2000年09月13日(水) 1日目
[行程]
07:50羽田空港(JAS)→09:40女満別空港→11:00網走市内で買い出し→11:15網走駅
→11:30網走刑務所→11:45女満別地ビール14:45→15:00博物館網走監獄15:30
→17:00木下小屋(泊)
羽田空港出発ロビーにて。朝7時半。
コダマ「やっぱ羽田の朝ってのはビールだろ~」
おかでん「これが旅情って奴ですかセンパイ!」
コダマ「あっ、ボトル缶あったんだ。こっちの方が量が多かったな・・・しまった、350ml缶にするんじゃなかった」
この後ハンドルを握る予定のおかでんはお茶で勘弁願っている。
コダマ「普通だったらこの時間、通勤電車の中だ」
慌ただしい朝だから、ビールを一気に飲み干したコダマ青年。朝から調子よし。これからの旅が楽しみだ。
女満別空港に無事到着。
おかでん「おおーっ、北海道だっ」
コダマ「でっかいどう。」
おかでん「いや、ホントでっかいどうだ。空気が乾燥しているし、広々としているし」
※二人とも北海道初上陸
おかでん「それにしても可哀想だな」
コダマ「何が?」
おかでん「この肥沃な大地が、これからわれわれによって食い尽くされ蹂躙されることになるんだから。目も当てられなくなるぞ」
コダマ「食い尽くす、か。そりゃ楽しみだ」
女満別空港そばのレンタカー屋で、ヴィッツを借りる。一路、網走へ。
網走への道。まっすぐで、牧場や畑が延々と続く中をひたすら走る。気がついたら100km/ht近いすぴーどは平気で出してしまうので、よっぽど注意しないといけない。周りの車も、ここは高速道路か?ってくらいのスピードでばんばん飛ばしている。
おかでん「うひひ、しかし、全く想像した通りに北海道だな」
コダマ「ひたすら広がる大地、牧場、畑。いやホントにそうだ」
おかでん「観光客目当てのセットじゃないのか?これ。あまりに期待通りの風景だから、逆に怪しくなってきた」
コダマ「って事はアレか、あの建物とかは全部ハリボテか」
おかでん「うんうん、裏はベニア。木のつっかえ棒があって」
コダマ「で、網走に着いて初めてごくありふれた光景を目の当たりにすると。騙されたァ~っ、って」
おかでん「いや、でもこの風景がニセモノであっても、許す!ここまで絶景なら何やっても、許す!」
コダマ「白樺ぁ~、だから?」
おかでん「あおぞらァ~、だから。」
コダマ「南風、だから?」
おかでん「こぶし咲く、だから。っていつまで続けてるんだ」
JR網走駅到着。駅の看板の前で記念撮影。
おかでん「いいね、この看板」
コダマ「毛筆書体ってのが凄いな。しかも俺らの身長以上ある」
おかでん「やっぱ網走はこうでなくちゃ。なんかこの字を見ると絶望させられるもんな、ああ俺はなんて悪い事をしてしまったんだ、って」
網走市街でお買い物。羽田空港で没収されたブタンガスボンベをスポーツショップで買い直し(さすが網走、寒冷地仕様しか売られていなかった。高いなあ)、スーパーで今晩の自炊用食材の買い出し。
コダマ「で、何にする?」
おかでん「網走に来たからには、海鮮鍋にしなくちゃダメでしょう(きっぱり)」
コダマ「じゃ、これとこれを入れて・・・これも」
おかでん「おい、おいっ!こんなにあったら食べきれないぞ、食い地獄になるぞ」
コダマ「あれっ、おかでんらしくない事言うなあ。お前だったらもっともっと入れろって言うかと思ったのに」
