2002年09月21日(土) 1日目
年に一度のお楽しみ。コダマ青年との山登り紀行の始まりだ。昨年は鳥海山/月山、一昨年は羅臼岳/雌阿寒岳と一緒に登ってきたが、今年ターゲットに定めたのは高妻山だった。
日本百名山として有名な山だが、ほとんど一般人には知られていない山だ。一体どこにあるの?と聞かれて答えられる人は、そんなにいない。
場所は、戸隠山の裏山にあたる。道理で、知られていないわけだ。
今回、休みが確保できなかったということもあり、遠征は断念して1泊2日の登山旅行とコンパクトにまとめることになったのだった。かといって、あまりメジャーな山に行くのも何か悔しいので、「ならばちょっとマニアックな山・・・一人じゃなかなか行かなさそうな山」を選ぼう、ということになって、高妻山が選ばれたというわけだ。
それだけじゃ面白くないので、
「戸隠といえばやっぱり蕎麦を食べなくちゃダメでしょう」
「宿に泊まるのは馬鹿馬鹿しいので、キャンプ場でテントを張って、たき火やって酒飲みましょう」
なんて方向に話がまとまっていった。登山よりもそれ以外のイベントに気が向いてしまっている状態。
朝5時、東所沢駅に集合し、そのまま上信越道で長野に向かう。
長野ICを降りたところにあった、おぎのやのドライブインに立ち寄り、朝食。
さすがにこの時間はまだ釜飯は用意されていなかったが、軽食コーナーは既にオープンしていた。
朝定食500円也を調達。
シンプルだけど、朝からこういう「正しい食事」ができるとなるとちょっとうれしい。値段もそこそこ。
なんだか薄ら笑いを浮かべながら朝食をがっつく山男たち。
毎度悩まされる事だが、今回も「海苔と納豆と生卵と鮭、このままだとご飯が不足するけどどうする?」という問題に直面。
今回は宿の食事ではないということもあり、ご飯のお代わりができない。
しばらく悩んだ末、鮭でご飯を1/3食べ、納豆をご飯の上に載せ、できるだけご飯とまざらないようにして1/3食べ、そして最後に玉子ご飯に海苔をまぶして食べるという事で事なきを得た。ふう、朝から頭を使わせるわい。
さて、栄養補充もできたということで、進軍することしばし、戸隠に到着。
戸隠キャンプ場の横にある、戸隠牧場が今回の起点となる。どかーんと目の前に戸隠山がふんぞり返っている。
この戸隠山、古くは修験道の道場として使われていたということもあって山が険しい。だが、われわれはこの山はパスして、その脇からこそこそーっと裏の高妻山に登らせていただこう、というわけだ。
牧場脇を進むと、売店があった。「ビール冷えてます!」の文字が妙に気になる。
おかでん 「お、おいコダマ青年。ビール冷えてます、って書いてあるぞ!?」
コダマ青年 「いや、いちいち報告せんでも。欲しければ買えば?」
おかでん 「あれっ、コダマ青年は買わないの?」
コダマ青年 「・・・やめとく。下山したときの愉しみに取っとくわ」
おかでん 「ちぇっ、コダマ青年が買わないから、僕が買いにくいじゃないか」
コダマ青年 「とかいいながら、なぜビールを手にしてる?」
結局、500mlのビール1本をお買いあげ。ちーん。
今日は暑くなりそうだ、山頂でのいっぱいはきっと気持ちよかろう。
戸隠牧場は、観光牧場でもあるということから入園料がかかるらしい。受付がちゃんとある。
コダマ青年 「えー、お金かかるの?別に俺ら、牛とかどうでもいいんだけどなあ。素通りさせてもらえればいいんだけど」
受付のおばちゃん 「あー、山登るの?だったらお金いらないから。どーぞ」
おかでん 「あっ、やっぱり無料だったんだ。ラッキー」
コダマ青年 「でも、これでOKなんだったら、みんな『登山に来ました』ってうそついてタダで入ってしまいそうな気がするのだが・・・」
牧場入場ゲートに、でかい看板が張り出されていた。
「登山者に告ぐ」
非常に大仰だ。登山者カードをきっちりと書かされたり、こういう看板があったりするところからみて、ここでは過去に多くの事故が起きている証拠だ。
