを見た時以来だ。ほおー、こんなところでも有料なんですか。
よく見ると、有料の表記の上に「山頂のため水が大変貴重です。節水にご協力ください」と書いてある。
百円っていったら、高いなあ・・・と思うが、小屋側からすれば「できるだけ使ってもらいたくない」という意味もあるのかもしれない。「ぼったくる為」の百円ではなく、「使ってくれるな」と警告するための百円。
くそ、百円かよとぼやきながら、お手洗いを使わせて貰った。お手洗い周辺では、「あれっ、有料なのか」と途方に暮れる観光客が続出。なかなか見ていて愉快な光景であった。さらに言うと、「ただで入る人がいたら許さんけんね」と何気ないふりをしてお手洗い入り口ににらみを利かせている店員さんがいるというのも、背景として視界に入れておくとより一層楽しめる。

山本小屋から先は、関係車両のみしか入れない。ここから徒歩だ。

道は、両側に広大な牧場があるなかを進んでいく。とても、これが長野県の景色とは思えない。霧が深く立ちこめている事もあり、非常に神秘的だ。
・・・ああ、ごめんなさい。ちょっと今うそついた。
何が「神秘的」だコラ。観光客ゾロゾロだし、この先のホテルからの送迎マイクロバスが往復するし、どうも俗っぽさが強い。おい、おまえら邪魔だアッチいってくれ!

しばらく進んでいくと、美ヶ原高原ホテルなる建物が見えてきた。
・・・ホテル?いや、これぞ山小屋っていう作りだ。建物のつくりが、いかにも山小屋って感じ。
でも、ホテルの前には出店があって、焼きトウモロコシや牛乳、ソフトクリームを売っていた。ううむ、このあたりは山小屋らしくない。
家に帰ってこのホテルについて調べてみた。ごめんなさい!このホテル、外見は山小屋風だけど中はれっきとしたお宿でした。名物はジンギスカンで、1泊2食つきで9000円からだそうな。なんと、お風呂が温泉だというから驚きだ。
特に立ち寄る用事がないので、スルー。釜飯が胃袋でとぐろをまいていなければ、牧場の牛を眺めながらソフトクリームを食べるというのも乙なもんだが。

ひたすらてくてくと歩く。
周りの風景が「道」「柵」「牧草地」「空」しかない。
はるか先が、まるで地平線のように見えて愉快だ。ほんと、ここは長野県か?北海道みたいな光景だ。

遠くに、何やら塔が見える。
盆踊りのやぐらだろうか?
そんな馬鹿な。ああ、ときおりカーンという鐘の音がする。あれが有名な「美しの塔」か。
カップルでカンカン鐘をならしてやがれ畜生、と嫉妬しながら塔に向かってみたが、観光客のオバチャンがうれしそうに鐘を鳴らしていた。
カーン。

近くで見るとこんな感じ。
霧が多いこの地に、道しるべ用に作った鐘らしい。なるほど、確かに今まさに霧が出ているわけだが納得だ。周り、なーんも見えない。

ほら。
霧の中にまっすぐ、道が消えていく。一体この道はどこに続くのだろう。
・・・どこに続くのだろう、じゃねぇよ。地図見ろ、地図。これからお前が行く方面じゃ。

しばらく進むと、「塩クレ場」という場所にでた。牛に塩を与える場所らしい。そこを右に折れ、ようやく目指す美ヶ原最高地点の「王ヶ頭」に進路をとる。
ときおり、霧がすーっと晴れて王ヶ頭が見えてくるようになった。その手前の丘で草をはむ牛。なかなかいい光景だ。ああ、わしも牛になりたい。

しばらくすすんだところで、美しの塔方面を振り返ってみたところ。
うわあ、ひたすら草原じゃないか!
ここ、どこだ?本当に長野県か?
何度目だろう、「長野県か?」という言葉を発するのは。
しかも、高度2,000mの高地にこのような広大な場所があるなんて。