おかでん「いつも兄貴とキャンプや登山に行くとき、『お前に買い物を任せると食い地獄になる』って買う量を押さえ込まれているのよ。だから、ついつい慎重になっちまう」
コダマ「でも、お前さっき言ってたよな、『北の幸を食い尽くす』って。そんなことでいいのかと俺は言いたいよ」
おかでん「うぐっ。でも僕もリミッターが外れるいい口実。よし、欲しいだけ買ってしまえ」
コダマ「おっ、サンマがあるぞ。やっぱ秋の味覚といえばサンマでしょう。サンマ、酒のつまみとして行っときますか」
おかでん「行っときましょう・・・でもどうやって焼くのよ、これ。臭いぞ」
コダマ「牛肉のたたき!いいねえ、いっときますか」
おかでん「いっときましょう。絶対買いすぎだとは思うけど」
網走刑務所前。現役の刑務所だ。
コダマ「立派だな、さすがに。でもどうやっても逃げられないって感じはしないな」
おかでん「何か聞こえてこないか?」
コダマ「ん?何が?」
おかでん「いや、この奥で拷問とかが行われていて、その悲鳴なんか聞こえてこないかなあ、って」
コダマ「観光客が居るようなところまで聞こえてきたらまずいだろ、さすがに」
おかでん「うーん、残念。天下の網走刑務所なんだから、それくらいの事は日常茶飯事かと思ったのに」
コダマ「絶対勘違いしていると思うぞ」
おかでん「わっ!なんじゃこりゃ!」
コダマ「ニポポ人形だ」
おかでん「電話ボックスより目立ってるじゃないか。公衆電話一個作るよりもカネかかってないか、これ?」
コダマ「何かバランスが悪いな」
おかでん「雪が降ったら、重みで電話ボックスが潰れるぞこれじゃ。大丈夫か?」
コダマ「刑務所の前が花壇になってるんだな」
おかでん「まやかしだッ!刑務所の中では散々陰惨な事をやっているはずなのに、見てくれだけは聖人君子のふりをしているとはっ!」
コダマ「こだわるねお前も」
おかでん「大体、網走っていうのはだな、常に空はどんよりと曇り、陰湿なムードであって欲しいものだね。それが旅情って奴だ」
コダマ「地元の人に聞かれたら刺されるぞ」
女満別ビール。これだけの為に、わざわざ網走市街から逆送して女満別空港近くに戻ってきてしまった。
おかでん「ここか!女満別ビールとは」
コダマ「がらんとしてるな。まあ、平日の昼だからか」
おかでん「さあ、いよいよ背徳の昼酒の開始だ。飲め!行くんだコダマ青年!」
コダマ「とはいっても、俺はもう既に朝ビール飲んでるんだけどね」
おかでん「あっ、そうか」
がらんとした店内で、利き酒大会の開始。季節柄なのか、メニューの半分くらいが取扱していなかった。やっていないメニューは塗りつぶされている。
おかでん「まるで戦後の教科書だ!なんだこの黒墨のオンパレードは」
コダマ「残念だな、鹿肉食べたかったんだけど」
さて肝心のビール。出て参りました。
コダマ「うむ、この味はなかなか」
コダマ「俺はさっきの方が好みだな」
急にいっぱしの評論家に。神妙な顔をしてビールを頂く。コダマ青年。
おかでん「ええいこの際だ全部のビールを制覇しちまえ」
コダマ「おっ、えらく量があるぞ」
既に3種類のビールを飲んでいたわけだが、さらに2種類追加。昼間っから結構な量だ。
女満別ビールにてくつろぐ青年二人、という題で写真を撮ってみた。
おかでん「ありゃ・・・予想と違う写真に」
コダマ「なんか単なる居酒屋で飲んでるオッサンの写真だぞ、これ」
おかでん「シチュエーションがどんなに良くても、被写体が被写体だけにダメか・・・がっかり」