現に、この看板には「この戸隠連峰は非常に危険度が高く、毎年遭難死亡事故が発生しております」と書いてある。
おかでん 「わ。結構ヤバイ山だったんだな、ここは」
コダマ青年 「往復で8時間かかる山だからな。しかも、途中に水場無し(実際には1カ所だけある)、山小屋無しだ」
おかでん 「登山者にビールを注ぐ、っていうんだったらありがたいんだけど・・・」
牧場の中を歩く。
コダマ青年 「なんか山に登りに来ているって感じがしないんだけど」
おかでん 「不安になってくるよな、一体自分たちは何をやっているのかと」
コダマ青年 「それ、言えてる」
おかでん 「それより、足下気を付けろよ?牛の糞があちこちに落ちているからな」
登山で足場が悪い、というのは大抵岩場を通過する時に使う言葉だが、この場合牛の糞を避けなければならんという足場の悪さに四苦八苦だった。
おかでん 「あー、この糞、豪快に誰かに踏まれてるよ・・・可哀想に」
牛が通過できないようになっている柵をすり抜けると、ようやく登山道らしくなってきた。
おかでん 「どうですか、これで登山っぽくなったのでは」
コダマ青年 「ですなぁ」
途中、ナメ滝があるので、鎖を使って乗り越えていく。
至って平凡な山道の中で、突然こういうのが出てくるのでちょっと驚かされる。
おかでん 「しっかし、まわりがこうしてうっそうと茂っていると、『ファイトぉ、いっぱぁーつ』ってやる気にもならんな」
すいすいすい、と登っていくこと1時間30分、戸隠連峰の稜線に出てきた。
ここには、一不動避難小屋がある。戸隠連峰唯一の避難小屋だ。
料金を取るような小屋ではなく、あくまでも緊急退避用に作られているので、造りは非常に質素だ。コンクリートブロックを積み上げた建物で、中はほぼ真っ暗。収容人数15名という事になっているが、15名も中に押し込んだら酸素不足で窒息してしまいそうだ。
お手洗いがないからだろう、避難小屋の周辺で用を足しているらしく結構臭い。
それでも、結構利用者は居るようだ。中を覗き込むと、重い荷物が結構な数デポされていた。
ここら辺は修験道のメッカだったのだろう。
先ほどの避難小屋が「一不動」だったわけだが、ここから高妻山山頂までの間には、同様のネーミングが10も存在している。
二釈迦、三文殊、四普賢・・・。
なんだかありがたい気分になってくる。10までたどり着いたら、涅槃の境地に入る事ができるのだろうか。あ、修験道だから涅槃という概念は存在しないか。
開けた稜線歩きなので、麓がよく見えて楽しい。開けて見えるのが戸隠牧場、向かい側の山が飯縄山になる。
左手に、目指す高妻山が見えてきた。ピラミッド型をしていて、非常に崇高な印象を受ける。あそこに登るのか、と思うと楽しくなってくる。
しかしだなあ、なんでこうやって真っ正面に見えているのに、そのまま進めないんだろう。稜線は逆Cの形に延びていて、えらく大回りをしながら山に近づいていく。まっすぐ進むことができたら、2キロちょっとの距離なのにその倍以上の遠回りをすることになる。
二釈迦、三文殊と過ぎていき、四普賢あたりを通過中。
真っ正面のピークが、五地蔵山1,998m。
細かいアップダウンがあるので、やや疲れる。
五地蔵山。
「ごちそうさん」と読みそうになるが、まだここで食事が終わったわけじゃあない。ここからまだ山頂までは2時間ほど先の場所にある。「いただきます」のレベルだろう。
ほこらが設置されていたが、中にはお地蔵さんはいらっしゃらなかった。
ここからルートは直角に曲がり、一気に高妻山に向かって突き進んでいく事になる。
うーん。高妻山、一向に近くなっていないんですけど。見る向きが変わったので、ピラミッドっぽさがやや薄れて「登りやすい山」に見える。しかし・・・。