驚き呆れつつも、道はするすると進んでいく。車が通ることができる砂利道なので、歩くのは非常に楽。何も心配はない。だから、ほら。もう目の前に王ヶ頭のアンテナ群が見えてきた。
このアンテナを壊すと、松本ではテレビとかが見えなくなるんだろう。某白装束に狙われないのだろうか。どきどき。
電波塔に見守られるような場所にある建物は、「王ヶ頭ホテル」という。2034mのホテルだ。こういう山のてっぺんにホテルを立ててしまうガッツたるや大いに良し。しかも、まわりは雪だらけになる冬季も営業しているというのだから気合いが違う。1泊2食つきで1万円からだという。今日みたいに霧に覆われていたら、こんな高いところまで登ってきたのになんのこっちゃという宿なのだが、スカっと晴れていたら素晴らしく痛快な光景が楽しめるだろう。
ちょうどおかでんが王ヶ頭ホテルの横を通過しようとしたとき、今来た道をゴトゴトと走ってきた送迎用マイクロバスがホテルに到着した。中にはどっちゃりと宿泊客が乗っていた。おお、平日だというのに大繁盛してますなあ。

別にこちらとしてはホテルに用があるわけでもなく、ましてや電波塔に用があるわけでもない。頂上を踏まなくては。
大抵のハイカーは、ホテル前でくつろいでUターンしているようだった。しかし、ここは三角点があるはずだ、山頂表示だってきっと有るはずだ。
調べてみたら、ホテルの裏側にさりげなく山頂の表示と三角点があることが分かった。
ほい、到着。王ヶ頭2,034m。
ホテルの裏側にあるので、満足感が非常に低い。というか、むしろ卑屈な気分になってしまうのが悔しい。

しみじみと侘びしかったのが、三角点の扱いだった。
普通、エラそうなところに三角点がでーんと鎮座しているはずだが、ここでは「あれっ?」という感じで、にょっきりと地面から突き出ている。全然エラそうじゃないし、何かの間違いのような感じだ。
数メートル先に見える山頂標識のゴージャスさと比べると、その侘びしさがよく分かる。
「わかる、わかるぞお前の気持ちは!?」
と、何となく三角点を慰めてやる。

王ヶ頭ホテルのそばから見た、美ヶ原の終端。それまでの広大な高原の楽園は、ここで急に我に返ったらしく、ストーンと絶壁ができている。この崖の下が松本市だ。
この崖近辺には岩燕がものすごい数、飛び交っていた。間違ってこっちにぶつかってくるんじゃないか・・・というくらいの数で、燕を間近でじっくりと観察するには最適だった。

王ヶ頭頂上で記念撮影をしても、イマイチ満足感が得られなかった。やはり「ホテルの裏口ちかく」じゃあ、旅のフィナーレとしてはいまいち過ぎる。
ということで、ホテル前にあった「美ヶ原高原」の看板をバックに、もう一枚記念撮影しておいた。
こういう雄大な景色を撮影するとき、カメラに広角レンズが装着されていない事が悔やまれる。なんだか、単に看板の前で撮影しているだけの写真になってしまってるじゃあないか。

今来た道を戻る。
所々黄色く見えるのは、ニッコウキスゲの花だった。高山植物もいろいろ楽しめて、子供から大人まで楽しめるハイキング場所、それが美ヶ原。
蓼科~白樺湖~霧ヶ峰~美ヶ原、とデートコースにするなり家族旅行コースにするなりすると、必ず満足のいく1日が過ごせると思う。