ビールばかりでは昼食にならない。って事で、ご飯ものも頼んでおいたのだった。洋風な地ビールブルワリーパブが、いきなり和風の定食屋になってしまった。
コダマ「俺はエビフライ定食。おかでんは?」
おかでん「日和ったな!やっぱりここは地元産のものを頼まないと。ってことでホタテフライ定食だっ」
おかでん「しかしだ、料理が出てくるまで30分近くかかったのは我慢するとしてもだ、冷めているというのはどういうことだ?」
コダマ「どっか別のところで調理しているのかな?」
おかでん「出前で持ってくるのか。とほほ、でもまんざら冗談でもない感じだよなあ、これじゃ」
コダマ「ここらへん田舎だから注文してから品物が届くまで何分かかるんだか」
おかでん「よせよせ、冗談のつもりが妙にリアリティあるぞ、この冷め具合だと」
コダマ「で、どうなの?地元名産ホタテの味は」
おかでん「あんまりおいしくない」
コダマ「あ、やっぱり?俺の方が正解だっただろ、やっぱ」
おかでん「くそーっ、どこ産だかわからんエビにまけるなんて!」
後注:この「女満別ビール」は現存していません。われわれが訪問してしばらくした後、廃業してしまった模様。なるほど、道理でメニューに黒塗りのものが多かったわけだ。
酔い覚ましをした後、またもや網走に戻り今度は博物館網走監獄へ。昔本当に監獄として使われていた施設を改造して、今では悪い人&それを折檻する怖い人博覧会会場となっているらしい。
おかでん「なんだ、ここも明るいムードではないか」
コダマ「今、入口の横に『雨の時にはご自由にお使いください』って傘が置いてあったぞ。いいところじゃないか。」
おかでん「なんたる偽善!なんたる欺瞞!騙されてはいかんぞコダマ青年」
コダマ「あれっ、あの傘は騙そうとしていたのか」
おかでん「実はな。恐ろしい事に」
網走監獄正門前で写真撮影。
おかでん「中から『出してくれ~ッ』っていうポーズはありきたりだけど、外から『入れてくれ~ッ』ってのはどうだ」
コダマ「犯罪犯せば、すぐにでも入れるじゃないか」
おかでん「無事出獄した人、の図」
コダマ「(よそ見をして相手にしていない)」
おかでん「うれしさの余りガッツポーズをする、無事出獄した人の図」
コダマ「・・・」
おかでん「・・・うれしさの余りガッツポーズをしながら、スキップする、無事出獄した人の図」
コダマ「いまいち」
おかでん「ぐはっ」
網走監獄を何度も脱獄した脱獄王。
おかでん「そうかそうか、そんなにこの監獄が嫌だったのか。いやあガンバったんだけどねえ、あともう一歩だったんだよねえ。次回頑張ってくれたまえ、うん」
肩をぽんぽんとたたき、彼の健闘を称える。
きっと、脱獄王はあの世で「ふざけんな若造」と思っているに違いない。
ちなみにこの脱獄王、逃げている最中に五寸釘を踏み抜いてしまい大けがをしていても逃げまくったらしい。小さな体なのに、なんたるガッツだ。われわれは深く静かに感動した。
コダマ「独居房、だって」
おかでん「今で言うところの独身寮か」
コダマ「それはちょっと違うと思う」
おかでん「トイレもキッチンもないから、さしづめドミトリータイプの独身寮だな」
コダマ「じゃ、ここで生活する?」
おかでん「・・・こんな家をあてがわれたら、福利厚生がなっとらんって会社に文句言うよ」
コダマ「せめて檻じゃなくて壁にしてくれ、とか」
おかでん「レベル低すぎの要求だなそれは」
コダマ「いや、それくらいでいいのかな、って思って」
休泊所、通称タコ部屋。刑務所から遠く離れたところで作業する時に宿泊施設として使ったもの。