六弥勒から先は、細かいアップダウンの繰り返し。こんなピーク、迂回しろ!と思うのだが、ずんずんと馬鹿正直に登り、そして下っていく。ああ、位置エネルギーの無駄遣い。しかもこの辺りのピークは、ぐいーっと高度を上げて、また一気にすとーんと落ちるというヤラシイ形になっていて、全くもってケシカランのである。水平移動距離も稼げないし、疲労の割には高度がなかなか稼げない。
七観音、八薬師・・・と進んでいくが、進めば進むほど疲労困憊していくのが分かる。露骨に、体力が奪われていく。
九勢至で、ようやく高妻山本体に取り付く事ができた。この時点で、おかでんはひーひー豚のような悲鳴を上げている状態。
おかでん 「一体どうなってるんだ、この山はァ!何という無駄な体力を消費させるんだ、ケシカラン!実にけしからん!ピークとピークの間を吊り橋をかけてそのまま通らせろ!いや、それどころか、一不動から高妻山山頂までそのまま大きな架け橋を造ってそのまま通らせろ!」
コダマ青年 「そうなると登山じゃなくなるけど・・・でも今回に関してはホントそう思う」
遠くから見ると、高妻山最後の登りは比較的楽そうだった。ただ、これは緑に覆われている山肌から想起した妄想であって、実際は相当にきつい登りだった。自分の半身ほどある段差をよじ登って越えなければならないような場所だらけ。しかも、急傾斜なので気がゆるむと落石を起こしてしまう。十数歩歩いては休憩、を繰り返さないととてもじゃないが登れないような場所だった。
しばらく進むと、コダマ青年がへたりこんでいた。おかでんよりはるかに体力があるコダマ青年がへろへろになっている。
コダマ青年 「いやね、この岩・・・ここに、『一休みしましょう』って書いてあったんで、一休みさせてもらってるところ」
見ると、誰が書いたか知らないが、岩肌に確かに「一休みしましょう」と書いてあった。有りがたや、ではご相伴に預かることにしましょう。
深田久弥は、自身の「日本百名山」で高妻山登山をこう書き記している。
五地蔵から二つのこぶを越えて、高妻山への長い登りは急峻で、実に辛かった。ようやく頂上に達して私の喜びは無情であったが、もう乙妻まで足を伸ばす元気がなかった
山に登り慣れた深田久弥でさえ、へばってしまった高妻山。見た目の優雅さとのギャップは誰しも苦しめられるようだ。
朝日新聞社が刊行した「週刊日本百名山」の高妻山の項でも、こういうコメントが記載されていた。
山慣れた深田でさえ、欲も得もなく、あとほんの一時間で行ける乙妻山をあきらめたほど厳しい登山なのである。登る人が増えたとはいえ、熟年向けとは言えない。行けない山があってもいいのではないだろうか。
もういやだ、やってられんという愚痴を連発しながら登っていくうちに、急にふっと前が開けた。十阿弥陀に到着だ。
山頂は、その少し先の小高い丘部分らしい。
後もう少しで解放される・・・と、ふらふらしながら最後の力を振り絞って、ごつごつした岩の上を進んでいった。
しかし、ゴール直前になって中高年登山団体が道を塞いで先に進めなくなってしまった。20名だか30名いる相当な数の団体登山なのだが、例のごとく団体登山にありがちな傍若無人さで、どんどん降りてくる。いい加減しんぼうできなくなって、「すいません、登り優先でお願いしますー」と大きな声を出して道を開けてもらった。
登山豆知識:狭い道の場合、登り優先は常識。
なんとかへろへろになりながら高妻山山頂到着。
標高2,352.8m。
登頂開始からどれだけ時間がかかったのか、についてはあまりにヘロヘロだったのでメモを取るのを忘れていた。
足場の悪い場所に三脚を突き刺して、記念撮影。
本日のお昼ご飯は、パンと、カップラーメンと、ビール。
入山時に買ったビールが、誇らしげに輝いている(ように見える)。
「しかし、よく見ると炭水化物と脂肪ばっかりで体に悪そうだなあ・・・」
最近、カップラーメンを山での昼ご飯にすることが増えた。暖かい汁をすすると、何か一歩グレードの高い食事をしている気になるからだ。しかも、塩分と水分補給を同時に行うことができる。