大して汗はかかなかったのだが、山を下りてきたら温泉、これ定番。今回は、美ヶ原から扉峠までおりて、やなぎこば林道を松本方面に下っていったところにある「扉温泉」にお邪魔してみた。
前日まではそんな名前すら知らない温泉だったのだが、「温泉の達人」野口悦男が自身の著書で紹介していたので、立ち寄ってみることにしたのだった。
場所は、松本市街地から車で30分くらい。谷沿いに数件の宿がある小さな温泉地だ。普通だったら、見落とす。秘湯になりそうだったけど、ううんちょっと俗っぽくしちゃった、っていう微妙な位置づけ。
しかし侮っちゃいけないのは、どうもこの温泉は「西の白骨温泉、東の扉温泉」と言われるくらいに胃腸病に効果てきめんだそうで。えっ、そうだったんスか?
旅館の日帰り湯は時間が遅いことから難しそうだったので、共同浴場「桧の湯」を訪れることにした。改築してまだそれほど時間が経っていないようで、新しい清潔感ある建物だ。温泉は単純泉ということだったが、わずかに硫黄の臭いがする。肌にやわらかくまとわりついて、非常に心地よい。
外には露天風呂があったのだが、内湯から眺めるだけで利用はしなかった。なぜなら、露天風呂の人たちが子供も大人も、みんなしかめっつらしていたからだ。・・・一体何をやっているんだ?と思ったら、いきなりぴしゃん!と緑の何かがうごく。あ、ハエ叩きだ。
どうも、この露天風呂周辺にはハエやアブが大量発生しているらしい。露天風呂にハエ叩きがいくつも常備されていて、露天風呂に入っている人はそれを片手に煙たそうな顔をしていた。ひっきりなしにパシパシやっている様子だったが、果たしてあれでくつろぐことはできたのだろうか?
中央高速を使って、松本ICから自宅へ。帰り、夕食として「ラーメン○二郎」に立ち寄る。このお店は、ラーメン二郎系列ではよくある、「手加減知らずの盛り」を提供することで、一部のファンからは熱狂的な支持を受け一部からは恐怖の対象として見られている。通常でも一般的認識の1.5倍くらいのボリュームのラーメンが出てくるのだが、店長に顔を覚えられるとより一層盛りが豪快になってくる独特な不文律が痛快だ。
しかも、化学調味料のせいか中毒性のある味であり、食べた直後は「もういいや、このラーメンは」と思うのだが翌日にはケロリと忘れて、また食べたくなるから始末に負えない。自然と、通う回数が増えていき、 店長に顔を覚えられ、量が増えていくという流れになる。おかでんが、まさにそのパターンにはまってしまっていた。
常連だと、水平にドンブリを見たとき、麺がドンブリよりも上にこんもり盛り上がって見えるくらいの量が普通として店長は出してくる。その上に、キャベツともやしをこれでもかと盛り上げ、ブタを麺に押さえつけるようにしてトッピングするからすさまじい。
この場合、大抵はスープがドンブリからタラタラと垂れており、店長はお客にドンブリを渡す際、一度スープを少し捨てている。それでも、圧倒的な麺の量においてスープは氾濫をおこしかかっており、食べ方をちょっと間違えるとすぐにスープ洪水が再開されるのであった。やや傾いたカウンター席だと、垂れたスープがどんどん自分の方向に迫ってくるので大変。あわててぞうきんを手繰り寄せて、防波堤を作らないといけない。あと、麺にありつこうとおもっても、その上に雄大なる山並みを誇る野菜のトッピングがそびえているので、それを片づけてしまわないと土砂崩れが起きる。そろり、そろりと食べていかないと大惨事は間違いない。
・・・というのが、この店の食べ方の掟だったりする。つくづく変な店だ。
さらに、場合によっては野菜のトッピングがドンブリに盛りきれないため、野菜だけ別ドンブリで出てくるという荒技がある。ここら辺のボリュームのさじ加減は、全て店長の気分次第だったりするから恐ろしい。たとえ常連であっても、自分のラーメンがトッピングされているときは固唾をのんで店長の手元を見守る事になる。「今日はそんなに大盛りでなくてもいいな」と思っている時に限って、見たこともないような盛りにされることもあるし、その逆もあるわけで。
さて、そんな「店長の気分次第」な盛りの店だが、明確に自分の意志で盛りを増やしてもらう手段もある。「麺増し」と言われるやり方で、食券の上に100円玉を置けばいい。まあ、要するにラーメン大盛りだ。しかしこの麺増しもくせ者で、「店に馴染みがない人だな」と店長が判断した人の麺増しは、常連のノーマルな量かそれ以下だ。そして、この麺増しにも盛りのランクがあるらしく、何度も麺増しをやっていくと、さらに量が増えていくからすごい。しまいには、このドンブリにはスープが入っているのか?と疑いたくなるくらい、みっちりと麺が詰まったドンブリがでてくるようになる。
ここまで読んで、「うえーッ」と思った人。まだまだ甘い。