コダマ「おいえらくリアルだぞ」
おかでん「うわ、やばいなこの空間は」
コダマ「夜になると動き出しそうだ・・・この人形たち」
おかでん「あっ、ケガしている人もいるのか。おいちょっとコダマ青年」
コダマ「写真を撮れって?」
おかでん「うん、ほら、僕がケガ人をいたわっているような写真を撮りたいんだ」
コダマ「撮るよ~」 かしゃ。
おかでん「どうだ、偽善者っぽく撮影できたか」
コダマ「自分で偽善って言うなよ」
ちなみにこの受刑者達の枕は、丸太ん棒だった。朝起きるときは、看守が丸太の端をハンマーで殴りつけ、その振動で全員が一斉に起きるという鬼畜な仕組み。
行刑資料館。網走刑務所の過去を振り返ると同時に、全国の刑務所も紹介されている施設だ。
おかでん「なかなか面白いな」
コダマ「でもちょっとヘンだよな」
おかでん「何が?」
コダマ「天井から白鳥が何匹もぶら下げられているのはなぜ?」
おかでん「あれ、本当だ。唐突だし全然意味がない・・・」
コダマ「あと、このジオラマ。受刑者が新たな道を切り開いている図なんだけど・・・何でヒグマやらエゾシカがいるんだ。むちゃ苦茶だぞ。あと、縮尺がおかしくないか?」
おかでん「あれれ。ヒグマはともかくとして、エゾシカがえらくデカいな。人間の1.5倍くらいある」
コダマ「ひょっとして、ここを作った人は単なる剥製好きなんじゃなかろうか、とこれらを見て思うわけよ俺は」
おかでん「刑務所の博物館を装った、剥製展示場だった、と」
五翼放射状平屋舎房。牢屋が5方向の放射状に配列されていて、その中心に見張り台がある。これで看守は一度に全部の牢屋を見張る事ができる。
おかでん「・・・といっても、看守は全方向見ようと思ったらぐるぐるその場で回転しないといけないんでは?目が回るな」
コダマ「別に一人で見なくちゃいかんワケじゃないだろー。二人で見れば問題ないだろうし」
おかでん「あれ、やっぱりそうか。この形にしたってのは、てっきり経費節減なのかと思った」
牢屋の中では今まさにお食事時間となっていた。
おかでん「お邪魔しまーす」
コダマ「お、食事中だぞ」
おかでん「・・・うまそうだな」
コダマ「まだ食い足りないのか!?それにしても貧相な食事だなやっぱり」
おかでん「ご飯、みそ汁、そして沢庵か。ご飯以外はしょっぱいものだけ。血圧上がるな」
コダマ「重労働やった後だから、これくらいがちょうどいいんじゃないの?」
浴場。
コダマ「なんだ、ちゃんと風呂はあったんだな」
おかでん「うわ、くりからもんもん、だって。入れ墨いれたオッチャンの展示即売会状態だ」
コダマ「結構広々としているなあ・・・ちょっと気持ちよさそうだぞ」
おかでん「いやー、こんなに広々していたら冬メチャメチャ寒いって。こんなに悠長にお手々上げて体洗っていたら、体が凍って身動きつかなくなるぞ」
ちなみに、浴場が完備されているのは大勢の人が寝食を共にするため、皮膚病が蔓延しかねないからだというちゃんとした理由がある。決して、人並みの生活を受刑者に送らせてあげようという仏心ではない。
網走監獄を後にしたわれわれは、一路知床半島に向かった。何しろ、今回の北海道ツアーの主目的は登山であって、観光ではないのだから。目指せ、羅臼岳。
途中、突然おかでんの体調ががらがらと崩壊。ひどい腰痛と肩こりに襲われてしまい、車の運転すら難儀な状況になってしまった。網走で失礼な発言を繰り返したから、獄死した懲役囚の亡霊が取り憑いたのだろうか!?