昔はマルタイの棒ラーメン至上主義だった。「山男たるもの、荷物の軽量化とコンパクト化は最重要課題だ。ラーメンを食うなら、小さなパッケージの棒ラーメンにするべきだ」という兄貴の教えに従っていたのだが、最近は「別にカップラーメンでもいいじゃん」という気になっている。棒ラーメンは、ゆで方を失敗するとでろでろのマズイ麺に仕上がってしまうので敬遠させてもらっている。
ラーメンをすする。
うん、美味い。しかし、パンは余計だった。あと、ビールも正直、余計だった。
ついつい買ってしまったのはいいのだが、食べ残すと帰りにも荷物となって負担になるので、食べてしまわなければいけない。
ビールをごくりごくりと飲む。
正直言います、おいしくないです。
・・・ああ、言ってしまった。
だって、これだけぬるければ、「うひゃーッ、うめーッ」って叫べませんよ。やっぱりビールは冷えていてナンボって思う。ややぬるめのビールが基本であるヨーロッパには住めないなあ、とつくづく思う瞬間。
いや、なにしろ冷蔵庫から引っ張り出されて数時間。すでにビールは20度近くまで暖まってしまっているわけで、自動販売機でいうところの「あたたか~い」のコーナーに売られていてもそれほど文句は出ないのではあるまいか、と思う。これが美味いかと言われると、そりゃあ美味くありませんや。「ビールを飲んでいる俺」自身に至福感を抱くだけであって、ビールそのものでハッピーになれたという気はしない。
コダマ青年のように、「下山したところで冷えたビールをきゅーっと飲る」という判断をしたほうが、はるかに満足度は高かったかもしれぬ。これぞカタルシス、というヤツだ。でも、こっちは車の運転があるんだよなあ。そういうわけにもいかんて。
戸隠連峰を見ながらの昼食。コダマ青年は袋ラーメンを調理して食べている。
コダマ 「しかしあれだな、こうやって見るとホント無駄にぐるっと回ってきたんだな」
おかでん 「C字型・・・L字型かな?に近い形でぐるーっと回ったもんなあ。みろ、一不動がすぐそこにあるぞ」
※写真中央やや左の峠部分が一不動に該当。
コダマ 「あああ、無駄すぎる。橋でもかかってればまっすぐ一直線なのにな」
じゃあ何でお前達は山に登るの?という根本的な問題は無視して、目の前の山について愚痴をこぼす。究極的には、「じゃあ高妻山まで車道作ればいいじゃん」っていう事になってしまうのだが、そうなると山登りではなくなるので却下。
30分ほど山頂でぼーっとした後に下山を開始。さきほど登ってきた道を引き返していく。
アップダウンが激しい山というのは、下りも疲れるので困る。重力に任せてずずずぃと下っていくつもりが、「いやごめんなさいね、ちょっと登りがありますよぉ」って事であちこちで上り坂が用意されているからだ。
しかし、体力の差が露骨に出るのも下り。五地蔵あたりで、山頂直下ですれ違った団体登山の人たちに追いついてしまった。
一不動から少し下ったところにある水場でわき水を飲むのを楽しみにしていたわれわれとしては、この団体の後についていくとえらい目に遭いそうだ。水飲みのために行列10名以上、水にありつけるまで10分かかりました、なんていうのは非常に悔しい。
それだけは避けなければならぬ、と一不動まで団体の後ろに張り付いて歩き、その後団体が一時休止したところを一気に追い抜いて先へと進んだ。
パッシングポイントをどこにおくか、計算しながら歩かないといけないのが山登り。
戸隠牧場まで下山完了。16時30分。
後ろの戸隠山には雲が出てきている。
牛避けのゲートの前で記念撮影。いやぁ、地味な山の割には相当疲れました。
おかでん 「で?下山記念のビール、飲むの?」
コダマ 「いやぁ、もう少し我慢するわ。風呂上がりにビールをきゅーっと飲んだら、そりゃもう最高だろうし」
おかでん 「耐えるねえ、頑張るねえ。ある意味正解だけど、ある意味マゾ的かもしれぬ」
時間としては、このまま東京に戻っても問題はないのだがせっかくの長野ということで一泊することにしていた。