この店の究極型は、洗面器型のドンブリにて供されるラーメンだ。これは、麺増しを頼んでも滅多に出てくることがない、希少価値の高いものだ。普段は戸棚にしまわれているのだが、通常の麺増しじゃコイツは物足りないだろう、と店長が認めた常連に対してだけ、ときどき洗面器が出てくる。最終兵器だけあって、通常のドンブリの2倍は入る体積を持つ。
で。それを食べる資格を店長から頂いているのが、おかでんだったりするわけで。
最近は、麺増しを頼めば常に洗面器が出てくるようになったのだが、それでもいまだに洗面器が戸棚から出されるのを見ると恐怖を覚える。「本当に食べられるのだろうか?今日の俺は体調、大丈夫だろうか?」と自分に問いかける。毎回、そうだ。麺増しを頼んでおきながら、残すことは大変失礼な事だからだ。で、毎回気合いを入れて食べている。スープは飲まないのだが。
ああ、この店の最終形までたどり着いてしまったか・・・と洗面器を抱きかかえて食べながらしみじみと感慨にふけっていたのもつかの間。洗面器を何度か食べているうちに、徐々にスープの水位があがってきていることに気が付いた。洗面器は、間口が広いのでトッピング野菜が鋭い三角錐型に盛り上げられることがない。だから、非常に食べやすくお客としてはありがたい。しかし、何度か洗面器で食べているうちに、水位が上がってきているし野菜の盛り方がだんだん尖ってきたような。
これ以上麺増しを頼み続けると、しまいには洗面器からスープがタラタラ垂れるくらいに盛りつけられる!さすがにそんな量は無理だ!
そう恐怖して、店を後にしたのが前回訪問時だった。
※ここで、店長に「量少な目で」とは絶対口が裂けても言わないのがおかでん流。一度そういう実績を作ってしまったら、これから先量を減らされるのではないかということを危惧している。
・・・ここまでが過去の経緯。
さて今回、うっかり過去の経緯を忘れていて、「今日は結構歩いたし、今日はガツーンと食べてもいいんじゃないかな」という気になっていた。何の気無しに、麺増しをオーダー。
しばらくして、ドンブリがやってきた。いつも通りの洗面器だ。・・・って、うわぁ!スープ溢れてるよ。麺が洗面器いっぱいに盛りつけられてるよ。なんじゃあ、こりゃあ。
どよめく店内。焦るおかでん。
動揺しているおかでんを尻目に、店長はニコヤカにもう一つのドンブリを取り出し、そちらに野菜とニンニク、脂を入れて「トッピングは別皿ですんで」と持ってきた。さらにあっけにとられる。
食べられるかぁ、こんな量!そういえば、某掲示板で「開店一周年記念だからか、最近は盛りがさらに良くなった」という書き込みを読んだような記憶がある。しまった、迂闊だった。
もうこうなったら、がむしゃらに食べるしかない。一人「土下座バイキング」のスタートだ。このラーメンは、太麺の麺を噛んでいるうちに満腹になってくる上に、非常にこってりとした味なので味覚に飽きがくる。だから、胃袋のキャパシティオーバーより前に、満腹感で箸が進まなくなる。それが一番怖い。
麺、麺、野菜。麺、麺、ブタ、野菜。味に変化をつけつつ食べるが、とうてい減るもんじゃあない。想像してみてほしい、銭湯でよく見かける「ケロリン」の黄色い洗面器。あれいっぱいに極太の麺が詰まっているありさまを!
ここから先の死闘のレポートは割愛するが、1/3食べた時点で既にヘロヘロ。ラーメンが飲み込めなくなってしまい、口の中でもぐもぐする回数が増えていった。2/3食べた時点で、「いつ店長にごめんなさいと言ってドンブリを下げようか」という事ばかりを考える始末。
結局、死力を振り絞って食べきったのだが、気分が悪いことこの上ない。胃袋がラーメン袋になってしまっている。帰りの車の中で、脂汗をたらたらとかきながら、「ううう」と唸りっぱなしだった。
自室にたどり着いたのは21時。朝の行動開始から11時間が経過していた。美ヶ原散策そのものはそれほど疲れなかったが、前後のドライブとラーメンでてきめんに疲労困憊。もう、駄目だあ・・・。
明日からの本番、やめちゃおっかなあ・・・。
部屋に入るなりどう、とベッドに突っ伏してしまった。もう今日はゲームオーバー。
・・・突っ伏したあと、うつぶせになっていると胃袋をいたく圧迫することが判明したので、慌ててあおむけに姿勢を直したのは言うまでもない。
※ラーメン二郎について語られているwebサイトは、その大半が「盛りの凄さ」についてふれられています。しかし、人それぞれ胃袋のキャパがあるため、「凄い盛りだ!」と本人が大騒ぎしていても、実は大したことがなかったり、その逆(本人は平然と記述しているが、実はシャレにならん大盛り)もあります。普通のドンブリなのに「洗面器」が出てきた!と形容する人もいて情報が錯綜していますので、ご注意。・・・まあ、それだけデフォルトの盛りでも壮絶なんですけどね、二郎のラーメンは。
ちなみに、おかでんはこのレベルは平然と食べることができる胃袋なので、今回の「洗面器」騒動がどれだけのボリューム感があるか何となく理解してもらえると思います。
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