ウトロの街手前にある、オシンコシンの滝到着。海に突き出た崖から、「ありゃ、しまった!」という感じで水がほとばしっている。この水は一体どこから来たの?ってくらい唐突な感じの滝で、いかにも知床だよなあ、という気にさせられる。
コダマ「ところで『オシンコシン』ってどういう意味だ?」
おかでん「きっと、アイヌ語で『男と女』って意味だろ」
体調が悪いせいか、ギャグもイマイチ冴えない。
本日のお宿、木下小屋に到着。只今の時刻17時。
おかでん「何とか辿り着いた・・・」
コダマ「ホントに登山口のすぐ横にあるんだな、この山小屋。便利でいいや」
おかでん「でも、『ホテル地の涯』のさらに裏手にあるんだからなあ、こんなの誰も気づかないって。地の果てのさらに奥って事は何か、ここは地獄か天国か」
コダマ「誰もいないな、やっぱ北海道で9月ってのはオフシーズンなんだな」
おかでん「夜、ふと目が覚めて下に降りてみると、宿の主人が包丁を研いで『今日の二人をどう調理しようかね』なんて独り言いってたりして」
木下小屋にも露天風呂はあるのだが、いつでも入れるので後回し。とりあえずはホテル地の涯の脇にある岩尾別温泉露天風呂(無料)に繰り出す事にした。
写真に写るおかでん(右側)だが、腰と背中が痛
いために猫背になっている。
コダマ「おお、これが岩尾別温泉か」
おかでん「凄いなあ、ちょっとわざとらしい気もするが・・・」
岩尾別温泉の露天風呂は、三段滝になっていて、それぞれの段差のところが湯船になっているのである。
おかでん「しかし、ホントのジャングル風呂みたいなものを予想していたんだけど、案外箱庭だな」
コダマ「結構こぢんまりしているな。でもなかなかいい感じ」
おかでん「ギャルはおらんのか、ギャルは!」
コダマ「見ればわかるだろ、いないってば」
木下小屋に戻ったら、
宿の主人「あそこへは深夜に行った方がいいよ、暗くなってからの方が女性が入浴するから」
二人「ぐはっ、そういうことか・・・」
教訓:混浴露天風呂は、暗くなってからがチャンス。
小屋の中で夕食の調理を開始。
おかでん「海鮮鍋~、海鮮鍋~。でも僕は体調悪くておなかが全く空いていない~」
コダマ「そんなこと言っても、食材はこんなにあるしなあ・・・」
おかでん「おい、鍋から溢れそうだぞ」
コダマ「まだ、肝心の魚が入っていないんスけどォ」
おかでん「なぬ!それでは海鮮鍋にならんではないか。コダマ青年、押し込め!具をお玉で押し込め!」
コダマ「ンなことやったって、体積は変わらんと思うけど・・・」
この日の海鮮鍋の具材:
鮭、魚のすり身、白菜、椎茸、しめじ、葱。
おかでん「やっぱり食い地獄か・・・この鍋、結構デカいんだぜ?なんで二人前の鍋でこんなに溢れそうになってるんだよ」
コダマ「やっぱ空腹の時に買い物しちゃダメだよなあ」
二人とも、溢れそうになっている鍋を眺めながら深いため息。
結局、海鮮鍋にするために鮭は押し込んだが、鱈は断念。翌朝のおじや用に残すことになった。
おかでん「とりあえず鍋ができるまでの間、牛のたたきでも食べていよう」
コダマ「サンマは?せっかく買ったサンマはどうする?」
おかでん「どうする、って・・・食べられる分けないでしょこのシチュエーションで」
コダマ「だよなあ。やっぱり調理するのはやめにしよう」
結局、哀れなサンマ二匹は袋から取り出されることもなく、そのまま「無かったこと」にされてしまった。
できあがった北海海鮮鍋。
おかでん「北海道の旅情たっぷりだ」
コダマ「しかしすごい量だな、食べきれないぞ」
おかでん「味は・・・悪くないんだけど・・・」
コダマ「何かが足りないのかな?うーん。そうだ、海鮮鍋って感じがしない」
おかでん「そうだ、それだ。海鮮鍋を名乗っておきながらあんまり海っぽくないぞ」
コダマ「鱈を入れられなかったのが失敗だったか?」