ちょうど都合が良いことに、戸隠牧場のすぐ隣が戸隠キャンプ場だ。ここは「ほんとうに気持ちいいキャンプ場100」というBE-PAL編集の本にも掲載されている場所。広々として開放的な雰囲気が、気持ちいい。
車で敷地内をぐるぐると周り、手頃そうなところを選んでテントを張った。混雑状況としては、「まあまあ」といったところだ。それほど隣と密着しないで、宿泊することができる。土曜日でこの程度だったら、非常に快適と言えるだろう。お奨めだ。
どうせもう日没なので、タープを張るのはやめる。テントをペグ打ちすらしないで設営し、あとは机と椅子とランタンを用意しておしまい。楽なもんだ。
ひととおりの設営が済んだら、一風呂浴びてくることにした。戸隠周辺には温泉なんて無さそうな気がするし、実際にそれらしきものは皆無に近い。
・・・しゃーない、黒姫の方まで出るか。
と思っていたのだが、なんと戸隠の中心地に温泉があるという。しかも名称が「戸隠温泉神告げの湯」というらしい。
怪しい名称だ。神告げの湯って、一体なんだ。
調べてみると、ここの温泉のオーナーが、まさに神のお告げに従って掘ってみたら温泉が出てきたという。専門家も、この辺りでは温泉は出ないと言っていたのに湯が出たのは奇跡だ、ということで「神告げ温泉」だと。
なるほど、そんな奇特な事があるもんだなあ、と思いながら風呂をいただく。ちょっとぬめりが感じられ、肌に心地よい。うむ、なかなかいいお湯だった。
今、この文章を執筆しようとして神告げ温泉のことをあらためて調べている。・・・地下1,200mからお湯を引っ張っているのか。うーん、神のお告げがなくてもお湯は出そうな気がするのだがムニャムニャ。現に、東京にだって「大江戸温泉物語」や「LaQua」という「天然温泉」施設がある。これらはいずれも地下1,000m以上掘ってお湯を引っ張り出している。
ま、でもそんなことはどうでも良くって、結局気持ちよく湯浴みができたという事実は変わりないわけで。非常に助かりました、ここが無かったら男二人汗くさいままで一晩を過ごさないといけなかった。それは非常に憂鬱なシチュエーション。
神告げ温泉の廊下に張ってあった、「戸隠連峰の特徴」というボード。
左側が戸隠連峰、右側が北アルプスなど多くの山々となっていて、それぞれの特徴を紹介している。なかなか面白かったので、転記しておこう。
【戸隠連峰】
[心構え] 2,000m級だから甘く見る。極めて特異で危険な山である。
[地質など] 凝灰角礫岩 風化や崩壊が激しく、手がかりや足場にした岩がぬける。岩場にとりつく前、靴底に泥がつまり滑りやすくなる。
[事故] 墜落。したがってほとんど即死。【北アなど多くの山々】
[心構え] 3,000m級だから真剣にとり組む。困難だが普通の山である。
[地質など] 玢岩、花崗岩など 比較的しっかりしていて、靴底のフリクションもきく。泥や土の部分が少なく滑りづらい。鎖や針金もしっかり固定されている。
[事故] 転落、滑落、軽傷、重傷で助かることも多い。
なるほど。非常に参考になった。北アルプスを「普通の山である」とばっさり切り捨てているのは見事。
さあ、温泉に入って身も心もすっきりしたら、お食事タイム。戸隠といえば、やっぱり蕎麦なんである。
夜の早い戸隠で、唯一日が暮れてからも営業をしている「極楽坊」に行く。
しかし、あまりに真っ暗なものだから、完璧に道に迷ってしまった。大雑把な場所しか把握していなかったので、戸隠スキー場あたりをうろうろ。木陰に見えるペンションの明かりを凝視して、「おい、あれが蕎麦屋じゃないか?」「違うだろー、ロッジとか書いてあるぞ」「いや、ロッジが実は蕎麦屋を副業でやってるの」なんて不毛な議論を始める始末。
※極楽坊の詳細は、蕎麦喰い人種行動観察コーナーで報告します。
さすがに夜も営業をしている蕎麦屋だけあって、生ビールなんて当然のように置いてあるのであった。しかもジョッキ。
考えてみれば、ジョッキビールが飲める蕎麦屋ってあんまり無かったような気がする。気のせいかな?