おかでん「しめじとかしいたけとか、山のものを投入したのが失敗だったか?」
コダマ「うーん」
おかでん「うーん」
結局、おかでんは食欲不振のためビールをほとんど飲めず、食事もあまり食べられなかった。
食後、小屋の裏側にある露天風呂に浸かりに行った。
コダマ「いやたまりませんな」
おかでん「ああ、いいねぇ。でも気を付け給えよ、いきなり背後からヒグマが襲ってくるかも知れないぞここは」
ヒグマに怯えながら露天風呂に浸かる。なかなか味わえない体験ができる、それが北海道。
2000年09月14日(木) 2日目
[行程]
05:10木下小屋→06:30弥三吉水→07:30銀冷水→08:30羅臼平→09:40羅臼岳山頂→12:35木下小屋(入浴)→13:45知床五湖14:45→15:00知床自然センター→16:00知床第一ホテル(泊)
【注意】
執筆者であるおかでん、この日以降ひたすら体調不良の日々が続きます。
痛い体を引きずりながらの日程消化を行っているため、イベントおよび会話が鼻くそほども面白くありませんのでご了承ください。
朝4時起床。昨晩の残り海鮮鍋をおじやにして、暗闇の中でもそもそと朝食。
おかでん「鱈投入なのだ」
コダマ「ようやく海鮮鍋らしくなったな」
おかでん「・・・でも、すごく生臭いぞ」
コダマ「ショウガ用意すればよかったなあ」
おかでん「胡椒入れると、ちょっと生臭さがごまかせるぞ」
コダマ「何の鍋だ、そりゃ。あ、生臭いのはひょっとして昨晩の残りのサンマではないか?」
おかでん「あっ、ちょうど布団の足下にサンマがあるではないか。道理で、夜中ずっと生臭さに悩まされたわけだ。おかげで寝付きが悪かったぞ」
朝5時過ぎ、食べ残した鍋をとりあえず車のトランクに押し込んで、山小屋を出発。気温はこの時点で9度。
羅臼岳登山口。宿泊した木下小屋のすぐ横にある。
コダマ「おい、凄いことになってるぞ」
看板には、登山道はヒグマ生息地内にあり非常に危険である事が記述されている。
注意:
9/5に羅臼平でヒグマ(?)に食料を奪われる事件が発生しました。フードロッカーのあるキャンプ指定地(三ツ峰、二ツ池、第一火口)以外でのテント泊は禁止です。
おかでん「おいおい、つい2週間前じゃないか、やばいなあ」
コダマ「でも、ヒグマ(?)って何だ。ひょっとすると人かもしれない、って事か」
おかでん「山の中で食い物泥棒か?誰だ、そんなアホな事をやる奴は」
コダマ「わからんよ、ひょっとしたらえらくおなかが空いていたのかもしれないし」
おかでん「ある意味ヒグマよりタチ悪いな」
コダマ「オホーツク展望、だそうな」
おかでん「おお、さすが北海道!・・・って何も見えんぞぉ」
コダマ「雨が降ってるからな」
おかでん「なあ、帰らないか?てっぺん登っても何も見えないぞ、これから雨が強くなるかも知れないし」
この時、おかでんは体調不良が悪化し、肩が痛い、腰が痛い、食べたものが消化されずに吐き気がする、肩こりがひどくなった影響で頭痛まで始まっている始末。もうすこぶるネガティブな人間と化していた。
コダマ「まあ、もうちょっと、もうちょっと様子みようや。せっかく来たんだから。何も見えなくてもしょうがないだろ」
おかでん「さてはコダマ青年、マゾだろ」
コダマ「うーん、ひょっとするとそうかもしれない」
おかでん「げっ、冗談で言ったのに本当だったとは」
ヒグマ出没注意・・・というロゴが、北海道土産のグッズによく見かけるが、この注意看板はしゃれにも冗談にもなっちゃいない。
注意!!ヒグマ出没多発区間
この先、650m岩峰までの区間は、登山道上にアリの巣が集中し、頻繁にクマが食べに来ています。
※必ず!声を出したり、鈴を鳴らしながら歩いてください。
※クマに出会っても、決して近づかないこと。静かにゆっくり後退して下山しましょう!
おかでん「おい、びっくりマークがあちこちにあるぞこの注意書き。えーっと、4つもある。」
コダマ「さすが知床だなあ。これぞ北海道。それにしても、ちょうど今、朝だろ、朝飯あさりにクマが活動してるんじゃないか」
おかでん「・・・やっぱり、下山しない?」
コダマ「まあまあ、そう言わないで頑張れって」
おかでん「くそっ」
二人とも鈴をぶら下げてはいたが、それだけでは不安だったので手を叩いたり声を出したり、地面をどしんどしんと踏みならしたり、とあらゆる手段を使ってクマが寄りつかないように努力した。
しかし、最初は「あー」という大声だったのだが、体中が痛いしだるいおかでんは、もう投げやりになってしまい「あああぁ」とため息混じりの大声や「きぇぇぇぇ」「ぬはー」と、意味不明の音を出していた。そのあまりに情けない声にアワレみを買ったのか、クマは結局出てくる事無く危険地帯を通過できた。
途中、コダマ青年から大幅に遅れながら羅臼平に到着。ここは、羅臼岳の鞍部にあたる場所で、ハイマツの広い台地になっている。ちなみに、後ろに見える山の輪郭が、羅臼岳本体。
おかでん「ぐわっ!さ、寒い!(以降絶句)」
気温2度。雨が降っているし、寒いわけだ。歩いているうちはあまり痛くなかった肩と腰が、休憩して体が冷えた途端に猛烈に痛む。休みたいけど休めない状況で、あわてて山頂を目指すことにした。
コダマ「おつかれ~」
おかでん「し、死ぬかと思った・・・なんだ、この崖は。アスレチックではないか」
コダマ「寒い!おかでんを待っている間に体が冷え切ってしまった」
おかでん「風が凄いからなあ、吹き飛ばされるなよ」
コダマ「ふらふらのお前に言われたかぁないや」
おかでん「気温は・・・ぎゃっ、マイナス2度だって」
コダマ「道理でみぞれが降っているわけだよなあ」
おかでん「さあ、体が冷える前にとっとと記念撮影しておこう」
コダマ「あ、そこ気を付けろよ、知床峠側はすっぱりと切れ落ちてるから」
おかでん「えっ?わ、わわっ、ホントだ。ここまで登ってくる途中、『なんでぇ、知床峠から直登すれば近いのになんでわざわざこんなに遠いところから歩かせるんだ、ふざけんなふざけんなケッケッ』って悪口言っていたんだけど・・・こりゃ無理だなあ、登れないぞ」
ってな塩梅で写真撮影完了。完了後、即撤収。
おかでん「結局、僕が山頂にいた時間は3分。なんじゃそりゃーっ!」
コダマ「晴れてれば絶景なんだろうけどなあ」
おかでん「こうもガスがかかってしまうと、北海道かどうかすらも怪しいぞ」
コダマ「いや、植生が違うからそれは無いと思うんだけど。」
おかでん「ヒグマが出てきたら信用できるけど、それだけは勘弁願いたいところだな」
またもやコダマ青年に遅れること20分ほど、12時半にようやく下山完了。
コダマ「おお、戻ってきたな」
おかでん「さすがに今回は生命の危険を感じたよ、まったく」
コダマ「えっ、そんなに酷かったの?」
おかでん「おいおい、僕の状況見て気づかなかったのかよ」
コダマ「いやあ、あの程度の坂でおかでんが辛そうにしていたから、調子悪いんだろうなあとは思ったけど。あ、あとトイレが妙に近かったよな」
おかでん「うう、間違ってはいないけどなんかすごく微細なところを指摘するなあ」
とにかくずぶぬれだったので、木下小屋の露天風呂で暖をとり(300円)、恐怖海鮮鍋の後始末をしてから車を出発させた。
コダマ「あれ、何か道ばたに車が止まってるぞ。何だろ?」
おかでん「ここらへん何もないところだけど・・・あっ、あれだ!」
コダマ「シカ?」
おかでん「エゾシカだっ!」
さすがにヒグマ出没で北海道らしさを出されても困ったが、こうやってエゾシカが出てきたことによってがぜん北海道らしさUPなんであった。
おかでん「北海道だな。」
コダマ「ああ、北海道だ」
なぜお昼には下山完了しているほどタイトなスケジュールにしたのかといえば、午後はまるまる知床観光に時間を割きたかったからなんである。