「じゃあまあ、とりあえず」とか言いながら、乾杯。何で、この乾杯をするときってちょっとだけ照れてしまうんだろう。
ごきゅーっ。
いやぁ、見ろ、このコダマ青年の顔を。朝からずーっとお預けを食らっていたビールを一口飲んだ直後の、とろけかかった顔。しまりがない顔だ、なんて言ってはイカン。これぞ、ビール飲みの最高の顔だ。ビール飲みたるもの、飲むまでは限りなくストイックに水分摂取を断ち、飲んだらふにゃふにゃにならなくてはならない。
蕎麦を手繰って、キャンプ場に戻ってきた。
車を運転している手前、ドライバーの僕がお酒を飲めないので蕎麦屋では本格的な酒宴(というかコダマ青年の一人飲酒会)にはしなかった。その代わり、キャンプサイトでたき火をしながら酒を飲もうや、というわけだ。
この戸隠キャンプ場の場合、無料で一斗缶を貸してくれ、その中であればたき火をしても構わない。
「・・・しまった、たき付けの新聞紙を忘れた」
仕方がないので、薪をガスストーブにかざして火を付けるという七面倒な事をやってみる。
※注:そんなことをやってもなかなか火はつきません。
15分ほど木と戯れて、ようやく火がついた。
たき火の開始だ。
ドライブしました、山登りました、温泉浸かりました、蕎麦食べました。おかでんの趣味のど真ん中を爆走中の今日一日だったが、そのラストをつとめるのが、「キャンプでたき火」だ。
一斗缶は、空気の通りが良くなるように一面がくりぬいてあった。一度火がつくと、あとは木を追加するだけでよい。火箸を使って薪を動かす必要すらない。シンプルだけど、楽ちんなたき火だ。地べたでやるたき火と比べて、火の迫力が欠けるのは致し方ないところだが、こんな気持ちの良い芝生の上でたき火ができるだけでも良しとしなくてはならないだろう。
あらためて、酒宴の仕切直し。
ローソンで買ってきた、冷凍もののホルモン焼きを用意していたのだが、当然のごとく溶けてしまっていて、中の汁が半分以上買い物袋にこぼれていた。
「仕込二十九号」という純米大吟醸酒が今回のメインとなるお酒。これは、先ほど温泉に入る前に戸隠中社の酒屋で買い求めたものだ。店のおばちゃんが、「これは限定品なんですよー、おいしいですよー」と言うので「とりあえず」買ってみた物。確か、4合瓶で2,000円前後だったと記憶している。
味は、これが予想以上においしかった。いや、「予想以上に」という表現は失礼か、「相当おいしかった」に訂正。
呑む前までは
「おばちゃんに在庫処分品つかまされたんじゃないのか?」
「鉄人28号の次に作られたプロトタイプ品のオイルとかじゃないか?」
「4合瓶なのに29合(号)とはこれいかに」
なんて適当な事を言っていたのだが、呑んだあとは
「いやぁ、失礼しました、先ほどは無礼な発言をしておりまして」
なんて謝ってしまった。
たき火の宴の夜は深まる。
ランタンを消し、たき火の明かりだけでぼそぼそとしゃべる。
いや、ぼそぼそしゃべっているつもりはないのだが、薄暗いと自然自然と声が小さくなってくる。大きな声は場にそぐわないような気がするからだ。
電車の中で、大声で携帯電話をかけている人がいてうっとおしい、というのはよくあるシチュエーション。だったら、電車の車内灯を暗くしたら、もう少し静かになるのではないか、とふと思った。・・・痴漢が増えるだけか。
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