まずは、知床五湖に行ってみることにした。
おかでん「・・・昼飯」
コダマ「らしくないなあ、たったこれだけか」
おかでん「食欲無い。本当は一口も食べたくないんだけど」
コダマ「で、このどこが北海道の幸なわけ?」
おかでん「え、えーっと牛乳」
コダマ「確かにまあそれは認めるけど、らしくないなあ」
おかでん「そういう君はどうなんだ」
コダマ「鮭入りのフランクフルト」
おかでん「おお、いかにも北海道」
コダマ「だろ?」
土産物屋には「熊出没注意」のグッズやヒグマ、シカの人形がいっぱい。場所柄シャレになっとらんと思うんだけど、それを商売にする当たり商魂たくましい限りだ。
おかでん「これが知床五湖展望台か」
コダマ「看板によるとそうらしいぜ」
おかでん「はるか彼方に湖が一個、見えるだけじゃん」
コダマ「五湖全部見えるのかと思ったけどな」
おかでん「ならばそうと書けよなあ、病人をここまで歩かせやがって!」
ぬかるみの中、たくさんの団体旅行客が巻き上げる水しぶきをよけつつ一湖に到着。
おかでん「・・・展望台で見た風景が間近に。以上、って感じだな」
コダマ「うーん、たんなる湖だなあ。晴れてればまた違うんだろうけど」
おかでん「雨が降っているから、知床連山が見えないし足下がぬかるんで不愉快だし、なんか陰気なんだよなあ。ああ、そうだ。昔ファミコンのゲームで『オホーツクに消ゆ』ってのがあったけど、確かこの池で殺人事件があったっけ」
結局、一湖、二湖を見て退却した。三湖以降に足を踏み入れるとなると、90分くらい時間がかかる上にヒグマの生息濃度が高く鈴が無いとヤバいということで断念したのだった。
おかでん「結局、腰が余計痛くなっただけだった!くわっ!」
コダマ「まあまあ、行ったという事実が重要なわけで・・・」
駐車場から僅かに羅臼岳が見える。少しはガスが晴れてきたようだが、相変わらず天気が悪い。
知床五湖の次は、カムイワッカ湯の滝という滝そのものが温泉になっている場所に行こうとしたが、知床五湖から先の道がダートロードになっていた事、雨がしとどに降っていて面倒くさくなったこと、お昼に木下小屋でひと風呂浴びていたのでもういいや、という気分だったことからやめにした。
その代わり、知床自然センターで知床の自然についてお勉強。ダイナビジョンという大型映像に写し出される知床と羅臼岳を見て、初めて「ああ僕らはここに登っていたのね」「こういう山だったのね」と感心するやら悔しいやら。
コダマ「到着。知床第一ホテル」
おかでん「でかい!さすがに収容人数が千人以上もあるだけある!」
風呂は「東北海道一」の展望大浴場らしいが、「東北海道一」というのが広いんだか狭いんだかさっぱりわからないのが愉快。
夕食はバイキングだったんだけど・・・ほとんど食べることができず。その証拠として何よりも、せっかくの食事だというのに写真を撮っていないという事実。よっぽど食事に対してやる気がなかったのだろう。
コダマ「うひゃーっ、ビール、うめぇーっ」
おかでん「うーん、おいしくない」
コダマ「ぷはーっ」
おかでん「ちびちび」
コダマ「もういっぱいもらっちゃおうかなあ。おかでんは?」
おかでん「ああ、僕はもういいです」
コダマ「初めてみたよ、こんなおかでんは」
ほとんど食欲が無い中、せめて北海道の名産品は食べないと!ということで手にしたのがホタテのバター炒め。昨晩の料理として採用しようかどうしようか悩んだ結果、不採用となった一品だった。だから、今回なんとか日の目を見せてあげたいと思ったのだった。
が。
おかでん「干からびておいしくない・・・」
ああ、無情。失意のどん底に突き落とされたおかでんは、さらに食後しばらくして吐き気をもよおし、食べたものを全部吐いてしまったというオマケ付き。もうぼろぼろになってしまった。ぐったりして、一人先に就寝。
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